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2010年7月30日 (金)

低血糖という概念

低血糖という概念
患者はどう定義しているのか
われわれと共通した認識かどうかが問題だ

CASE 67

75歳女性 
他科受診:なし  併用薬:なし

処方内容:
Rp1)メルビン錠250mg 2T / 2x朝・夕食後 14日分
 2) オイグルコン錠2.5mg 2T / 1x朝食後 14日分
  3) アクトス錠15mg 0.5T・ラシックス錠40mg 1T / 1x朝食後 14日分

患者のコメント:
「低血糖?低くなるなんてことないわよ」
「この間、寒くもないのに手がふるえてね。いつのまにか治ってたけど・・・」

薬歴から得られた情報:
①最新のHbA1c 7.8%
②アクトス著効例。アクトスを中断するとHbA1cは9%を超える
③低血糖発作は一度も経験がない
④毎日規則正しい生活が自慢で、食事は3食、間食なし
⑤足が悪いので、病院や買い物以外は出歩かない

患者から得られた情報:
①手のふるえは夕食が遅れたときに発現(低血糖の自覚なし)
②低血糖は夕食にて改善した様子
③冷や汗や空腹感もあった様子
④低血糖時に意識はしっかりしていた
⑤Drには低血糖のことを伝えていない

□CASE 67の薬歴
#1 低血糖の概念を再構築する
  S) 低血糖?低くなるなんてことないわよ。低血糖発作の経験(-)
 O) 夕食が遅れた際に低血糖発作→手のふるえ、冷や汗、空腹感(+)
    本人は低血糖発作であったことの自覚がない
    Drには伝えていない
 A) 低血糖の概念を再構築する必要あり
 P) 先日体験した手のふるえや冷や汗、空腹感といったものが低血糖発作です。
   その状態を放っておくとボッーとなってバタッとなっていまいます。
   すぐにブドウ糖で対応してください(ブドウ糖提供)。
   日頃の血糖コントロールがうまくいっていない方でも
   薬を飲んでいるので低血糖のリスクがあることを覚えておきましょう。
      Drにも伝えておきますね(トレースレポート提出)。
 R) びっくりした様子で、ブドウ糖をいつもの手さげにしまっていた。 

 

□解説
 「低血糖?低くなるなんてことないわよ」
 まずこのコメントにフォーカスを当てる。実際に低血糖が起きていようがいまいが、低血糖という重篤な副作用を軽く見ている可能性がある。もちろん、血糖コントロールがうまくいかず悲観的な感情が主にはなっているのだが・・・。

 次に本当に低血糖発作が起きていないのかを確認する。
「この間、寒くもないのに手がふるえてね。いつのまにか治ってたけど・・・」という情報を皮切りに必要な情報を聞き出していく。

 この患者は低血糖の概念を理解していない。血糖が低くなることをむしろ肯定的に捉えている観もあった。概念を再構築してもらう必要がある。低血糖発作とその危険性、そして誰にでも起こりうる重篤な副作用であることを理解してもらうように努めた。

□考察
 患者は血糖コントロールがよくなかった。わたしに低血糖なんて起きるはずがないと思い込んでいたのだろうか。

 もしくは、低血糖をたんに血糖が下がること、数値上のことと定義していたのだろうか。定義できないものは存在しないに等しい。手のふるえまであったのに、この患者には低血糖はなかったのだ。

 どちらにしても低血糖という言葉は、患者にとってよほど存在感がないらしい。

 無自覚性低血糖(CASE 51参照)の問題とあわせて意識しておきたい。

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2010年7月16日 (金)

ゾビラックス? バルトレックス?

ゾビラックス(400) 6T / 3x毎食後
この処方がきたら、どう考えます?
疑義照会はしましたが・・・

CASE 65

34歳男性 
他科受診:なし  併用薬:なし

処方内容:
Rp1)タガメット錠200mg 2T・ノイロトロピンル錠4単位 4T / 2x朝・夕食後 14日分
    2)ゾビラックス錠400mg 6T / 3x毎食後 7日分
   3) ロキソニン錠60mg 1T / 1x疼痛時 10回分

患者のコメント:
「虫にさされたかな~と思っていたら帯状疱疹だった」
「病院にいく暇もどうせなかったけど」

患者から得られた情報:
① 腎機能低下なし
② 胃症状なし
③ 営業マンで最近は疲れがたまっていた

疑義照会:
(内容)ゾビラックス(400) 6T / 3x はバルトレックス(500)ではないか?
(回答)バルトレックスでもいいですよ
        Rp2)→Rp4) バルトレックス錠500mg 6T / 3x毎食後 へ変更

□CASE 65の薬歴
#1 バルトレックス-タガメット併用は減量しなくても大丈夫だろう
  S) 虫にさされたかな~と思っていたら帯状疱疹だった
 O) バルトレックス、タガメット処方
    34歳、腎機能低下(-)
 A) 尿細管の競合的分泌阻害でバルトレックスのAUC↑となるが
    27%程度で年齢等からNPだろう
 P) バルトレックスが原因のウイルスに対して、他の薬は帯状疱疹の痛みや
    帯状疱疹後疼痛の予防のために出ているのでしっかり服用を。
    吐き気やボッーとなるようなら、申し出てください。
  

□解説
 患者はわたしと同い年。かなりお疲れの様子だった。若いし、腎臓も全く問題がない。ゾビラックス(400)6T/3xはバルトレックスの間違いだろう。そう思ってすぐ疑義照会をした。

 バルトレックスへ変更となり処方監査を改めて行うとタガメットがある。有名な適応外処方だ。帯状疱疹の急性期の疼痛緩和や帯状疱疹後疼痛の予防が期待できる。またタガメットはCYP非特異的阻害剤かつOCTで腎排泄される薬剤で相互作用が多い。抗ウイルス剤は腎排泄だからCYPは関係ないなと添付文書を眺めると、尿細管分泌阻害でバルトレックスのAUCが27%上昇するとある。

バルトレックスの相互作用
(2)併用注意とその理由
2. 薬剤名等シメチジン

臨床症状・措置方法
本剤の活性代謝物のアシクロビルの排泄が抑制され、アシクロビルのAUCが27%増加するとの報告がある。注)

機序・危険因子
シメチジンは尿細管分泌を阻害するため、活性代謝物のアシクロビルの腎排泄が抑制されるとの報告がある。

注)特に腎機能低下の可能性がある患者(高齢者等)には慎重に投与すること。

 ちなみにタガメットの添付文書にはバルトレックスとの併用注意の記載はない。バルトレックスのIFには「海外における薬物動態試験でプロベネシドおよびシメチジンを併用した場合、活性代謝物のアシクロビルのAUCおよびCmaxが上昇するとの報告があることから設定した」とある。

 AUCの30%程度の上昇であれば、有効域の狭いTDMを必要とするような薬剤を除いて、臨床上問題となることは少ない。しかし高齢者での両剤の併用は、想像以上のAUC増加から精神神経系副作用につながる恐れがあるだろう。

□考察
 「バルトレックスでもいいですよ」のDrの回答が気になった。バルトレックス‐タガメットの相互作用を想定したうえでの処方だったのかもしれない。そうならば、なんて意味のない行為だったのだろう。

 落ち込んでも仕方がないと、処方医を訪ねてみた。返答はまったく違う視点のものだった。

 「もう枯れかかってたからね。フルドーズでなくてもいいかなっと。電話もらって、まあ若いからフルドーズでもいいか~と思っただけですよ」

 もう完全なわたしの一人相撲。患者の疾患の状態。この視点はまったくなかった。わたしがフォーカスしていない患者のコメントに「病院にいく暇もどうせなかったけど」がある。つまりしばらく日数が経っていたのだろう。

 
 抗ウイルス剤は腎排泄型の薬剤で、高齢者では精神神経系の副作用が出やすい。タミフル、シンメトレル、アシクロビル(ゾビラックス・バルトレックス)全部そうだ。ならば症状に応じて用量を減ずるのは当然だろう。

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2010年7月 9日 (金)

「脱毛」をまとめて検索

脱毛という副作用は薬理作用からの推測が難しい
被疑薬をまとめて検索
効率よく仕事をしていきたい

CASE 64

75歳女性 
他科受診:整形外科  併用薬:フォサマック錠35mg、アルファロールカプセル1μg

前回の処方:
Rp1)ニューロタン錠25mg 1錠 / 1x朝食後
    2) アンプラーグ錠100mg 2T・ムコスタ錠100mg 2T / 2x朝・夕食後

事前にDrより問い合わせ:
(内容)脱毛の報告のある薬はあるか?
(回答)ムコスタにて報告あり。代替案としてセルベックスを提案。

今回の処方:
Rp1)ニューロタン錠25mg 1錠 / 1x朝食後
    3)アンプラーグ錠100mg 2T・セルベックスカプセル50mg 2P / 2x朝・夕食後

患者から得られた情報:
①「洗髪にいったら髪がすごい抜けるので、美容院の人から薬のせいではと言われた」
②「自分では今まで気が付かなかったけど、なんとなく恐ろしくてね」

□CASE 64の薬歴
#1 ムコスタとフォサマックで脱毛がおきている可能性がある 
  S) 洗髪にいったら髪がすごい抜けるので、美容院の人から薬のせいではと言われた。
    自分では今まで気が付かなかったけど、なんとなく恐ろしくてね
 O) ムコスタ(100)→ セルベックス(50)
    整形にてフォサマック併用中
 A) ムコスタ、フォサマックにて脱毛の記載あり。
    改善がなければ、フォサマックも検討したほうがいいだろう。
 P) 胃薬で脱毛の報告があったので、その報告のないものに変更になっています。
    整形外科でもらっているフォサマックでも報告があります。
    改善がなければ、整形の薬も見直してもらってください。
  
   

□解説
 脱毛についてDrより問い合わせを受けたケース。問い合わせ自体は、処方せんをうける前に行っている。薬歴への記載は当然、処方印字の前に記載しておくべきだろう(実際には間に合わないことも多々あるが・・・)。

 こういうケースでは焦点を当てる情報を探す必要はほとんどない。当然、(S)は患者のコメント全般である。

 次の(O)には、脱毛の報告のあるもの(ムコスタ)からないもの(セルベックス)へ変わったという情報と脱毛の報告があるフォサマックを整形からもらっているという情報を記載する(*ここでの「報告がある」は「添付文書に記載がある」の意)。

 (O)情報がアセスメントの根拠となり、(A)から(P)という流れになっている。

 つまり、(S)は起点であり、(O)は方向を示す。(A)(P)で薬剤師の力量が加わり、服薬支援のベクトルが形成される

 

□考察
 脱毛という副作用。これは薬理作用からの推測が難しい。どれが被疑薬なのか。薬剤師の経験値しだいではあるが、その場その場では、やはり地道に調べるしかない。

 服用薬の添付文書をひっぱりだして1つずつ観ていく。そんなことはネット社会の現代では必要ない。CASE 37で紹介した安心処方infoboxの副作用サーチを活用する。先日(平成22年7月1日)にリニューアルされ、いっそう使いやすくなった。医師・薬剤師なら誰でも登録さえすれば、無料で使える。

 
 わたしたちの時間は限られている。学ばなければならないことが少なくなることは決してない。薬はどんどん増えていくし、ガイドラインなどもどんどん変わっていくのだから当然だ。であるならば、仕事の効率をあげていくことは重要課題の1つといえるだろう。

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