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2010年6月25日 (金)

ビ・シフロールによる突発性睡眠

ビ・シフロールの警告‘突発性睡眠’
「運転は今後しないでください」
このひと言、言えますか?

CASE 63

60歳 男性

処方:
Rp1) アリセプト錠3mg 0.5T / 1x朝食後
Rp2) ツムラ抑肝散エキス顆粒 7.5g / 3x毎食前
Rp3) アスパラカリウム錠300mg 3T / 3X毎食後
Rp4) ペルマックス錠50μg 1T / 1x夕食後
Rp5) ビ・シフロール錠0.125mg 2T / 1x朝食後
*28日分
*ペルマックスは3Tから1Tへ減量、Rp5)は初処方

薬歴から得られた情報:
① レビー小体型認知症(ふるえが先行して発現、たまたまレビーが見つかった)
② 認知もそんなに悪くないし、身体のほうも生活に支障はない
③ 症状が安定していて珍しい症例とDrに言われている
④ 薬局にこられるのはいつも奥様で、本人の来局は一度もない
⑤ 車の運転(+)

奥様から得られた情報:
①「手のふるえが少しひどくなって、薬をかえると」
② 突発性睡眠について、Drより説明なし
③ 「運転を控えるように言ったら、がっかりする。
   本当に生活に支障はそんなにないし、ゴルフにも行ったりするんですよ」

疑義照会:
(内容)ビ・シフロールの突発性睡眠による自動車事故で警告あり。
(回答)量が少ないので、今は運転しても構わない。
    心配なら様子を見るように伝えておいて。

□CASE 63の薬歴
#1 ビ・シフロール服用中に車の運転をしてよいか
 S) 手のふるえが少しひどくなって、薬をかえると
 O) 手のふるえ悪化にて、ビ・シフロール(0.125)2T追加、ペルマックス減量
       突発性睡眠や運転についてDrより指導なし
 A) ビ・シフロールの突発性睡眠で自動車に事故の報告あり
 P) 疑義照会。内容を(奥様に)伝える

#2 ビ・シフロールによる突発性睡眠への理解
 S) 運転を控えるように言ったら、がっかりする。
     本当に生活に支障はそんなにないし、ゴルフにも行ったりするんですよ。
  O) 疑義照会の結果を聞いて安心した様子
 A) 少量でも可能性はあるかも。突発性睡眠についての理解が必要。
 P) 前兆もなく突然1~2分眠り込んでしまう副作用があります。
   それが車の事故の報告につながっています。
   今回は薬の量が少ないのでにDrの許可が出ましたが、
   症状があったらすぐに連絡してください。

  
□解説
 今回はテーマ(プロブレム)を2つに分けて記載している。#1は疑義照会までの流れ。#2は疑義照会の回答を受けた奥様の反応に対しての応対となっている。
 
 疑義照会に関しては、SOAP展開にするか結果のみを使うかはケース・バイ・ケースだ。もちろん、SOAP思考は発動している。

 つまりこのケースでは、SOAP思考が2度発動している。

 #1の応対を受けて、患者(の奥様)は安心した様子を見せた。突発性睡眠に対しての警戒がなくなるのでは。そう感じたわたしは#2を展開する。

 つまり#1のR(患者のリアクション)が#2のS(薬剤師が焦点を当てた患者のコメント)となっているわけだ。

 
 以前はよく#1と#2がごちゃ混ぜになったSOAPを書いていた。SOAPのバランス感覚が少しは身についてきたのだろうか。

□考察
 このケースの対応は正しかったのだろうか。ほんとうは正しくないと気がついていた。ただ保身のために疑義照会をし、どうにもできない問題を見送った。

 突発性睡眠という副作用に用量依存性があるのかはわからない。わかっているのは‘L-Dopaを併用したほうが報告が多くなる傾向がある’ということだけだ。

 メーカーが提供している患者指導せんの注意事項をみると、

「突発性睡眠が見られた場合は、減量・休薬または投薬を中止するなど適切な処置を行ってください」

 との記載がある。なるほど減量すればリスクも減ずるような観もある。しかし残念ながら、そうは問屋が卸さない。この減量の意味は悪性症候群を意識したものだ。高用量のビ・シフロールをいきなり中断すれば、もっと危険な副作用との対峙もあり得るわけだ。

 本題に戻る。運転を禁止すること。これは患者にとって死活問題となり得る。

 仕事で運転をしないわけにはいかない。田舎だからどこにも行けないし、生きていくことができない。通院すらままならない。

 しかし自動車事故は本人だけの問題ではない。でも突発性睡眠のリスクは1%にも満たない。いや副作用の%がどれほどの意味があるというのか・・・。

 いまのわたしでは、この問題に対して答えを出すことはできないようだ。

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2010年6月18日 (金)

借景話法

「これは何の薬?」
モノを見ただけでは答えたくはない
背景が違えば違う景色となるだから

CASE 62

55歳 男性

処方:
Rp1) バイアスピリン錠100mg 1T・ブロプレス錠8mg 1T ・アクトス錠15mg 1T / 1x朝食後
Rp2) セロクラール錠20mg 2T / 2x朝・夕食後
Rp3) クレストール錠2.5mg 1T / 1x夕食後
*28日分、クレストールは今回が初処方

薬歴から得られた情報:
① 脳梗塞既往あり
② 後遺症:少ししゃべりにくい、左手に力が入りにくい

患者から得られた情報:
①「コレステロールなんて食べ物で上がったり下がったりするものでしょ?       薬必要なの?」
② LDL-C 164、HbA1c 6.3、S-Cr 0.96

□CASE 62の薬歴
#1 クレストールを脳梗塞再発予防の薬と認識してもらう
 S) コレステロールなんて食べ物で上がったり下がったりするものでしょ?        薬必要なの?
 O) LDL-C 164、クレストール追加
      脳梗塞歴、HT、DMもあり
 A) 脳梗塞再発のリスクあり→クレストールへの認識を変える必要がある 
 P) たしかにクレストールはコレステロールを下げる薬ですが、
    あなたにとっては、脳梗塞の再発を予防するための薬と考えてください。
 R) また脳梗塞は困るな
  
  
□解説
 コレステロールの薬の処方に疑問を感じている患者への応対。患者のコメントが患者の薬識を如実にあらわしている。

 この状態でいわゆる‘ひもつきの服薬指導’をメインに持ってくることは避けたい。スタチンの場合だと横紋筋融解症の注意喚起にあたる。これは患者応対の終わり間際にサッと済ませることにする。
 
 コレステロールの薬は患者にとってどんなメリットがあるのか。患者にとっては何のための薬なのかをはっきり認識してもらう。この1点を理解してもらうことにテーマを絞って応対している。

□考察
 「ガイドラインでいけばLDL-C 120以下にしないといけません」
 正しい薬識のある患者なら適切な目標値として機能するだろう。しかしそうでないなら、抽象論にすぎない。とかく意味のわからない数字で、患者の納得を得ることは難しい。

 スタチンやACE-I、ARB服用患者にて、この手の質問によく遭遇する。それは心臓を守るためだったり、腎臓を守るためだったりするわけだが、それは患者の背景によるわけだ。

 造園の技法の一つに借景というのがある。たとえば、庭に山がないが、その後方に山があって、庭園の一部のように見えるとき、これをとり入れて借景というのである。よその景色を借りるところからこの名ができたのだが、美の創出のアイディアである。(*1)

 この借景の考え方を患者応対に応用する。
 
 あなたがこの薬を飲むと‘心臓を守る薬’や‘腎臓を守る薬’になる。

 数値云々はその後でもいいだろう。

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