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2010年5月28日 (金)

BPHとOAB

前立腺肥大症(BPH)と過活動膀胱(OAB)
α1遮断薬と抗コリン剤の併用も多く見られるようになってきた
尿閉に注意、そしてどちらが大事な薬か?

CASE 60

67歳 男性

処方:
Rp1) ユリーフ錠4mg 2錠 / 2x朝・夕食後
Rp2) ベシケア錠2.5mg 1T / 1x朝食後
Rp3) ユーロジン錠2mg 1T / 1x就寝前
Rp1)~3)28日分

薬歴から得られた情報:
① 頻尿(+)のため、前回より Rp2)が追加になっている
② ベシケア投薬の際、尿閉の誘発について指導

患者から得られた情報:
① 「新しい薬(ベシケア)が入って調子いいよ」
② 尿の出が悪くなるようなことはない

□CASE 60の薬歴
#1 ユリーフの継続必要性について確認する
 S) 新しい薬(ベシケア)が入って調子いいよ
 O) ベシケアによるBPHの悪化・尿閉(-)
 A) QOL改善に伴いユリーフの服用状況
   が悪化しないようにする必要あり(特に夜)  
 P) 薬の優先順位的にはユリーフが大事
   ユリーフの飲み忘れが多くなると尿が出なくなったり、
   せっかくよくなった症状が悪化することが考えられる

□解説
 α1遮断薬と抗コリン薬の併用。泌尿器の専門医によく見られるようになった処方だ。

 前立腺肥大症の病態は前立腺腫が増大すると、尿道抵抗が高まり、その結果として膀胱機能が影響を受け、複雑な様相を呈する。閉塞に伴う膀胱機能の変化による症状は排尿困難以外に頻尿、尿意切迫感、夜間頻尿などの刺激症状も現れる。(*1)

 BPHを放っておくと、膀胱機能が影響を受ける。結果、過活動膀胱(OAB)や低活動膀胱を引き起こす。OABを有するBPH患者に第一選択薬としてα1遮断薬が推奨される理由がここにある。

 BPHの患者の40~60%に排尿筋過活動が合併する。α1遮断薬により閉塞を解除した場合、約60~70%の患者において過活動膀胱症状が消失する。しかし閉塞を解除しても、残りの30~40%の患者では、尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁のような過活動膀胱症状は改善しない。(*2)

 このような場合、OABの症状改善のために抗コリン剤が併用される。ただし、残尿量が50mL以上あるような場合、BPHによる尿閉が考えられ、抗コリン剤は禁忌となる。

 抗コリン剤は膀胱のムスカリン受容体に結合して、膀胱を弛緩させる。BPH患者に抗コリン剤を投与すると、尿道が閉塞している状態で膀胱が弛緩してしまうため残尿量が増加し、尿閉を誘発するおそれがある。

 ということは、α1遮断薬と抗コリン薬の併用において、α1遮断薬の服用状況こそが効果や尿閉防止のカギとなる。そこで‘ユリーフの継続の必要性について理解してもらう’ことを目的に服薬支援を行なっている。

□考察
 患者は往々にして、症状が改善したときに加わった薬を過大評価する。

 今回のケースでも、新しい薬(ベシケア)への患者の評価はすこぶる良かった。しかし良きにしろ悪きにしろ、単一のモノが原因とは限らない。ヒトの身体はそんなに単純なものではない。

 ベシケアの高評価はユリーフの働き(服薬)があってこそなのだ。

 シャーロック・ホームズも友人のワトスンに言っていた。
「ことわざにあるように『知らないうちは、すべて偉大に見えるもの』だからね」(*3)と。

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*1:厚生科学研究班編/医療・GL(01年)/ガイドライン    

*2:横田崇 他.Geriat.Med.41(8).1178,2003.

*3:ドイル 中田耕治訳『シャーロック・ホームズ傑作選』集英社文庫

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2010年5月21日 (金)

モーラステープによる光線過敏症

暑くなりました。紫外線が強くなりました。
モーラステープで光線過敏症。
それを未然に防いでこそ、薬局薬剤師だ。

CASE 59

57歳 女性

処方:
Rp1) ミカルディス錠40mg 1T / 1x朝食後
Rp2) アムロジン錠5mg 1T / 1x夕食後
Rp3) モーラステープ20mg 42枚
Rp1)~2)28日分

患者から得られた情報:
①もともと肩こりにモーラステープを使用
②手首にモーラステープを使用し、かゆみ・発赤あり(ひどくはない)
③モーラステープは昨日まで手首に使用
④光線過敏症の注意については理解している
⑤「腱鞘炎かな?ついテープ使っちゃった。日に当てたらほら!」
⑥ ②~⑤の情報はDrには伝えていない

疑義照会:
(内容)モーラステープで手首に光線過敏症あり、ロキソニンテープを提案
(回答)Rp3)→Rp4)ロキソニンテープ50mg 42枚 へ変更

□CASE 59の薬歴
#1 モーラステープによる光線過敏症への対応
 S) 腱鞘炎かな?つい(手首に)テープ使っちゃった。日に当てたらほら!
 O) モーラステープの光線過敏症についての理解(+)
    疑義照会にて、ロキソニンテープへ変更
    モーラステープは昨日まで手首に使用し、かゆみ・発赤(+)
 A) モーラステープの光線過敏症は、4週間後まで同様の注意が必要
 P) ロキソニンテープ自体は直射日光を当ててもリスクは低いが、
    前のモーラステープがはがした後、4週間は注意が必要なので、
    今月いっぱいは外に出るときに手袋や日焼け止めで対策を。

□解説
 紫外線が強くなるこの季節、モーラステープの使用者には光線過敏症への注意や使用状況の確認を行っている。

 今回の患者は光線過敏症についてよく理解していた。理解していたがゆえに、Drには言い出せなかったようだ。そこで患者にロキソニンテープを紹介し、疑義照会にてDrの許可をもらう。

 しかし問題は、モーラステープを昨日まで使用していたことだ。モーラステープをはがした後、4週間は同様に光線過敏症が起こる可能性がある。リスクが高い場合には具体的な対策の指導が必要だ。

□考察
 今回の患者の気持ちはよくわかる。私もサッカーで足を痛めたとき、モーラステープしか手持ちがなく、それを貼ってしまったことがある。翌週にはまた炎天下でサッカー。私には何も起こらず、運がよかったわけだが・・・。

 それはともかく、薬剤師は外的条件をつねに考慮する必要があると考える。

 
 今日、試合の際のさまざまな外的条件が話題に上ることはほとんどない。しかし、特殊なケースも必ず存在する。それも考慮に入れてはじめて、ゴールキーパーの全体像を理解できるのだと思う。この試合のような状況はいつでも起こるのだ。

 ボールが風にあおられると、そのコースは読めなくなる。だからといって、われわれゴールキーパーは騒ぎ立てることはしない。(*1)

 元ドイツ代表の守護神、オリバー・カーン。彼の言動はかっこいい。強風や逆光、芝の状態、味方選手によるブラインドといった外的条件を言い訳にしない。だがそれを考慮してはじめてプロだというわけだ。

 患者が勝手に違う部位に貼りはじめた。いままで何ともなかったが紫外線が強くなったから・・・。そんな外的条件も考慮に入れてこそ、薬局薬剤師だ。

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*1:オリバー・カーン著、齋藤孝監訳『オリバー・カーン自伝 ナンバーワン』 三笠書房

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2010年5月14日 (金)

レニベースからレニベーゼへ

ジェネリック医薬品(GE)への変更
今年度より「変更調剤」も認められた
薬局薬剤師をアピールするチャンスだ!

CASE 58

67歳 女性

処方:
Rp1) バイアスピリン錠100mg 1T / 1x朝食後
Rp2) レニベース錠5mg 0.5T / 1x朝食後
Rp3) アーチスト錠2.5mg 1T / 2x朝・夕食後
Rp1)~3)35日分

GE変更:
Rp2) → Rp4) レニベーゼ錠2.5mg 1T /1x朝食後

患者から得られた情報:
①胸痛で入院していた
②入院中よりRp1)~3)服用中
③服用により気になる症状なし

□CASE 58の薬歴
#1 レニベースの安定性について
 S) 胸痛で入院していた
 O) 入院中より処方薬を服用
 A) レニベース(5)半錠により硬度低下・力価不明
   2.5mgにするかGEに変更がいいだろう
 P) レニベースの安定性ならびにGEについて説明
   レニベーゼ(2.5)へ変更となる

□解説
 レニベースは「吸湿により、錠剤の硬度が低下する」という性質がある。裸錠薬袋(保存条件21℃、RH60%)にて2週間で硬度が6.5kgから2.9kgに低下する。半錠にするとなるとさらに低下するだろう。

 萬有製薬のMRによると、これから夏にかけて錠剤がグニャグニャになるケースが多く報告されているそうだ。ちなみに4週後までは力価低下なしを示すデータがある。

 安定性低下の回避策として、以下の2点を考えた。
1)疑義照会にて、レニベースの2.5mg錠に変更してもらう
2)GE変更にて、レニベーゼ錠2.5mg 1T / 1x に変更する

 患者に事情を説明し、回避策2)を勧め、GEへ変更となる。
 

□考察
 今年度、GE使用促進のため、薬局に大きなインセンティブがついた。当薬局でもGEのデータをよく吟味した上で、導入を進めている。数量ベースで35%を占めるほどになった。

 たしかにGEの推進は、薬局薬剤師が積極的にやらなければならない仕事であることに間違いはない。しかし、これは本質的なものではない。経済的な問題であり、大局的に考えると、一過性のものにすぎない。だからといって、何もしないのはもったいない。

 まず患者に対して、薬局薬剤師をアピールできる。患者は医師よりも薬剤師に対してのほうが相談や質問をしやすい、と私は感じている。であるならば、薬局薬剤師がその気になれば、GEの使用促進は進むはずだ。結果として、患者がさらに薬局薬剤師を頼りにしてくれるだろう。

 さらに、今年度より「変更調剤」(含量違いへの変更調剤)が認められた。その目的は薬局の在庫管理の負担軽減がその主たる目的だが、その為だけに活用するのではもったいない。

 薬剤師の裁量だけで処方そのものをブラッシュアップすることも可能なのだから。

 経済的なものから‘患者の服薬の負担を減らす’もしくは‘薬の安定性を確保する’といった薬学的なものへと、変更調剤を換骨奪胎していきたい。

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