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2010年3月19日 (金)

「仕方がない」は立派な心ばえ

「仕方がない」
と思えるから現状が受け入れられる
あきらめではなく、前進だ

CASE 53

80歳 女性

処方:
Rp1) コメリアンコーワ錠100mg 3T / 3x毎食後 14日分
Rp2) メバロチン錠5mg 1T・ブロプレス錠8mg 1T・バイアスピリン錠100mg 1T / 1x朝食後 14日分
Rp3) クレメジン細粒 6g / 3x毎食間 7日間

患者のコメント1:「クレメジンは飲みにくいし、この間の結果は食事のせいだと思うし・・・」

薬歴から得られた情報:
① 前回からクレメジン追加
② S-Cr:1.8、eGFR:21くらい、CKDステージ4

患者から得られた情報:
① Drからはしっかり続けるように指示(+)
② クレメジンの残薬があと7日分ある。
③ 患者のコメント2:「透析にはなりたくない」
④ 父親が透析を受けていた。

□CASE 53の薬歴
#1 クレメジン継続には現状を受け入れることが必要
 S) 粉(クレメジン)は飲みにくいし、この間の結果は食事のせいだと思うし・・・
 O) 父親が透析を受けていた
   クレメジンを7日分は服用している
  「透析にはなりたくない」という感情(+)
 A) 現状を受け入れることが必要
 P) 確かにクレメジンは飲みにくいが、身体には全く吸収されず副作用は便秘くらい。
  透析になるのを遅らせることができるから、飲んでで損はないのでは?
 R)「仕方ないわね」

□解説
 コメント1前半の「クレメジンは飲みにくい」は納得できる。しかし後半の「食事のせいだと思うし・・・」にはひっかかった。さらに患者応対のなかで「透析にはなりたくない」というコメント2と父親が実際に透析を受けていたとの事実が聞き出せた。

 患者の病識や薬識といったものに問題はないと思われる。現にクレメジンを7日分は服用している。つまり、患者が現状を受け入れていないのだ。「透析にはなりたくない」という感情は、「クレメジンを医師の指示通りに服用することは、透析になるかもしれないということを認めてしまう」という感情に近いのだと思う。

 患者自身が現状を受け入れるしかない。それには正しい薬識形成ばかりを考えていてはダメだ。患者に薬を飲もうという意志を持ってもらう必要がある。

 
□考察
 感情面へのアプローチは服薬指導の内容そのものより、そのプロセスに価値がある。今回のケースでは「透析にはなりたくない」という感情を患者自身に確認してもらうことがそれにあたる。

 コメント1と2は矛盾している。自己矛盾と呼ばれるこの状態は誰にでも起こる(参照:感情の矛盾)。しかしそこに患者自身が気が付けば、あとは現状を受け入れるだけだ。

 「仕方がない」という日本人がよく使ってきた言葉がある。これは今日ややもすれば消極的なあきらめを示すものとされて、一般に敬遠される傾きがある。しかしぎりぎりのところまでつめて「仕方がない」というのは立派な心ばえではないか。大体、現実というものは自分の思うようにはいかぬものである。したがって人間精神にとって不可欠な現実感というものは「仕方がない」と感ずることにおいて成立すると言ってよい。(*1)

 「仕方がない」と思えるから現状を受け入れられる。

 この言葉はあきらめの後ろ向きな言葉ではない。前向きな言葉であり、「仕方ない」と思える人は感情のコントロールができる大人なのだ。

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*1:土居健郎『続「甘え」の構造』 弘文堂

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