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2009年10月16日 (金)

セイブルとベイスン

心血管疾患のリスクを高める食後高血糖
酸化ストレスから血管を守るα-GI
ベイスンとセイブル 薬剤の個別性を考える

CASE 39

56歳男性 
他科受診:なし  併用薬:なし

前回の処方
Rp1)オルメテック錠20mg 1T・リピトール錠10mg 1錠 / 1x朝食後
 2)ベイスン錠0.3mg 3T / 3x毎食直前

今回の処方
Rp1)オルメテック錠20mg 1T・リピトール錠10mg 1錠 / 1x朝食後
  3)セイブル錠50mg 3T / 3x毎食直前

患者のコメント:「血糖値は悪くないけど、Drがもっといい薬があるから変えておくと」

薬歴より:食後高血糖は動脈硬化によくないとの説明を受けベイスンをスタート

□CASE 39の薬歴
#1:セイブル初回服薬支援
  S) 血糖値は悪くないけど、Drがもっといい薬があるから変えておくと
 O) ベイスン(0.3)→ セイブル(50)
   動脈硬化防止のためα‐GI服用中
 A) セイブル初回のためメリットとSEについて
 P) セイブルは効き目が早いため、より血管への負担を減らします。
   飲みはじめの数日は下痢になるかもしれません。
   じきに身体が慣れておさまりますが、ひどい時は申し出てください。
      また、糖分の取りすぎも下痢を助長するので注意してください。
   

□解説
 繰り返す食後高血糖が血管を傷めている。食後の急激な血糖上昇と酸化ストレスマーカーには高い相関がある(HbA1cにはない)。
 食後高血糖というと食後2時間血糖値をよく目にするが、食後血糖のピークは2時間というわけではない。ヨーロッパやアメリカではそのピーク値が注目されている。
 セイブル(150mg/day)とベイスン(0.9mg/day)は食後2時間値で比べるとほぼ同等の効果を示す。しかし、食後30分~1時間では効果に明らかな差がある。セイブルのほうが食後血糖のピーク値を低くし、急激な血糖の上昇を抑える。食事の欧米化を考えると、血管にはセイブルのほうが「もっといい薬」といえるだろう。
 一方、α‐GIの副作用である消化器症状はベイスンのほうが少ない。おならやお腹のはりといった症状はさほど大差はない。セイブルの弱点は服用初期の下痢の多さにある(セイブル錠75mgは高頻度の下痢を理由にMRでさえ奨めていない)。そこで、下痢が原因でノンコンプライアンスとならないように服薬支援を行っている。
 下痢の原因はセイブルのスクラーゼ阻害活性の強さにある。スクロースが小腸下部に流れ込み水分をひいてしまうわけだ。そこで糖分の取りすぎには注意するようにアドバイスを加えている。

□考察
 セイブルは従来のα‐GIとは異なる体内動態を示す。まず高濃度のセイブルが小腸上部に到達するために、効果発現が早くおこる。その後、50%もの量が体内に吸収される。その結果、下痢以外の消化器症状はベイスンなみとなる。体内に取り込まれないほうが安全なイメージがあるが、消化器症状に限っていえばそうではない。まさに逆転の発想だ。

 もともと人間の意識は、先入観や偏見に満たされているものです。目の前にあるものを自分ではしっかり見ているつもりでも、厳密な意味で正しく見ているわけではありません。「魚だ」「これはリンゴ」という概念で理解するだけで、現に目の前にある魚やリンゴの個別性、本質は見ていないと言っていいでしょう。ほとんど思い込みで見ているというのが正直なところです。(*1)

 以前はセイブルもベイスンも同じα‐GIという概念で理解して投薬をしていた。α‐GIとひとくくりにせずに、薬剤の特徴を押さえた、効果と副作用のバランスのとれた服薬支援を行っていきたい。

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