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2009年10月30日 (金)

タミフルと麻黄湯

新型インフルエンザ問題
タミフルと簡易検査の問題
麻黄湯はハズレじゃないぞ

CASE 41

32歳男性 
他科受診:なし  併用薬:なし  副作用歴:なし

処方内容
Rp1)ツムラ麻黄湯エキス顆粒 7.5g / 3x毎食前 4日分
  2)カロナール錠300mg 1T / 1x発熱時 5回分

患者のコメント:
「子供がインフルエンザだから、そうだと思ってたけど陰性だった。
 陰性だからタミフルは出せないけど、インフルエンザに効果のある漢方をだしておくと」

患者から得られた情報:
①今日の昼くらいから急に発熱(16時来局)
②KT:38.2℃
③悪寒あり、発汗なし
④納得していない様子あり

□CASE 41の薬歴
#1 ツムラNo.27の服薬意欲を高める
  S) 検査で陰性だからタミフルは出せないけど、インフルエンザに効果のある漢方をだしておくと
 O) 子供がインフルエンザ→納得していない様子(+)
    昼より発熱、16時来局
    KT:38.2℃、悪寒(+)、発汗(-)
 A) インフルエンザと思われる
    証は適、しっかり服用するように仕向ける必要あり
 P) タミフルと同等の効果が報告されている漢方薬です。
    発汗させることにより免疫力をあげ、早くなおしてくれます。
    今日はすぐに1包飲んでください。

□解説
 インフルエンザパニックを引き起こしている日本。検査で陰性の結果に納得がいかない患者がいる。「なんでタミフルをもらえないんだ」そういう空気が伝わってくる。なかにはドクターに頼み込んで出してもらって満足している患者もいる。異常だ。
 今回のケースは状況や症状を考えても間違いなくインフルエンザだろう。ドクターもそう思っているから麻黄湯を選択している。

 ここで2点補足をいれておく。
 ①タミフルの処方に際して、検査は必須項目ではない。はっきりいって医療費のムダにすぎない。しかしインフルエンザ恐怖症に陥ってしまった日本において、会社や学校といった世間がそれを許さない状況にあることは悲しい。
 ②迅速検査キットにて陽性と判断できるにはある程度のウイルス量が必要といわれている。発熱から12時間以上経過すると90%~100%の確率で陽性と判断できるとのデータもある。日本では陽性患者の約3割が陰性に、CDCは約6割と報告している。つまり陽性なら信頼できるが陰性なら信頼できないということになる。検査は必要ないといわれるわけだ。

 今回のケースに話を戻す。問題点は「患者に(インフルエンザ陰性もしくはタミフルをもらえないことに)納得をしていない様子がみられる」ことだ。せっかくきつい身体に鞭打って診てもらったのに、明日また違う病院に行くなんてことになったら・・・。
 麻黄湯の証でもあるし、しっかり飲んでもらえるように服薬支援を行っている。
 漢方製剤「麻黄湯」タミフル並み効果(2009年5月8日 読売新聞)

□考察
 検査で陽性→タミフル or リレンザ
 検査で陰性→麻黄湯
 というパターンが当薬局では増えている。まるで予選落ちのような感じで麻黄湯をもらいにくる患者には声を大にして言いたい。「麻黄湯はハズレじゃない」と。

 タミフルは問題が多い薬だ。メリットとデメリット、効果と副作用のバランスのとれた服薬支援をおこなっていきたいとCASE 39では書いたがこの薬だけは無理だ(リレンザにはそこまでの感情はない)。

 今回の新型インフルエンザの流行に際して、ノイラミニダーゼ阻害薬の役割は、季節性インフルエンザで周知されている発熱期間の短縮ではなく、重症化や死亡を防止することにある。

 厚生労働省のHPにある「新型インフルエンザ 診療ガイドライン(第1版)」には上記のように書かれている。確かにタミフルが最適な時間に投与されれば、重症化や死亡を防止することができるかもしれない。しかし実際には難しい。迅速検査キットになど頼っていればなおさらだ。診療ガイドラインの目論見通りにはならない。
 なぜなら、タミフルでは脳症などの重症化を防止できないからだ。

 タミフルは脳症になるのを予防しない。脳症になるのが恐いからタミフルを飲むというのは、まったくおかしい。脳症はサイトカインストームで起きていて、タミフルを服用する頃はサイトカインはすでにたくさん出ていてサイトカインストームを抑えるわけではありません。厚労省の研究班だった横田俊平氏(横浜市立大学医学部小児科教授)も脳症を防止しない、と言っています。(*1)

 タミフルは発熱期間を1日短縮させる。しかし脳症は予防しない。周囲への感染拡大防止を示すデータもない(中外製薬学術より)。さらには異常行動やタミフル脳症の問題。
 どうしても副作用中心の服薬支援しかできない。
 「麻黄湯は当たりですよ」

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*1:薬のチェックは命のチェック 36 [特集]インフルエンザはかぜ!

 

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2009年10月23日 (金)

トピナと腎結石

トピナをはじめて投薬した
この手の薬は慎重になる
O)情報は患者のフィルター情報だ

CASE 40

30歳男性 
他科受診:なし  併用薬:なし  副作用歴:なし
アルコール(-)  タバコ(-)  車の運転(+)

前回の処方
Rp1)デパケンR錠200mg 10T / 2x朝・夕食後

前回の薬歴
#1:デパケンR増量によるSEへの注意喚起
 S)Css=48mg/dLなのに、またてんかん発作(動作停止あり)
 O)身体が大きいから効き難いのかも
   Css≧50で有効とするデータもあるので増量と説明あり
   デパケンR 1600mg→2000mgへ増量
 A)デパケン増量による傾眠・高NH3血症
 P)眠気で困る、ボーっとなるようなら申し出るように

今回の処方
Rp2)デパケンR錠200mg 8T / 2x朝・夕食後
  3)トピナ錠50mg 1T / 1x夕食後

患者のコメント:「もう身体がきつくて・・・」

患者から得られた情報:
①脱力感やふらつきあり、眠気や意識がボーっとなるようなことはない
②仕事はデスクワーク中心で汗をかくようなことはない
③腎結石の既往歴あり
④サプリメントの摂取はない

□CASE 40薬歴
#2:トピナ初回服薬支援
  S) もう身体がきつくて・・、脱力感・ふらつき(+)
 O) デパケンRは1600mgに戻り、トピナが追加となる
   仕事:デスクワーク中心で汗をかくことなし
   腎結石の既往歴(+)
   サプリメント摂取(-)
 A) トピナ初回のため服薬支援
   特に腎結石素因(+)なので注意要
 P) トピナも脳神経の興奮を鎮めて発作を予防します。
   デパケン同様に眠気には注意が必要
   汗をかきにくくなったり、腎結石ができることがあるので、
   水分を十分に取って予防するようにしてください。

□解説
 2006年ガバペン、2007年トピナ、2008年ラミクタールと新しい抗てんかん薬が登場し、薬剤選択の幅は広がってきている。新しい抗てんかん薬は従来の抗てんかん薬に追加併用される。

 CASE 40はデパケン1剤でのコントロールを試みたが適わず、トピナが追加併用となった症例だ。トピナの「重要な基本的注意」を下記に示す。

 トピナ「重要な基本的注意」

1)腎・尿路結石があらわれることがあるので、結石を生じやすい患者に投与する場合には十分水分を摂取するよう指導すること。

2)代謝性アシドーシスがあらわれることがあるので、本剤投与中、特に長期投与時には、重炭酸イオン濃度測定等の検査を患者の状態に応じた適切な間隔で実施することが望ましい。

3)発汗減少があらわれることがあり、特に夏季に体温が上昇することがあるので、本剤投与中は体温の上昇に留意し、このような場合には高温環境下をできるだけ避けること。なお、あらかじめ水分を補給することにより症状が緩和される可能性がある。

4)体重減少を来すことがあるので、本剤投与中、特に長期投与時には、定期的に体重計測を実施するなど患者の状態を慎重に観察し、徴候が認められた場合には、適切な処置を行うこと。

5) 連用中における投与量の急激な減量ないし投与中止により、発作頻度が増加する可能性があるので、投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行うこと。なお、高齢者、虚弱者の場合は特に注意すること。

6)眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。

7) 本剤は血液透析により除去されるので、透析実施日は本剤の補充投与を考慮すること。

8)投与開始に先立ち、主な副作用について患者に説明し、異常が認められた場合には、速やかに主治医に連絡するよう指示すること。

 2)4)5)は初回に確認する必要はない。7)は関係なし。そこで1)3)6)を念頭におき、患者に質問を行い、O)情報を得る。腎結石の既往歴を確認したので、そこを重点的に服薬支援を行っている。

 また、トピナはCYP3A4の基質薬剤で、CYP3A4を誘導するセイヨウオトギリソウに注意する必要があるので、サプリメント摂取についても確認し、O)情報に加えている。

□考察
 トピナの投薬・服薬支援をはじめて行った。禁忌は過敏症で副作用歴(-)なら飲んでみないとわからないね、用法・用量NP、慎重投与該当なし、重要な基本的注意は8っつもあるの!それから併用注意と代謝という感じで添付文書を眺める。

 伝えることはいっぱいある。何を重点的に伝えるかは患者のリスクファクター次第となる。患者というフィルターを通して薬剤を観るわけだ。

 患者がどんなフィルターをどのくらい持っているか。それを質問にて確認する。O)情報を得ていく。ここでは、薬剤の知識とその状況を考慮した質問力が必要となる。今後は状況が変化していくことを確認または想定しながら、モニタリングしていく必要がある。

 フィルターはもともと「光の通過を制限する」のが役目であり、二枚のフィルターによって、光は完全にカットされていたにもかかわらず、あえて三枚目のフィルターを足すことによって、光は復活するのです。
 いったい、なぜでしょう? モノ的な思考では、この現象は決して理解することができません。
 これは、ようするに、光の「偏光状態」が、光というモノが単独でもっている客観的な性質ではなく、観測装置との関係によってしか決まらない、ということのなのです。
 偏光状態は光というモノの属性ではありません。偏光状態は光とフィルターの関係性によって決まるコト的な属性なのです。偏光状態は光の属性でもなく、フィルターの属性でもありません。観測装置(=フィルター)と観測対象(=光)の関係性なのです。(*1)

 服薬支援も同じだ。服薬支援も薬剤によって決まるものではない。薬剤と患者の関係性によって、はじめて意味のあるものになるのだから。

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*1:世界が変わる現代物理学(ちくま新書) 竹内薫 著

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2009年10月 9日 (金)

SOAP記載とSOAP思考

SOAPは記載方法ではない
思考法である
SOAP思考法についてもう一度考えてみた

参加セミナー
服薬ケア研究会 第47回例会《鹿児島》

日時:平成21年8月30日
場所:鹿児島市勤労者交流センター
講師:服薬ケア研究所所長 岡村祐聡先生

内容
 1、会頭による講義
 2、「 Pから考えるSOAP 」グループワーク

感想
 メインテーマは、クラスタリングという概念は分類とは違う、ということであった。分類するとプロブレムが抽出できない。ワークを通して、はっきりと理解できるようになる。
 私のもう1つの収穫は、改めてSOAPは記載方法ではなく「思考法」であることを再認識できたことだ。さらに言葉で説明できるようになった。SOAPへの認識の移り変わりを以下に示したい。

SOAPへの認識の移り変わり
【SOAP誤訳】
    S) 主観的情報
  O) 客観的情報
  A) 評価
  P) 計画

 この説明は最悪だ。何が主観で何が客観なのか。 Planを計画と訳したばかりに日本列島は誤解の嵐となる。

【SOAP記載】
  S) 主訴
  O) 所見
  A) SやOから考えたこと
  P) Aに基づき実行した服薬支援

 こうなると非常にクリアになる。さらにS)O)は患者の情報、A)P)は医療者側の情報と付け加えれば、何をどこに書けばよいかで迷うことはない。しかしまだ記載方法の域を出ていないようにも見える。

【SOAP思考】
  S) 薬剤師が焦点を当てた情報
  O) 必要な情報(A)を固めるために足りない情報)
  A) O)を質問できる時点ですでに想定されている
  P) ゆえに服薬支援ができる

 こうなると思考法以外の何者でもない。
 岡村先生いわく「この思考回路になれればあっという間にできる!」
 そもそも患者のほうから「主訴は○○です」といってくるわけではない。印象に残っているコメントがS)になるわけでもない。こちらがどこに焦点を当てて、それをS)と扱うかによる。そして、足りない情報O)を質問していく。この時点でA)が想定されていないと質問そのものができないわけだ。
 
 ここに薬剤師のレベルが関与する。レベルが低ければ必要な質問が投げかけられないからだ。
 患者がいくら心を開いても、肝腎の薬学知識がなければそこから先には進めない。逆に、薬学知識がいかに豊富でも、それを活かせる状況まで持っていけなければ意味はない。どうやら質問力をつけるには、薬学知識と患者対応技術の両輪が必要なようだ。

 SOAP思考をごく自然に使いこなせるならば、逆説的ではあるが、やはりSOAPは記載方法といえるのではないだろうか。だとすれば、最も大切なのは、やはり薬歴の中身なのだろう。

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