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2009年9月25日 (金)

ラミクタールによるSJS

新しいムードスタビライザー
ラミクタール
投薬時にSJSの注意を促すはじめての薬ではないだろうか?

CASE 38
  37歳女性
 他科受診:なし  併用薬:なし
 
  定期処方:
    Rp1)ジプレキサザイディス錠10mg 2T / 1x夕食後
    Rp2)ワイパックス錠0.5mg 3T / 3x毎食後
 今回より下記2剤追加 
  Rp3)ラミクタール錠25mg 1T / 1x夕食後(隔日) 
    Rp4)リボトリール錠0.5mg 1T / 1x夕食後 

 薬歴より:
   ①おそらく双極性障害にて治療中
   ②患者主訴はいつも幻聴、ここ数ヶ月はたいしたことない様子
   ③リーマス:かゆみの為、中止歴あり
   ④デパケン:合わない・ひどくなったと中止歴あり
 
 患者のコメント:最近、すごい幻聴におそわれる。
  
 患者より得られた情報: 新しい薬を試してみようとDrより説明があった
 

□CASE 38の薬歴
 ♯1 ラミクタールによるSJS
  S) 最近、すごい幻聴におそわれる
  O) ラミクタール・リボトリール追加
  A) SJSを意識した対応が必要
  P) 神経の過剰な興奮をおさえて幻聴を和らげる薬です。
    ラミクタールは体を慣らし、副作用を少なくするために隔日です。
    発疹と同時に熱や粘膜症状などが出たときはすぐに
   皮膚科や大きな病院を受診してください。

□解説
  定期処方からは統合失調症か双極性障害かはわからないが、リーマスやデパケンを過去に服用したことがあることやジプレキサは双極性障害で適応追加の申請を狙っていることから、双極性障害の患者と思われる。医師でもこのあたりの診断は難しいらしい。そもそも病名区分への疑問の声もある。そのような状況下で薬剤師が病名に振り回されることはナンセンスであろう。

 ムードスタビライザー(気分安定剤)の導入がうまくいかずにメジャートランキライザーのジプレキサで対応していたが、症状の悪化に伴いラミクタールを導入したものと思われる。ラミクタールは海外では双極性障害の治療薬としてその名が知られている。精神症状にかなりの効果があるようだが、治験時の副作用のために日本では導入が遅れていた。

 スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、この重篤副作用が治験時に3例確認された。バックボーンには高用量やデパケンとの併用があり、細かな用量設定の下に日の目を見たかたちだ。特に、投与初期の4~8週や増量期に注意が必要だ(SJSはアレルギー性の副作用と思っていたが、用量依存的に増えているところをみると全部がぜんぶアレルギー性のものではないようだ)。

 ちなみに精神症状にはラミクタールを25mgで十分効果があるとの評価もある。また、リボトリールの併用は保険対策の意味合いもあるかもしれない。

□考察
 このケースで特徴的なのは、最初(事前説明の段階)からSJSの注意を促している点だ。SJSの原因薬は、抗生剤やNSAIDs、抗てんかん薬、痛風治療薬、サルファ剤、消化性潰瘍薬と多岐にわたる。しかしながら、積極的にこちらから最初にアプローチすることは少ない。

 
 似たような重篤副作用疾患に中毒性表皮融解壊死症(TEN)がある。「フェニトインTEN事件」では、投薬時の説明義務違反はないが経過観察中の予兆の早期発見に努めるようにといった内容の判例が出ている(H14.9.11 東京高裁)。
 つまり、SJSやTENの説明がノンコンプライアンスを招くようなら、確率的に考えて経過観察に努めなさいということだ。

 しかし、ラミクタールには警告の欄にSJSの記載がある。これは今までの対応だけではダメだということを意味している。リウマトレックスやアラバの間質性肺炎も同様のケースといえるだろう。

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2009年9月18日 (金)

スタチン系と脱毛

スタチン系で脱毛
薬理作用からは推測しにくい副作用だ
コレステロールと脱毛は関係あるのか?

CASE 37

66歳女性 
他科受診:なし  併用薬:なし
既往歴:高血圧、脂質異常症、胃潰瘍、便秘症、不眠症

定期処方
Rp1)ディオバン錠80mg 1T / 1x朝食後
 2)リピトール錠5mg 1T・ガスターD錠20mg 1T / 1x夕食後
 3)セルベックスカプセル50mg 3P・マグラックス錠330mg 3T / 3x毎食後
 4)プルゼニド錠12mg 1T・デパス錠0.5mg 1T / 1x眠前

処方医よりTEL
 内容:シャンプーのときに脱毛があるようだ。薬は関係あるか?
 回答:リピトールにて報告(+)
    代替薬としてゼチーアを提案
 結果:リピトール錠5mg → ゼチーア錠10mg に変更となる

□CASE 37の薬歴
  #1 コレステロール低下剤による脱毛の可能性
  S) 最近、シャンプーのときに髪が抜けるので相談してみた。
    コレステロールの薬が原因かもしれないといわれた。
 O) リピトール(5)→ ゼチーア
 A) ゼチーアには脱毛の記載はないが、コレステロールの低下自体が
    原因なら、脱毛がつづく可能性あり
 P) 今回のゼチーアには脱毛の報告はなく、薬の作用も違いますが、
    脱毛がつづくようなら、中止して様子をみてください。

□解説
 脱毛のような副作用は、薬理作用から原因薬を推測することが難しい。そこで、まずは添付文書にあたることになる。

 ここで、便利なツールがIMSジャパンが無料で提供している検索サイトの「副作用サーチ」だ。副作用名と服用している薬を入力し検索をかける。リピトールのみに脱毛の記載があることが一瞬でわかる。

 次に代替薬を相談されることを想定し、同じスタチン系の薬剤であるメバロチン・リポバス・ローコール・リバロ・クレストールと別の作用機序のゼチーアを副作用サーチで同様に検索してみる。すると、メバロチン・リポバス・ローコール(・リピトール)には脱毛の記載があり、リバロ・クレストール・ゼチーアには記載がないことがわかる。

 リバロ・クレストールは比較的新しいスタチンであり、今後の添付文書の改定次第(副作用の集積次第)ではスタチン系共通の副作用となるかもしれないと考え、ゼチーアを提案するに至る。

 しかし、スタチン系で論じる以前にコレステロール低下自体と脱毛が関わっているのなら、ゼチーアもあり得ると考え指導を行っている。ちなみに、フィブラート系ではほとんどの薬で脱毛の記載があるようだ。

□考察
 副作用サーチは重宝しているツールだ。服用薬7剤の添付文書を引っ張り出して、と考えるとかなりの時間節約になっている。さらに、代替薬を考えるときなどには同種同効薬をまとめて検索することで導きやすくなる。

 スタチン系と脱毛、コレステロール低下剤と脱毛、すべて仮定である。しかし添付文書に記載がないからといって、その副作用がおこらないとは限らない。

 今回のケースでは、副作用サーチで検索しながら思考がまとまっていった感じがあった。私にとってこの検索エンジンは、さしずめ「思考のツール」といったところだろうか。

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*H26.8.11追記
現在、リバロにも「脱毛」の記載が添付文書にあります
クレストールにもいずれ追記になるかもしれませんね。

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2009年9月11日 (金)

日本医薬品情報学会(JASDI )2009

参加学会
第12回日本医薬品情報学会総会・学術大会 ~医療現場に根差した医薬品情報~
日時:平成21年7月18・19日
場所:九州大学医学部百年講堂

シンポジウム2 「医薬品情報学研究のビジョンを語る」

オーガナイザー:澤田 康文(東京大学大学院薬学系研究科)
座長:上村 直樹(富士見台調剤薬局)
         大谷 壽一(慶應義塾大学薬学部)

講演1:ワークショップから見えてきた医薬品情報学研究の不明確さ
         山田安彦(東京薬科大学薬学部 日本医薬品情報学会ビジョン委員会)

講演2:井関健が考える医薬品情報学 -医療現場の狭間から見えるもの-
         井関 健(北海道大学大学院薬学研究院)

講演3:宮崎長一郎が考える医薬品情報学
         宮崎長一郎((有)宮﨑薬局)

講演4:後藤伸之が考える医薬品情報学
         後藤 伸之(名城大学薬学部)

講演5:高中紘一郎が考える医薬品情報学
         高中紘一郎(新潟薬科大学薬学部)

講演6:岡野善郎が考える医薬品情報学 -医薬品情報の検索・提供・共有化サイクルの基盤整備-
         岡野 善郎(徳島文理大学薬学部)

講演7:駒田富佐夫が考える医薬品情報学 -医薬品情報学とは-
         駒田富佐夫(姫路獨協大学薬学部)

講演8:黒澤菜穂子が考える医薬品情報学 -日本から世界へ-
         黒澤菜穂子(北海道薬科大学薬学部)

講演9:ビジョン委員会における議論とこれまでの本学会学術大会のレビューの中から医薬品情報の研究を考える
        澤田 康文(東京大学大学院薬学系研究科)

「医薬品情報学の研究領域はなぜ不明確なのか?」を明らかにするために8名の(ご高名な)先生方より各人が考える「医薬品情報学(Drug Infomatics)」の発表があった。

1)Phamaceutical Careの実践のための情報学
2)研究テーマは医薬品開発の流れの中のどこにでも位置づけられる
3)学際領域の情報を統合させる医薬品適正使用の科学
4)様々な分野に対して情報の観点から串を通す横断的な学問

以上のような意見が印象的であった。
それは薬局薬剤師である自分にこそ必要な学問分野であるように感じたからだろう。

 医薬品情報学というとデータベースやシステムのような情報工学的なイメージやDI(Drug Infomation)的なイメージを想像しがちだ。しかしこの学会が目指しているものは、薬を中心としたモノ的なものではなく、「つながり」のあるコト的なものであるように感じた。

 ▼モノ 意味のネットワークの1つの「交差点」(=結節点)だけに着目したときに見える世界
 ▼コト 意味のネットワークの全体的な「つながり」こそが本質であることに気づいたときに見える世界
 モノは固定的で狭い思考法であり、コトは流動的で広い思考法なのです。
          
           (中略)

 絶対的かつモノ的な世界観においては、変換は必要ありません。唯一の正しい視点からの記述のみで話はおわりだからです。
 相対的かつコト的な世界観においては、変換こそが重要になってきます。さまざまな視点からの記述が同等の権利を主張し、個々の結果の間の翻訳がなければ、全体の整合性を保つことが不可能になります。
 現代科学、特に物理学の発展は、あらゆる意味で「モノからコトへ」という流れになっているのです。(*1)

 
 この流れは薬学でも起きている。DI的な情報サービスから医薬品情報学へ。つまり薬というモノ的なものではなく、患者や周囲の環境とのつながりによって決まるコト的なものへの対応が大切なのだろう。

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*1:世界が変わる現代物理学 (ちくま新書)

   著者:竹内 薫

 

 

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