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2009年8月28日 (金)

ウラリット-A・M散

キレートによる害
クエン酸とAlの同時服用は禁忌だ
しかし根本的な問題解決のためには

CASE 36
  59歳男性
 他科受診:なし  併用薬:なし
 SE歴:アロプリノールにて発疹
 
  処方:
    Rp1)イルベタン錠100mg 1T / 1x朝食後 
    Rp2)プロテカジン錠10mg 1T / 1x夕食後 
  Rp3)つくしA・M散 3.9g / 3x毎食後 
    Rp4)ウラリット錠 6T / 3x毎食後 ←今回より追加

 患者のコメント:尿酸が少し高いみたい。水分をしっかり取るように言われた。
  
 薬歴より得られた情報: 前回、腎結石でボルタレンサポ(50)の処方あり
 

□CASE 36の薬歴
 ♯1 ウラリット - A・M散
  S) 尿酸↑、水分をしっかり取るように指示あり
  O) 腎結石、尿酸↑よりウラリット追加
     A・M散服用中
  A) クエン酸 + Al → Al脳症・骨症
  P) ウラリットとA・M散は2時間以上あけるように

□解説
  キレートによる相互作用は吸収を阻害するものが多い。つまり薬の効果をしっかり確保するために服薬支援を行うことがほとんどである。

 しかし、ウラリット(クエン酸)によるキレートは吸収を促進するほうに働く。特に、AlとのキレートはAl脳症や骨症のリスクを高めるので、同時服用は禁忌と考えるべきである。
 

□考察
 クエン酸を含有する医薬品だけを気をつけておけばよいのか。クエン酸は多くの果物などにも含まれている。例えば、レモンの酸っぱさはビタミンCではなくクエン酸によるものだ。

 根本的な解決はAlを含む胃腸薬を漫然と長期服用しないことではないだろうか。現にAl含有のOTC胃腸薬には「長期連用しないこと」の但書きがある。医療用医薬品においても同様の注意が必要なのは当然だ。

 そもそも今回のケースではA・M散は必須薬ではない。患者によほどしっかりした薬識がなければ、どれが必須薬なのかなんてことはわかるはずがない。薬剤師はもっと踏み込んだ対応をとって然るべきなのだ。

 必須薬。そうではない薬。さらにはサプリメントまで。患者にとって、価値のフラット化が進行している。漫然処方や薬付けが横行している日本において、薬剤師はもっと声を上げていく必要があると考える。
 

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2009年8月21日 (金)

ネオーラル-スタチン

分布に関与する相互作用
実際に起こらない蛋白結合を学ぶより
併用禁忌になっているケースをおさえておきたい

CASE 35

  63歳女性

 
  前回の処方:
    Rp1) クレストール錠2.5mg 1T / 1x夕食後 28日分

 今回の処方:
    Rp2) リピトール錠5mg 1T / 1x夕食後 28日分
  

 患者のコメント:皮膚科のDrから乾癬でネオーラルを使いたいから、
             コレステロールの薬をリピトールに変えてもらうようにと
  

 薬剤師とのやりとりで得られた情報: GFJの飲用習慣なし

□CASE 35の薬歴
 ♯1 ネオーラル - リピトールによる横紋筋融解症
  S) 乾癬でネオーラルを使用予定
     皮膚科Drよりリピトールへの変更依頼あり
  O) クレストール(2.5)→リピトール(5)
         GFJ(-)
  A) ネオーラルによるスタチンの肝への取り込み阻害→[C]↑→横紋筋融解症
  P) 手足に力が入らない・脱力感・尿の色がコーラ色になる 
                               →中止・水分をたくさん摂って、すぐ受診

□解説
  免疫抑制剤のネオーラルとスタチンのクレストールとリバロは併用禁忌となっている。その他のスタチン、メバロチン・リポバス・ローコール・リピトールにおいては併用注意として扱われている。そのため皮膚科のDrはリピトールへの変更を指示してきたと思われる。

 従来、ネオーラルとスタチンの相互作用の原因は、機序不明やネオーラルのCYP3A4阻害作用によるとされていた。しかし、最も新しいスタチンであるクレストールには「シクロスポリンにより本剤の肝への取り込みが阻害されるためと考えられる」との記載があり、これがネオーラルとスタチンの相互作用の共通の機序との見方が有力である。

 リピトールにおいても血中濃度の増加は避けられないだろうと考え、服薬支援を行っている。
 

□考察
 今回の相互作用はADMEのD、分布に関与するものである。肝細胞の血液側膜には有機アニオントランスポーター(OATP1B1、OATP-C、OATP2)が存在する。このOATP1B1が血液から肝細胞へのスタチンの取り込み(分布)を行っている。ネオーラルはOATP1B1阻害剤というわけだ。

 
シクロスポリンとスタチン併用時のAUCの増加率を下記に示す(*1)。
   スタチン   AUC増加率
   メバロチン   5-12倍
   リポバス   3-8倍
   ローコール    3倍
   リピトール   6-9倍
   リバロ      5倍
   クレストール  7倍

 クレストールとリバロだけが併用禁忌というのは疑問に感じる数字だ。

 乾癬が軽症ならネオーラルの内服は3ヶ月程度というのが一般的だそうだ。その程度ならスタチンは休薬して併用のリスクを回避したほうが良かったのかもしれない。

*1:Bull. Natl. Inst. Health Sci., 123, 37-40 (2005)

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*追記:ネオーラルとスタチンを併用するなら、注意しながら、ローコールがおすすめ。

 
 

 

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2009年8月14日 (金)

血圧不安症

言葉には力が必要だ
力のない言葉が届くはずは
ない
知識や人間性といったバックボーンこそが大事なのだ

CASE 34

  76歳女性

  他科受診:なし  併用薬:なし

 
 
  定期処方:
    Rp1)リポバス錠5mg 1T・アムロジン錠2.5mg 1T / 1x夕食後 
  Rp2)ミカルディス錠20mg 1T ・バイアスピリン錠100mg 1T / 1x朝食後
  Rp3)マイスリー錠5mg 1T / 1x寝る前 
  Rp4)ベネット錠17.5mg 1T / 1x起床時(土曜日)

 前回(6/29)の薬歴
 ♯1 血圧への不安と血圧測定回数
  S) BP160になることがある。
    手持ちのアダラートカプセル(5)で対応するように指示(+)
  O) BP手帳→4~5回/日測定
  A) 不安→BPの測りすぎ→BP↑
  P) 心配のしすぎが原因で血圧が上がることがある。
    血圧は常に変動するものなので、朝と寝る前の2回の測定
    にしておきましょう。
  R) 納得はしていない様子
 
 7/13来局時の患者のコメント:
 「朝と昼と寝る前、あと気になるときに(血圧を)測っている。
  血圧手帳も3回書く欄があるし・・・
  血圧はやっぱり高くなることがあるみたい・・・」

 
□CASE 34の薬歴
 ♯1 血圧測定を1日2回にしてもらう
  S) 朝・昼・寝る前・気になる時に血圧測定(+)、BP↑
  O) BP手帳→3回/日記入欄があることも影響あり
  A) 血圧不安症への理解が必要
  P) 血圧不安症について別紙で紹介。
     血圧測定は朝・寝る前の2回が理想的→2回/日記入Typeの手帳を提供。
     血圧は変動するもの、Drが処方しやすいように測定するものと考えましょう。
  R) 私はまさしくこれだわ!

□解説
  血圧が気になって何度も測定する。そのことがストレスとなって血圧が上がってしまう。あるいは、たまたま血圧が高いことに驚き、不安が増し、血圧がさらに上がる。「血圧不安症」と呼ばれているそうだ。この概念は容易に理解できるが言葉の存在は知らなかった。

 6/29の対応は「血圧不安症」という概念を知らない時点での対応だ。構造的アプローチ(CASE 32参照)で考えると、不安の原因は‘期待そのものが間違っている’ことにある。血圧は変動するものだ。心配のしすぎが原因ですよ。アプローチは間違えてなかった。しかし届かなかった。そこで患者を説得できるツールを探す。7/13の対応では、そのツール「血圧不安症」がヒットした形となった(8月には笑顔で来局された)。
 

□考察
 6/29の患者が納得していないのは手に取るようにわかった。構造的アプローチでプランニングはできたが、私の言葉には力が無かった。「血圧不安症」という知識がないのだから当然といえば当然だ。人を説得する鍵は情報にあるのだから(CASE 28参照)。

 
 勝負はボールがないところで決まる(*1)

 サッカーでは有名な台詞だ。患者対応も同じだろう。

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*1:日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)
   著者:湯浅健二

 

 

 
 

 

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