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2009年7月31日 (金)

服薬支援と慣性の力

‘慣性’
人間の心理・行動にも働く物性
この力をうまく利用したい

CASE 33
  72歳女性
  他科受診:なし  併用薬:なし
 
  定期処方:
    Rp1)ニューロタン錠50mg 1T・バイアスピリン錠100mg 1T / 1x朝食後
   Rp2)ムコスタ錠100mg 3T / 3x毎食後
   Rp3)プロテカジン錠10mg 1T / 1x夕食後
    Rp4)スチックゼノールA 40mg 1本

 追加処方:
  Rp5)ロキソニンテープ50mg  28枚

 
  
 患者のコメント:首から肩がこってつらくて。塗り薬はつけているけど。

 薬歴より得られた情報:モーラステープにてかぶれ(副作用歴)

  
 薬剤師とのやりとりで得られた情報:
 ① かぶれやすい体質のため、スチックゼノールを使用しているが効かない
 ② 飲み薬は増やしたくない

□CASE 33の薬歴
 ♯1 ロキソニンテープによるかぶれの回避
  S) 首~肩こりでつらい。塗り薬は効かない。
  O) ロキソニンテープ追加(内服はふやしたくない)
     かぶれやすい体質(モーラステープでかぶれ歴あり)
     汗ばむ季節
  A) かぶれ回避の方法が必要
  P) 1日1回Typeだが、皮膚を休める時間をつくること
     スチックゼノールもうまく利用してみては? と提案
  R) 3日続けてシップを貼るとかぶれるので、
     (ロキソニンテープとスチックゼノール)を2日交互にしてみます

□解説
 患者の主訴(S)により、ロキソニンテープが処方となる。テープ剤でかぶれるリスクファクター(O)より、回避が必要と考え(A)、服薬支援を行う(P)。

 当初、支援内容(P)としては、「貼りっぱなしにせず、かぶれそうならスチックゼノールに切り替えるように」といったものを考えていた。ロキソニンテープの説明と提案をしたあとに「あなたはどうしますか」の質問に切り替えてみたところ、より具体的なリアクション(R)を得ることができた。
 

□考察
 かぶれやすい体質のかたにテープ剤を投薬する。このよく遭遇するパターンで‘慣性の力’が引き出せるかを意識して患者対応を行ってみた(服薬ケア理論の最前線の感想を参照)。

 こちらがアドバイスしたいことを、相手に自分から言わせるような質問を投げる。つまり、服薬支援の流れを急停止させてみる。ABCDEFの流れをABCDEで急停止させ、F'を引き出すことを期待するわけだ。

 
 今回のF'はベストなものではないかもしれないが、‘慣性’という物性は服薬支援でも生じていることが確認できた。この力をコンプライアンスや副作用回避にうまくつなげていくことが今後の課題だ。

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2009年7月24日 (金)

服薬ケア理論の最前線

参加セミナー
服薬ケアセミナー「服薬ケア理論の最前線」

日時:平成21年6月28日
場所:京都 機関紙会館
講師:服薬ケア研究所所長 岡村祐聡先生

内容
 1、これからの薬剤師のあるべき姿
 2、いい薬剤師となるための条件
 3、服薬ケアコミュニケーションの最前線
 4、「今度こそモノにする薬剤師のPOS」解説

解釈
 薬剤師が患者対応をするうえで前提となることが2点ある。人の心を理解することと自らの人間性を高めることだ。人間性を高めることは一朝一夕にはいかないが、患者に行動変容をおこすための強力なバックボーンであることは間違いない。
 次に、患者対応には3つのステップがある。
ステップ1:心に穴をあける
 心に穴をあけるとは、聞いてもらえる状態を作ることである。そのためには笑顔や誉める、認めることしかない。しかし、これらには訓練が必要であることはあまり認識されていない。
ステップ2:頭の中をPOSにする
 常にプロブレムを想定し、足りない情報を意識しておくことが質問力アップにつながる。さらに、質問力には2つのタイプがあり、様々な手法があることが興味深い。
ステップ3:動機付け
 人の行動は‘動機’と‘抵抗感’のバランスで決まる。例えば、コンプライアンスの悪い患者はいつも「飲み忘れる理由」を探している。飲みたくないという感情に対してアプローチしないコンプライアンス改善策は何も功を奏しない。その服薬指導は効かない。感情へのアプローチ、つまり動機付けの手法としては、感情の明確化と価値観の整理が有効である。また、不安には‘構造的アプローチ’でプランニングするとよい(CASE 32参照)。

感想
 行動変容を期待する質問に‘本当はこちらからアドバイスしたいことを、相手に自分から言わせるような質問’がある。つまり、最後に一番大事なことは患者に言わせるわけだ。具体的には「あなたはどうしたいですか」などの質問になる。これは非常におもしろい。

 ある物体が一定方向に動いているとき、それを急に停止させようとすると、その進行方向へ惰性を生じる。これを利用すると、実際に存在しない力を生ずることができる。ABCDEFと展開しうるものをABCDEで、急停止させると、そのあとに、FのかわりにF'というものが生まれる。このF'はFに対して1つの発見であり、さらにそのさきにF''F'''も考えられる。(*1)

 動機付けを強力にするだけでなく、さらによい解決方法が得られるかもしれない。少なくとも患者の生活に沿ったものが期待できるだろう。
 
 薬剤師はしゃべりすぎてはいけない。芭蕉も“言いおおせて何かある”といっている。慣性の力が患者によりよい行動変容をもたらすかもしれない。

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*1:ライフワークの思想 外山滋比古著(ちくま文庫)

服薬ケア研究会例会案内
1、第46回例会開催■《東京》日本薬剤師研修センター認定 4単位
  テーマ:「SOAP遊び」
  日時:平成21年8月2日(日) 10:00~17:00
  場所:エーザイ東京CO 飯田橋ファーストビル2階

2、第47回例会開催■《鹿児島》日本薬剤師研修センター認定 3単位
  テーマ:薬歴を書くのが信じられないくらい早くなる方法
  日時:平成21年8月30日(日) 10:00~16:00
  場所:鹿児島市勤労者交流センター(よかセンター) 第1会議室

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2009年7月17日 (金)

感情の明確化と構造的アプローチ

患者の質問の裏にある感情
まず、感情を明確化する
次に、どのようにアプローチするかを考える

CASE 32
  57歳女性
  他科受診:なし  併用薬:なし
 
  処方:
    Rp1)ニューロタン錠50mg 1T・クレストール錠2.5mg 1T / 1x朝食後  28日分
  Rp2)ロキソニン錠60mg 1T / 1x頭痛時 10回分
  Rp2)は今回が初めて

 患者のコメント:これ(ロキソニン)は、ナロンエースより強いの?
         弱いのでいいんだけど・・・
  
 薬剤師とのやりとりで得られた情報:
 ① ナロンエースを2T/回のところ1T/回で服用している
 ② Drに体調を聞かれ、頭痛があると答えると(ロキソニンを)処方された
 ③ 痛み止めを飲みすぎるとボケると聞いたことがある

□CASE 32の薬歴
 ♯1 痛み止めへの不安
  S) これ(ロキソニン)は、ナロンエースより強いの?
     弱いのでいいんだけど・・・
  O) 痛み止めへの不安→飲みすぎるとボケると聞いた
     ナロンエースも2T/回のところ1T/回で服用中
  A) ボケないことがわかれば不安は解消する
  P) 痛み止めを飲みすぎてボケることはない。
     主な副作用に潰瘍やむくみがあるが、
     用法・用量を守って服用すればリスクは低い。
  R) 安心しました~

□解説
 「これ(ロキソニン)は、ナロンエースより強いの?弱いのでいいんだけど・・・(S)」からは明らかに患者の‘不安’が読み取れる。ここでのポイントは感情への着目と直接的な回答をしないことだ(CASE 5参照)。ロキソニンとナロンエースのどちらが強いかは問題ではない。なぜその質問がでてくるかが問題だ。
 そこで感情の明確化を試みるわけだが、これがうまくいかない。こちらが‘感情の明確化’を質問しても、答えは‘事柄’ばかりだ。「ナロンエースも1T/回で飲んでいる」、「痛み止めをこっちが頼んだわけではないのに」といった具合だ。答えが出るまで質問を続け、感情を明確化する(O)。
 次に‘不安’に対してアプローチを行う。‘不安’とは「期待通りにいかないのではないかと思うときの感情」である。つまり患者は、痛み止めには副作用があって飲みすぎるとボケると思っているので‘不安’を抱いているわけだ。‘飲みすぎるとボケる’を‘飲みすぎてもボケない’に変えればこの‘不安’は解消する(A→P)。
 

□考察
 感情へのアプローチとして2つのポイントがある。1つが感情の明確化。もう1つが現在練習中の‘構造的アプローチ’だ。これは、服薬ケア研究所の岡村祐聡先生考案の手法である。
 6/28京都・7/5東京で行われた服薬ケアセミナー「服薬ケア理論の最前線」の岡村先生の講演内容を一部を記す。

 人間の基本感情には2つのパラメータがある。「どんな期待があって」「どうなると思っているか」これが不安という感情の基本構造といえる。どちらかのパラメータへアプローチし、患者が納得すれば不安は解消する。納得するかは相手次第、説得できるかは薬剤師次第。だから薬剤師の‘徳’や‘人間性’が大事になってくる。
 しかし少なくとも‘構造的アプローチ’でプランニングができる。

 行動変容をもたらすための服薬支援。そのためのプランニング。
サッカーでいうならば、ゴール(行動変容)のためのシュート(服薬支援)。そのために考えて走る(プランニング)。シュートが入るかどうかはテクニックや偶然性のファクターもあるので、シュートとゴールは別物。患者が納得するとは限らない。しかし少なくともプランニングできる。闇雲に走るのとは違う。

 ‘構造的アプローチ’この概念が使いこなせれば、患者対応のレベルが上がるだけでなく、薬歴への記載も早くなってくるだろう。
 

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2009年7月10日 (金)

クラビットへの戸惑い

7月7日に高用量のクラビットが発売がされた
腎不全の患者でも初回500mg
尿細管へのダメージが心配だ

CASE 31

  70歳男性

  他科受診:泌尿器科
 
 
  併用薬:ラシックス錠40mg 1T・ザイロリック錠100mg 1T・アーガメイトゼリー 25g/1x朝食後

 他科受診:整形外科  
  併用薬:シグマート錠5mg 2T/2x、バイアスピリン錠100mg 1T・アマリール錠1mg 1T・ガスターD錠10mg 1T/1x、モーラステープ

 
  処方(初来局):
    Rp1)クラビット錠100mg 3T・ムコソルバン錠 3T・アストミン錠 3T / 3x毎食後
  Rp2)テオドール錠 2T / 2x朝・夕食後
  Rp1)2) x 5日分

 
 患者のコメント:代理(娘)ゼコゼコいってて、きつそう。
  

 薬剤師とのやりとりで得られた情報:
 ① お薬手帳より、他科受診・併用薬
 ② 腎機能(S-Cr:2.6、BUN:48)

 疑義照会:
 (内容)S-Cr:2.6のため、クラビット 1T/day が適量
 (回答)症状がひどいので、2T/2xでいこう
  
  クラビット錠100mg 2T / 2x朝・夕食後 へ変更となる

□CASE 31の薬歴
 ♯1 クラビットによる低血糖
  S) ゼコゼコいってて、きつそう
  O) クラビット 200mg/day、S-Cr:2.6でやや過量
     DM(+)アマリール服用中
  A) クラビットによる低血糖の恐れ
  P) いつもの薬と併用NP
     ただし、低血糖には十分に注意を

□解説
  年齢とアーガメイトゼリー服用の2点から、クラビットは過量と判断できる。さらに、S-Crの情報からも間違いない。疑義照会の内容はいつものように欄外に必要事項を記載する。
 腎不全のためクラビットはやや過量である、アマリールにてDM治療中であるといったリスクファクター(O)から、キノロンによる低血糖を心配して(A)、服薬支援(P)を行っている。

 
 クラビット錠100mgの腎不全時の用量(*1)
 40≦Ccr<70 1回100mg 12時間間隔
 20≦Ccr<40 1回100mg 24時間間隔
  Ccr<20       1回100mg 48時間間隔

 

 
 クラビット錠100mgの添付文書
  重大な副作用
  13. 低血糖
   頻度不明注1)
   **[糖尿病患者 (特にスルホニルウレア系薬剤やインスリン製剤等を投与している患者)、腎機能障害患者であらわれやすい]

□考察
 7月7日、クラビット錠500mg・250mgが発売された。キノロンは用量依存性の抗菌剤であり、PK/PD理論的にも1日1回高用量が優れているのは理解できる。しかし、用量に違和感を感じる。MRによる拡宣も‘効果’と‘耐性菌’の話ばかりで、用量についての納得のいく説明はない。

 <用法・用量に関連する使用上の注意>
5.腎機能低下患者では高い血中濃度が持続するので、下記の用法・用量を目安として、必要に応じて投与量を減じ、投与間隔をあけて投与することが望ましい。
 20≦Ccr<50 初日500mgを1回、2回目以降250mgを1日1回投与する。
  Ccr<20       初日500mgを1回、3回目以降250mgを2日1回投与する。

 1回100mgを24時間・48時間間隔で投与していた患者に、いきなり欧米なみの500mg。やはり今までの感覚とは合わない。CASE 31ではDM治療中だったので、クラビットによる低血糖に焦点を当てているが、腎臓への影響も心配だ。クラビットは腎不全患者の尿細管に相当なダメージを与える。このS-Crなら100mg1Tで十分、そんな感覚だった。

 キノロンで最も安全だったクラビット。高用量化後は疑義照会もできない。
「むくみ」、「尿量の減少」、「倦怠感」、「食欲不振」、「吐き気・嘔吐」といった症状に注意していくしかないだろう。

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*1:腎機能別薬剤使用マニュアル改訂2版

 

 

 
 

 

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