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2009年6月19日 (金)

ガスターと腎機能

齋藤孝先生が考案したコンセプト‘質問力’
この能力は、薬局薬剤師の力を発揮するためには必須だ

CASE 29

  70歳男性

  既往歴:脂質異常症、胃潰瘍、腰痛症

  他科受診:なし  併用薬:なし

 
  定期の処方:
    Rp1)リピトール錠5mg 1T / 1x朝食後
  Rp2)ガスターD錠20mg 2T / 2x朝・夕食後
  Rp3)アリナミンF錠25mg 3T / 3x毎食後
  Rp1)~3) 21TD

 
 患者のコメント:体調は変わりないよ。薬もいつも通りでしょ。

  
 薬剤師とのやりとりで得られた情報:
 ① S-Cr 1.5、BUN 22
 ② 塩分・腎機能は以前より指摘を受けていた
 ③ 認知症様症状なし

 薬歴から得られた情報:
 ① BW 65kg
  ② ガスター40mg/dayは平成10年より継続中

□CASE 29の薬歴
 ♯1 腎機能低下によるガスター蓄積
  S) 体調NP、せん妄(-)
  O) 以前より塩分・腎機能低下の指摘(+)
     S-Cr 1.5、BUN 22、BW 65kg → CLcr 40
         ガスター40mg/day(H10~現在)
  A) 30<CLcr<60 ではガスター20mg/dayが適量
     蓄積によるせん妄などの副作用のリスク(+)
  P) 患者に対しては塩分指導(塩分十ヶ条提供)
    トレースレポート提出

 トレースレポート内容:
 ①CLcr 40なのでガスターは過量であり、蓄積による副作用の恐れがある
 ②代替案として、ガスターD錠 20mg/dayへ減量 or 肝排泄のプロテカジン を提案

□解説
 CASE29の患者の薬歴は11年の歴史がある。しかし、内容は非常に薄い。処方変更がほとんどなく、コンプライアンス良好。薬歴の内容からは、いわゆる‘とっかかり’が見出せない。そこで、処方薬と基本情報から新たな視点でアプローチを試みる。

 ‘高用量のガスター’+‘高齢者’→‘腎排泄型薬剤の蓄積’といった仮説を立てる。この仮説に必要な情報を患者にインタビューしていく。ガスターの蓄積による認知症様症状などのせん妄は出ていないが、腎機能の低下があるため、そのリスクは高い。

 しかし、ガスターの服用期間と副作用の機序からすぐに副作用が現れることは考えにくい。そこで、患者に不安を与える疑義照会ではなく、トレースレポートによるDrへの情報提供を行うことにした。

□考察
 「お変わりありませんか」この質問は具体的でもなく、本質的でもない。患者は「(あなたに話すほどの)変わりはありません」と答えるだけだろう。つまり、具体的かつ本質的な質問を意識しておく必要がある。

 ‘質問力’があれば、処方変更はほとんどなくとも、薬歴は充実する。今回のCASEももっと早く対応できていたはずだ。勉強不足は‘質問力’のなさを決定的なものにする。70歳ならばS-Crが1.0以上ならeGFRも60以下であり、ガスター40mg/dayは明らかに過量である。

 高齢者の物忘れの原因は、漫然と投薬しているそのガスターのせいかもしれない。

 質問は充分練って作らなければならない。いくつか考えた上で取捨選択して選んでいく。あるいは1つの質問をブラッシュアップさせていく。これが練るという作業だ。質問自体で後の作業が変わってくる。

 

 答えは必ずしも深く練る必要はないが、質問の方はよく練っておかないと、その後のパフォーマンスや結果が大きく変わってしまう。質問は思いつくものではなく、練り上げるものと思うのが上達の近道である(*1)

 滑走路がなければ飛行機は離陸できない。‘質問力’は薬剤師が薬学的知識を発揮するために必要な滑走路といえるだろう。

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*1:質問力  話し上手はここがちがう (ちくま文庫)

   著者:齋藤孝 

 
 

 

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