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2009年4月24日 (金)

チアジド系利尿薬

古くて新しい薬
チアジド系利尿薬(以下、チアジド系)
合剤プロモーションの影響か、処方機会が増えている

CASE 23
  71歳女性
  既往歴:高血圧・脂質異常症・便秘症・不眠症
  他科受診:なし  併用薬:なし

 定期処方:
    Rp1)ノルバスク錠5mg 1T・ミカルディス錠40mg・バファリン錠81mg 1T・リピトール錠5mg 1T / 1x朝食後
  Rp2)酸化マグネシウム 2g / 3x毎食後
  Rp3)デパス錠0.5mg 1T / 1x寝前
  Rp1)~3)28日分

 追加処方:
  Rp4)フルイトラン錠2mg 1T / 1x朝食後 22日分

 患者のコメント:昨日の夜、鼻血が止まらず、救急病院に行った。血圧が170まであがっていた。

  
 薬剤師とのやりとりで得られた情報:
 ① 救急病院では処置のみで、投薬なし。
 ② Drより血圧の薬を強くしておくと説明あり。
 ③ 来院時の血圧 BP150/74、自覚症状(-)
 ④ むくみなどは全くない。

 
 疑義照会:
  内容)降圧目的であれば、フルイトランは0.5mg~1mgでok。1mgでHCTZ12.5mgに相当。2mgでも効果は変わらず、代謝異常などのSEは増える。
  回答)Rp4)変更
     フルイトラン錠2mg 0.5T / 1x朝食後 となる

□CASE 23の薬歴
 ♯1 ミカルディス+フルイトランによる過降圧の恐れ
  S) 昨晩、BP170で鼻血止まらず、救急病院へ
  O) 併用薬(-)
     BP150/74、自覚症状(-)
         フルイトラン錠1mg追加
  A) ARB+チアジド系による過降圧
  P) いつもの薬と併用することにより血圧をしっかり下げる。
     BP下がりすぎ、ふらつきや気分不良→申し出るように。

  
□解説
 まず、フルイトランの用量について。これは疑義照会にて対応し、欄外に記載した。日本のチアジド系の用量は、利尿作用を目的に設定されており、降圧目的には用量が多い。利尿作用が発現する用量よりもはるかに低い用量で十分である。プレミネントで用いられているヒドロクロロチアジド(HCTZ)は12.5mgであり、フルイトランなら1mgに相当する。さらに、用量を上げても効果は変わらず、当然、電解質異常や代謝異常は増加する。

 次に、降圧効果について焦点を当て、薬歴を記載している。ARB+チアジド系の組み合わせは相乗効果が期待されており、切れ味が鋭い。チアジド系が体内のNa量を減少させることで、末梢血管抵抗を減らすだけでなく、RAS(レニン・アンジオテンシン系)の活性化によってARBの降圧効果の増強が期待されるからだ。特に、高齢者においては注意を払うようにしている。

参考:プレミネント添付文書より
高齢者への投与
高齢者には、次の点に注意し、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。
(1)高齢者では一般に過度の降圧は好ましくないとされている(脳梗塞等が起こるおそれがある)。
(2)高齢者でのロサルタンカリウム単独投与における薬物動態試験で、ロサルタン及びカルボン酸体の血漿中濃度が非高齢者に比べて高くなることが認められている(非高齢者に比較してロサルタン及びカルボン酸体の血漿中濃度がそれぞれ約2 倍及び約1.3 倍に上昇)。
(3)高齢者では、急激な利尿は血漿量の減少を来し、脱水、低血圧等による立ちくらみ、めまい、失神等を起こすことがある。
(4)特に心疾患等で浮腫のある高齢者では急激な利尿は急速な血漿量の減少と血液濃縮を来し、脳梗塞等の血栓塞栓症を誘発するおそれがある。
(5)高齢者では低ナトリウム血症、低カリウム血症があらわれやすい。
(6)75 歳以上の高齢者に対する安全性は確立していない(使用経験がない)。

□考察
 チアジド系の遠位尿細管でのNaの再吸収量は7%程度であり、近位尿細管で働くループ系の25%に比べ少なく、利尿作用はかなり弱い。しかし、降圧効果はループ系よりも強い。循環血液量を減らさずに、どうやって末梢血管抵抗を減らしているのだろうか。仮説はあるが、降圧のメカニズムは未だに不明とされている。

 メカニズムは分からなくともエビデンスは豊富にある。効果と副作用を考慮した至適用量もはっきりしている。フルイトランに関しては1mg錠の発売の動きもあるようだ。こういう情報は処方元へしっかりフィードバックしていきたい。薬の情報がMR頼みでは、薬のプロとしては寂しい限りだ。

 チアジド系は古くて新しい薬剤の1つといえる。あえて歴史上の人物に例えるなら「宮本武蔵」がぴったりだと思う。経歴を残さず、生き方を残した人物。戦後の占領下にて語られなくなり、海外でブームとなって再び注目された人物。ARBと合剤になったチアジド系は、言うなれば太陽を背にした宮本武蔵。「小次郎、既に破れたり」

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2009年4月17日 (金)

地黄による胃障害

地黄による胃障害
それを回避するには、食後に服用すべきだろう。
保険請求上の問題で患者に不利益なんて。

CASE 22
  70歳女性
  既往歴:高血圧・脂質異常症・慢性胃炎・腰痛症・しもやけ
  他科受診:内科  併用薬:ローコール・ガストローム・プロテカジン・ディオバン
 他科受診:整形  併用薬:ハイペン・アルサ・ユベラ

 初来局、耳鼻科処方せん持参
 
    Rp1)ツムラ苓桂朮甘湯エキス顆粒 5g
     ツムラ四物湯エキス顆粒     5g   / 2x朝・夕食前
       

 患者のコメント:振り向いたりすると、フラッ~となる。
            もう3ヶ月もつづいていたので、頭が心配で・・
  
 薬剤師とのやりとりで得られた情報:
 ① CTなどの検査の結果、頭は異常なしだった
 ② 用法についてDrより具体的な指示なし。
 ③ 体質:胃弱・冷え性

□CASE 22の薬歴
 ♯1 地黄による胃障害
  S) 振り向いたりすると、フラッ~となる。3ヶ月間続いている。
  O) 検査→頭はNP、漢方にて対応。
     Drより用法の具体的指示(-)
     胃弱傾向(+)
  A) ツムラNo.39+No.71=連珠飲
     ツムラNo.71→地黄配合→胃障害
  P) ツムラNo.39→利水
     ツムラNo.71→血虚 セットでめまいによく効きますが、
    胃に負担がかかる生薬が入っているので食後に服用を。

  
□解説
 漢方薬において副作用に注意を払うべき生薬がいくつかある。甘草・麻黄・附子・大黄・芒硝・・・そして、今回の地黄。地黄は滋潤や補血に有用な生薬であるが、胃にきやすい。特に日本人は胃が弱く、地黄配合の漢方は食後服用を基本とすべきだろう。
 次に、ツムラ苓桂朮甘湯エキス顆粒とツムラ四物湯エキス顆粒の組み合わせについて。これは、江戸時代に日本で考えられた処方で「連珠飲」と呼ばれている。OTCにてタケダより「ルビーナ」という商品で販売もされている(*1)。ちなみに、ルビーナの用法も「食後すぐ」となっている。

 Q ) 漢方薬は食前または食後に服用するイメージがありますが、何故、ルビーナは食後すぐに服用するのですか?
 A ) 本品に配合されているジオウなどが胃腸障害を起こすこともあるため、食後服用としています。また、その場合(食後服用)の効果と安全性を臨床試験で確認しています。

□考察
 漢方薬は保険請求の関係上、食前または食間にて処方されることが多い。診察時に「食後に飲むように」と口頭にて指示されているケースにもよく遭遇する。

 地黄配合の方剤が型どおりに食前・食間で処方され、胃障害を引き起こす。痛み止めなら、「なるべく空腹時に服用してください」なんて説明する薬剤師はいないだろう。
 

 どんな世界にも本音と建前があるものだ。

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*1:タケダの漢方製剤ルビーナ http://rubina.jp/rubina/about.html

 

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2009年4月10日 (金)

半減期の長い睡眠薬の筋弛緩作用

BZ系睡眠薬はその用量によって作用が異なる。
いや、作用が増えていくと考えたほうがよいだろう。
潜在的な筋弛緩作用による影響を忘れてはならない。

CASE 21

  73歳男性
  既往歴:不眠症・便秘症・糖尿病・高血圧・脂質異常症
  他科受診:なし  併用薬:なし

  定期処方(前回Do):
    Rp1)ロヒプノール錠1mg 1T ・ハルシオン錠0.125 1T・アローゼン 1g / 1x寝前 
    Rp2)マグラックス錠330mg 3T/3x毎食後
    Rp3)グルコバイ錠50mg 3T/3x毎食前
  Rp4)ミカルディス錠20mg 1T・クレストール錠2.5mg 1T・アマリール錠1mg 0.5T / 1x朝食後

  Rp1)~4) 28日分

 娘さんが来局・娘から得られた情報:
 ① 夜はよく眠っているし、朝起きれないことはない。
 ② 毎日、20時には薬を飲んで寝て、翌朝9時くらいまで寝ている。
 ③ 日中よくふらつくし、ボッーとしている。杖がないと危ない。

 プロブレムリスト
 ♯1 グルコバイの飲み忘れ時の対応
 ♯2 低血糖時の対応(α-GI+SU剤)
 ♯3 マグラックス-クレストール(CASE 2参照)
 ♯4 ハルシオンの服用タイミング
 ♯5 ハルシオン・ロヒプノールの筋弛緩作用

□CASE 21の薬歴
 ♯6 ロヒプノールによる日中の転倒リスク
  S) 日中よくふらつくし、ボッーとしている。杖がないと危ない。
  O) ロヒプノール・ハルシオン毎日20時服用
     睡眠状況 20時→9時
     朝起きれないことはない
  A) ロヒプノールの筋弛緩作用による影響
  P) ロヒプノールの影響が考えられることを伝え、
     ロヒプノールを1/4~1/2減量してみるように提案。
     Drにも状況を伝えておきます(トレースレポート提出)。

  
□解説
 以前よりハルシオン・ロヒプノールを服用している患者。両剤とも筋弛緩作用が強い薬なので、夜中のトイレなどで、ふらつきに注意するようには指導していた(♯5)。今回、娘さんより情報を得て#6を立案するに至る。

 半減期から考えると、ハルシオンの翌日への影響は少ないと思われる。一方、ロヒプノールの半減期は7(~24)時間、つまり定常状態にあり、その血中濃度はわずかな日内変動しか示さなくなる(CASE 15参照)。ゆえに、ロヒプノールの筋弛緩作用が脱力感や筋力低下をもたらし、転倒リスクを高めていると考え、服薬支援ならびにトレースレポートの提出を行う。

□考察
 BZ系では用量によって発揮する作用が異なる。用量が増えていくと 「抗不安作用」<「筋弛緩・抗けいれん作用」<「睡眠作用」<「健忘作用」 といった作用を表す。
 
 「睡眠作用」を発揮している状態であれば、潜在的に「筋弛緩作用」も発揮していることになる。特に高齢者への投薬の際は、この視点は必要だろう。

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