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2009年3月 6日 (金)

薬剤性パーキソニズム

薬剤師の重要な仕事の1つに副作用の「判別」がある
そして、疑義照会、患者への対応
いずれを行うにも、副作用の概要を把握しておくことが肝要だ

CASE 18

  88歳男性(CASE17の患者)
  既往歴:高血圧、心房細動、前立腺がん
  他科受診:なし  併用薬:なし

 
  定期処方:
    Rp1)ミカルディス錠40mg 1T・バイアスピリン錠100mg 1T・ハーフジゴキシン錠0.125mg 1T・ラシックス錠20mg 1T/ 1x朝食後
   Rp2)エストラサイトカプセル156.7mg 2P・プリンペラン錠5mg 2T / 2x朝・夕食後

 患者のコメント:むくみは最近ないけど、よくこけてね。
                 さっきも病院行く途中にこけちゃってね。
 
  患者の様子:薬局入店よりチョコチョコ歩きで時間がかかる。
         以前から小刻み歩行の様子はあったがさらに時間がかかっている。

  
 薬歴・薬剤師とのやりとりで得られた情報:
  ① 手足の振るえ(-)、足のふらつき(+)
  ② エストラサイト・プリンペランを服用しだして3ヶ月くらい
  ③ プリンペランはエストラサイトの副作用予防にて服用中 

 疑義照会
  内容:プリンペランによるパーキソニズムと思われる。代替薬としてナウゼリンを提案する。
  回答:確かにパーキソニズムはある。ナウゼリンへ変更。

 処方変更 Rp2)→Rp3)へ
   Rp3)エストラサイトカプセル156.7mg 2P・ナウゼリン錠10mg 2T / 2x朝・夕食後

□CASE 18の薬歴
 ♯1 プリンペランによる薬剤性パーキソニズムへの対応
  S)最近よくこける。足のふらつき(+)手足の振るえ(-)
  O)プリンペランによる薬剤性パーキソニズム(プリンペラン服用3ヵ月)
    小刻み歩行悪化(+)
    プリンペラン→ナウゼリンへ変更
  A)純粋な薬剤性パーキソニズムとして症状改善まで2~3ヶ月は要する
    発症前パーキソニズムの可能性も高いか?
  P)お薬が原因だった場合は2~3ヶ月でよくなることが多い。
    お薬が原因でない場合も考えられるのでその時は
    またDrと相談していきましょう。
    どちらにしても、まず2~3ヶ月は転ばないように注意を。

  
□解説
 プリンペランによる薬剤性パーキソニズムを疑い、まず疑義照会を行う。当然、対策・代替薬を提案する必要がある。原因薬剤の中止が基本であるが、代替薬が必要ならばナウゼリンが使える。

 ナウゼリンは脳へ移行しにくいため、錐体外路症状は少ない(*1)

 次に、副作用の概要を抑えておく必要がある。この副作用は原因薬剤を中止しても回復までには2~3ヶ月を要する。さらに、元々あった軽いパーキンソン病を明白にした可能性もある。これを発症前パーキソニズムといい、頻度としては一番高い。

 以上のことを考慮(アセスメント)したうえで、服薬支援を行う。

 「お薬が原因かもしれないので変えときました」だけでは、薬剤師の信用を失うことにもなりかねない。
    

薬剤性パーキソニズム:副作用でパーキンソン病と同じような症状を示す病態
                 (パーキンソン病との違い→進行が早い、対称性etc.)

 

【初期症状】「手が震える」「動きが鈍くなる」「顔がひきつる」「手足がこわばる」 「歩幅が狭くなった」「表情が固くなったといわれる」

 

【好発時期】投与数日から数週間のうちに発症することが多い。90%の症例が20日以内で発症。 ドグマチール・プリンペランの場合、数週~数ヶ月と長いことが多く、まれに1年以上のこともある。

 

【原因薬剤】
1)抗精神病薬(D2R-B):発症頻度15~60%                         (臨床で問題となるのは15%くらい)
2)1)以外のD2R-B:ドグマチール・プリンペラン
3)テガフールをはじめとする抗がん剤:医薬品による白質脳症の結果として発症する。
4)バップフォー:構造式が抗精神病薬と類似している為。
5)その他

 

【臨床検査・画像所見・病理所見】
特異的検査所見はなく、臨床症状から判断することが重要

 

【副作用の判別方法:パーキンソン病との判別】
1)純粋に薬剤性パーキソニズムだけの患者。→投与中止で2~3ヶ月で改善(時に半年くらい)
2)偶然純粋にパーキンソン病が発症した患者。→投与を中止しても影響なし
3)今回薬剤により元々あった軽いパーキンソン病が明白となった患者。→投与中止により症状のある程度の改善は見られるが、抗パーキンソン病薬必要。
1)~3のどれかである

 

重篤副作用疾患別対応マニュアル(*2)より

□考察
 薬剤性パーキソニズムを考える上で、プリンペランとドグマチールのツー・トップは注意しておくべき薬剤といえる。

 D2Rとの親和性で考えてみる。セレネースの10に対してプリンペラン 667、ドグマチール 249と圧倒的だ。サッカーで言えば、クリスティアーノ・ロナウドとルーニーのツー・トップ、マンチェスター・ユナイテッドくらいのインパクトだ。特に、プリンペランは薬剤性パーキソニズムのバロンドールといってもいいだろう。

 そもそもプリンペランは必要な薬剤なのだろうか。代替薬も多数ある。漫然服用を続けている患者には、服用しておく必要があるのかを確認せずにはいられない。

 重篤副作用疾患別対応マニュアルによると、薬剤性パーキソニズムの「判別」方法は臨床症状のみだそうだ。そういう意味では薬剤師も医者と対等に判断しなければならない。少なくとも意見を言わなければならない。さらに注目すべきは、マニュアルにおいて、「判別」という言葉を用いているところだ。ここが「診断」となっていれば、医者の領分だ。しかし、「判別」ならば薬剤師の領分でもある。

 副作用の「判別」は薬剤師の重要な仕事のひとつになってきている。

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*1:ポケット医薬品集(2009年版) 

新たに重篤副作用のまとめが掲載されており、さらに活用できる1冊に仕上がっている。今回が最後とのことで残念。

*2:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構http://www.info.pmda.go.jp/juutoku/juutoku_index.html

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