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2009年3月13日 (金)

ベザトールによる横紋筋融解症

ベザトールによる横紋筋融解症を
腎排泄型の薬剤という体内動態的視点と
副作用の機序別分類という視点で考える

CASE 19

  53歳男性
  既往歴:高血圧、高トリグリセライド血症、CKD
  他科受診:なし  併用薬:なし

 
 前回の処方:
    Rp1)アダラートL錠10mg 2T / 2x朝・夕食後
  Rp2)テノーミン錠25mg 1T / 1x朝食後
  Rp3)ペルサンチン錠25mg 9T・エパデールカプセル300mg 3P / 3x毎食後

 今回の処方:
  Rp1)Do
  Rp4)テノーミン錠25mg 1T・ベザトールSR錠200mg 1T / 1x朝食後
  Rp5)ペルサンチン錠25mg 9T / 3x毎食後

  
 患者のコメント:
中性脂肪が下がらない。エパデールが効いてないみたいなので
       薬を変えようと言われた。
  

 薬剤師とのやりとりで得られた情報:
  ①TG:624
    ②S-Cr:1.7、BUN:25.9
    ③BW:56kg
    ④S-CrとBWよりCLcrを算出:41.6mL/min

 疑義照会
 (内容):S-Crでは禁忌ではなく、慎重投与だが、
      CLcrを算出すると減量か他剤を考慮したほうがよいと思われる
 (回答):禁忌でなければ、TGがかなり高いから出しておいて
 

□CASE 19の薬歴
 #1 ベザトールによる横紋筋融解症
  S) TGが下がらないので薬を変えることに 
  O) エパデール→ベザトールSR 200mg
     TG:624 
     S-Cr:1.7 BUN:25.9
     BW:56kg CLcr:41.6
  A) 50<CLcr<60においてベザトール200mg/日が適量
     CLcr:41.6なので横紋筋融解症のリスク大
  P) 四肢の脱力感やコーラ色の尿
     →中止・水分をたくさんとってすぐ受診

  
□解説
 ベザトールは腎排泄型の薬剤であり、禁忌と用法・用量は下記のようになっている。

禁忌(次の患者には投与しないこと)

 

3. 血清クレアチニン値が2.0mg/dL以上の患者
[横紋筋融解症があらわれやすい。]

 

用法及び用量

 

 通常,成人にはベザフィブラートとして1日400mgを2回に分けて朝夕食後に経口投与する。
 なお,腎機能障害を有する患者及び高齢者に対しては適宜減量すること。

 

用法及び用量に関連する使用上の注意

 

 本剤は主として腎臓を経て尿中に排泄されるので,腎機能障害のある患者への投与には十分注意する必要がある。投与にあたっては,下表の血清クレアチニン値に応じて減量すること。
 また,高齢者では,加齢により腎機能の低下を認める一方で,筋肉量の低下から血清クレアチニン値の上昇が軽微であるため,下表のクレアチニンクリアランスに応じた投与量の調節を行うこと。
 なお,投与量はクレアチニンクリアランスの実測値より設定することが望ましいが,患者の身体状況等を勘案し,実測することが困難である場合には,例えばクレアチニンクリアランスと高い相関性が得られる下記の安田の推定式を用いる等により,用量の設定を行うこと。

 

   男性:(176-年齢)×体重/(100×血清クレアチニン値)
   女性:(158-年齢)×体重/(100×血清クレアチニン値)

 

血清クレアチニン値(Scr):Scr≦1.5mg/dL
投与量:400mg/日(200mg×2)

 

クレアチニンクリアランス(Ccr):60mL/分≦Ccr
投与量:400mg/日(200mg×2)

 

血清クレアチニン値(Scr):1.5mg/dL<Scr<2.0mg/dL
投与量:200mg/日(200mg×1)

 

クレアチニンクリアランス(Ccr):50mL/分<Ccr<60mL/分
投与量:200mg/日(200mg×1)

  当然、疑義照会を行う。しかし、TGが624とかなり高く、今の状態が禁忌と明記になっていないために処方変更まで至らない。医師を説得できず、非常に残念ではあるが、実際に服用するのは患者である。ここは気を取り直して、副作用が重篤化しないような服薬支援を考えるしかない。

 疑義照会の内容は欄外に記した(疑義照会の扱いについては、CASE9参照。)。

 
 次にA)に注目してみる。ベザトールについて調べた情報「50<CLcr<60においてベザトール200mg/日」の記載がある。これはA)に記載で正しい。調べた薬の情報について、O)に記載しているケースをよく見かけるが、O)は患者の情報である。ベザトールが腎排泄型で用量調節が必要という情報は患者の情報ではない。その情報は判断を下すための根拠と考えれば、A)に書くべきであろう(服薬ケア研究会(H21.1.11)参照)。

 最後に、P)はより具体的な服薬支援を行うことにした。初期症状だけではなくその対応まで伝える。副作用の対処方法は「患者ケアのための薬学管理ハンドブック」(*1)が参考になる。

□考察
 どんぐり工房の菅野彊先生が考案する副作用機序別分類にて、このケースを考えてみる。ベザトールによる横紋筋融解症は黄信号の副作用、つまり筋毒性と考えられている。臓器毒性による副作用の場合は、初回から服薬支援をすることは少ない。しかし、それはあくまで適正用量の場合だ。

 実際、この副作用は服用開始から2年の間に発症することが多いが、2週間以内に50%も発症している。これには、ベザトールの用量と腎排泄型という特徴が関係しているのだろう。臓器毒性の副作用は服用期間だけでなく、服用量にも依存する。

 副作用のモニタリング期間を考えるうえで、副作用の機序別分類は非常に有効だ。必要な指導を必要な時期に的確に行える。しかし、各薬効群の特徴と副作用の概要をおさえておくことも重要と思われる。

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*1:患者ケアのための薬学管理ハンドブック―POSを用いた疾患別・標準ケア計画の実践

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副作用の初期症状だけでなく、対処方法までまとめて記載している一覧は使えます

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