ハイペンによる急性腎不全
話題に事欠かないNSAIDs
COX-2理論が実感できない例に急性腎不全がある
COX選択性より半減期に注目すべきだろう
CASE 20
78歳女性
既往歴:脳梗塞、高血圧、不眠症、ASO、OAB、緑内障、白内障
他科受診:眼科 併用薬:点眼のみ(キサラタン・チモプトール・カリーユニ)
定期処方
Rp1)ハルシオン錠0.125mg 1T・カルデナリン錠1mg / 1x眠前
Rp2)バファリン錠81mg 1T・ブロプレス錠4mg 1T・ベシケア錠5mg 1T / 1x朝食後
Rp3)アンプラーグ錠100mg 2T・ハイペン錠200mg 2T / 2x朝・夕食後
Rp1)~3) 14TD
今回の処方
Rp1) Do
Rp2)バファリン錠81mg 1T・ブロプレス錠8mg 1T・ベシケア錠5mg 1T / 1x朝食後
Rp3) Do
Rp1)~3) 14TD
Rp4)ラシックス錠20mg 1T / 1x朝食後
Rp4) 10TD
患者のコメント:時々、足がむくむ。むくむ時に(ラシックスを)飲むように言われた。
血圧の薬はDrから衣替えしておくと。
薬剤師とのやりとりで得られた情報:
①むくむ日とむくまない日がある。
②息切れ・動悸(-)だが、体のだるさ(+)
③ハイペンは腰が痛い時に頓用。1~2回/日
④腎臓を指摘されたことは一度もない
⑤BP160/95、頭痛・ふらつき・気分不良(-)
□CASE 20の薬歴
#1 ARB増量+利尿剤による過降圧
S) Drより血圧の薬を衣替えすると提案(+)
BP160/95、BP↑による自覚症状(-)
O) ブロプレス 4mg→8mg
むくみの為、ラシックス頓服処方
A) ARB増量+利尿剤→過降圧の恐れ
P) 血圧が下がり過ぎないか注意を
ふらつきや気分不良時は申し出て
#2 ハイペンによる急性腎不全
S) 足にむくみ(+)、むくむ日とむくまない日がある
むくむ日にラシックスを飲むように指示(+)
O) BP160/95、むくみ・体のだるさ(+)
ハイペンは腰痛時に頓用中 1~2回/日
A) ハイペン連用、2T/日にむくんでいるのでは?
ハイペンによる急性腎不全の恐れあり
P) 痛み止めでむくむことがあることを説明
痛みが大したことなければ、1T/日で様子を見るように
体重が2~3kg/week 増えるようなら早めに受診を
□解説
#1 に関しては CASE17を参照。
#2 はNSAIDsによる腎前性急性腎不全(腎臓の血流低下によって起こる急性腎不全)を考慮し、服薬支援に至っている。副作用の概要を下記に示す。
NSAIDsによる(腎前性)急性腎不全
(急性腎不全:腎臓の機能が短期間に低下すること)【初期症状】
「尿量が少なくなる」「ほとんど尿が出ない」「一時的に尿量が多くなる」「発疹」「むくみ」「体がだるい」【原因】
PG産生抑制により腎血管拡張系が低下し、A-Ⅱやノルエピネフリンなどの腎血管収縮系が優位になることにより腎動脈が収縮し腎血流量を減少させる。【リスク因子】
1)高齢者 2)基礎疾患に慢性腎不全 3)発熱・脱水・食事摂取量の減少【好発時期】
使用開始後、数日以内に起こることが多い。
副作用なく服用していても発熱、脱水、食事摂取量の減少、複数の医薬品の服用、誤って多量服用した場合などの危険因子が途中で加わることにより発症することある。*重篤副作用疾患別対応マニュアルより(*1)
尿量の確認を忘れているが、「むくみ」と「体のだるさ」は初期症状に該当する。さらに、「血圧上昇」も初期症状と捉えてよいだろう。体は血圧を上げて、腎臓の血流量を保とうとするわけだから。
ところで、#1では「BP160/95」はS)にて扱っているのに対して、#2ではO)である。これは#1つまり血圧の話題では主訴だが、#2の急性腎不全の話題では初期症状の1つ、情報の1つとして扱ったためである。しかし、忙しい日常において、S)かO)かなんていう話はどちらでもよい。ともに患者の情報に変わりはない。
本題に戻ると、次に、ハイペンの服用状況つまり服用量に注目している。そして、ハイペンを2T/日服用したときに症状が強く出ていると仮定し、服薬支援に至っている。ハイペンを1T/日で様子を見るように提案し、体重の測定を促す。体重は最も客観的な体液貯留の指標になるからだ。
□考察
NSAIDsによる急性腎不全をすべての患者に考慮しているわけではない。経験的には、女性がむくみやすいように感じる。特に、小柄なおばあちゃんだ。
そして、最も重要なファクターと感じるのはNSAIDsの半減期だ。この副作用はPG産生抑制が機序なので、青信号の副作用、薬理作用に関与する副作用である。つまり、PG産生抑制効果が強いほど、用量が多いほどリスクが高い。さらにCOX理論でいけば、COX-2選択性の高いものはリスクが低いはずである。
しかし、NSAIDsを使用しないときの急性腎不全の発症リスクを1とすると、ボルタレンでは3倍、モービックではなんと8倍にもなるというデータ(*2)がある。こうなるとCOX-2理論など机上の空論であり、COX選択性よりも半減期の長さの方が重要なファクターと言える。
潜在的に腎機能が低下している高齢者では、脱水などを引き金として、NSAIDs服用中に急性腎不全を発症というようなことは十分に考えられる。ハイペンやモービックといった(COX-2選択性だが)半減期の長いNSAIDsを服用している患者に対しては、胃障害よりも腎臓の方により注意を払うべきだろう。
*1:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 http://www.info.pmda.go.jp/juutoku/juutoku_index.html
*2:Huerta C,et al:Am J Kidney Dis 45:531-539,2005
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