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2009年2月13日 (金)

半減期の長い睡眠薬

半減期というパラメータを使える薬効群において、
半減期を考える上では血圧の薬も睡眠薬も変わりはない。
睡眠薬への抵抗感・罪悪感を減らせる説明へとつなげていきたい。

CASE 15

  25歳女性

  既往歴:不眠症
  他科受診:なし  併用薬:なし

 処方内容(今回が2回目):
 
    Rp1)ユーロジン錠1mg 1T / 1x寝前  21日分   

 患者のコメント: 「薬を飲めば眠れます」

  
 薬剤師とのやりとりで得られた情報:
 ① 薬なしで寝ようとトライして全く眠れずきつかった
 ② 持ちこし・ふらつきなどの副作用(-)
 ③ 服用した翌日は身体のきつさなどなくQOL↑

□CASE 15の薬歴
 ♯1 ユーロジンへの罪悪感を払拭する
  S) 薬を飲めば眠れます
  O) 薬なしで寝ようとトライ→全く眠れずきつい
     持ちこし・ふらつきなどのSE(-)
  A) 睡眠薬への罪悪感と薬識が問題
  P) 睡眠薬に対する罪悪感を感じていることを確認
      →感じる必要はなく、まず睡眠への不安を取り除くことが大切
     この薬は性格的に身体の中に薬を一定量入れておくことが必要で、
     毎日服用してはじめてしっかり効果を表すタイプであることを説明

  
□解説

 薬を飲めば眠れる。こうコメントする場合は、飲まないと眠れないと強く実感しているケースが少なくない。睡眠薬への強い依存の要因ともいえる。服用状況をぜひ把握しておきたい。

 日本人は特に睡眠薬への抵抗感や罪悪感を感じる人が多い。また、漠然とした副作用に対する不安を抱えていることもある。これらを気持ちを患者と一緒に確認することは問題解決への一歩となり得る。

  次にユーロジンのプロフィールとして、中時間作用型・t1/2=24hr・Tmax=5hr・筋弛緩作用(+)といったものがある。筋弛緩作用による副作用が出ていないことを確認のうえ(CASE 21参照)、t1/2の情報を利用する。t1/2=24hrということは、定常状態となり薬の真の効果を発揮するには4~5日要するということである。

 つまり確実な効果のためにはコンプライアンスが大事な薬なのだ。ゆえに、罪悪感を感じる必要は全くない。血圧の薬を毎日飲むこととさほど変わりはないのだ。

  では、血圧の薬のように一日中効果を示すなら一日中眠くなるのか。そうではない。理由を以下に示す。

半減期の長い睡眠薬投与でも、朝、目覚めることができる理由

  半減期の長い睡眠薬では、半減期が12時間以上のものから、80時間などと記載されているものもあるが、これらを連用すると血中濃度はわずかな日内変動しか示さないようになる。しかし、この事は、血中濃度に準じた眠気が一日中続くことを意味しない。
  睡眠薬の影響下で十分眠った後には、血中濃度がさほど降下しなくとも目覚めることができる理由は、脳にある強力な覚醒機構が発動するからである。脳の覚醒機構はそれ自体の作動原理を持っており、薬物の影響下の睡眠に対しても、覚醒機構を活性化することで自らの睡眠構造や日内リズムを保とうとする。(*1)

 ストレスや不安のような情動系が刺激しておこる覚醒と痛みや痒みといった知覚系が刺激しておこる覚醒がある。BZ系薬剤は情動系の刺激のみをブロックする。ゆえに日中は知覚系が覚醒させるわけだ。階段灯をイメージしてみる。2階の(情動系の)スイッチを切って消灯(睡眠)しても、1階の(知覚系の)スイッチで点灯(覚醒)させることができるわけだ。

□考察

 睡眠薬の安全性を伝えたいときにも血圧の薬を引き合いに出すことが多い。血圧の薬は仕方ないと受け入れ、他の薬効群の薬と比べるとコンプライアンスの良い患者が多いからだ。「血圧の薬と同じくらい安全なら大丈夫かしら」となってもらえれば、抵抗感・罪悪感も薄らぐのではないだろうか。結果として、離脱症状や反跳性不眠、依存に陥るケースも少なくなると思われる。

 パラメータからの視点。薬剤師ならではの視点を、もっと服薬支援に取り入れていきたい。

*1:PTM Vol 10、9(3) APR、1999

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コメント

血中濃度が定常状態なのに起きられる理由として、「脳にある強力な覚醒機構が発動するからである。」とありますが、これは確かなのでしょうか?
私は、ベンゾジアゼピン系薬は作用機序としてGABAA受容体を「増強」する作用しか持っておらず、直接開口することができないため、あくまで内因性のGABAの作用を強めているだけなので、体のGABA放出リズムに影響せず、GABA分泌が低下する朝にはちゃんと起きられるんじゃないかな...と思っていました。

投稿: OchemPchem | 2016年11月12日 (土) 17時15分

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