« 2009年1月 | トップページ | 2009年3月 »

2009年2月20日 (金)

ホクナリンテープのTmax

テープを貼るだけで症状が和らぐ。
喘息や薬を嫌がる子供をもつ親にとってはありがたい。
正しい知識が伴わないと実感できない薬かもしれない。

CASE 16

  3歳の女の子
  既往歴:なし 体重:14kg
  他科受診:なし  併用薬:なし

 今回の処方(*前回もDo処方を3日分):
  Rp1)クラリスドライシロップ小児用 100mg 1g
         アスベリン散10%                  0.2g
         ムコサールドライシロップ1.5%         0.5g
           分3 毎食後  3日分
    Rp2)ホクナリンテープ0.5mg              3枚
      (寝前1枚貼付)

 患者のコメント: (母親より)このテープは効かないから、いらないのでは?
  

  薬剤師とのやりとりで得られた情報:
  ①ホクナリンテープは夜、胸に貼っている。
  ②Rp1)2)3日分服用済み→SE(-)、コンプライアンス良好
  ③夜の咳は続いている。朝方の咳は改善している。
  

□CASE 16の薬歴
 ♯1 ホクナリンテープの薬識不足によるノンコンプライアンスの恐れ
  S) ホクナリンテープは効かない。いらないのでは?夜に咳(+)
  O) SE(-)、コンプライアンス良好
         貼付時間もNP→朝方の咳は改善
  A) ホクナリンテープTmax>10hr、薬識補正必要
  P) このテープは即効性がなく、夜に貼って深夜から早朝の咳を
     予防するための薬です。効果(+)なので引き続き貼付を。

  
□解説

 ホクナリンテープの特徴をインタビューフォームより抜粋する。

 
Ⅰ.概要に関する項目
 1.開発の経緯
 一般に、呼吸機能にはサーカディアンリズム(日内リズム)があり、1 日のうち深夜から早朝にかけて低下することが知られている。特に気管支喘息においてはモーニングディップと呼ばれる早朝の呼吸機能の低下となってあらわれ、これによって起こる早朝発作は患者や介護者の大きな負担になってる。アボット ジャパン(株)ではこれらの問題に対して、ツロブテロールの血中濃度を必要な時間に必要な濃度にコントロールすることで解決し、かつ、全身性の副作用を回避するために、1 日1 回貼付製剤 ホクナリンテープの開発に着手した。

 定常状態までに要する時間 は、t 1/2(≒10hr) x 4~5 = 40hr~50hrであり、Tmaxは子供で14hr、成人で11hrと、即効性は期待できない薬剤である。

 つまり貼付時間が重要であり、かつその意味を伝えておく必要がある。そのような意味で、A)にはホクナリンテープのTmaxと薬識補正との言葉を使用した。ちなみに、薬そのものの情報はO)ではなくA)に記載するのが正しい。O)は患者の情報である(参照:服薬ケア研究会(H21.1.11))。

□考察
 ホクナリンテープは実にユニークでありがたい薬だ。喘息の子供を持つ親にとっては、精神安定剤みたいな薬でもある。ちょっと調子の悪いときには、「念のためテープを貼っておこう」ということもできる。もちろん、ちゃんとした薬識があってこそできるのである。
 

 「なぜ、寝前に貼るのか」の説明を省いては、効果を実感するどころかノンコンプライアンスを招く恐れもある。取り説のない電化製品より性質が悪い。

 
 外用薬は使い方が効き目を左右する。外用薬と薬剤師は使いようである。

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

人気ブログランキングへ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年2月13日 (金)

半減期の長い睡眠薬

半減期というパラメータを使える薬効群において、
半減期を考える上では血圧の薬も睡眠薬も変わりはない。
睡眠薬への抵抗感・罪悪感を減らせる説明へとつなげていきたい。

CASE 15

  25歳女性

  既往歴:不眠症
  他科受診:なし  併用薬:なし

 処方内容(今回が2回目):
 
    Rp1)ユーロジン錠1mg 1T / 1x寝前  21日分   

 患者のコメント: 「薬を飲めば眠れます」

  
 薬剤師とのやりとりで得られた情報:
 ① 薬なしで寝ようとトライして全く眠れずきつかった
 ② 持ちこし・ふらつきなどの副作用(-)
 ③ 服用した翌日は身体のきつさなどなくQOL↑

□CASE 15の薬歴
 ♯1 ユーロジンへの罪悪感を払拭する
  S) 薬を飲めば眠れます
  O) 薬なしで寝ようとトライ→全く眠れずきつい
     持ちこし・ふらつきなどのSE(-)
  A) 睡眠薬への罪悪感と薬識が問題
  P) 睡眠薬に対する罪悪感を感じていることを確認
      →感じる必要はなく、まず睡眠への不安を取り除くことが大切
     この薬は性格的に身体の中に薬を一定量入れておくことが必要で、
     毎日服用してはじめてしっかり効果を表すタイプであることを説明

  
□解説

 薬を飲めば眠れる。こうコメントする場合は、飲まないと眠れないと強く実感しているケースが少なくない。睡眠薬への強い依存の要因ともいえる。服用状況をぜひ把握しておきたい。

 日本人は特に睡眠薬への抵抗感や罪悪感を感じる人が多い。また、漠然とした副作用に対する不安を抱えていることもある。これらを気持ちを患者と一緒に確認することは問題解決への一歩となり得る。

  次にユーロジンのプロフィールとして、中時間作用型・t1/2=24hr・Tmax=5hr・筋弛緩作用(+)といったものがある。筋弛緩作用による副作用が出ていないことを確認のうえ(CASE 21参照)、t1/2の情報を利用する。t1/2=24hrということは、定常状態となり薬の真の効果を発揮するには4~5日要するということである。

 つまり確実な効果のためにはコンプライアンスが大事な薬なのだ。ゆえに、罪悪感を感じる必要は全くない。血圧の薬を毎日飲むこととさほど変わりはないのだ。

  では、血圧の薬のように一日中効果を示すなら一日中眠くなるのか。そうではない。理由を以下に示す。

半減期の長い睡眠薬投与でも、朝、目覚めることができる理由

  半減期の長い睡眠薬では、半減期が12時間以上のものから、80時間などと記載されているものもあるが、これらを連用すると血中濃度はわずかな日内変動しか示さないようになる。しかし、この事は、血中濃度に準じた眠気が一日中続くことを意味しない。
  睡眠薬の影響下で十分眠った後には、血中濃度がさほど降下しなくとも目覚めることができる理由は、脳にある強力な覚醒機構が発動するからである。脳の覚醒機構はそれ自体の作動原理を持っており、薬物の影響下の睡眠に対しても、覚醒機構を活性化することで自らの睡眠構造や日内リズムを保とうとする。(*1)

 ストレスや不安のような情動系が刺激しておこる覚醒と痛みや痒みといった知覚系が刺激しておこる覚醒がある。BZ系薬剤は情動系の刺激のみをブロックする。ゆえに日中は知覚系が覚醒させるわけだ。階段灯をイメージしてみる。2階の(情動系の)スイッチを切って消灯(睡眠)しても、1階の(知覚系の)スイッチで点灯(覚醒)させることができるわけだ。

□考察

 睡眠薬の安全性を伝えたいときにも血圧の薬を引き合いに出すことが多い。血圧の薬は仕方ないと受け入れ、他の薬効群の薬と比べるとコンプライアンスの良い患者が多いからだ。「血圧の薬と同じくらい安全なら大丈夫かしら」となってもらえれば、抵抗感・罪悪感も薄らぐのではないだろうか。結果として、離脱症状や反跳性不眠、依存に陥るケースも少なくなると思われる。

 パラメータからの視点。薬剤師ならではの視点を、もっと服薬支援に取り入れていきたい。

*1:PTM Vol 10、9(3) APR、1999

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2009年2月 6日 (金)

薬に頼りたくない患者

薬に頼りたくないという患者は多い
どういう薬の飲み方をしているかの把握は必須だ
問題解決は焦らず一歩ずつ、急がばまわれ

CASE 14
  69歳女性
  既往歴:気管支喘息、慢性胃炎
  他科受診:なし  併用薬:なし

 定期薬:
 Rp1)アドエア100ディスカス 28BL 1個
  Rp2)シングレア錠10mg 1T・ガスターD錠10mg 1T / 1x夕食後 
 Rp3)ムコスタ錠100mg 3T/3x毎食後
 Rp4)テオロング錠100mg 2T・メプチンミニ錠25μg 2T / 2x朝・夕食後
 Rp2)~4) 14TD

 過去の薬歴から得られた情報:
 ① どの薬もコンプライアンスは良くない。
 ② 特にRp4)は残薬(+)で処方キャンセルとなることが多い。
 ③ 「内服薬も飲んで吸入もしたら薬が効きすぎる気がする」とのコメントもあり、
   Rp4)の服用状況は良くないと推察できるが、詳細は不明。
  
 薬剤師とのやりとりで得られた情報:
 ① 外にも出るようにしたし、体重も4kg増えた。
 ②「薬が効きすぎる気がするし、薬に頼りたくない」
 ③ Rp4)は両剤とも夜に半分(半錠)ずつ服用している
 ④ BAの調子はよい

□CASE 14の薬歴
 ♯1 BA治療に対する自己努力
  S) 外にも出るようにしたし、体重も4kg増えた。
  O) BAによるBW↓をかなり気にしていたのだろう
    A) BW↑にはかなり努力したと思われる。
    これを認め、本人をより前向きにしよう
  P) BW4kgアップはすごいですよ。
    何もしなければ、ふつうはBW減っていくもんですよ。
    この調子で食事や呼吸リハ続けていきましょう。

 #2 テオロングの薬識不足による半錠服用
  S)「薬が効きすぎる気がするし、薬に頼りたくない」
  O) Rp4)は両剤とも夜に半錠ずつ服用している
  A) テオロング→徐放性製剤→分割不可
       「薬が効き過ぎる」はテオロング分割によるSEからかも?
  P) 徐放錠について説明。半分にするとその仕組みが壊れて、
    副作用が出やすくなったり、効果も朝まで続きません。
    テオロングだけでも割らずに1錠飲むように。
  R) 実は朝3~4時くらいに起きて、残りの半分を追加することがある。
    割らずに飲むようにします。

  R:患者のリアクション

□解説
 今回のCASEの患者は、心を開かない患者だった。コンプライアンスは良くないし、服用状況をはっきりとは語ってくれない。心を開いたきっかけは、患者の努力を認めたやりとりだったように思う。#1は薬やコンプライアンスといった言葉は出てこないが、薬歴に記録すべき重要事項だと考え、フェイスシートの特記にも要点を記載した。

  次に、「薬が効きすぎる」というコメントとテオロングの服用状況に着目した。テオロングの製剤的な特徴を理解してもらい、テオロング分割のデメリットを副作用・効果の面で紹介する。副作用の方に食いつくかなと思いきや、R)の新しい情報を得ることとなった。ちなみに、テオドール錠には割線があり、半錠分割まで可能だ。しかし、この場面でその知識を使う必要はないだろう。

□考察
 「薬に頼りたくない」という根本的な問題は何にも解決していないじゃないか。そんな声が聞こえてきそうだ。その通りである。その旨は#3としてプロブレムリストに立案のみしておいた。今回のCASEのような患者が自分から情報を発信した。さらに些細ではあるが行動変容まで期待できる。この日の対応としては十分だ。また、2週間後には会えるのだから。

 根本的な問題解決のためには焦らずに根気よく続けていくしかないだろう。急がばまわれだ。

 
 

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

人気ブログランキングへ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2009年1月 | トップページ | 2009年3月 »