カテゴリー「(13) その他の病態」の10件の記事

2016年2月12日 (金)

アボルブ休薬中の患者への麻黄湯

アボルブ休薬中
いつまで大丈夫?
風邪薬や麻黄剤など

CASE 179

男性 65歳 

他科受診:なし  併用薬:なし

定期処方:
Rp1) アムロジピン錠2.5mg 1錠   分1 朝食後   28日分

Rp2) ユリーフ錠4mg  2錠 分2 朝・夕食後  28日分

Rp3) ツムラ麻黄湯エキス顆粒 7.5g 分3 毎食前 3日分

Rp4) カロナール錠300mg 1錠 発熱時頓用 5回分

*H28.1.12よりアボルブ休薬中

患者のコメント:
「寒気がする。会社で(インフルエンザが)流行り出した。たぶんそうだろうって」

患者の情報:
① アボルブ休薬後も尿の出は問題ない。
② 汗(-)

□CASE 179の薬歴
#1 アボルブ休薬による尿閉リスクの回避
  S) 寒気がする。会社で(インフルエンザが)流行り出した。たぶんそうだろうって
 O) アボルブ休薬1ヶ月→排尿に問題なし
   インフルエンザ疑いにて、ツムラNo.27処方(無汗OK)
 A) アボルブ休薬1ヶ月なのでまだ大丈夫だろう
   念のため、麻黄剤や風邪薬による尿閉のアナウンスを
 P) 抗ウイルス作用のある漢方薬。発汗剤なので水分もこまめに。
   尿の出が悪くなるようなら中止を。今後も市販の風邪薬でも同様に注意を。
 
□解説
 前立腺肥大症治療薬「アボルブⓇカプセル 0.5mg(デュタステリドカプセル)」の出荷調整のお詫びとお知らせ。これによる対応はさまざまだ。アボルブを休薬したら間違いなく尿閉やオペになるような患者を除いては、アボルブの休薬もしくは抗アンドロゲン薬への変更をお願いしている。
 
 この患者はアボルブを休薬している。まだ1ヶ月だ。そして、排尿に関しての問題は見当たらない。おそらく、麻黄剤による尿閉は大丈夫だろうとは思いつつも、アボルブの供給再開の見通しがたっていない以上、今後のことを考えた服薬指導をしておこう、といった内容になっている。
 
□考察
 2~3ヶ月ならアボルブを休薬しても問題はない、とメーカーは案内している。たしかに5α還元酵素阻害薬や抗アンドロゲン薬は半年くらいかけて前立腺を小さくしていくわけだから、その通りなのだろう。

 コントロールされた前立腺肥大症の患者への抗ヒスタミン薬、抗コリン薬、そして麻黄剤など。そういったことは日常的になされている。が、アボルブを休薬中の患者は意識しておかないといけない。今から時間が経てば経つほどに。
 

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2014年3月14日 (金)

前立腺肥大症オペ後もハルナールを継続する理由

前立腺のオペをしてきました。
ハルナール継続。
それはなぜ?

CASE 156

男性 70歳 

処方内容:
Rp 1)ミカルディス錠40mg 1錠・ハルナール錠0.2mg 1錠 / 1x朝食後 28日分
Rp 2) クレストール錠5mg 1錠 / 1x夕食後 28日分

患者からの質問:
「せっかく前立腺のオペをしてきたのに、まだ薬を飲まないとダメみたいで」

患者から得られた情報:
① 泌尿器科を紹介され、前立腺をレーザーで焼いてきた
③ ハルナールを中止⇒残尿感

□CASE 156の薬歴
#1 前立腺オペ後もハルナールを納得して飲んでもらう
  S) せっかく前立腺のオペをしてきたのに、まだ薬を飲まないとダメみたいで。
 O) 泌尿器科にて前立腺をレーザー処置
    ハルナールを中止すると残尿感あり
 A) ハルナールを納得して飲んでもらう
 P)ハルナールは膀胱頸部にも効果があり、オペはそこには手が出せません。
 R) なるほどね。泌尿器のDrも症状が残ることはあるといってたもんな。
   まあ尿閉にならないだけでも・・・。

□解説
 排尿困難を訴えていた患者が泌尿器科にて、低侵襲性のレーザー手術を実施。残念そうに「せっかく前立腺のオペをしてきたのに、まだ薬を飲まないとダメみたいで」とコメントされる。ハルナールを飲まないと残尿感があるとのこと。

 たしかに患者からしてみれば、オペをすれば服薬から解放されるといった期待を抱くのは当然だ。だが、経尿道的前立腺切除術(TURP)でさえ、術後に排尿障害が改善しない症例が15~30%前後も存在すると言われている。

 
 患者はハルナールの効果を実感しており、中断する可能性は低いと思われる。ただ納得はしていない様子。そこで患者が理解しやすいように、ハルナールの薬理作用の説明を試みている。

 
 
□考察
 前立腺肥大症では前立腺平滑筋や膀胱頸部(内尿道括約筋)でのα1受容体が増加し、その反応性は増大していると言われている。そしてじつは、この交感神経を介した前立腺過剰収縮による尿道内圧の上昇(機能的閉塞)のほうが、腺腫による直接的な尿道圧迫(物理的閉塞)よりも、排尿障害に関与する割合が大きい。

 これが前立腺肥大症の薬物療法において、α1遮断薬が第一選択薬とされる理由である。

 オペでの前立腺の除去は控えめにされることが多いし、膀胱頸部にはふつう手を出さない(尿失禁につながるため。術後の合併症に対する膀胱頸部硬化症に対して拡張術を試みることはあるそうだ)。そう考えると、前立腺オペ後もハルナールなどのα1遮断薬が継続されることが多いのも頷ける。

 ただその本当の原因は一つに絞れるものではないらしい。閉塞の解除が不充分なものから、膀胱の問題、心因性の問題、術後の合併症など多岐にわたる。そして、薬局薬剤師に特定できるはずもない。だが、膀胱頸部の可能性なら薬理作用から、そしてハルナールが効いているというその事実から、いかなるケースでも関係していないと否定することはできないだろう。

 泌尿器科の医師も事前に説明してあったようだが、患者としては薬が一つでもなくなればと期待する気持もわからなくもない。薬はかくも飲みたくないものなのだ。
 

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2013年3月22日 (金)

エビリファイを糖尿病患者に用いても良いのか悪いのか

エビリファイの警告文
神経遮断薬のレセプタープロファイル
エビリファイは糖尿病に悪い影響を及ぼすのか?

CASE 137

27歳 女性

他科受診: 代謝内科 
併用薬: ノボラピット注フレックスペン、ランタス注ソロスター

前回の処方:
Rp 1) セレネース錠1mg 1錠 / 1x朝食後 14日分
Rp 2) グッドミン錠0.25mg 1錠・フルニトラゼパム錠1mg 1錠 / 1x就寝前 14日分
Rp 3) アローゼン顆粒 1.5g / 1x就寝前 14日分
Rp 4) メデポリン錠0.4mg 1錠 / イライラ時 14回分

今回の処方(Rp 1→5へ変更):
Rp 5) エビリファイ錠3mg 1錠 / 1x朝食後 14日分
Rp 2) Do 14日分
Rp 3) Do 14日分
Rp 4) Do 14日分

患者から得られた情報:
「エビリファイって、糖尿病の人はだいじょうぶなんですかね?」
「前飲んだときに調子は良かったんですけど、糖尿病の先生が血糖に影響するから考えてもらいなさいと…」
「インターネットで調べても糖尿病にはよくないと記載があって・・・」
「眠れないだけでなく、幻聴も出てきた。先生は考えすぎがよくないと」

薬歴から得られた情報:
① 神経遮断薬の推移:セレネース→エビリファイ→セレネース(そしてまたエビリファイへ)
② 以前、セレネースに戻った理由は「効きすぎるかもしれない」とコメント記載があるのみ
③ 血糖コントロールはセレネースに戻った後も苦戦中。
  *低血糖もよくおこしており、この低血糖こそがコントロール不良の原因ではないかとプロブレムリストに記載あり。

□CASE 137の薬歴
#1 エビリファイはDMへの影響が少ないことを理解して続けてもらう
  S)エビリファイって、糖尿病の人はだいじょうぶなんですかね?
   Drからは、考えすぎがよくないと
 O) 眠れない、幻聴:セレネース→エビリファイ
     DMのDrから以前「(エビリファイは)血糖に影響するから考えてもらいなさい」と指摘
   エビリファイの添付文書をネットで検索しており、不安な様子
 A) Drの言い分の違いが生じた理由を理解してもらうことで
   不安を解消してもらい、エビリファイを継続服用してもらおう
 P) 添付文書の表現がなぜそうなっているのか、
   また実際の薬理作用からの神経遮断薬の違いを説明。
   そのうえで専門ではないDrが心配するのも無理はないこと、
   専門のDrや薬剤師にとっては、DMになんら問題のないことを説明。
  
 
□解説
 「エビリファイって、糖尿病の人はだいじょうぶなんですかね?」患者がこう聞きたくなるのも当然だ。一方は「問題ない」といい、もう一方は「(薬の変更を)考えてもらいなさい」というのだから。

 薬歴で確認できた以前の患者のコメントである「効きすぎるかもしれない」というのも、不安の表出だったのかもしれない。

 エビリファイのレセプタープロファイルから考えれば、糖代謝への影響はほとんどないと考えていいだろう。

 しかし、患者がこういう状態にあるときに、ただ口で、言葉で「だいじょうですよ」では届かない。そう直観した。そこで、なぜDrの言い分がこうも異なるのかを時間をかけて、根拠を示しながら説明することにした。

 まず添付文書をみてもらう。患者もインターネットですでに確認していた「警告欄」を二人で確認する。これだけをみれば、専門医でなければ、糖代謝に影響すると発言するのも無理はない。

Photo_2

 これは類薬のセロクエルとジプレキサにおいて、糖尿病に禁忌とされたことに準じている。この二剤は2001年に発売され、その後に改定となっている。そしてエビリファイはというと、治験がすでに2000年に終了しており、糖代謝に及ぼす影響は検討されていなかった。そのために先の二剤に準じて、警告欄に糖尿病患者に対する文言が記載されることになった。

 しかし実際には、エビリファイは糖代謝には影響しない。2011年には根拠とする論文(*1)も出ている。

Olanzapineやquetiapineはその糖代謝異常のリスクから,日本で糖尿病患者への使用は禁忌となっており,その基本骨格はclozapineに類似しているという共通の特徴を持つている。また受容体親和性も,特に食欲に関与していると考えられているヒスタミンH1受容体への親和性が,抗精神病作用を示すドパミンD2受容体に比べて相対的に高いことで共通している。一方,aripiprazoleはそれら一群の薬剤とはまったく異なる基本畳格を母核としており, ドパミンD2受容体に対する親和性が高く,相対的に,肥満と関係していると考えられているヒスタミンH1受容体やセロトニン5-HT2c受容体に対する親和性が低い。現時点で新規抗精神病薬がどのようにして糖代謝異常を起こすのかという明確なメカニズムは判明していないものの,この化学構造の違いに基づく各種受容体に対する親和性プロファイルの違いが,糖代謝異常を引き起こすリスクの差の原因である可能性が示唆される。

*1:石郷岡純, 宇都宮一典, 小山 司, 田中 逸, 中込和幸: 糖代謝異常のみられない統合失調患者を対象としたaripiprazoleの糖代謝能に及ぼす影響. 臨床精神薬理 14(8): 1371-1386, 2011.

 まさか患者に論文を読んでもらうわけにもいかないので、よりわかりやすい一覧表(*2)を用いて説明を行った。

 *2:安心処方infobox > くすりの基礎知識 > 第26話 抗精神病薬の受容体に対する親和性から副作用を予測する > 表2 抗精神病薬の副作用 その1

 この一覧表をみてもらえば、一目瞭然。糖代謝はもちろん、エビリファイの副作用の少なさがよくわかる。

 言葉だけではなく、印刷されたものを使うほうが患者の反応はよい。これはぼくの経験則でもある。

 

□考察
 患者の服薬状況は良好なので、納得していなくても、きっとエビリファイを飲んでいただろう。不安を抱えて。そういう状況を回避できただけでも、時間をかけた甲斐があった。彼女の笑顔がそう感じさせたケースだった。

 この「Drの言い分が違う状況」というのは容易に想像ができた。しかし、このDMのDrに非があるとは思えない。だって添付文書にはそう記載してあるのだから。

 精神科の専門医や薬剤師でなければ、神経遮断薬のレセプタープロファイルなんて薬力学的なことには興味も示さないだろう。

 さきの論文(*1)は大塚製薬の依頼で行われている。ならば、ぜひ添付文書の改訂に取り組んでほしい(現時点では予定もないそうだ)。そうすれば、こんな事例は雲散してしまうのだから。

 

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2012年3月23日 (金)

セロクエルと糖尿病

眠剤と表現したその薬剤は?
その名称の、その括り方の意味は?
定型薬と非定型薬の違い

CASE 114

60歳 女性  

他科受診 : 精神科
併用薬    : 眠剤2種

前回の処方(初来局):
Rp1) アバプロ錠50mg 1T / 1x朝食後 14日分

今回の処方(2回目):
Rp2) アバプロ錠50mg 1T・グラクティブ錠50mg 1T / 1x朝食後 14日分

薬歴から得られた情報:
① 前回、血圧160で初来局
② 併用薬は「眠剤2種を2年飲んでいる」との記載のみで薬剤名なし
   →次回持参依頼

患者から得られた情報:
①「血糖まで言われちゃった。そんなに食べたりしないけど」
 →DM指摘初、食事で思い当たることはない
② HbA1c:7.0%、自覚症状(-)
③ 眠剤2種持参→マイスリー錠5mg、セロクエル錠100mg

□CASE 114の薬歴
#1 セロクエル-DM
  S)DM指摘初、食事で思い当たることはない
 O) HbA1c:7.0%、自覚症状(-)
   併用薬:マイスリー錠5mg、セロクエル錠100mg
 A) 血糖上昇はセロクエルが原因かも
   DM-セロクエルは病態禁忌
 P) 血糖は眠剤の影響と思われます。
   早めに精神科のDrにDMと診断されて薬をもらったと相談してください。
   内科のDrにはこちらから伝えておきます(トレースレポート提出)。

 
□解説
 二回目の受診で糖尿病の指摘を受けた患者さん。さらに併用薬がセロクエルと判明。

 糖尿病とセロクエルは病態禁忌だ。

Photo_2

 こうなるとセロクエルは処方変更をしてもらうしかない。勝手に中止指示するわけにもいかないので精神科を早めに受診するように促している。

 また、この方の血糖上昇の原因は、セロクエルの可能性が非常に高い。今後の内科の治療にも影響すると考え、トレースレポートにて情報提供を行っている。
 

□考察
 この患者は併用薬を「眠剤を2種類」と表現している。そう認識している。

 セロクエルの臨床的特徴を見てみると

 クエチアピンは、抗不安・抗うつ効果を有するほか、適度な鎮静作用をもつため、急性期の激越症状(敵意や攻撃性)に有用である。また、ベンゾジアゼピン系睡眠薬に反応しない睡眠障害にも有効である。

石郷岡純/岡崎祐士『統合失調症治療の新たなストラテジー』先端医学社 P.134

 なるほど。患者が眠剤というのも頷ける。ということは「眠剤」ときいて、いわゆる一般の眠剤をイメージをして、「大丈夫ですよ」と必ずしもいえないわけだ。

 こういう場面において、患者が薬をどのように認識しているか、つまり患者の薬識を確認する場面において、お薬手帳が活躍することになるだろう。

 もう一点。これは後日談。

 この患者のセロクエル錠100mgはコントミン錠50mgへ処方変更となった。非定型抗精神病薬のどれかに変更になるものと思っていたわたしは、うかつにも意外に感じてしまったわけだ。

 非定型薬だから非定型薬に変わるわけではない。鎮静や催眠効果を期待するのであれば、それぞれアドレナリン受容体とヒスタミン受容体の遮断作用が重要になってくる。そういう作用プロフィールを持つ非定型薬のセロクエルやジプレキサは、ともに糖尿病には禁忌である。

 なるほど、コントミンならば、定型薬なので錐体外路症状への注意が必要ではあるが、作用プロフィール的には近い。そして低力価だ。コントミンの副作用を少なくしたものがセロクエルといった感じなのだろうか。

 そもそも定型、非定型の分類は副作用の出現の仕方に関するものであって、作用プロフィール的な分類ではない。

 当時の薬は皆、抗精神病作用と錐体外路系の副作用の両方を持っている。中脳辺縁系に作用する薬は、どうしても黒質線条体系にも作用する、それが定型的なパターンということで定型抗精神病薬と呼ばれていたわけです。

定型抗精神病薬は優れた抗精神病作用を持って、われわれの日常診療を非常に進展させましたが、やはり副作用の問題がなかなか解決できませんでした。また、陰性症状に対する効果が今ひとつ不十分で、 さらに認知機能障害などを悪化させる可能性もありました。ここまでの薬が定型抗精神病薬の第一世代だったわけです。

1962年に開発されたクロザピンは、臨床試験において高熱、流涎、ときに痙攣発作を起こす自律神経系の強烈な副作用を呈しながらも、陽性症状にも陰性症状にも効き、錐体外路症状を起こさず、 プロラクチンも上昇させなかったため大いに注目されました。それまでの定型抗精神病薬と違い、効果と副作用が分離できるために非定型抗精神病薬と呼ばれ、1972年にヨーロッパの国々で承認されました。

大日本住友製薬 CONSONANCE ~統合失調症治療を考える~
VOL.1 統合失調症薬物治療の新しい流れ ~世界的動向と日本の課題~ <前編>

 定型抗精神病薬は主にドパミン受容体遮断作用を有する。それは統合失調症の治療に有効ではあるが、錐体外路症状の惹起作用を併せ持つことになる。避けがたい「定型」の副作用を示すことになる。それを「定型薬」と呼ぶことにした。

 いっぽう、のちに開発される非定型抗精神病薬、いわゆるSDAは、セロトニン受容体の遮断作用がドパミン受容体に対するそれよりも強い。その結果、定型の副作用である錐体外路症状を抑えつつも効果を得ることができた。それを「非定型薬」と呼ぶことにした。

 そう、ただその分類のための名前であって、それ以上のものではない。

 それなのに非定型薬から定型薬への変更が意外に感じるなんて、ものの名称を覚えることで、安心して、思考を止めてしまって、バカになってしまっていた。

 言葉にしたことで、意味の大半が失われる場合が多い。名前をつけることで、理解が遠退くのと類似している。(中略) 言葉にすることで、みんながわかった気になって、すっかり安心して大事なことを忘れてしまうのである。 

 森博嗣『モリログ・アカデミィ(13) 』メディアファクトリー P.235

 その通りだ。抗精神病薬はレセプタープロフィールを通して、そのキャラクタを把握すべきなのだ。定型薬と非定型薬で括って認識することは、その一面を理解することにすぎない。

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2012年2月24日 (金)

メトグルコと脱水

ビグアナイド系(BG)と脱水
副作用のリスク因子としての患者の状態
重要なO情報だ

CASE 112

60歳 男性  

定期処方:
Rp1) イルベタン錠50mg 1T・アマリール錠1mg 1T / 1x朝食後 28日分
  2) メトグルコ錠250mg 3T / 3x毎食後 28日分
  3) プロテカジン錠10mg 1T / 1x夕食後 28日分

臨時処方:
 4) ホスミシン錠500mg 4T / 4x毎食後と寝る前 4日分
 5) プリンペラン錠5mg 3T・ビオフェルミンR錠 3T / 3x毎食後 4日分
 6) ロペミンカプセル1mg 2C / 2x朝・夕食後 2日分

患者から得られた情報:
① 胃腸炎にて水様下痢、嘔吐
② 昨晩から食事(-)→ 「アマリールは飲んでないよ」

薬歴から得られた情報:
① 食事がとれない時にはアマリールを服薬しないように指導できている
② 肝機能や腎機能などにはとくに問題がない
③ 定期処方は半年以上、変更なし
④ HbA1cは7前後で推移中

□CASE 112の薬歴
#1 脱水リスクがあるのでメトグルコも控えておく
  S)アマリールは飲んでないよ(他薬は飲んでいる)
 O) 胃腸炎にて水様下痢・嘔吐→脱水傾向(+)
 A) 脱水+BG→乳酸アシドーシス
 P) 脱水がいちばん怖いので補水をしっかりと。
   下痢・嘔吐が続いているあいだは、メトグルコも控えておきましょう。

 
□解説
 高血圧、糖尿病にて通院中の患者さんが、胃腸炎で来局される。

 いわゆるシック・デイだ。「アマリールは飲んでないよ」とのコメントより、アマリールの薬識を推し量ることができる。メトグルコだけなら低血糖のリスクはそんなに高くはない。それよりも乳酸アシドーシスだ。

禁忌

1. 次に示す状態の患者〔乳酸アシドーシスを起こしやすい。〕

(7) 脱水症、脱水状態が懸念される下痢、嘔吐等の胃腸障害のある患者

重要な基本的注意

3. *脱水により乳酸アシドーシスを起こすことがある。脱水症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

                                                                 (メトグルコ 添付文書より)

 こういう状態でBGを続けると乳酸アシドーシスのリスクが増大する。よって下痢・嘔吐が改善するまで、アマリールだけではなく、メトグルコも控えるように伝えている。

 
□考察
 インスリンを導入していない患者において、医師からシック・デイの指導を受けている患者は(わたしの経験上)まれだ。薬局でもSU剤のアナウンスはできているが、BGについてはどうだろうか。

 薬情には「脱水時には(BGの)服用を控えるように」と記載してはいる。しかし、いつもの薬なら、ほとんど読まれることがないのではないだろうか。インフルエンザや胃腸炎の流行時には、前もってアナウンスしておきたい。

 インフルエンザの発熱や胃腸炎による脱水。こういう患者側のリスク因子は重要なO情報となる。

 薬剤サイドからだけでなく、患者の状態や病態サイドの視点も忘れないようにしたい。

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2011年11月25日 (金)

メマリー錠5mg著効例の維持量について

ADとDLB
メマリー5mgで著効
維持量はどうすべきか?

CASE 106

85歳 男性 
他科受診:なし 併用薬:なし
副作用歴:アリセプト錠5mg→徐脈
特記:歩けない→自宅ではほとんど寝ている

処方①(11月2日):
Rp1) ニューロタン錠25mg 1T・アムロジピン錠5mg 1T・タケプロンOD錠15mg 1T / 1x朝食後 28TD
   2) アンプラーグ錠100mg 2T / 2x朝・夕食後 28TD
  3) アローゼン顆粒 1.5g / 1x就寝前 28TD
   4) メマリー錠5mg 1T / 1x朝食後 7TD 
 
処方②(11月9日):
Rp5) メマリー錠5mg 2T / 1x朝食後 7TD

処方③(11月11日):
Rp6) セロクエル錠25mg 1T / 1x就寝前 5TD
   7) ツムラ抑肝散エキス顆粒 5g / 2x朝・夕食前 5TD

薬歴から得られた情報:
① メマリーが11/2に追加。
② メマリー錠5mgで認知症症状改善(著効)
③ 11/9にメマリー5mgから10mgに増量

患者の娘のコメント: 「なんか虫が天井に這っているとか言い出して」

患者の娘から得られた情報:
① 「(そう言われれば)メマリー錠が2錠になって悪い気がする」
② 興奮傾向あり

疑義照会 :
(内容)メマリー増量に伴う副作用と思われる。5mgへ減量をすすめる。
(回答)メマリーを1錠に減らして、5日後に再受診を。

□CASE 106の薬歴
#1 メマリー増量に伴う副作用?
  S)メマリー錠が2錠になって悪い気がする
 O) 幻視・興奮→Rp6)7)
      「虫が天井に這っている」
 A) メマリー増量に伴う副作用ではないか
 P) 疑義照会→メマリー減量となる。
   今日の薬とメマリーを1錠に減らして様子を見て。
   5日後に再受診のDr指示を伝える。

◎漢方は食後でも可。
◎身体が傾いたり、過鎮静になるなら申し出て

 
□解説
 アルツハイマー型認知症(AD)でアリセプトが合わなかった患者さん。自宅ではほとんどベッドに寝ており、周辺症状で介護者が困ることはなかったようだ。

 物忘れがひどくなったのでメマリーを導入。5mgで著効。会話が成り立つようになる。添付文書通りに1週間後に10mgへ増量したところで幻視が現われ、興奮傾向となる。

 11月11日の処方を見ての「メマリーの副作用では?」という思いは、患者の娘の「そう言われれば、メマリー錠が2錠になって悪い気がする」の一言で強まる。

 疑義照会にて、意見が採用され、メマリーが減量となる。

 この一連の流れが大事と考え、SOAP形式で記録する。追加薬については服薬支援の内容のみ◎にて箇条書きで記載している。

 
□考察
 その後、この患者の幻覚・興奮は消失し、セロクエルと抑肝散も必要なくなり、メマリー5mgだけで良好に経過している。

 あとから考えると、この患者はレビー小体型認知症(DLB)ではないかと思い至る。まずメマリーが5mgという少量で著効を示したこと。つぎにメマリーを増量したことでDLBに多い幻視が現れた点だ。

 処方医に面会し、考えを伝える。Drも同意し、過去のアリセプトの副作用もDLBには5mgが多かったために起こったのかもな~などの話をする。「患者はこのままコメントを入れてメマリー5mgで継続する。保健上はADにしておくしかないだろう」との結論に至った。

 やはりADとDLBの判別は難しいようだ。認知症薬が少量で著効を示すようならDLBを疑って、増量時の副作用に注意したほうがいいだろう。

 そもそもメマリー5mgで著効を示したのなら、そこで止めればいいのだ。添付文書に従うと20mg(高度腎機能低下患者で10mg)まで増量せざるを得ない。しかしこれはADでのこと。DLBが認知症の20%も存在し、DLBの適応のある薬がない状況を考えると、安易に添付文書通りに増量するのではなく、患者の状態に応じて維持量を決めた方がいいのではないだろうか。

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2011年7月 8日 (金)

α‐GIとダンピング

α-GIとダンピング
低血糖予防にα-GI
後から調べたことを混ぜて書かない

CASE 97

75歳 男性 

他科受診:なし  併用薬:なし

処方内容:
Rp1) アムロジピン錠5mg 1T / 1x朝食後 
 2) ツムラ大建中湯エキス顆粒 5g / 2x朝・夕食前
 3) カモスタール錠100mg 3T・エクセラーゼ錠 3T・マグミット錠330mg 3T / 3x毎食後
 4) ベイスンOD錠0.2mg 3T / 3x毎食直前
 1)~4) 21日分
 5) センノサイド錠12mg 2T / 便秘時 10回分
 
 
患者(の奥様)のコメント: 「薬は本人が管理しているけど、こちらにも教えてほしい」

患者(の奥様)から得られた情報:
① 胃ガンにて入院。胃と十二指腸、腸も一部切除
② 退院時の処方と同じものが処方されている
③ 胸やけやおなかの張り(+)

□CASE 97の薬歴
#1 奥様に薬を理解してもらう
  S) 薬は本人が管理しているけど、こちらにも教えてほしい
 O) 胃がん→胃、十二指腸、腸の一部を切除
    退院時とDo処方
 A) 奥様の理解と協力は必要
 P) 各薬剤の薬効ならびに用法・用量について説明。
    漢方は食前・食後どちらでも構わないが、
    ベイスンは食直前に。忘れたら食事中までOK。

 ◎ ダンピングによるものと思われる胸やけ(+)
 ◎ おなかの張りについてはダンピングによるものかベイスンのせいか不明
  

<ベイスンの処方目的について>
 ベイスンについては「食後の急激な血糖の上昇をおさえる薬」とアナウンス。しかし、ベイスンはおそらく「後期ダンピングによる低血糖症状を予防するため」だと思われる。であれば、食直後でも効果はある程度、期待できると思われる。次回、フォローよろしく。
 □ ベイスンの役割の理解について
 □ 後期ダンピングによる低血糖症状が出ているかチェック
 □ ブドウ糖の携帯について
 

□解説
 まず、薬歴のポイントとして大事な点は、「後から自分で調べたことを混ぜて書かない」ということだ。投薬の段階において、ベイスンの適応外の使い方の知識がわたしにはなかった。ないものは話せない。話していないことは書かない。書けばそれは改ざんだ。

 しかし、次回からの服薬支援に重要な情報だ。そういうときは、日付けと時間を記入し、別項目で記入する(<ベイスンの処方目的について>)。薬歴は時系列的に再現性がなければらない。

 次に、α-GIとダンピングについて。

 薬歴記入の段階で、ベイスンが妙に気になった。同僚に相談すると、ダンピングに使われることがあるらしい。調べてみると、ダンピングには早期ダンピングと後期ダンピングの2種類がある。

 ダンピング症候群は胃切除による食物通過速度の変化にもとづく障害で、食後20~ 30分に起きる早期ダンピング症候と、食後2~ 4時間に起きる後期ダンピング症候に分けられるが、ことに後者は食物の小腸への急速な流入と吸収の結果としての急激な血糖上昇に対応するインスリンの過分泌によって、食後数時間に反応性の低血糖状態になることが一因とされる。(*1)

 なるほど、このメカニズムさえわかれば、α-GIが後期ダンピング予防に有効なのも頷ける。
 

 
□考察
 知らないということはほんとうに怖いことだ。ダンピングといえば、早期ダンピングしか頭になかった。胃全摘患者には後期ダンピングが多い。ダンピングで低血糖になるは・・・。「糖尿病の薬です」なんてアナウンスしたら、後期ダンピングで低血糖症状に苦しんでいる患者は、ベイスンを飲まなくなってしまうだろう。

 また、「腹部オペ+α-GI→イレウス」なんて考えてアナウンスしてたらと思うと、それこそ冷や汗ものだ。

 あ~、それにしても、添付文書にとはいわないが、せめてIFにでも「適応外効能」といった項目でも作って紹介してくれればいいのに…。

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*1:片桐健二「胃切除後のダンピング症候群とOxyhyperglycemiaに対するα―グルコシダーゼ阻害剤(Voglibose)の効果」 新薬と臨床 J.New Remedies&Clinics Vol.46 No.8 '97
 

 

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2009年12月25日 (金)

前立腺肥大症と麻黄湯

前立腺肥大症(BPH)の方には麻黄湯は慎重投与だ
病態禁忌の抗ヒスタミン薬やPLでも疑義照会をしないことが多い
マオウ剤ではいかがだろうか?

CASE 46

70歳 男性
他科受診:泌尿器科  併用薬:フリバスOD錠50mg、エビプロスタットDB錠

<前回(CASE 45)の処方>
定期処方
Rp1)アムロジン錠5mg 1T・ブロプレス錠4mg 1T / 1x朝食後 14日分
 2) ツムラ白虎加人参湯(ツムラNo.34) 9g / 3x毎食前
 3) タケプロンOD15mg 1T / 1x夕食後
臨時処方
  4) ツムラ麻黄湯(ツムラNo.27) 7.5g / 3x毎食前 3日分
 5)カロナール錠300mg 1T / 1x発熱時 5回分

<今回の追加処方>
  6) ユリーフ錠4mg 2T / 2x朝・夕食後 7日分
 7)アボルブカプセル 1P / 1x朝食後 7日分

患者のコメント:
「尿閉、恐かったよ。オペはしたくないから、こっちのDrになんとかならないか相談した。新しい薬を試してみようって」

患者から得られた情報:
① 救急病院でユリーフの処方、「これ以上強いのはない、ダメならオペ」と言われた。
② 導尿、フリバスからユリーフへ変更後、尿量は確保できている。
② ツムラNo.27は2回服用後、中止。
③ 泌尿器科のDrもたぶんツムラNo.27が原因だろうと言っていた。
  

□CASE 46の薬歴
#1 アボルブ初回服薬指導
  S) ユリーフでも尿閉になるならオペと言われている。
   オペはしたくないから、こっちのDrになんとかならないか相談した。
   新しい薬を試してみようって
 O) 併用薬は中止→ユリーフ、アボルブに変更
 A) アボルブ初回
 P) 前立腺自体をだんだん小さくしていく薬。
   効果発現に時間がかかるが、尿閉やオペのリスクは半減します。
   光・湿気に弱い。かまない。カプセルを外さない。

#2 BPHを悪化させる薬への注意
 S) 尿閉、恐かったよ
 O) ツムラNo.27が原因で尿閉
 A) BPHを悪化させる薬への理解が必要
 P) 麻黄湯以外にも葛根湯や小青竜湯などの麻黄の入っている漢方薬や
   鼻水に効果のあるカゼ薬で、尿閉を起こす可能性があるので、
   当分、手を出さないように。こちらも注意します。

□解説
 2つのクラスタ(塊)に分けて記録している。ひとつはアボルブが初薬で薬識に関すること。もうひとつは尿閉を繰り返さないようにするための注意。

 「BPH」などの分類に近いプロブレムをつけてしまうと、2つがごちゃごちゃになったSOAPができてしまう。
 
 まず、こういう時は指導 P)がいくつあったかと考えて、それに対応するS)O)を抜き出すとA)や#がクリアになる。

□考察
 今回紹介しているケースは、前回の続編。CASE 45では他科受診・併用薬は???としていたが、実はわかっていた。いわゆる指導もれで、たいへん申し訳ないことをしたと思っている。反省。

 話は変わるが、緑内障の病態禁忌薬で疑義照会をかけたことは数回しかない。オペ待ちの患者や眼科より指示があっている患者くらいだ。なぜなら、緑内障の9割は病態的に禁忌ではなく、残り1割もレーザーを施していたり、白内障のオペをしていれば考える必要がないからだ。

 BPHもどこか同じように考えていたのかもしれない。泌尿器科でコントロールされていれば大丈夫だろうと。危ないのはBPHと診断されているが、自己中断で服薬を止めてしまっている患者だと。

 その時その時の尿の状態を確認し、疑義照会をするかしないかは別としても、適切な指導をしていきたい。今回のケースでも、麻黄湯の2服目がなければ大事には至らなかったかもしれない。

 文学は、作者と読者の協同によって生ずる現象です。作者は不変ですが、読者は不特定多数ですから、作品像は読者の数だけ多様に存在することになります。 (中略) 

 

 現象としての文学を解明するのが、文学の学問ということになります。そのためには、文学作品だけ読んでいては話にならないでしょう。「だれが水を発見したのかはわからないが、魚でないことだけははっきりしている」ということばがあります。文学三昧の人が、文学認識論を構築することはできないでしょう。(*1)

 
 作者をDrが処方した薬、読者を患者に置きかえれば、薬学も同じことが言える。薬剤師は‘慣れ’によって「魚」になるようなことがないようにしたい。
 
 

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*1:自分の頭で考える(中央公論新社) 外山滋比古

みなさま、1年間おつかれさまでした。

今年はCASE 46で終了します。最後は反省ネタでした。来年はもっと成長していきたいと思います。

自分でこの1年書いた原稿を読み返すと修正を入れたいところが多数。特に、副作用機序別分類の考え方は理解が深まってきたので、来年まとめてみるつもりです。

薬剤師としてのスタンスがブレないように、安きにながれないように、「行いは自分、批評は他人」でがんばっていきます。

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2009年10月23日 (金)

トピナと腎結石

トピナをはじめて投薬した
この手の薬は慎重になる
O)情報は患者のフィルター情報だ

CASE 40

30歳男性 
他科受診:なし  併用薬:なし  副作用歴:なし
アルコール(-)  タバコ(-)  車の運転(+)

前回の処方
Rp1)デパケンR錠200mg 10T / 2x朝・夕食後

前回の薬歴
#1:デパケンR増量によるSEへの注意喚起
 S)Css=48mg/dLなのに、またてんかん発作(動作停止あり)
 O)身体が大きいから効き難いのかも
   Css≧50で有効とするデータもあるので増量と説明あり
   デパケンR 1600mg→2000mgへ増量
 A)デパケン増量による傾眠・高NH3血症
 P)眠気で困る、ボーっとなるようなら申し出るように

今回の処方
Rp2)デパケンR錠200mg 8T / 2x朝・夕食後
  3)トピナ錠50mg 1T / 1x夕食後

患者のコメント:「もう身体がきつくて・・・」

患者から得られた情報:
①脱力感やふらつきあり、眠気や意識がボーっとなるようなことはない
②仕事はデスクワーク中心で汗をかくようなことはない
③腎結石の既往歴あり
④サプリメントの摂取はない

□CASE 40薬歴
#2:トピナ初回服薬支援
  S) もう身体がきつくて・・、脱力感・ふらつき(+)
 O) デパケンRは1600mgに戻り、トピナが追加となる
   仕事:デスクワーク中心で汗をかくことなし
   腎結石の既往歴(+)
   サプリメント摂取(-)
 A) トピナ初回のため服薬支援
   特に腎結石素因(+)なので注意要
 P) トピナも脳神経の興奮を鎮めて発作を予防します。
   デパケン同様に眠気には注意が必要
   汗をかきにくくなったり、腎結石ができることがあるので、
   水分を十分に取って予防するようにしてください。

□解説
 2006年ガバペン、2007年トピナ、2008年ラミクタールと新しい抗てんかん薬が登場し、薬剤選択の幅は広がってきている。新しい抗てんかん薬は従来の抗てんかん薬に追加併用される。

 CASE 40はデパケン1剤でのコントロールを試みたが適わず、トピナが追加併用となった症例だ。トピナの「重要な基本的注意」を下記に示す。

 トピナ「重要な基本的注意」

1)腎・尿路結石があらわれることがあるので、結石を生じやすい患者に投与する場合には十分水分を摂取するよう指導すること。

2)代謝性アシドーシスがあらわれることがあるので、本剤投与中、特に長期投与時には、重炭酸イオン濃度測定等の検査を患者の状態に応じた適切な間隔で実施することが望ましい。

3)発汗減少があらわれることがあり、特に夏季に体温が上昇することがあるので、本剤投与中は体温の上昇に留意し、このような場合には高温環境下をできるだけ避けること。なお、あらかじめ水分を補給することにより症状が緩和される可能性がある。

4)体重減少を来すことがあるので、本剤投与中、特に長期投与時には、定期的に体重計測を実施するなど患者の状態を慎重に観察し、徴候が認められた場合には、適切な処置を行うこと。

5) 連用中における投与量の急激な減量ないし投与中止により、発作頻度が増加する可能性があるので、投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行うこと。なお、高齢者、虚弱者の場合は特に注意すること。

6)眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。

7) 本剤は血液透析により除去されるので、透析実施日は本剤の補充投与を考慮すること。

8)投与開始に先立ち、主な副作用について患者に説明し、異常が認められた場合には、速やかに主治医に連絡するよう指示すること。

 2)4)5)は初回に確認する必要はない。7)は関係なし。そこで1)3)6)を念頭におき、患者に質問を行い、O)情報を得る。腎結石の既往歴を確認したので、そこを重点的に服薬支援を行っている。

 また、トピナはCYP3A4の基質薬剤で、CYP3A4を誘導するセイヨウオトギリソウに注意する必要があるので、サプリメント摂取についても確認し、O)情報に加えている。

□考察
 トピナの投薬・服薬支援をはじめて行った。禁忌は過敏症で副作用歴(-)なら飲んでみないとわからないね、用法・用量NP、慎重投与該当なし、重要な基本的注意は8っつもあるの!それから併用注意と代謝という感じで添付文書を眺める。

 伝えることはいっぱいある。何を重点的に伝えるかは患者のリスクファクター次第となる。患者というフィルターを通して薬剤を観るわけだ。

 患者がどんなフィルターをどのくらい持っているか。それを質問にて確認する。O)情報を得ていく。ここでは、薬剤の知識とその状況を考慮した質問力が必要となる。今後は状況が変化していくことを確認または想定しながら、モニタリングしていく必要がある。

 フィルターはもともと「光の通過を制限する」のが役目であり、二枚のフィルターによって、光は完全にカットされていたにもかかわらず、あえて三枚目のフィルターを足すことによって、光は復活するのです。
 いったい、なぜでしょう? モノ的な思考では、この現象は決して理解することができません。
 これは、ようするに、光の「偏光状態」が、光というモノが単独でもっている客観的な性質ではなく、観測装置との関係によってしか決まらない、ということのなのです。
 偏光状態は光というモノの属性ではありません。偏光状態は光とフィルターの関係性によって決まるコト的な属性なのです。偏光状態は光の属性でもなく、フィルターの属性でもありません。観測装置(=フィルター)と観測対象(=光)の関係性なのです。(*1)

 服薬支援も同じだ。服薬支援も薬剤によって決まるものではない。薬剤と患者の関係性によって、はじめて意味のあるものになるのだから。

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*1:世界が変わる現代物理学(ちくま新書) 竹内薫 著

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2008年12月19日 (金)

アーチストとCOPD

疑義照会はどこに記録すべきか?
もちろん、調剤録と薬歴。
薬歴ではどこに書くべきかを考える。

CASE 9
  72歳男性 
  既往歴:心房細動(af)、糖尿病、肺気腫(COPD)、前立腺肥大症(BPH)、白内障
  他科受診:なし 併用薬:なし

 
    Rp1)アマリール錠3mg 2T/2x
    Rp2)グルコバイ錠50mg 3T、ビオフェルミン錠 3T/3x毎食前
  Rp3)アーチスト錠10mg 1T、アクトス錠15mg 1T、ワーファリン錠1mg 2.5錠、ハルナールD錠0.2mg 1T/1x
  Rp1)~3)14TD
  Rp4)スピリーバ吸入用カプセル 14C

  患者のコメント:「少し歩くときつい。今度、C病院の呼吸器科に行ってみるつもり」

 薬剤師とのやりとりで得られた情報:今日は患者が多かったので薬のみ

 疑義照会:アーチスト錠10mg→メインテート錠2.5mgへ変更となる

□CASE 9の薬歴
 ♯1 COPDとβ-ブロッカー
  S)少し歩くときつい。今度、C病院の呼吸器科に行ってみるつもり
  O)アーチスト服用中、β1選択性なし→COPD悪化の恐れあり
  A)β1選択性のメインテートなどが適
  P)疑義照会によりメインテートへ変更となる旨を伝える
   呼吸状態と脈拍の変化に注意するように指導
   脈拍が80以上→申し出る

  
□解説
 afのレートコントロールのためにアーチストを服用。アーチストはα遮断作用もあり有用な薬だが、β1選択性はない。
アーチストの添付文書によると

 禁忌
 1. 気管支喘息、気管支痙攣のおそれのある患者
  [気管支筋を収縮させることがあるので喘息症状の誘発、悪化を起こすおそれがある。]


となっているがCOPDも注意が必要だ。

 そこでアーチストが症状悪化の原因と考え、β1選択性のあるメインテートを提案する。
βの効果は個人差があるので換算が難しい。afのレートコントロールは60~80回/minが目標である。

以上を踏まえ、服薬支援に至る。

 このCASEではメインテート変更後に劇的に改善。「肥後カントリークラブの坂道も楽々。ありがとう」とのうれしいコメントを頂いた。

□考察
 疑義照会はどこに書くべきか。O)の場合もあれば、P)の場合もある。SOAP形式の中には入れずに欄外として扱うこともしばしば。どこに書けば患者のためのP)ができるかを考えればよいのではないだろうか。

 
 もちろん、疑義照会は薬剤師のアピールすべき仕事である。しかし、服薬支援に直接関係ないのであれば、欄外に必要事項を記入しておけば十分と考える。今回のCASEでは、患者に処方変更となった経緯を説明する必要があり、それに伴う服薬支援が必要と判断したためSOAPの中に組み込んだに過ぎない。

 
 また、プロブレム(#)の広さも影響する。「#1:COPDとアーチスト」「#2:β-ブロッカー変更による心拍への影響」と分けて記載することもできた。どうやって適切な広さのプロブレムをとればよいかと訊かれると、答えに窮する。現実的には「費用対効果」でおちつくところを選んでいるように感じる。

 ただし、なんでもプロブレムを広くとっていると、アセスメントが書けない状態に陥ることもすくなくない。一朝一夕にはこのセンスは磨けないだろう。常住坐臥、意識して取り組みたい。

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