カテゴリー「(11) 肝臓」の3件の記事

2013年6月14日 (金)

NSAIDsの禁忌「重篤な肝障害」とは?

肝硬変とNSAIDs
NSAIDsの禁忌「重篤な肝障害」とは?
なぜ禁忌なのか? それが守られないのはなぜなのか?

CASE 142

60歳 男性

定期処方:
Rp 1) アルダクトンA錠25mg  1錠
    ダイアート錠60mg        1錠
    オメプラゾール錠10mg  1錠 / 1x朝食後 14日分
Rp 2) ピアーレDS95%  13.6g  / 2x朝・夕食後 14日分
Rp 3) ロキソニン錠60mg 1錠 / 1x疼痛時 10回分

併用薬(5日前から整形外科より):
Rp 4) セレコックス錠100mg 2錠
     レバミピド錠100mg     2錠 / 2x朝・夕食後 7日分

患者のコメント:
「肩が治らんからね、整形にかかってみた。
なんか胃にやさしいのを続けて飲むように言われて、飲んでたんだけど、
顔と足がむくんでね。飲み合わせが悪かったんかな?
先生に話したら、整形の薬は止めて、これ(ロキソニン)にしときなさいって」

薬歴から得られた情報:
① 肝硬変、腹水(+)
② ロキソニンの服用歴は長く、アレルギー性の副作用の心配なし

患者から得られた情報:
① 整形のDrよりロキソニンの中止指示(+)→併用はしていない
② セレコックス・レバミピドは今朝から中止している
③ 動悸や息切れ(-)、尿の出もOK

□CASE 142の薬歴
#1 肝硬変と副作用を考慮し、NSAIDsはロキソニンを服用する
  S) 整形の併用薬にて、顔と足にむくみ→「飲み合わせが悪かったんかな?」
    併用薬を中止してロキソニンで対応するように指示(+)
 O) セレコックスを5日連用、ロキソニンは併用していない
    肝硬変、腹水(+)
 A)  肝障害のためにセレコックスが蓄積したのだろう。
     半減期が短く、飲みつけたロキソニンの頓用が適
 P) 飲み合わせではなく、セレコックスが蓄積したため。
    肝硬変があると、Drが考えている以上に身体の中に残る薬がある。
    飲みつけたロキソニンの頓用で今後も対応を。

□解説
 内科にて肝硬変治療中の患者が、整形外科を受診。セレコックスを5日間を服用し、副作用が発現。その状態で内科を受診したときの話。

 
 薬局にて「飲み合わせが悪かったんかな?」との質問を受ける。

 セレコックスとロキソニンを併用していたわけではない。ならば、考えられるのはセレコックスの蓄積だ。なぜなら、この患者は肝硬変を患っており、NSAIDsが肝消失型薬剤だからだ。

 下記に、セレコックスの添付文書より該当箇所を引用する。

 Photo_2

 肝障害患者では、軽度にてAUCが約1.3倍、中等度ではAUCが約2.7倍にもなる。この患者の重症度はわからないが、結果からみると、蓄積のしにくいもっと半減期の短いNSAIDsを選ぶか、セレコックスの用量をぐんと減らすべきだったのだろう。

 さて、患者の質問に戻る。薬剤師の見解を伝え、「飲みつけたロキソニンの頓用」での対応をお願いする。

 「まいったね~。もう怖いから整形はやめとこう」との返答だった

□考察
 NSAIDsの禁忌にはもれなく「重篤な肝障害のある患者[副作用として肝障害が報告されており、悪化するおそれがある]」の記載がある。

 これは「NSAIDsが肝消失型だから、肝臓に負担をかける」からではない。

 この禁忌は「劇症肝炎などの重篤な副作用がおこったときに、重篤な肝障害をもともと有していると致死的なことになってしまうから」なのであって、ずっと飲み続けているようなNSAIDsでは考える必要がない。

 じつは今回の症例のセレコックスも、禁忌の設定理由は他のNSAIDsと変わらない。しかしNSAIDsの中でもセレコックスだけには、添付文書の「特殊集団における薬物動態」の項において、肝障害患者でのAUC上昇のデータの記載がある。でも、これは禁忌の設定理由とは関係がない。

 肝障害の重症度、つまりChild-Pugh分類(これは肝硬変の重症度分類、CASE 54「本当の肝機能」を参照)が把握できており、かつAUCの上昇を考慮して、充分に減量すればセレコックスを安全に処方することは可能だ。

 しかし、禁忌の設定理由から考えると、初めてのNSAIDsを使う場合、アレルギー的な(ボルタレンなどは代謝性特異体質的な)肝障害というのは飲んでみないとわからない。

 であるならば、飲みつけたNSAIDsがあり、かつ半減期が短く蓄積しにくいものを選ぶというのがベストな選択になるだろう。

 じゃあ、飲みつけたNSAIDsが無い場合は? その場合も蓄積しにくい、つまりロキソニンのような半減期の短いNSAIDsをやっぱり提案することになるだろう。そして、飲み始めから2ヵ月くらいは肝機能(GPT・GOTの上昇)に注意するしかない(ロキソニンによる肝障害はアレルギー性特異体質によるから)。そうでないと、この患者はNSAIDsを何も使えないことになる。

 そういう意味でもこの禁忌設定は乱暴なものだと思う。

 例えば、フラジールという抗生物質があります。これは、脳に異常を起こす副作用をときどき起こします。けいれんを起こしたりする可能性があります。ですから、アメリカの説明文書では、「もしフラジールを使っていて患者さんがけいれんを起こしたら直ちにフラジールはやめましょう」と書いてあります。これは、妥当な文章だと思います。
 しかし、日本の薬の添付文書は違います。「脳にもともと病気のある人には、フラジールは使ってはいけませんよ」と書いてあるのです。こんなことはアメリカの説明書には書いてありません。
 「脳に異常を起こす可能性がある」というのと「脳に病気がある人には使ってはいけませんよ」というのは全く異なる意味です。でも、本当にフラジールがないと治療ができない患者さんがいるかもしれません。

(岩田健太郎『感染症は実在しない 』北大路書房 P. 216)

 「肝障害が悪化する可能性がある」というのと「肝障害がある人には使ってはいけませんよ」というのは全く異なる意味です。でも、本当にNSAIDsがないと治療ができない患者さんがいるかもしれません。

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2011年10月14日 (金)

むくみとアミノレバンEN

むくみは肝臓から? それとも腎臓?
アミノレバンEN服用中ならもちろん
病識が意外な形で露呈した症例

CASE 103

72歳 女性 
他科受診:なし 併用薬:なし

定期処方:
Rp1) アミノレバンEN 100g / 2x朝食後と寝る前
  2) プロマック顆粒 1g / 2x朝・夕食後
 3) タケプロンOD錠15mg 1T / 1x就寝前
 4) ウルソ錠100mg 6T / 3x毎食後

患者のコメント: 「アミノレバンは苦くていやね。実はまだ1箱あるのよ」
          「最近、足がむくむ。腎臓も悪いのかしら?」

薬歴から得られた情報:
① C型肝炎→肝硬変
② 腹水(-)、脳症(-)
③ 直近のデータ
  GOT:43  GPT:40
   Plt:9.0  Alb:2.7  TC:116
   eGFR:68

□CASE 103の薬歴
#1 病識不足を補いアミノレバンENを飲んでもらう
  S) 最近、足がむくむ。腎臓も悪いのかしら?
 O) 「アミノレバンは苦くていや」→残1箱(+)
   Plt:9.0  Alb:2.7  TC:116、eGFR:68
 A) 病識不足のため、アミノレバンの服薬意欲が低い
 P) むくむのは腎臓ではなく、肝臓が原因です。
    Albが低いからむくむんです。ここは3.0 をキープしたい。
    そしてそのためのアミノレバンです。
 R) 肝硬変になるとダメね。
    アミノレバンのフレーバーを全種類持っていかれる

 
□解説
 患者の一言から病識が明らかになった症例だ。

 「最近、足がむくむ。腎臓も悪いのかしら?」ここにフォーカスする。この患者は肝硬変で、そのコントロールはよくない。Albが2.7 しかない。そうすると血管内に水分を保持できなくなり、組織に水分がしみでていく。そして、むくむ。

 患者は足のむくみと肝硬変が結びついていない。病識が欠けている。とうぜん、アミノレバンENがこのための薬であるという認識もない。つまり薬識も欠けている。

 まず足のむくみが肝臓からであることを認識してもらえば、そのあとの話はスムーズになるはずだ。つまり、アミノレバンENもきちんと飲むようになるはず。そう考えて服薬支援を行っている。
 
 
□考察
 この患者は病歴も長く、当薬局においでになってからずっと同じ状態だった。

 血小板がどのくらい、アルブミンやコレステロールがどのくらいという話もよくしていた。アミノレバンENも肝臓のためとがんばって飲んでいる様子だった。

 つまり、肝機能はどの数値で判断するのか(CASE 54参照)、そしてアミノレバンENは(漠然と)肝臓の薬であるということは理解できていた。しかし惜しい。その病識、そして薬識はやや欠けていた。

 それらは同時に指摘しないとつながらないものなのかもしれない。

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2010年3月26日 (金)

本当の肝機能

禁忌「重篤な肝障害のある患者」
どんな状態? 何を指標にする?
本当の肝機能とは?

CASE 54

65歳 男性

処方:
Rp1) ニューロタン錠25mg 1T
    バイアスピリン錠100mg 1T / 1x朝食後 28日分
Rp2) ウルソ錠100mg 3錠 / 3x毎食後
Rp3) ロキソニン錠60mg 1T / 1x疼痛時

Drより相談:「ニューロタンが保険でカットされた。他のARBもダメか?」

薬歴より得られた情報:
① ニューロタンは服用3年になる
② 血圧コントロールは良好

カルテより得られた情報:
① 肝硬変・肝がんの既往(+)

□CASE 54の薬歴
#1 ARBと肝障害
 S) ニューロタンが保険でカットされた。他のARBもダメか?
 O) 肝硬変・肝がんの既往(+)
 A) ニューロタン・ミカルディスは重篤な肝障害に禁忌であり、
   他のARBは慎重投与。ACE-Iは腎排泄のためNP。
 P) ニューロタン・ミカルディス以外は使用可。ACE-Iは腎排泄のため使用可。
   ARBはすべて肝排泄なので少量の使用を勧める。

□解説
 Drとの協議の内容を薬歴に残したもの。これは本来、SOAPで記載する必要がない。いわゆるクセに近いものかもしれない。

 患者に肝硬変や肝がんの既往があることは全く把握できていなかった。Drより相談された際にカルテの病名より確認した。

 ARBはすべて肝排泄型であり、肝障害があれば血中濃度の上昇や排泄遅延・蓄積といったものが考えられる。しかしARBごとに、やや差があるようだ。各社のPDR(米国の添付文書)やIFによると

 軽症から中等症の肝障害における投与量の調整
 ニューロタン  少量から投与すること(PDR)
 ブロプレス    中等症では少量から投与すること(PDR)
 ディオバン     少量から投与すること(IF)
 ミカルディス   重篤な肝障害の患者では投与禁忌(IF)
 オルメテック  必要なし(IF)
 
  *藤田敏郎編集「ARBの新しい展開」(日本医学出版)を参考

 添付文書上では、「重篤な肝障害」に対してニューロタンとミカルディスの2剤が禁忌となっている。イルベタン(アバプロ)まで含めた他のARBは慎重投与であるのでカットされる可能性は低いと考え、回答している。

□考察
 「重篤な肝障害のある患者には禁忌」の線引きをどう考えればよいだろうか。そもそも添付文書上での「軽症の肝障害」とはどんな状態を指しているのだろうか。GOT・GPTが上昇している状態のことなのか。

 ヒントとなる言葉が‘Child-Pugh分類’だ。以下はミカルディスの添付文書からの抜粋である。

 5. 肝障害患者への投与
肝障害男性患者12例(Child-Pugh分類 A(軽症):8例、B(中等症):4例)にテルミサルタン20mg及び120mg注)を経口投与したとき、健康成人に比較しCmaxは4.5倍及び3倍高く、AUCは2.5倍及び2.7倍高かった。16)
[16)は外国人のデータ]
注)肝障害のある患者に投与する場合の最大投与量は1日40mgである。

 つまり、添付文書上での肝障害の軽症、中等症といったものは‘Child-Pugh分類’に基づいている。これは‘肝硬変の重症度分類’のことなのだ。軽症といったその言葉自体のイメージに惑わされてはいけない。

 であるならば、何を指標に薬学的な判断(疑義照会など)をすればよいか。GOTやGPTは本当の肝機能ではない。障害を受けると結果的に上がってくるものであり、腎臓で例えるとBUNやたんぱく尿のようなものだ。
 
 本当の肝機能を示すものは、血小板、アルブミン、コレステロールといったものである。これらの合成能こそが本当の肝機能だ。いちばん最初に減少してくるのは血小板、そしてアルブミン、コレステロールが減少してくる。

 血小板が減少してきたら、肝機能は低下してきている

 こう考えるとスッキリする。血小板が15万~20万くらいあれば肝臓は悪くない。肝硬変で10万、肝がんになると6~8万くらいといわれている。

 血小板が10万以下ならば、肝排泄の薬は減量を考える。

 これが僕の疑義照会やトレースレポートのラインとなっている。

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