カテゴリー「(10) 腎臓」の16件の記事

2016年12月23日 (金)

車イスの高齢女性への高用量レボフロキサシンに待ったをかける

高齢者への高用量クラビットの処方。
腎機能を確認しているドクター。
検査値表示の仕方で対応できるのでは?

CASE 188

女性 90歳 

他科受診:なし  併用薬:なし  

定期処方
Rp1) ロサルタン錠50mg 1錠
         フェロミア錠50mg    1錠  朝食後  28日分

Rp2) ルネスタ錠1mg  1錠   
      プルゼニド錠12mg  2錠 分1 就寝前 28日分

今回の処方
Rp3) レボフロキサシン錠250mg 2錠 分2 朝・夕食後 3日分

Rp4) カロナール錠300mg 1錠 発熱時 5回分
         

患者の娘のコメント:
「熱が下がらなくて。CRPが高いから入院したほうがいいって」

患者・薬歴からの情報:
① 患者の体格 TALL:148cm、BW:36kg
② 車イスで通院。自宅でもほとんど歩けない。
③ 正確な腎機能の把握(-)
④ 食事は摂れておらず、病院にて点滴(+)

疑義照会:
(内容) おそらくレボフロキサシン過量では?
(回答) Rp3)→Rp5)6)へ変更
     Rp5) レボフロキサシン錠250mg 2錠 分1 夕食後 1日分(初日)
     Rp6) レボフロキサシン錠250mg 1錠 分1 夕食後 2日分(2・3日目)

□CASE 188の薬歴
#1 レボフロキサシンによる腎後性腎障害の予防
 S) 熱が下がらなくて。CRPが高いから入院したほうがいいって
 O)  疑義にて、レボフロキサシン減量。食事(-)→点滴(+)
 A)  発熱→脱水→レボフロキサシンによる腎後性腎障害のリスク(+)
 P) 抗生剤の服用を間違えないように、薬袋の指示通りに。
   食事摂れなくても服用してよいが、脱水にならないように水分をしっかりと。
 
□解説
 もう当薬局を長く利用している患者さん。ゆえに性格・体格はよく把握していたものの、今まで腎機能が問題になるような薬の服用がなく、意外にもS-Crの記載がまったく見当たらなかった。

 しかし、90歳で、36㎏、そして最近は車イスなのだから、レボフロキサシン500mg連用は明らかに過量だ。そして、その理由も見当がついていた。

 医師に照会すると、熱もCRPも高く、抗生剤をしっかり効かせたいとの意向。そして、腎機能はS-Crが0.4だから問題ない、と。

 やはりだ。車イスを使用し、36㎏なのだから、当然その筋肉量は少ない。ということは、S-Crが高くなるはずがない。そして、S-Crが0.6未満の数値というのは、S-Crをもとにした推算式には使ってはならないのだ。S-Crが0.6未満の値を使用したeGFRやCCrというのは大きな値となることが多く、これはS-Crをもとにした腎機能予測の限界といっていいだろう。

1_2

 試しにS-Cr:0.4で、日本腎臓病薬物療法学会のサイトで計算してみると、なるほどレボフロキサシン500mg連用で問題なさそうに見える。しかし繰り返すが、0.6未満の数値をS-Crをもとにした推算式に使ってはならない。推算式を使いたいのなら、0.4ではなく0.6を代入して用いると幾らか近づくだろう(S-Cr0.6は推算式が当てになる限界値だから)。

2

 S-Cr0.6なら、少しは現実味を帯びた数字が出てきた。では、結果のどれを用いるべきか。もちろん補正値は使わない。そして、患者は自力歩行が難しい車イスを要するフレイル患者だった。ということは未補正CCr、つまり、35.42mL/min、これを用いるべきだ。

 医師に腎機能評価について簡単に説明し、さらに鉄剤とのキレート回避も視野に入れ、Rp5)6)を提案し、採用となる。

3
 (クラビットの添付文書より)

 ここまでは投薬前での作業。投薬時には脱水からレボフロキサシンが腎後性腎障害を引き起こすことなのないように、と服薬指導を行っている。
 
□考察
 腎機能の評価には、どの値を、どのように用いるべきか。これは慣れるまで大変だ。薬剤師ですらそうなのに、医師にはなおさらなのではないだろうか。

 低いS-Crは、腎臓が良いからなのか、筋肉量が少ないためなのか、これは患者をみて判断するしかない。そして、どちらにしても、S-Cr0.6未満はS-Crをもとにした推算式による腎機能評価には適していない。

 今回のような事案では、例えば検査値の結果表示にでも、S-Cr0.6未満の場合には、この値もしくはこの値を使用したeGFR(CCr)を鵜呑みにしないでください、と一言アナウンスをしてくれると非常に助かる。同様に高すぎるeGFR表示に対しても(欲を言えば、補正値ですよ~、1.73m2は身長170cm・体重63kgに相当しますけど、そんな体格の患者はほとんどいないから、もっと悪いですよ~etc.etc.)。

 腎後性腎障害についてはまた別の機会に。

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年2月13日 (金)

クレストールを重度腎機能低下患者に用いる場合の上限用量は5mgです

クレストールと腎機能。
疑義照会のライン。
胆汁排泄なのにね・・・

CASE 167

女性 90歳 

他科受診:なし、併用薬:なし

定期処方:
Rp1) バイアスピリン錠100mg 1錠   
    ダイアート錠60mg         1錠 
    レザルタスHD錠      1錠 分1 朝食後   28日分
Rp2)ネキシウムカプセル10mg 1C 
    クレストール錠5mg         2錠 分1 夕食後 28日分

*クレストールが5mg/日→10mg/日(1錠→2錠)に増量になっている

患者のコメント:
「コレステロールが高すぎるのが悪さをしているかもしれないと」

薬歴・患者から得られた情報:
① 血管痛の訴え
② LDL-C:240(FH)
③ S-Cr:1.4、Tall:140、BW:50→Ccr:21mL/min

疑義照会:
(内容)高度腎機能低下者にはクレストールは5mgが上限
    他のストロングスタチンは問題ない
(回答)クレストール錠5mg 2錠→リバロ錠4mg 1錠へ変更

□CASE 167の薬歴
#1 リバロ初回指導
  S) 血管痛(+) コレステロールが高すぎるのが悪さをしているかもしれないと
 O) LDL-C:240
   クレストール5mg→10mg→疑義にて、リバロ4mg
 A) リバロの服用初、念のため、横紋筋融解症の初期症状のアナウンス
 P) コレステロールの薬が変更に、飲み方は今まで通り。
   四肢の脱力感やコーラ色尿(+)→中止・受診
 
 
□解説
 クレストールが10mgに増量になっていた患者。90歳だしな~と思いながら検査値を伺うと、たしかにLDL-Cは高すぎる。ついでにS-Crも確認すると1.4とこれまた高い。Ccrを算出すると21で、高度腎機能障害を呈している。この場合のクレストールの上限用量は5mgだ。

Photo

 患者はもうすでに上限の5mgを服用中のため、疑義照会を行う。とにかくスタチンをMaxで使いたいというDrの意向を踏まえ、他のストロングスタチンにはそのような縛りがないことを伝え、リバロ錠4mgへ変更となっている。

 これで疑義は解消されたため、リバロの初回服薬指導を行った。
 
□考察
 高度腎機能障害の患者にクレストールを投与すると、その血中濃度は3倍に上昇する。

Photo_2

 5mgまでなら3倍になったとしても、通常用量の上限の20mgまでに収まるが、10mgで投薬していたら、ちょっと怖かった。重篤な副作用である横紋筋融解症のこともあるが、他にも不安な点がある。用法・用量には、20mg投与時に腎機能のモニタリングを義務付けているし、IFを見ると、海外用量の40mgでは蛋白尿の発現頻度が上昇し、80mgにもなると血尿が生じている。

 つまり、クレストールは20mg以上相当の高用量になるとそれ単独で腎毒性があるようだ

 それにしても胆汁排泄型のクレストールが高度腎機能障害患者において、用量の調節が必要となる理由はなんなのだろうか? 僕はコラムで書いたように、ただ例外として覚えている(参照:サインバルタはどうして透析患者に禁忌なの?)。

 ここまで書いていて思い当たる。ゼチーアという選択肢もあったな、と。ここぞというときに提案できなければ、その知識は意味がないのに。まだまだだな。

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2014年12月12日 (金)

アクトスは「重篤な腎機能障害のある患者」に禁忌なのか?

合剤には注意。
腎排泄型DPP-4阻害薬は減量で対応。
重篤な腎機能障害に禁忌のアクトスは?

CASE 165

男性 50歳 

他科受診:なし、併用薬:なし

定期処方:
Rp1) カルブロック錠16mg 1錠 
        オルメテック錠20mg   1錠
    リオベルLD錠     1錠 分1 朝食後  28日分

Rp2)フロセミド錠40mg   2錠 分2 朝・昼食後  28日分

Rp3)炭酸水素ナトリウム 4.5g 分3 毎食後   28日分

患者の家族のコメント:
「身体がきついみたい。仕事のとき以外はほとんど動かない」

患者、お薬手帳から得られた情報:
① 今の仕事が終わり次第、透析導入予定(まだ半年は無理と言っている)
② お薬手帳より重層が増量 3g→4.5g
③ 門前の薬局で待つのがきついため、本日より当局へ

疑義照会:
(内容) 透析導入予定→ネシーナ過量
(回答) リオベルLD→4)へ変更

Rp4)ネシーナ錠6.25mg  1錠
    アクトス錠15mg   1錠  分1 朝食後 28日分

□CASE 165の薬歴
#1 処方変更の内容を理解してもらう
  S) 身体がきついみたい。仕事のとき以外がほとんど動かない
 O) 透析導入予定(今の仕事が終わり次第、半年先?)
   重層→増量、疑義にてネシーナ減量
 A) 身体のきつさはネシーナの蓄積ではなく、アシドーシスだろう。
   どちらにしろ、処方変更について理解してもらう必要がある。
 P) 身体にたまった酸を中和する必要があります。
  飲みにくく、量も多くなりましたが粉薬をしっかりと。
  糖の薬はDrと相談して、数は増えましたが、薬の量自体は減っています、と伝えてください。お薬手帳にもその旨を記載しておきます。
 
□解説
 透析を先延ばしにしている患者。待ち時間がつらいとの理由で当局へ。お薬手帳から薬はほとんど変更がなく、リオベルLDもずっと続けていた。

 疑義にて、リオベルの中のDPP-4阻害薬ネシーナは腎排泄型で減量を提案する。アクトスについては減量の必要はないとの意見も合わせて伝え、Rp4)へと変更となった。

 患者の主訴のきつさは、透析導入を先延ばしにしていることにあり(おそらくアシドーシスが問題)、ネシーナの蓄積ではないだろうと判断するも、処方変更への理解が必要であり、そこを重点に服薬指導を行っている。

参考2:CKD病期によって発症する諸症状
     GFR <45mL/min:易疲労感、労働能力の減退
         <30mL/min:貧血、代謝性アシドーシス、Ca・P代謝障害
         <15mL/min:消化器症状
         <10mL/min:浮腫、心不全、高K血症、出血傾向、不眠、精神症状
 
□考察
 今回のケースにおいて、肝消失型であるアクトスが蓄積する可能性はほとんどないと言っていい。ではなぜ、アクトスは「重篤な腎機能障害」に対して禁忌なのか?

 その答えをIF等に見出すことができない。どうもこれは発売した時期に関係するようだ。アクトスが発売された当時はSU剤やBGにおいて重篤な腎機能障害に禁忌だったから、それに倣った。当時は厳しかった。そんな答えしかメーカからは帰ってこない。

 これに対してアメリカでは、アクトスは重篤な腎機能障害には禁忌ではない。

 腎機能障害患者に安心して使える経口糖尿病薬は少ない。SU剤やナテグリニドは重症低血糖、BGは乳酸アシドーシスとただでさえアイテムが少なくなるなか、こんなくだらない理由でわざわざ選択肢を少なくする必要はないではないか。

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年1月24日 (金)

ねたきり患者へのタミフル

90歳、ねたきり、S-Cr:1.1
腎排泄型薬剤の投与量をどう考える?
菅野先生から教わった式。

CASE 155

90歳 男性 
他科受診:なし 併用薬:なし

定期処方:
Rp1)バイアスピリン錠100mg 1T
       ラシックス錠40mg         1T
    アルダクトンA錠        1T
    アリセプトD錠5mg        1T /1x朝食後 28日分
  2) レバミピド錠100mg     3T
    マグミット錠250mg        3T
    アントブロン錠15mg      3T / 3x毎食後 28日分
  3) プルゼニド錠12mg     2T
     デパス錠0.5mg          1T / 1x就寝前 28日分

臨時処方:
 4) タミフルカプセル75mg  2C / 2x朝・夕食後 5日分
 5) カロナール錠300mg     1T / 1x発熱時   10回分

患者の娘から得られた情報:
① 「孫がインフルエンザで、本人も急に38度だから間違いないだろうと」
② 本人は連れてきていない。
③ 食事はおかゆを食べた。水分は摂っている。尿量はわからない。
④ 吸入薬は吸う力も弱いし、難しいと思うので断った。

薬歴から得られた情報:
① ほぼねたきりの状態で、痩せている。
② いつもは車椅子にて診察。
③ 先月のS-Cr:1.1、体重はわからない。

疑義照会:
(内容)ねたきり、90歳、S-Cr:1.1 タミフルの減量を提案
(回答)タミフル2Cから1Cへ減量 Rp4)→Rp5)へ変更
    Rp 5) タミフルカプセル75mg 1C / 1x朝食後 5日分

□CASE 155の薬歴
#1 タミフルを1xでしっかり続けてもらう
  S)孫がインフルエンザで、本人も急に38度だから間違いないだろうと。
   吸入薬は吸う力も弱いし、難しいと思うので断った。
 O) ねたきり、痩せ身で90歳、S-Cr:1.1
   おかゆ、水分は摂れているが、尿量はわからない。
   疑義照会にてタミフル減量 2C→1C
 A) 潜在的な腎機能低下は間違いない→疑義照会にて大丈夫だろう。
   ハイリスク患者なので、しっかり飲んでもらう必要がある。
 P) 医師と相談して、状態にあわせた量にタミフルを減量。
   今日はすぐに1Cを服用。明日からは朝で5日間しっかりと。
   それでもボッーとなる、うわ言を繰り返すようなら、中止・受診を。

 
□解説
 今回のテーマはタミフルを減量するか否か。S-Cr:1.1(男性の正常値 0.6~1.1)。S-Crが異常値ならば、医師も考慮しただろう。さらに、体重もわからず、クレアチニンクリアランスを算出することもできない。

 ただ、ねたきりの場合は、筋肉量が極端に少ないことが多いために、S-Crが当てにならない。ということは体重がわかったとしても、そのクレアチニンクリアランスが当てにならない。

 代替薬としてすぐに浮かんだリレンザやイナビルも、すでに医師とのやり取りの中で患者(の娘)の方から断っている。

 S-Crでは判断できないとなると、なにが手掛かりになるかというと、いちばんはやはり尿量なのだろう。でも、これも薬局窓口ではわからないことが多いし、どう利用すればいいのか・・・。

 となると、はっきりわかるのは年齢だけということになる。この「年齢しかわからない場合」において、高齢者のクレアチニンクリアランスを推測する手段がある。これは、どんぐり工房の菅野彊先生からの教えだ。

 高齢者のクレアチニンクリアランスを推測する
 ①年齢しかわからない場合

 
高齢者のCLcr=若年者CLcr-若年者CLcr x [(年齢-25)x1.0%]

 ②年齢、血清クレアチニン値、体重がわかる場合
 Cockcroft-Gaultの式

 男性CLcr=[(140-年齢)x体重]/[72x血清クレアチニン]
 
女性CLcr=男性CLcr x 0.8

 「25歳を超えると、クレアチニンクリアランスが年に1%ずつ低下していく」といわれており、90歳の患者のクレアチニンクリアランス低下率は、(90-25)x1.0%=65%となる。

 若年者のクレアチニンクリアランスを100mL/minとすると、推測クレアチニンクリアランスは、100mL/min-100mL/min x 0.65 = 35mL/min となる。

 タミフルはCLcr>30で通常用量となるが、上記はあくまでも推測値であり、ねたきりなのにS-Crが1.1もあるため、副作用のリスクを考慮し、医師と相談したうえでタミフルを半量に減量することになった。

 しかし患者は、高齢そして慢性心疾患とハイリスク患者でもある。減量した分、1日1回はしっかりと服用してもらったほうがいいだろうと考え、服薬指導を行っている。

 
□考察
 腎機能別薬剤使用マニュアルによると、

タミフルの腎不全時の1回投与量と投与間隔
 
 Ccr>30   1回75mg 12時間間隔
 10<Ccr≦30  1回75mg 24時間間隔
 Ccr≦10      推奨用量は確立していない

 となっている。

 今回は年齢からの推測値(CLcr:35)ではあったが、ねたきり状態だったので、「10<Ccr≦30」を採用した。

 たとえば、この患者の体重が45kgでねたきりではなかったら、Cockcroft-Gaultの式が使えて、CLcrは28.4となり、「10<Ccr≦30」の用量で問題はなかっただろう。

 だが、90歳でほんとうにCLcrが35だったとして、通常用量でよいのか? ちょっと気になったので、投与量を計算してみた。

 D(r)=D-Dxfu x [(CLcr-CLcr(r))/ CLcr ]

 腎障害患者投与量=腎正常者投与量-腎機能低下による蓄積量

  D(r):腎障害者投与量
 D:腎正常者投与量(タミフル 150mg/day)
 fu:尿中未変化体排泄率(タミフルのIFより、74%)
 CLcr:腎正常者クレアチニンクリアランス(100とする)
 CLcr(r):腎障害者クレアチニンクリアランス

 これも菅野先生に教えてもらった式で、Giusty-Heyton法という。

 計算してみると、D(r)=150-150x0.74x[(100-35)/100]=77.85、1日投与量は約78mg! タミフル1C(75mg)の1xで充分のようにみえる。このくらいの、ちょっと30を超えているくらいがいちばん過量になりやすいのかもしれない。
 
 やはり腎機能低下者に対しては、リレンザやイナビルのような吸入薬を選択してもらいたい。

 タミフルしか選択肢がないときには、マニュアルよりも少しきびしめに減量を考慮するか、精神神経系の副作用を充分にアナウンスしていくしかないだろう。

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年1月10日 (金)

透析患者へのファムビル

腎機能低下患者への抗ウイルス薬。
CLcrに応じた用量でも副作用は起こっている。
透析中の場合は?

CASE 154

65歳 男性 

処方内容:
Rp 1) ファムビル錠250mg 3錠 / 分3 毎食後 7日分

患者のコメント: 「下唇と鼻の下にヘルペス。痛くてね・・・」

患者から得られた情報: 
① 他科にて透析施行中、併用薬多数
② 透析は週3回、今日これから透析予定あり

疑義照会:
(内容)過量。透析後に1錠のみを提案。
(回答)Rp 1) → 2)へ変更
        Rp 2) ファムビル錠250㎎ 1錠 / 分1 透析直後 3日分

□CASE 154の薬歴
#1 ファムビルは透析直後のみに服用する
  S)下唇と鼻の下にヘルペス。痛くてね・・・
 O) 疑義にてファムビル透析直後のみへ
    今日これから透析を受ける
 A) 透析スタッフの協力をしてもらったほうがいいだろう
 P)ヘルペスの薬は透析をしないとほとんど身体から抜けないので、透析直後のみの服用でOK。こちらから透析の病院に電話しておくので、薬をあちらのスタッフに預けておくとよい。

□解説
 皮膚科からの処方せん。抗ウイルス薬は腎排泄型薬剤の代表格なので、腎機能の低下がないかの確認をかならず行う。すると患者は透析施行中だと言う。

 ファムビルの添付文書には 「血液透析患者には本剤250mgを透析直後に投与する。なお、次回透析前に追加投与は行わない」とある。

 また、IFには

血液透析患者に関する解説

外国において、血液透析24 時間前の腎不全患者3 例を対象に、ペンシクロビル5mg/kg を1時間かけて点滴静注し、4 時間の血液透析を施行したところ、ペンシクロビルの血漿中濃度が約75%低下することが認められた。血液透析患者では腎機能が低下しており本剤はほとんど排泄されないので、本剤の250mg を透析直後に投与し、次回の透析までの期間は本剤を投与しないこと。

との記載がある。つまり透析しないと薬がほとんど抜けないわけだ。

 なお、服薬は早い方が望ましいので、初日に透析がない場合、その日は服用する。透析がある場合は透析後となる。そして、週2回の透析なら2日分、週3回の透析なら3日分、透析直後の服用でいいわけだ。

 患者は皮膚科受診後、このまま透析を受けにいくところだったので、3日分で事足りる。疑義照会にて変更後、患者に説明を行う。

 また透析直後に服用ということは、とうぜん透析施設で服用することになる。であるならば、透析スタッフの力を借りれば間違いのリスクは減るし、副作用モニタリングにもよいだろう。

□考察
 抗ウイルス薬は腎排泄型で、その用量にはとくに注意を払う。クレアチニンクリアランスに応じた用量で投薬したとしても、じっさいに副作用は起こっている。透析レベルになると、ほとんど抜けないと考えたほうがいいのだろう。

 抗インフルエンザ薬のタミフルは透析を行っても、「カプセル75mg単回投与は、腹膜透析あるいは血液透析を実施する末期腎障害患者に対し、5日間にわたりインフルエンザウイルスに効果を示す薬剤濃度を維持することが示され」ている。

 今回のファムビルは透析による除去率が75%あるため、透析後の服用となっている。ではバルトレックスはどうか? 

 クレアチニンクリアランス(mL/min):<10  500mgを24時間毎

 「血液透析を受けている患者に対しては、患者の腎機能、体重又は臨床症状に応じ、クレアチニンクリアランス10 mL/min未満の目安よりさらに減量(250mgを24時間毎等)することを考慮すること。また、血液透析日には透析後に投与すること」となっている。

 一つ苦言を述べさせていただくと、250mgを勧めてはいるが、250mg錠がないうえに、割線もなく500mgを割るとかなり苦い(顆粒製剤をすぐに手配できればいいのだろうけど…。ジェネリックで250mg錠が発売されるのを期待しよう)。

 本題に戻る。バルトレックスも4時間の透析で70%が抜けるので、透析日には透析後に服用する。しかし、250mgを24時間毎での服用を提案しており、ここがファムビルと違う。

 初日以外は透析のない日に服用のないファムビルに比べるとバルトレックスは、用量を減らしているとはいえ、透析回数によっては蓄積していくのではないだろうか。だから、精神神経系の副作用が多いのでは。そもそもファムビルの用法のほうが理論的にも適っているし。

 バルトレックスの透析患者への用法もファムビルに倣ったほうがいいかもしれない。

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

 *蛇足*
 クレアチニンクリアランスが低くなると、バルトレックスもファムビルも最終的には、単純疱疹だろうと帯状疱疹だろうと用量が変わらなくなってしまう。健常人だと2倍の差があるのに。この点も腎機能低下患者において、副作用が多いとされる原因の一つなのかも?

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年11月23日 (金)

シベノールの300mg/dayからのスタートには高いハードルがある

シベノールを300mg/日でスタート
このDoseでのスタート、じつは高いハードルです
高齢者や腎機能低下患者では疑義照会を!

CASE 130

72歳 男性 
他科受診(-) 併用薬(-)

定期処方:
Rp1) シベノール錠100mg 3T / 3x毎食後 14日分
  2) ミカルディス錠40mg 1T・メインテート錠2.5mg / 1x朝食後 14日分
  3) ソラナックス錠0.4mg 2T / 2x朝・夕食後 14日分
   4) アダラートCR錠20mg 1錠 / 1x夕食後 14日分

患者のコメント: 「体調は変わりないよ。採血はもうずっとしてないな~」

薬歴から得られた情報:
① 血圧と動悸のコントロールに苦戦。3月に現在の処方でやっと落ち着く。
② 3月に外来にてシベノール300mg/日がスタートしている。
③ 採血データの聞き取りは5月が最後 → S-Cr:0.97、eGFR:58.8

患者から得られた情報:
① 身長:170、体重:70
② ふらつきや低血糖と思われる症状はない

□CASE 130の薬歴
#1 シベノールが過量と思われる
  S)採血はもうずっとしていない。
   ふらつきや低血糖と思われる症状はなく、体調は良好。
 O) シベノール 300mg/dayを3月より継続中
    72歳、70kg、5月時点での腎機能 S-Cr:0.97 eGFR:58.8(現在不明)
 A) シベノールが過量かも? 
    蓄積による重篤な副作用が心配
 P) 採血して腎機能や不整脈の薬の量をチェックする必要があります。
    こちらからもDrに報告しておきますので、
    次回はかならず受診して採血も受けるように。
    トレースレポート提出。
 
□解説
 シベノールは腎排泄型の薬剤のため、その用量がいつも気になっている。ひさしぶりにお会いした今回の患者は300mg/日にてシベノールを継続中。ふらつきや低血糖(CASE 111 シベノールによる低血糖を参照)などはなく、体調に問題はなさそうだ。

 しかし肝心の腎機能のデータが5月のものしかない。患者に採血状況をうかがうと「ずっとしていない」という。

 患者の体格は大きいが72歳。300mgは適量なのか? 

参考:腎機能別薬剤使用マニュアル

コハク酸シベンゾリン 
300mg~450mg 8時間
高齢者200mg 12時間又は150mg 8時間

Ccr≧70      300~450mg 8時間
30<Ccr<70 1回100~150mg 12~24時間
Ccr≦30     100mg 24時間

 年齢からいっても、Ccrからも過量のはずだ。5月の時点から、もっと腎臓が弱っていることも考えられる。このままではシベノールが蓄積して重篤な副作用につながりかねない。そう考え、服薬支援を行っている。

 蓄積性の副作用であることと患者の状態が良好なことを考慮して、トレースレポートにて対応した。

□考察
 実際はトレースレポートにて対応したが、やはりその場で疑義照会をすべきだった、と今は考えている。次の来局までの2週間のあいだに何も起こらないとは言い切れない状況だったからだ。いくら薬剤の蓄積による副作用とはいえ、やはりリスキーだったと感じている。

 さて、ここからはトレースレポートを書く段階でのお話。

 「患者の体格は大きいが72歳。300mgは適量なのか?」「過量ならば、どのくらいが適量なのか?」トレースを書くとなれば、この問いに自分である程度は答えたうえで、提案をしなければならない。

 2012年7月に、適正使用のお願い「シベノール錠50mg/100mgの用法・用量の調整と臨床検査および血中濃度測定について」が製造販売メーカから出されている。

 その中に「腎機能(Ccr)を指標としたシベンゾリン初期投与ノモグラム」というものがある。

Photo

 患者の身長、体重、5月の時点のS-Crから、Ccrは68(mL/min)。体重は70kg。このノモグラムでいくと初期投与量はギリギリ200mg/日となる。もちろんこれは初期投与量であって、固体間に差はあるので、その後は血中濃度を管理していれば、これ以上の用量になっても問題はないだろう。

 しかし今回のケースではずっと採血をしていないので、この初期投与量の200mg以下、分3であれば1回50mgで提案することにした(まあ結局は、「高齢者200mg 12時間又は150mg 8時間」と同じなんだが、説得力が違うでしょ。でも、もしCcrが50以下だとすると話はうんと変わってくる)。

 そして2週間後、この患者のシベノールは150mg/日(分3)に減量されていた(もちろん採血も受けていた)。

 それにしても、この初期投与ノモグラムを眺めていると、高齢者でなくとも、シベノールを300mg/日で始めなければならない患者がどのくらいいるというのだろうか? と思ってしまう。

 Ccrが80以上でかつ体重が70kg以上。これはかなり高いハードルだと思う。だって体重が70kg以上なければ300mgのオーダーが出てこないわけだから。いっそ用法・用量を150~200mg/日とし、必要に応じて適宜増減としたほうがいいのではないだろうか。

 この適正使用のお願いは「高齢の腎機能障害患者様において本剤の血中濃度上昇を伴う心停止が発現し、致命的な経過をたどった症例が新たに2例発生」したことをうけて出されている。

 症例を見ると、300mg/日を7年も服用したのちに、食欲不振や全身倦怠感、ふらつきから始まって心停止に至っている。この症例は「もう何年もこの量を飲んでいるから大丈夫」ではないことを物語っている。なぜならこの副作用は、薬剤の蓄積による副作用なのだから。
 

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年6月22日 (金)

腎機能に応じて用量調節が必要な抗アレルギー薬

腎機能に応じて用量調節が必要な抗アレルギー薬
ザイザル、ということはジルテックも
ちなみにCLcr<10は禁忌

CASE 120

78歳 女性  

他科受診:皮膚科  併用薬 :ザイザル錠5mg 1T/1xvds、マイザー軟膏

定期処方:
Rp1) ランソプラゾールOD錠15mg 1T・ニューロタン錠50mg 1T / 1x朝食後 28日分
  2) レバミピド錠100mg 3T・ガスモチン錠 3T / 3x毎食後 28日分
  3) アローゼン 1g / 1xvds 28日分

患者のコメント: 「ザイザルを飲んだら3日くらい眠い。あんまり飲んでいなくて、まだ余っているけど、今日もまたもらったの。飲んだほうがいい?」

患者から得られた情報:
① 掻痒症にて皮膚科を受診。
② お薬手帳より、ザイザル(5)とマイザー軟膏の7日分の処方が2回。
③ 皮膚科Drには相談をしていない。

薬歴から得られた情報: 2ヵ月前の eGFR:30

□CASE 120の薬歴
#1 ザイザルが過量なので他剤に変えてもらうように皮膚科Drに依頼する
  S)ザイザルを飲んだら3日くらい眠い。あんまり飲んでいなくて、まだ余っているけど、今日もまたもらったの。飲んだほうがいい?
 O) 併用薬:ザイザル(5)1T/1x 7日分処方。今日が2回目。
    薬歴より2ヵ月前のeGFR:30→この時点で2.5mgを2日に1回が推奨用量
 A) ザイザル過量が原因だろう。他剤に変更してもらったほうがいい。
 P) お薬手帳にeGFRとザイザルの推奨用量、ザイザルにて強い眠気が現れていることを記載。
   抗アレルギー薬はたくさんあるので、手帳を皮膚科Drに見せて変えてもらってください。
 R) そうするわ。もういっかい皮膚科に行ってくる。
  
      
 
□解説
 当局では内科系の薬を投薬している。その際、他局でもらっている薬についての相談をうける。ザイザルで強い眠気があり、継続への不安があったのだろう。

 
 患者はeGFRが30と腎機能がかなり低下している。ザイザルの推奨用量は以下の通り。

用法及び用量に関連する使用上の注意

腎障害患者では、血中濃度半減期の延長が認められ、血中濃度が増大するため、クレアチニンクリアランスに応じて、下記のとおり投与量の調節が必要である(「薬物動態」の項参照)。
なお、クレアチニンクリアランスが10mL/min未満の患者への投与は禁忌である。

Photo_2

 これでは高い血中濃度が維持され、眠いのも当然だ。

 処方せんを持ってきてくれていれば、すぐに疑義照会をして他剤変更をすすめるところだが、すでに他局にて投薬を受けている。そこでお薬手帳に必要な情報とコメントを記入し、再受診を促している。

 
 
 
□考察

 ジルテックの薬効を持つ光学異性体のみを製剤化したザイザル。その売りは「眠気の少なさ」だ。しかし実際に投薬してみると、そういう患者の反応というか、実感は少ない。

 高齢者は潜在的に腎機能が低下している場合が多い。そして当局の患者は高齢者が多い。これが「ザイザルは眠気が少ない」に対する実感のなさの理由なのだろう。

 つまり、その売り文句には患者の腎機能が加味されていない。

 クレアチニンクリアランスに応じての用量調節という、しばりのある第2世代抗ヒスタミン薬はジルテックとザイザルだけだ。しかもザイザル錠5mgには割線はあるものの2.5mgの剤型はない。

 代替薬もたくさんある。ぼくがDrなら、採血データのない高齢者にはザイザルは使わないだろう。

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年3月18日 (金)

透析導入のタイミング

参加勉強会:第20回熊本腎と薬剤研究会
        「Dr.ジンゾーの腎と透析の基本講座」
日時:2011年2月17日 19:00~
場所:熊本県薬剤師会館

 「クレアチニンがどのくらいになったら、透析になるんですか?」 投薬の際、こんな質問にときどき遭遇する。えてして、このような質問をしてくる患者さんはまだまだ透析を考えるようなレベルではないことが多い。なので、安心してもらうようにお話することが多い。 

 しかし、きわどい患者さんには「クレアチニンだけでは一概には言えません。先生の判断によるところが大きいですね」とわかったような、わからないような回答に終始することもままある。

 ‘先生の判断’。この部分についてのお話を講演の質疑応答の中で伺うことができた。透析導入のタイミングの質問に対して、先生は「私見ではあるが」と断りをいれたうえで、「クレアチニンの数値より臨床症状で判断する」と返答された。

 クレアチニンは腎機能というよりも、そのもの自体はゴミにすぎない。掃除をしていない金魚鉢を想像してみる。糞などのゴミが多くとも、じっとしていればゴミは舞い上がらず、金魚は上のほうで生きていける。食事量が多かったり、運動過剰ならばそうはいかないが、クレアチニンだけなら、食事療法でなんとかいけることもある。クレアチニンクリアランスが1ケタでも3年もったケースもあるそうだ。

 では、検査値はまったく役に立たないのか。そうでもないらしい。先生が着目している数値がある。それは「重炭酸イオン」だ。これが20以上あるなら透析は不要であり、10を切るようなら透析は必要である。

 つまり、酸がたまってくること(アシドーシス)が問題なのだ。

 なるほど。納得はいったが、患者さんからの質問には‘先生の判断’としか答えられそうにない。薬剤師としてはこの手の質問に直接答えようとはせずに、納得して服用してもらえるようなアプローチを考えていきたい。

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年9月24日 (金)

NSAIDsの禁忌「重篤な腎障害」とは?

NSAIDsの禁忌「重篤な腎障害のある患者」
この対象はどの状態なのか?
COX-2選択的阻害薬も含めて考える

CASE 73

80歳 女性<CASE 53の患者>
薬歴より、S-Cr:1.8、eGFR:21

処方内容:
1)コメリアンコーワ錠100mg 3T・ムコスタ錠100mg 3T / 3x毎食後 
2) メバロチン錠5mg 1T・ブロプレス錠8mg 1T・タケプロンOD15mg 1T / 1x朝食後 
3) クレメジン細粒 6g / 3x毎食間

Rp1) 2) 3) 14日分

お薬手帳より:
 他科:整形外科
 併用薬:セレコックス錠100mg 2T / 2x朝・夕食後 14日分
      ゼポラスパップ 21枚

患者のコメント:
「透析にならないように、がんばってこれ(クレメジン)を飲んでるよ」

患者から得られた情報:
① ひざが痛いので整形外科を受診した
② 胃が悪くなりそうだから、痛み止めは外出のときに1日1回にしている
   

□CASE 73の薬歴
#1 透析導入の引き金にならないように痛み止めを控える
  S) 透析にならないように、がんばってクレメジンを飲んでるよ
 O) 他科よりセレコックスの処方あり
    処方通りではなく、外出時に1T/day服用中(胃が心配のため)
 A) 保存期腎不全ではNSAIDsは禁忌
 P) 痛み止めは胃より腎臓が心配です。
   この痛み止めが引き金になって透析になることも考えられる。
   痛み止めは飲まずにシップで対応しましょう。
   

□解説
 CASE 53で紹介した患者さん。(患者の)父のように透析にならないようにと、「仕方がない」と、がんばってクレメジンを飲んでいる。服用状況はNPだ。

 「がんばってますね~」と応対しながら、お薬手帳をひらくと併用薬の記載が。
 
 せっかく透析にならないようにと、クレメジンで透析導入までの期間を引き延ばそうとしているのに、NSAIDsは透析導入の引き金になりかねない。PGの合成阻害により腎血流が低下し、腎機能が悪化するためだ。COX‐2選択的阻害薬も、リスクは他のNSAIDsと変わらない。

 患者が胃を心配して、最小限の服用にとどめていたことは幸いだった。

□考察
 NSAIDsの禁忌「重篤な腎障害のある患者」は保存期腎不全を指している。透析になってしまったら禁忌ではない。常用量を使っても問題はない。透析にならないように透析前の状態のかたに禁忌としていると解釈すればいい。

 やむを得ず使用するとしても、半減期の短いものを選ぶべきだ(CASE 20参照)。

 COX-2選択的阻害薬には当初、「痛みや炎症を抑えるけれど、胃や腎臓にはやさしい」ことが期待されていた。 しかし通常、炎症時に発現するCOX-2は、腎臓では常時発現しているといわれている。であれば、やはり腎障害に関しては従来のNSAIDsと同等のリスクと考えてよいだろう。現に、アステラスのMRも「胃にやさしい痛み止め」のPRしかしていない。

 COX-2理論は胃では使えても、腎臓では通用しない。

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2010年7月16日 (金)

ゾビラックス? バルトレックス?

ゾビラックス(400) 6T / 3x毎食後
この処方がきたら、どう考えます?
疑義照会はしましたが・・・

CASE 65

34歳男性 
他科受診:なし  併用薬:なし

処方内容:
Rp1)タガメット錠200mg 2T・ノイロトロピンル錠4単位 4T / 2x朝・夕食後 14日分
    2)ゾビラックス錠400mg 6T / 3x毎食後 7日分
   3) ロキソニン錠60mg 1T / 1x疼痛時 10回分

患者のコメント:
「虫にさされたかな~と思っていたら帯状疱疹だった」
「病院にいく暇もどうせなかったけど」

患者から得られた情報:
① 腎機能低下なし
② 胃症状なし
③ 営業マンで最近は疲れがたまっていた

疑義照会:
(内容)ゾビラックス(400) 6T / 3x はバルトレックス(500)ではないか?
(回答)バルトレックスでもいいですよ
        Rp2)→Rp4) バルトレックス錠500mg 6T / 3x毎食後 へ変更

□CASE 65の薬歴
#1 バルトレックス-タガメット併用は減量しなくても大丈夫だろう
  S) 虫にさされたかな~と思っていたら帯状疱疹だった
 O) バルトレックス、タガメット処方
    34歳、腎機能低下(-)
 A) 尿細管の競合的分泌阻害でバルトレックスのAUC↑となるが
    27%程度で年齢等からNPだろう
 P) バルトレックスが原因のウイルスに対して、他の薬は帯状疱疹の痛みや
    帯状疱疹後疼痛の予防のために出ているのでしっかり服用を。
    吐き気やボッーとなるようなら、申し出てください。
  

□解説
 患者はわたしと同い年。かなりお疲れの様子だった。若いし、腎臓も全く問題がない。ゾビラックス(400)6T/3xはバルトレックスの間違いだろう。そう思ってすぐ疑義照会をした。

 バルトレックスへ変更となり処方監査を改めて行うとタガメットがある。有名な適応外処方だ。帯状疱疹の急性期の疼痛緩和や帯状疱疹後疼痛の予防が期待できる。またタガメットはCYP非特異的阻害剤かつOCTで腎排泄される薬剤で相互作用が多い。抗ウイルス剤は腎排泄だからCYPは関係ないなと添付文書を眺めると、尿細管分泌阻害でバルトレックスのAUCが27%上昇するとある。

バルトレックスの相互作用
(2)併用注意とその理由
2. 薬剤名等シメチジン

臨床症状・措置方法
本剤の活性代謝物のアシクロビルの排泄が抑制され、アシクロビルのAUCが27%増加するとの報告がある。注)

機序・危険因子
シメチジンは尿細管分泌を阻害するため、活性代謝物のアシクロビルの腎排泄が抑制されるとの報告がある。

注)特に腎機能低下の可能性がある患者(高齢者等)には慎重に投与すること。

 ちなみにタガメットの添付文書にはバルトレックスとの併用注意の記載はない。バルトレックスのIFには「海外における薬物動態試験でプロベネシドおよびシメチジンを併用した場合、活性代謝物のアシクロビルのAUCおよびCmaxが上昇するとの報告があることから設定した」とある。

 AUCの30%程度の上昇であれば、有効域の狭いTDMを必要とするような薬剤を除いて、臨床上問題となることは少ない。しかし高齢者での両剤の併用は、想像以上のAUC増加から精神神経系副作用につながる恐れがあるだろう。

□考察
 「バルトレックスでもいいですよ」のDrの回答が気になった。バルトレックス‐タガメットの相互作用を想定したうえでの処方だったのかもしれない。そうならば、なんて意味のない行為だったのだろう。

 落ち込んでも仕方がないと、処方医を訪ねてみた。返答はまったく違う視点のものだった。

 「もう枯れかかってたからね。フルドーズでなくてもいいかなっと。電話もらって、まあ若いからフルドーズでもいいか~と思っただけですよ」

 もう完全なわたしの一人相撲。患者の疾患の状態。この視点はまったくなかった。わたしがフォーカスしていない患者のコメントに「病院にいく暇もどうせなかったけど」がある。つまりしばらく日数が経っていたのだろう。

 
 抗ウイルス剤は腎排泄型の薬剤で、高齢者では精神神経系の副作用が出やすい。タミフル、シンメトレル、アシクロビル(ゾビラックス・バルトレックス)全部そうだ。ならば症状に応じて用量を減ずるのは当然だろう。

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

| | コメント (0) | トラックバック (0)