カテゴリー「(05) 薬物動態学(相互作用学を含む)」の28件の記事

2016年9月 9日 (金)

ベルソムラの併用注意についての考察

2016年11月25日追記 

~2016年11月18日にベルソムラ錠10mgが発売~

ベルソムラ錠 使用上注意改訂のお知らせ
ベルソムラ錠 添付文書

111

以下の過去記事のケースでは、10mg錠へ減量となります。

ベルソムラの弱点。
併用注意もかなりのAUC上昇。
やはりもう少し下の規格が欲しい・・・。

CASE 185

男性 60歳 

他科受診:なし  併用薬:なし  運転(+)  アルコール(-)

処方(1,2は定期、3が追加となる):
Rp1) ヘルベッサーRカプセル100mg  2C 分2 朝・夕食後  28日分

Rp2) バイアスピリン錠100mg 1錠 
    クレストール錠2.5mg   1錠 分1 朝食後  28日分

Rp3) ベルソムラ錠20mg  1錠 分1 就寝前 28日分

患者のコメント:
「どうも最近眠れなくて・・・。でも睡眠薬を飲んでいて、地震が起きたらと思うと心配でね。先生に相談したら、今日のなら大丈夫、と」

患者からの情報:
① 日中はきついが昼寝はしていない(リズム異常なし)
② 夕食19時、就寝23時くらいで、夜食の習慣なし

疑義照会:
(内容)ヘルベッサーとの併用でベルソムラの[C]2倍に。15mg錠を提案。
(回答) Rp3) ベルソムラ錠20mg→15mgへ変更

□CASE 185の薬歴
#1 ベルソムラ初回服薬指導と不安へのアプローチ
 S) どうも最近眠れなくて・・・。でも睡眠薬を飲んでいて、地震が起きたらと思うと心配でね。先生に相談したら、今日のなら大丈夫、と。
 O) リズム異常なし。19時夕食、23時就寝、夜食習慣なし。
ヘルベッサーを服用中のため、疑義照会にて、ベルソムラ錠20mg→15mgへ変更。
 A) 不安に対してのアプローチが必要。また、ベルソムラを減量したものの、なお30mg相当の用量と考えられる。
 P) 従来の睡眠薬とは異なり、生理的な睡眠に近い自然な眠りをもたらします。そのため、地震などの外からの刺激があったときにはすぐに起きることができますし、力が入りにくいといった作用もない薬なので安心してください。就寝30分前くらいの服用がオススメです。また、夢を見るかもしれませんが、なくなっていきます。ただし、翌日まで持ち越し、運転に支障が出るようなら中止してください。
 
□解説
 ベルソムラはCYP3A4の基質薬でCYP3A4阻害薬の影響を強く受ける(下記、引用はベルソムラのIFより)。

①ケトコナゾール
健康成人(10例)を対象に、本剤(4 mg 単回)と CYP3A を強く阻害するケトコナゾール(400 mg 1日1回経口反復)11日間反復投与の2日目に併用した際、スボレキサントのCmax及び AUC0-∞は23 %及び179 %増加した

 強いCYP3A4阻害薬との結果が上記であり、これを受けて併用禁忌の薬剤が設定されている。

 併用禁忌:CYP3Aを強く阻害する薬剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビル、サキナビル、ネルフィナビル、インジナビル、テラプレビル、ボリコナゾール)

②ジルチアゼム
健康成人(18 例)を対象に、本剤(20 mg 単回)をジルチアゼム(240 mg 1 日 1 回反復)6 日間反復投与の 2 日目に併用した際、スボレキサントの Cmax 及び AUC0-∞は 22 %及び105 %増加した。

 中等度のCYP3A4阻害薬との併用が上記。これに加え、「15mg 錠よりも低含量の減量のための製剤がないため」、併用注意に設定されている。

 今回の症例では、地震時への不安がまずあり、BZD系やZ-DrugなどのGABAA受容体作動薬は不適と考えられる。さらに、リズム異常はない。たしかにベルソムラが最適ではあるが、最初の処方のままだと(ヘルベッサーとの併用のために)、ベルソムラの血中濃度は40mg相当にまで達してしまう。

 また、ベルソムラには割線がなく、データが存在しないために半割・粉砕は好ましくない。

 光及び湿気を避けるため、PTP シートのまま保存し、服用直前に PTP シートから取り出すこと。錠剤が粉砕された状態での薬物動態解析、有効性試験、安全性試験は実施されておらず、その有効性・安全性を評価する情報は存在しない。
以上の理由により、本剤の粉砕投与は推奨されない。

 そこで、ベルソムラを15mgへの減量を提案し、採用となる。ただし、それでもベルソムラ30mg相当の血中濃度になると考えられるので、患者への不安に対応しながら、持ち越しについても注意を促している。
 
□考察
 ベルソムラの弱点はその用法・用量にある。高齢者か否かどうかで15mgか20mgに振り分けられる。米国では5mgや10mg製剤が存在する、と耳にすれば、余計に不安になるではないか。ベルソムラの持越し効果関連の有害事象の発現割合や自動車運転能力に対する影響には、用量依存性が認められているのだ。

 CYP3A4の強力な阻害薬は併用禁忌、中等度の阻害薬は併用注意。じつにシンプルでわかりやすい。しかし、併用注意の対応はじつに難しい。

重要な基本的注意とその理由及び処置方法
(3) CYP3A を阻害する薬剤(ジルチアゼム、ベラパミル、フルコナゾール等)との併用により、スボレキサントの血漿中濃度が上昇し、傾眠、疲労、入眠時麻痺、睡眠時随伴症、夢遊症等の副作用が増強されるおそれがあるため、併用は治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみとすること。やむを得ず併用する際には患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意すること。

 今回の症例は有益性を重視したわけだが、不安はぬぐえない。そもそも血中濃度2倍で、剤型的に対応できない併用注意なんて、どうなのだろう。それに対して、メーカー側の言い分はこうだ。高用量(非高齢者 40 mg、高齢者 30mg)群でも安全性は確認されていたが、有効性に大差がないために低用量(非高齢者 20 mg、高齢者 15 mg)群が採用になっただけだ、と。

 しかし、PMDAは「第Ⅲ相試験で示された低用量と高用量の有効性を比較したときに、本剤低用量と比較して高用量でリスクを上回るベネフィットが示されていると結論することは困難であり、本剤高用量を承認用量に含めることは適切ではないと考える」と述べているし、今回の事例ではちょっと事情も異なる。審査報告書に目を通すと、ベルソムラのBAは高用量になればなるほど低下するようなのだ。

単回経口投与時の絶対的バイオアベイラビリティ(以下、「BA」)推定値は、本剤 10、20、40 及び 80 mg において、それぞれ 0.82、0.62、0.47 及び 0.37 であった。

 ということは、今回の症例における“ベルソムラ30mg相当”という僕のアセスメントは過小評価なのかもしれない。

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2016年8月12日 (金)

ザイティガ錠の併用注意について

併用薬のチェック。
相互作用の項目の確認だけでよいのか?

ザイティガ服用患者の低カリウム血症を回避する

CASE 184

男性 80歳 

他科受診:泌尿器科  併用薬:
Rp1) ザイティガ錠250mg  2錠
    1日1回 食事の1時間以上前または食後2時間以降
Rp2) プレドニゾロン錠5mg  1錠
    ラベプラゾール錠10mg 1錠 分1 朝食後

処方(3は定期、4が追加):
Rp3) ロサルヒド錠LD 1錠 分1 朝食後  28日分

Rp4) ツムラ小青竜湯エキス顆粒 7.5mg  分3 毎食前  28日分

患者のコメント:
「水みたいな鼻水がスタスタと。なにかに反応しているんだろうって」

疑義照会:
(内容)ザイティガ服用中のため、低K血症のリスクを避けたい
(回答) 眠くならない薬を希望されたので
     Rp4)→フェキソフェナジン錠60mg 2錠 分2 朝・夕食後 へ変更

□CASE 184の薬歴
#1 フェキソフェナジン初回服薬指導
 S) 水みたいな鼻水がスタスタと。なにかに反応しているんだろうって
 O) 低K血症回避のため、疑義にてツムラNo.19→フェキソフェナジン
   眠くならない薬を希望。果実ジュース→あれば飲むくらい
 A) フェキソフェナジンが最適だろう。フェキソフェナジン初薬。
 P) 抗アレルギー薬の中ではもっとも眠くなりにくいタイプ。
   AJやOJなどの果実ジュースの服用で効果減弱。
   避けるもしくは服薬後2時間以上あければOK。
 
□解説
 前立腺癌にてザイティガを服用している患者で、通常の用量よりも少ない量にて継続中。当局からはロサルヒド錠のみ。この時点ですでに、利尿剤との併用になっていた為、Kの動向には注意していた(4.0mEq/L、腎機能もNP)。

 今回、さらに甘草含有の漢方薬が追加になってしまう。小青竜湯は甘草を3g/日も含有しており、芍薬甘草湯についでエキス製剤の中では多い。しかも28日分。そこで、低カリウム血症のリスクを回避するために疑義照会を行う。

 患者が眠くならないモノを希望したために漢方薬を選んだ、ということだったので、眠くなりにくいフェキソフェナジンを代替薬として提案し、採用となった。フェキソフェナジンは果実ジュースの併用でAUCおよびCmaxが60~70%も減少することが報告されており、それを回避することを中心に初回服薬指導を行っている。
 
□考察
 ザイティガの相互作用をのぞくと次のような記載になっている。

Z1

 利尿薬や甘草含有の漢方薬といった記載は見当たらない。ところが、慎重投与の2)には具体的な薬剤名こそないが、次のように注意喚起がなされている。

Z2

 ここには“併用薬”としっかりと記載されている。添付文書のつまみ喰いだけではダメ、と言われれば確かにその通りなのだが、それ以前にやっぱり不親切な気が・・・。ちなみに「ザイティガ適正使用ガイド」には次のように注意換気がなされている。

Z2_2

 患者の併用薬とそれにまつわる情報。そういったものはセットにしてフェイスシートで管理するに限る。ザイティガのような薬それ自体を僕は滅多に投薬することはないのだから。  

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2016年5月27日 (金)

乳がん治療薬の飲み合わせ

“TAM=SERM”
“SERMとAI剤”
他科からの併用薬に注意


【TAM-CYP2D6阻害薬】
 
 2016/5/19のコラム 「ノルバデックス+ベタニス=薬効増強?減弱?」で、ノルバデックス(TAM)を服用している患者に対して、安易なCYP2D6阻害薬の併用を避けましょう、と提案しました。他科からの処方でのこういう事例に対して、僕たちは注意しなければなりません。


【TAM=SERM】
 
 もう一つ、違うケースがあるとすれば、ノルバデックスを服用している患者に対してのエビスタやビビアントといったSERMの処方。これは同じ薬効群の重複投与になってしまいます。まだ遭遇経験はありませんが、じゅうぶんに考えられます。こういったケースを回避するには、ノルバデックスの処方を切ったDrが骨粗鬆症まで合わせて診てくれるのが理想ですね。


【SERM-AI剤】
 
 さらに、この分野で注意したい飲み合わせがあります。それがSERMとAI剤の併用です。詳しくは、Blog「アリミデックスとエビスタの併用を回避する」(2013年10月11日)を参照ください。

 アリミデックスとノルバデックスを併用すると、アリミデックス単独よりもその乳癌再発予防効果がわるくなってしまうこと(ATAC試験)を受けて、ノルバデックスと同じSERMであるエビスタについて、ガイドラインには次のような記載があります。

 一方,ラロキシフェンは閉経後女性における骨粗鬆症の治療薬として日本でも広く使用されている。しかし,ATACにおいてタモキシフェンとアナストロゾールの併用で有害事象が増加し,しかもアナストロゾールの乳癌再発抑制効果を阻害することが明らかとなった。ラロキシフェンも理論上アロマターゼ阻害薬との相互作用が懸念されるため,アロマターゼ阻害薬使用時にラロキシフェンを併用することは推奨されない。 乳がん治療ガイドラインCQ42より)

 ビビアントの記載はまだありませんが、エビスタと同様と思っていいでしょう。

 一方で、SERMの併用により、動態に影響が出てしまうアリミデックスだからダメなのであって、影響の少ないアロマシンなら併用に期待できる、といった報告もあるようです。

 結論として、専門医が行うAI剤とSERMの併用には口を出さず、あくまでもAI剤服用中の患者に対して、他科からのSERMの処方を防ぐ。これが僕のスタンスです。
 

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2015年12月11日 (金)

高齢女性へのセレコックス投与は要観察

COX-2選択的阻害薬セレコックス。
この薬が効きやすい患者背景。

それにしてもこの性差の理由はなんなのだろう?

CASE 177

女性 90歳 

他科受診:なし  併用薬:なし

定期処方:
Rp1) アムロジピン錠2.5mg 1錠 
        アルファカルシドールカプセル1μg  1C  分1 朝食後   28日分

Rp2) セレコックス錠100mg  2錠
    テプレノンカプセル50mg  2C 分2 朝・夕食後  28日分

Rp3) センノシド錠12mg  2錠 分1 就寝前 28日分

患者のコメント:
「夜はあまり足も痛まないし忘れてしまうの? お昼か寝る前でもいい?」

患者の情報:
① 膝関節痛にてセレコックスを服用中
② 食欲(+)、黒色便(-)、むくみ(-)、尿量NP
③ セレコックスの飲み忘れ(残薬あり)、飲み忘れても痛くて困ることはない

疑義照会:
(内容)セレコックス、テプレノンともに残薬あり
(回答)Rp2)削除

□CASE 177の薬歴
#1 セレコックスは1日1回でいいかもしれない
  S) 夜はあまり足も痛まないし忘れてしまうの? お昼か寝る前でもいい?
 O) 残薬あり→Rp2)削除、食欲(+)、黒色便(-)、むくみ(-)、尿量NP
 A) セレコックスは1日1回で十分かもしれない
 P) 昼は時間が近く、腎臓に負担になるのでダメ。
   夜は痛くないのであれば朝だけで試してみて。
   同様の内容を手帳に記載。次回、Drに手帳を見せて。
 
 
□解説
   90歳とは思えないくらいしっかりしたおばあちゃん。セレコックスの夜を飲み忘れてしまうという。リカバリを寝る前というのは理解できるが、昼でもいいか? というのは予想できなかった。こういう発想をする方もいるから気をつけないといけない。

 しかし、今回の問題はリカバリではなく、セレコックスを飲み忘れても問題がない、という点にある。つまり、1日2回服用しなくてもいいわけだ。90歳なので、予想以上に半減期などが伸びて効いているのかもしれない。むしろ、効きすぎている? そう思い、副作用のモニタリングをするも今のところ問題はないようだった。

 そこで1日1回でのセレコックスの服用を提案。経緯をお薬手帳に記載し、次回受診時にDrにも見せるようにお願いしている。
 
 
□考察
 
この症例の後日談。セレコックスの服用は1日1回で充分で、処方も1xへと変更になった。

 どのくらいパラメータが変化していたのだろう。そう思い添付文書を開く。それは驚愕の内容だった。インタビューフォームのほうがわかりやすいのでそちらを下に示す。

Photo_2

2_2

 高齢者のAUC増加などは2割増しくらいかな、そう思っていた。しかし、高齢女性ではさにあらず。非高齢男女に比べて、健康高齢男性のCmaxおよびAUC12hrは120%と130%と想定範囲内だったのに対し、健康高齢女性のそれはいずれも約220%にも達している。

 これは驚きだった。高齢女性は、それだけで副作用に注意が必要な患者背景だといえる(この性差の理由はわからない。高齢に限らず、NSAIDsによる浮腫は女性の方が多いように感じる。その点も関係あるのだろうか?)。

 さらに、健康高齢女性では半減期も17.77時間へと大きく延長している。もちろん、17.77時間±7.43と幅も大きく、MINの10.34時間なら非高齢と変わらないので1日2回の服用が必要になるだろう。しかし、MAXの25.2時間近くまで延長しているようなら1日1回で充分なわけだ。この点は観察が必要だろう。

 つまり、高齢女性にセレコックスを投与する場合、薬理作用の過剰発現に注意するとともに、場合によっては1日1回での服用を提案することも考慮にいれてよさそうだ。そもそも日本人はNSAIDsを漫然と服用しすぎている。慢性疼痛に使われるセレコックスではなおのこと。そこで高齢女性の処方に対して、このパラメータの変化を根拠に切り込んでいきたいと思う。
 

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2015年9月18日 (金)

「家族に処方された薬を勝手に飲んではいけません」

スンベプラとクラリスロマイシン。
併用禁忌の薬が一つ屋根の下にある状況。
他人に処方された薬を服用することの危険。

CASE 174

男性 50歳 

他科受診:整形外科  併用薬:トラムセット配合錠 4錠 分4

定期処方:
Rp1) クラリスロマイシン錠200mg 2錠  分2 朝・夕食後   7日分

Rp2)カフコデ配合錠       6錠  
    カルボシステイン錠500㎎ 3錠  分3  毎食後  7日分

患者のコメント:
「母親の抗生剤(バナン)を飲んでたけど効かなくてね。マイコプラズマ肺炎って」

疑義照会:
(内容)他科にてトラムセット服用中、アセトアミノフェン過量
(回答)カフコデ配合錠 6錠 → アストミン錠 6錠 へ変更

母親の情報:
ダクルインザ・スンベプラ療法を実施中(12週目/24週)

□CASE 174の薬歴
#1 必ず本人がクラリスロマイシンを飲みきる
  S) 母親の抗生剤(バナン)を飲んでたけど効かなくてね。マイコプラズマ肺炎って
 O) 母親→ダクルインザ・スンベプラ療法を実施中(12週目/24週)
 A) クラリスロマイシンを誤って母親が服用すると危ない
 P) お母さんには併用禁忌の薬。間違ってもお母さんが飲むことのないように。
   この抗生剤は本人が必ず最後まで飲みきってしまうこと。
 
 
□解説
 本人ならびにお母さんともに当局を長く利用されている。ゆえに母親がダクルインザ・スンベプラ療法を実施していることはカルテを出さずとも把握できていた。

 その息子に併用禁忌であるクラリスロマイシンが処方となる。イヤだな~と思いながらもお話しを伺うと、「母親の抗生剤(バナン)を飲んでたけど効かなくてね」との情報が。この状況はやはり危ない。

 マイコプラズマ肺炎とのことなので、ニューキノロンに変えてもらおうかとも一瞬迷いもしたが、母親の薬と併用禁忌であること、必ず本人が飲んでしまうようにと徹底し、投薬している。

 
□考察
 ダクルインザ・スンベプラには併用禁忌が多数ある。本人への対応はしっかり行っているつもりだが、家族の薬というのは盲点だった。でも、残薬も含めて、視野に入れておかないといけない。

<ダクルインザの併用禁忌>

1

<スンベプラの併用禁忌>

2

 「他の人に処方された薬」を飲んではいけない、あげてはいけない。残薬を勝手に服用してはいけない。こういった基本的な服薬指導は、当たり前のことであるがゆえに、おろそかになりがちだ。でも、こういった当たり前のことを、ことあるごとに、繰り返しアナウンスしていくのも薬剤師の役割なのだ、と再認識させられた事例だった。

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2015年7月10日 (金)

ジゴキシン‐クラリスロマイシン併用によるジギタリス中毒

ジゴキシンはP-gpの基質薬物。
P-gp阻害剤としてのクラリスロマイシン。
倍量CAMを有するピロリ除菌製剤。

CASE 172

男性 65歳 

他科受診:なし、併用薬:なし

定期処方:
Rp1) バイアスピリン錠100mg 1錠   
    ダイアート錠30mg         1錠
    アルダクトンA錠25mg   1錠
        オルメテック錠20mg    1錠 
        ハーフジゴキシンKY錠0.125mg  1錠 分1 朝食後   28日分

Rp2)ピタバスタチン錠1mg    1錠 分1 夕食後 28日分

Rp3)ラベキュアパック800  1シート  分2 朝・夕食後 7日分

Rp4)プロテカジン錠10mg  1錠 分1 夕食後 21日分(Rp3終了後に服用)

患者のコメント:
「胃カメラしたら、十二指腸潰瘍とピロリ菌がいたよ。胃酸の出すぎはこいつが原因だろうって」

薬歴・患者から得られた情報:
① Rp3は初、その他はDo
② S-Cr:1.2、Tall:170、BW:70→Ccr:60mL/min
③ カリウムはNP

疑義照会:
(内容)クラリスロマイシンでジゴキシン濃度2~2.5倍に
(回答))ラベキュアパック800→ラベキュアパック400に変更

□CASE 172の薬歴
#1 ラベキュア‐ジゴキシンによるジギタリス中毒
  S) 胃カメラしたら、十二指腸潰瘍とピロリ菌がいたよ。
   胃酸の出すぎはこいつが原因だろうって。
 O) Ccr:60mL/minで腎NP、カリウムもNP
   疑義照会にてラベキュア800→400
 A) クラリスロマイシンによるP-gp阻害→ジゴキシン↑
   リスクは低くなったが注意は必要
 P) 少々の軟便や下痢、味覚異常はNP
   吐き気、徐脈、頭痛、めまい等→すぐ受診を
 
 
□解説
 ハーフジゴキシンを服用中の患者に対してのピロリ菌の除菌療法。一次除菌のレシピには、相互作用で何かと気を使うクラリスロマイシンの存在がある。そのクラリスロマイシンのP-糖たんぱく質(P-gp)阻害作用により、ジゴキシンの血中濃度が上昇する。さらには、PPIの服用もジゴキシンの血中濃度上昇に関与している。

 ジギタリス中毒を起こしやすい背景かどうか、血清Kと腎機能、体重を確認すると、幸いそのリスクは低いと思われた。ただ、クラリスロマイシンのP-gp阻害作用は用量依存的に発現するため、疑義照会を行い、ラベキュア800を400へと変更してもらう。

 そのうえで、除菌による軽微な副作用による中断を警戒しつつも、ジギタリス中毒の初期症状と対応をアナウンスしている。

 
□考察
 青島さんのブログを見ると、ジゴキシンとクラリスロマイシンの併用の恐ろしさがよくわかる(ジゴキシンとマクロライド系抗菌薬の「併用注意」を考えるを参照)。台湾における心不全患者を対象としたコホートでは、この2剤の併用のすさまじい結果が紹介されている。

 腎機能やカリウム値などが正常なジギタリス中毒リスクの低い患者においても、ランサップ800やラベキュア800といった高用量クラリスロマイシン含有製剤は避けるべきだろう。

 クラリスロマイシンを倍量から通常用量に変えてもらい、相対的にはリスクを回避できたように見える。が、この組み合わせはできれば避けたいのが本音だ。

Photo

 キニジン、クラリスロマイシン、アミオダロンの3剤は通常用量で、ジゴキシンの血中濃度をそれぞれ2~3倍、2~2.5倍、1.7倍~2倍に上昇させるといった報告がある。つまり通常用量でも、ジギタリス中毒はつねに念頭に置いておかなければならない。

 ということは、今回の対応は不十分だったと言わざるを得ない。さいわい体格の良い方で事なきを得たが、ラベキュア800を400にしたことで満足してはダメだった。患者背景によっては、常用量のクラリスロマイシンであっても、併用期間中はジゴキシンを半量もしくは隔日にするといったところまで踏み込んでいく必要があるだろう。

 

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2015年3月13日 (金)

イグザレルトにクラリスロマイシンって事実上併用禁忌!?

イグザレルトはCYP3A4/P-gpの基質薬物。
CYP3A4/P-gp阻害剤としてのクラリスロマイシン。
併用注意? 代替薬は?

CASE 168

男性 57歳 

処方:
Rp1) クラリスロマイシン錠200mg 2錠 分2 朝・夕食後   4日分
Rp2) カルボシステイン錠500mg  3錠
    アンブロキソール錠15㎎ 3錠  分3 毎食後 4日分
Rp3) カロナール錠300mg 1錠 発熱時 5回分

患者のコメント:
「咳・痰が続いている。先生にはサラサラの薬を飲んでいるとは伝えたよ」

お薬手帳より:
他科受診:循環器
併用薬:アーチスト錠2.5㎎ 4錠 分2 朝・夕食後
     イグザレルト錠15㎎ 1錠 分1 朝食後

疑義照会:
(内容)クラリスロマイシンにてイグザレルト減量の必要あり。ルリッドすすめる。
(回答)Rp1)→4)へ変更
     Rp4)ルリッド(150) 2錠 分2 朝・夕食後 4日分

□CASE 168の薬歴
#1 抗生剤変更を通して薬識を高め、手帳を活用してもらう
  S) 咳・痰が続いている。先生にはサラサラの薬を飲んでいるとは伝えたよ。
 O) イグザレルト服用中のため、
   疑義にて、クラリスロマイシン→ルリッド
 A) ルリッドならリスクは低い。
   イグザレルトの飲み合わせについてアナウンス必要。
 P) 飲み合わせOKの抗生剤へ変更。
   サラサラの薬は飲み合わせ注意が多いので手帳活用を。
 R)手帳大事やね。
 
 
□解説
 クラリスロマイシンはCYP3A4/P-gp阻害剤で、多くの薬と併用注意となっている。

 他科にて服用しているイグザレルトは、肝臓においてCYP3A4で代謝され、腎臓にてP-gpを介して排泄される。イグザレルトの添付文書には次のような記載がある。

Igu_cam

 そこでCYP3A4/P-gp阻害の弱いルリッドを代替薬として提案し、採用となる。せっかくの機会なので、患者が飲んでいるイグザレルトの薬識の是正とお薬手帳が役に立っていることを印象付けることにした。


 
□考察
 イグザレルトの添付文書の薬物動態の項は次のようになっている。

Igu_cam_3

 クラリスロマイシンとの併用データにおいて、クラリスロマイシンの用量は1,000㎎/日といったかなり多めのデータであることが多いのだが、イグザレルトのそれは500㎎/日で、日本の通常用量に近い。

 「クラリスロマイシン500㎎の併用で、イグザレルトのAUC1.5倍、Cmax1.4倍」これはイグザレルトによる出血傾向を高める。イグザレルトはピークの血中濃度と出血傾向が相関するからだ。イグザレルトの減量規定は厳密に守ったほうがいいだろう。

 だが、「本剤10㎎1日1回を考慮する」と言われても、まず今回のようなケースでは、持参していないだろうし、調整のしようがない。粉砕は可能だが、短期間だけイグザレルトを加工するのも現実的ではない。こういう事態を想定してルリッドはぜひとも在庫しておきたい一品だ。

 それにしても、イグザレルトとクラリスロマイシンの併用というのは、現状の規格で対応が可能なため禁忌にはなっていないものの、現実的に考えると、すぐには対応できない場合が多いと思われる。ということは事実上、併用禁忌として扱うしかないのではないだろうか。

 

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2014年8月 8日 (金)

クリアミンをマークせよ!

CYP3A4阻害剤が関与する併用禁忌。
ランサップには要注意。
もっとも警戒すべきは「羊の皮をかぶった狼」だ。

CASE 161

男性 45歳 

他科受診:なし、併用薬:なし

定期処方:
Rp1) バルサルタン錠80mg 1錠 分1 朝食後   28日分
Rp2)クレストール錠2.5㎎  1錠 分1 夕食後   28日分
Rp3)アムロジピン錠5mg  1錠 分1 夕食後  28日分

臨時処方:
RP4)ランサップ400     1シート 分2 朝・夕食後 7日分

*残薬:クリアミン配合錠A、ロキソニン(60)

患者のコメント:
「ずっと胃がへんだった。ピロリ菌がいるって」

患者から得られた情報:
クリアミンAもロキソニンも最近は使っていないが10錠くらいずつある

□CASE 161の薬歴
#1 ランサップ-クリアミンAの相互作用回避
  S) ずっと胃がへんだった。ピロリ菌がいるって
 O) ランサップ処方
   クリアミンA・ロキソニン残薬あり(各10錠ずつくらい)
 A) クラリスロマイシン-クリアミンA→麦角中毒
 P) 除菌の薬を服用中と服用終了後3~4日は
   クリアミンAを飲まないように。ロキソニンはOK。
 
□解説
 クラリスロマイシンはCYP3A4阻害剤として有名だが、ランサップの隠れ蓑にくるまれているときは見落とさないようにしなければならない。

 患者は片頭痛発作時にクリアミンAを頓用している。クラリスロマイシンとは併用禁忌で、CYP3A4阻害作用によってエルゴタミンの血中濃度が上昇し、重篤な麦角中毒(四肢虚血)を引き起こしてしまう。

 さらにクラリスロマイシンのCYP3A4阻害による相互作用は、阻害効果が強く、投与中止後も持続する可能性があることを考慮し、その期間を考慮した相互作用回避の服薬指導を行っている。
 
□考察
 クリアミンとクラリスロマイシンの併用禁忌は、原因こそクラリスロマイシンのCYP3A4阻害ではあるが、もたらされる副作用はクリアミンAの過量服用状態からの麦角中毒である。ほんとうにマークすべきは、阻害剤ではなく、相手によって変身してしまう「羊の皮をかぶった狼」のようなクリアミンAだと考えている。

エルゴタミン製剤(クリアミン)が関与する併用禁忌

 (14・16員環)マクロライド系⇔エルゴタミン製剤⇔アゾール系抗真菌薬

 エルゴタミン製剤⇔トリプタン系⇔他のトリプタン系(24時間以上)

 今回の症例でのポイントはクリアミンを頓用で使用していることを把握できているかどうかにある。いくらクラリスロマイシンがCYP3A4阻害剤で併用禁忌の薬がたくさんあると知っていたとしても、把握できていなければ意味がない。

 クリアミンは薬の性格上、ごくたまに処方され、患者が管理することになる。お薬手帳でも流れていってしまって、すぐには把握できないかもしれない。そこで当局では、薬情での注意喚起はもちろんのこと、フェイスシートにて一目で把握できるように管理している。

 クリアミンはマークすべき、「羊の皮をかぶった狼」のような薬なのだ。

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2014年1月24日 (金)

ねたきり患者へのタミフル

90歳、ねたきり、S-Cr:1.1
腎排泄型薬剤の投与量をどう考える?
菅野先生から教わった式。

CASE 155

90歳 男性 
他科受診:なし 併用薬:なし

定期処方:
Rp1)バイアスピリン錠100mg 1T
       ラシックス錠40mg         1T
    アルダクトンA錠        1T
    アリセプトD錠5mg        1T /1x朝食後 28日分
  2) レバミピド錠100mg     3T
    マグミット錠250mg        3T
    アントブロン錠15mg      3T / 3x毎食後 28日分
  3) プルゼニド錠12mg     2T
     デパス錠0.5mg          1T / 1x就寝前 28日分

臨時処方:
 4) タミフルカプセル75mg  2C / 2x朝・夕食後 5日分
 5) カロナール錠300mg     1T / 1x発熱時   10回分

患者の娘から得られた情報:
① 「孫がインフルエンザで、本人も急に38度だから間違いないだろうと」
② 本人は連れてきていない。
③ 食事はおかゆを食べた。水分は摂っている。尿量はわからない。
④ 吸入薬は吸う力も弱いし、難しいと思うので断った。

薬歴から得られた情報:
① ほぼねたきりの状態で、痩せている。
② いつもは車椅子にて診察。
③ 先月のS-Cr:1.1、体重はわからない。

疑義照会:
(内容)ねたきり、90歳、S-Cr:1.1 タミフルの減量を提案
(回答)タミフル2Cから1Cへ減量 Rp4)→Rp5)へ変更
    Rp 5) タミフルカプセル75mg 1C / 1x朝食後 5日分

□CASE 155の薬歴
#1 タミフルを1xでしっかり続けてもらう
  S)孫がインフルエンザで、本人も急に38度だから間違いないだろうと。
   吸入薬は吸う力も弱いし、難しいと思うので断った。
 O) ねたきり、痩せ身で90歳、S-Cr:1.1
   おかゆ、水分は摂れているが、尿量はわからない。
   疑義照会にてタミフル減量 2C→1C
 A) 潜在的な腎機能低下は間違いない→疑義照会にて大丈夫だろう。
   ハイリスク患者なので、しっかり飲んでもらう必要がある。
 P) 医師と相談して、状態にあわせた量にタミフルを減量。
   今日はすぐに1Cを服用。明日からは朝で5日間しっかりと。
   それでもボッーとなる、うわ言を繰り返すようなら、中止・受診を。

 
□解説
 今回のテーマはタミフルを減量するか否か。S-Cr:1.1(男性の正常値 0.6~1.1)。S-Crが異常値ならば、医師も考慮しただろう。さらに、体重もわからず、クレアチニンクリアランスを算出することもできない。

 ただ、ねたきりの場合は、筋肉量が極端に少ないことが多いために、S-Crが当てにならない。ということは体重がわかったとしても、そのクレアチニンクリアランスが当てにならない。

 代替薬としてすぐに浮かんだリレンザやイナビルも、すでに医師とのやり取りの中で患者(の娘)の方から断っている。

 S-Crでは判断できないとなると、なにが手掛かりになるかというと、いちばんはやはり尿量なのだろう。でも、これも薬局窓口ではわからないことが多いし、どう利用すればいいのか・・・。

 となると、はっきりわかるのは年齢だけということになる。この「年齢しかわからない場合」において、高齢者のクレアチニンクリアランスを推測する手段がある。これは、どんぐり工房の菅野彊先生からの教えだ。

 高齢者のクレアチニンクリアランスを推測する
 ①年齢しかわからない場合

 
高齢者のCLcr=若年者CLcr-若年者CLcr x [(年齢-25)x1.0%]

 ②年齢、血清クレアチニン値、体重がわかる場合
 Cockcroft-Gaultの式

 男性CLcr=[(140-年齢)x体重]/[72x血清クレアチニン]
 
女性CLcr=男性CLcr x 0.8

 「25歳を超えると、クレアチニンクリアランスが年に1%ずつ低下していく」といわれており、90歳の患者のクレアチニンクリアランス低下率は、(90-25)x1.0%=65%となる。

 若年者のクレアチニンクリアランスを100mL/minとすると、推測クレアチニンクリアランスは、100mL/min-100mL/min x 0.65 = 35mL/min となる。

 タミフルはCLcr>30で通常用量となるが、上記はあくまでも推測値であり、ねたきりなのにS-Crが1.1もあるため、副作用のリスクを考慮し、医師と相談したうえでタミフルを半量に減量することになった。

 しかし患者は、高齢そして慢性心疾患とハイリスク患者でもある。減量した分、1日1回はしっかりと服用してもらったほうがいいだろうと考え、服薬指導を行っている。

 
□考察
 腎機能別薬剤使用マニュアルによると、

タミフルの腎不全時の1回投与量と投与間隔
 
 Ccr>30   1回75mg 12時間間隔
 10<Ccr≦30  1回75mg 24時間間隔
 Ccr≦10      推奨用量は確立していない

 となっている。

 今回は年齢からの推測値(CLcr:35)ではあったが、ねたきり状態だったので、「10<Ccr≦30」を採用した。

 たとえば、この患者の体重が45kgでねたきりではなかったら、Cockcroft-Gaultの式が使えて、CLcrは28.4となり、「10<Ccr≦30」の用量で問題はなかっただろう。

 だが、90歳でほんとうにCLcrが35だったとして、通常用量でよいのか? ちょっと気になったので、投与量を計算してみた。

 D(r)=D-Dxfu x [(CLcr-CLcr(r))/ CLcr ]

 腎障害患者投与量=腎正常者投与量-腎機能低下による蓄積量

  D(r):腎障害者投与量
 D:腎正常者投与量(タミフル 150mg/day)
 fu:尿中未変化体排泄率(タミフルのIFより、74%)
 CLcr:腎正常者クレアチニンクリアランス(100とする)
 CLcr(r):腎障害者クレアチニンクリアランス

 これも菅野先生に教えてもらった式で、Giusty-Heyton法という。

 計算してみると、D(r)=150-150x0.74x[(100-35)/100]=77.85、1日投与量は約78mg! タミフル1C(75mg)の1xで充分のようにみえる。このくらいの、ちょっと30を超えているくらいがいちばん過量になりやすいのかもしれない。
 
 やはり腎機能低下者に対しては、リレンザやイナビルのような吸入薬を選択してもらいたい。

 タミフルしか選択肢がないときには、マニュアルよりも少しきびしめに減量を考慮するか、精神神経系の副作用を充分にアナウンスしていくしかないだろう。

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2013年12月13日 (金)

ニフェジピンCRとクラリスロマシンの併用の結果とその対応

CYP3A4の基質と阻害剤の組み合わせ
血中濃度の変化と臨床上の変化
一般化された情報と個人データの融合

CASE 153

女性 64歳 

処方内容:
Rp 1)トーワミン錠25mg 1錠・ニフェジピンCR錠20mg 1錠 / 1x朝食後 28日分
Rp 2) マイスリー錠5mg 1錠 / 1x就寝前 28日分

*ニフェジピンCR錠20mg 2錠/2xより減量になっている

患者のコメント:
「きついしふらふらすると思ったら、血圧が88しかなかったの。でも脈は120もあるから心配で…」

お薬手帳から得られた情報(併用薬):
婦人科より Rp)クラリスロマイシン錠200mg 2錠/2x朝・夕食後 7日分
          Rp)ツムラ五淋散エキス顆粒 7.5g/3x毎食前     7日分

患者から得られた情報:
① 膀胱炎が治らないと思って婦人科を受診。膿がたまっていた。
② 併用薬を開始して5日目。
③ 下肢浮腫(+)

□CASE 153の薬歴
#1 ニフェジピン‐クラリスロマイシン併用に起因する問題へのアプローチ
  S) きついしふらふらすると思ったら、血圧が88しかなかったの。
    でも脈は120もあるから心配で…
 O) ニフェジピンCR減量 40mg/day→20mg/day
       併用薬:クラリスロマイシン 400mg/day
    下肢浮腫(+)
 A) クラリスロマイシンのCYP3A4阻害によるものだろう。
    不安に対してアプローチと併用が終わったあとのフォローが必要。
 P) 婦人科でもらった抗生剤との飲み合わせでニフェジピンが効きすぎたのでしょう。過降圧、頻脈、下肢浮腫すべてそのせいです。減量で解消すると思われます。ただし抗生剤の終了後に血圧が上がってくるかも。そのときはすぐに受診を。

□解説
 解説はとてもシンプルだ。CYP3A4の基質であるニフェジピンCRを服用中の患者が、CYP3A4阻害剤であるクラリスロマイシンを併用した。とうぜんニフェジピンの代謝が阻害され、その血中濃度が上昇する。ただ特筆すべきは、その汎用薬のよくある組み合わせとその結果の大きさだ。

 お薬手帳をみて、さらにクラリスロマインを飲み始めて5日目という事実に疑いを強める。過降圧だけではなく頻脈も起こっている。念のために足がむくんでいないかを尋ねると数日前からむくんでいるという。間違いない。すべてニフェジピン過量による薬理作用の延長線上の副作用だ。

 14員環マクロライド系薬のCYP3A4阻害様式は、アミノ糖の三級アミンの脱メチル化により生成した代謝物(ニトロソ中間体)がCYP450のヘムと共有結合を形成し、マクロライド・ニトロソアルカン複合体を形成するためと考えられている。このように、CYP3A4による代謝物が特異的にCYP3A4のヘムと複合体を形成しやすいことから、14員環マクロライド系はCYP3A4の自殺基質といえる。ヘムとの共有結合に起因するため阻害効果は強く、投与を中止しても持続する可能性は高い。
(杉山正康『薬の相互作用としくみ 全面改定版』日経BP社 P. 170-171)

 併用から4~10日後に相互作用の発現を認める場合が多いことにも注意したい。マクロライド系による代謝阻害はイミダゾール系による直接的な阻害と異なり、一度代謝を受ける必要があるため、阻害効果の発現に時間を要すると考察される。 
(同書 P. 173)

 医師がニフェジピンを減量したことで、過降圧や頻脈、そして下肢浮腫といったものへの患者の不安はそのうち解消するだろう。飲み合わせがよくなかったことを伝え、不安へのアプローチを図る。

 さらに問題がもう一つ。いずれクラリスロマイシンは終了する。すると、しばらくしてニフェジピンの代謝が元に戻ってくることになる。つまり降圧効果が弱まる。そこで、家庭血圧測定でのモニタリグを促し、血圧が上がってくるようなら、すぐに受診するようにアナウンスを行っている。

 
□考察
 ニフェジピンCRとクラリスロマイシン。たぶんいままで、たくさん同時に出してきたように思う。理論上の、つまりCYP3A4を介する相互作用のことはよくわかってはいる。ただ臨床上、問題になるような結果にはならないと考えていた。併用禁忌でもないし、クラリスロマイシンも通常用量だし…。

 こういう症例を一例でも経験してしまうと、やはり今後の対応を考えてしまう。ただ、いきなり説明しすぎてしまうのも服薬拒否につながりかねないので難しいところだ。

 しかし、少なくとも今回の患者においては、しっかりと今回の事実を薬歴のフェイスシートに落とし込むことで、次回からの対応は容易になる。クラリスロマイシンを避け、CYP3A4阻害の弱いルリッドもしくは14員環以外のマクロライドに変更してもらえばいい。

 そう、一般化された情報を個人データに融合させることこそが「現場の強み」なのだ。そして新たな個人データが生まれる。

 一般化をはねつけてこその医療だ。

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杉山正康『薬の相互作用としくみ 全面改定版』日経BP社
全面改定版となり、格段と見やすく、内容も豊富に。
第4章の薬物トランスポーターは必見。今後ますます重要になるだろう。

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