ハルシオンとGFJ(グレープフルーツジュース)
併用禁忌でも併用注意でもないこの組み合わせ。
じっさいに併用すると、血中濃度の推移はどう変化する?
併用を避けていただく理由がそこにある。
CASE 148
女性 65歳
前回の処方:
Rp 1)ロサルタンK錠25mg 1錠 / 1x朝食後 28日分
Rp 2) アモバン錠7.5mg 1錠 / 1x就寝前 28日分
今回の処方:
Rp 1)Do 28日分
Rp 3) ハルシオン錠0.25mg 1錠 / 1x就寝前 28日分
患者の訴え : 「朝起きたときに、口の中が苦いことがあるといったら、薬をかえておきましょうって」
患者から得られた情報:
① 寝つきが悪く、アモバンを開始。
② アモバンで睡眠状況は良好になるも、数か月後に苦味を感じ、Drに訴える
③ アルコール(-)
④ GFJ:常飲はしないが、あれば飲むこともある
□CASE 148の薬歴
#1 ハルシオン服用中はGFJを飲用しない
S)朝起きたときに、口の中が苦いことがある→薬をかえておきましょうって
O) アモバン→ハルシオン、GFJ:あれば飲む、アルコール(-)
A) ハルシオン-GFJ→5時間後も非摂取時のピーク相当濃度を維持
P)GFJを飲んでしまうと、薬が身体から抜けにくくなって残ってしまう。
ハルシオンを飲んでいるあいだは、同時でなくてもGFJを摂らないように。
□解説
ハルシオンとGFJについて言及した書籍がある。ぼくの愛用書「ポケット医薬品集(2013年版) (*1)」だ。いったん廃版となったこの書籍は澤田先生のおかげで復活を遂げた。ただ難点をいえば、サイズが大きくなったこと。ちょっとポケットには難しくなった。
それはさておき、ポケット医薬品集のハルシオンの項には、次のような記載がある。
8.グレープフルーツジュースを避ける→吸収量増:5時間後も非摂取時のピーク相当濃度を維持。
この一文の根拠(*2)を次に示す。
これでは別の薬だ。速やかに立ち上がって、素早く消失していくから「超短時間型」であって、この血中濃度の推移では、医師の処方意図を汲むことはできない。
ゆえに、GFJを禁止する服薬指導を行っている。
□考察
このハルシオンとGFJの組み合わせは併用禁忌でも、併用注意でさえもない。しかし、眠剤の中でハルシオンだけは、GFJの飲用に気をつけるようにアナウンスをする医療者は多い。
メーカに問い合わせてみると、海外での併用のデータ(*2)を持ってはいるものの、「改定の根拠となるような有害事象例がないため」に添付文書には記載がなく、また改定の予定もないようだ。
さきのデータ(*2)は海外のものだが、ハルシオンを0.25mgとGFJを250mLを健常人10名に対して行った試験である。その結果、AUCは1.5倍、Cmaxは1.3倍、Tmaxは1.6~2.5倍に延長とそんなに大きな変化はないように、一見するとみえる。ただそれは数字だけを見ているからであって、上の図を見るとその意味がよくわかる。
ハルシオンは超短時間型と分類されていて、医師もそのつもりで使う。だが、GFJと併用してしまうと、そう分類するのは難しい。
だから添付文書に記載がなくても、GFJとの併用は避けていただく。添付文書に記載があるかどうかは、その判断基準がぼくとメーカでは違うのだからしかたがない。
情報をどう扱うかが、ぼくの仕事だ。
*1:ポケット医薬品集 2013年版
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*2:Clin. Pharmacol. Therap, 58: 127~131(1995)
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