ベニジピン(コニール)の特徴といえばチャネル?
1日1回は高血圧で、1日2回は狭心症?
ベニジピンは冠攣縮性狭心症でもっと使われていいと思う。
CASE 170
女性 70歳
他科受診:なし、併用薬:なし、タバコ・アルコール:なし
定期処方の変遷1:
Rp1) フルバスタチン錠20mg 1錠 分1 夕食後 42日分
Rp2)ニソルジピン錠5mg 2錠 分2 朝・夕食後 42日分
定期処方の変遷2:
Rp1) フルバスタチン錠20mg 1錠 分1 夕食後 14日分
Rp3)ニソルジピン錠5mg 2錠 分2 朝食後・就寝前 14日分
今回の処方:
Rp1) フルバスタチン錠20mg 1錠 分1 夕食後 14日分
Rp2)ニソルジピン錠5mg 2錠 分2 朝・夕食後 14日分
Rp4)ベニジピン錠4mg 1錠 分1 就寝前 14日分
患者のコメント:
「やっぱり朝が高くて、150くらいはある」
「薬は元に戻して、一つ加えましょう、と」
薬歴・患者から得られた情報:
① もともとは狭心症発作で、循環器のDrのお世話になっている。
② フルバスタチンとニソルジピンをずっと服用しており、ここ5年は変更がない。
③ 朝に動悸も少し感じる。
□CASE 170の薬歴
#1 Ca拮抗薬の併用と副作用のアナウンス
S) 朝が高くて、150くらいはある。動悸も少しある。
O) ベニジピン追加。もともと冠攣縮性狭心症(+)
早朝高血圧とともに狭心症発作も併発
A) ベニジピン初薬とCa拮抗薬併用についての理解要
P) ベニジピンもニソルジピンと同様に狭心症と血圧の両方に効果がある。
ベニジピンは冠血管への選択性が高く、狭心症発作・予後ともに期待できる。
飲み始めの立ちくらみやフラッシング→慣れることが多い。
頻脈や下肢浮腫、過降圧、ひどい便秘→用量調節要、申し出て。
□解説
広域処方せんを持参する患者。当局の利用以前からRp1)2)をずっと服用している。朝が高めとなり、ニソルジピン(先発品:バイミカード)の夕食後を就寝前に変更して対応を試みるが、うまくいかずにベニジピン(先発品:コニール)が追加となっている。
高血圧だけの患者と考えるとこのCa拮抗薬の併用だけの降圧薬の処方は理解できないが、高血圧と冠攣縮性狭心症を併発している患者と考えるとわかる。
Ca拮抗薬は冠攣縮性狭心症の第一選択薬だが、そのすべてに異型狭心症(冠攣縮性狭心症の一種)の適応があるわけではない。ニソルジピン、ニフェジピンCR(アダラートCR)、ジルチアゼムR(ヘルベッサーR)の3剤は狭心症だけではなく異型狭心症の適応も有している。ニソルジピンは降圧力はマイルドだが、カルシウムチャネルへの結合性が高く、狭心症には強いとの評価がある。
スタチンもガイドラインにおいて、冠攣縮性狭心症に対してクラスⅡbとなっている。なかでもフルバスタチンはSCASTというエビデンスを有しており、冠攣縮性狭心症の新しい治療薬になることが期待されている。ゆえに、もともとの処方から、この患者の病名は容易に推測できる。
ともあれ、今回の状況では、Ca拮抗薬を併用することになる。その意義と起こり得る副作用についてのアナウンスを中心に服薬指導を行っている。
□考察
ニソルジピンもベニジピンもCa拮抗薬の世代分類でいったら、一世代前のタイプで、添付文書上は1日1回の薬ではあるが、じっさいには1日2回で使われることが多い。またベニジピンはチャネルの薬理的な話題も非常に魅力的だが、やはりカントリードラッグであり、エビデンス的にも市場的にも・・・、という印象だった。
しかし、こと冠攣縮性狭心症に関しては見方を変えている。ガイドラインにはこうある。
さらに,Ca 拮抗薬にはRhoキナーゼを抑制する効果や,Ca拮抗薬のなかでも予後改善効果に差異がある可能性が示唆されている.一方で,複数の Ca 拮抗薬の組み合わせ投与や,硝酸薬との併用が試みられる場合があるが,治療効果に関する客観的なエビデンスはない.また,長期間
Ca 拮抗薬の投与を中止した場合,症状が増悪すること(リバウンド現象)がまれならず報告されており,減量,中止
の場合は,段階的に減量して,その度ごとに Holter 心電図
などで冠攣縮の悪化がないことを確認するなどの注意を要する.
「Ca拮抗薬のなかでも予後改善効果に差異がある可能性が示唆されている」これを裏付けるメタ分析(Nishigaki K et al:Circ J 74 :1943, 2010)でのベニジピンの成績には目を見張るものがある。
Ca拮抗薬同士の直接比較ではないので、どれがいちばん優れているといった歯切れの良いことは言えないが、これを見る限り、ジルチアゼムRよりベニジピンのほうが予後の改善という点では良いように思える(理論的にはCa拮抗薬を併用するなら、同じ系統ではない、ジルチアゼムRを併用する手も捨て難いが・・・)。少なくとも、ベニジピンは冠攣縮性狭心症患者の長期予後を改善するデータを有する唯一のCa拮抗薬といっていいだろう。
とはいえ、このベニジピン、血圧コントロール状況によっては1日1回だったり2回だったり。冠攣縮性狭心症の場合でも1日2回の用法のはずだが、今回のケースのように就寝前の1xで処方されるケースもあるだろう。ということは、その用法からだけで、病名を推測することはしないほうが良さそうだ。
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