カテゴリー「(04) 薬理学(副作用学を含む)」の48件の記事

2015年11月13日 (金)

CCBによる下肢浮腫への対応

CCBによる下肢浮腫。
この副作用にはしばしば遭遇する。

CCB+ARBで下肢浮腫改善を経験。

CASE 176

女性 80歳 

他科受診:なし  併用薬:なし

定期処方:
Rp1) ニフェジピンCR錠40mg 1錠  分1 朝食後   14日分

患者のコメント:
「今、薬局まで歩いてきて思い出した。足が重いの」

患者の情報:
① 血圧コントロール良好:130/80
② 下肢浮腫発現(実際に触って確認)
③ 薬をたくさん服用することを嫌う

疑義照会:
(内容)ニフェジピンによるものと思われる下肢浮腫を確認。
    ニフェジピンの減量とARBの併用を提案。
(回答)ニフェジピンCR錠20mg 1錠へ減量
    バルサルタン錠40mg 1錠 分1 朝食後 14日分追加

□CASE 176の薬歴
#1 下肢浮腫軽減のための降圧薬併用を受け入れてもらう
  S) 薬局まで歩いてきて思い出した。足が重いの
 O) 下肢浮腫(+)→疑義にて処方変更 CCB減量+ARB追加
 A) 降圧剤の併用を理解してもらう必要がある
 P) 一つの薬を増やしていくと、今回のように副作用の頻度が高まる。
   違う効き方をする薬を併用することで、副作用軽減も期待できる。
 
 
□解説
   降圧剤だけのシンプルな処方の患者。肥満もあり、普段からゆっくり歩く方ではあったのだが、薬局窓口で「足が重いの」と。足を確認すると、下肢浮腫が発現している。目視でもけっこう腫れているが、指で押すとへこんだままになる。ニフェジピンによるものだろうと疑義照会を行う。

 CCB減量では血圧が上がるかもしれない。そこでARBを併用することで、下肢浮腫の発現頻度が減る報告がいくつもあることも併せて提供する。結果、採用となった。

 あとは薬嫌いの患者に受け入れてもらえるように、降圧薬が2剤になった理由を丁寧に説明している。
 
 
□考察
 
CCBによる下肢浮腫なら減量もしくは中止すれば改善する。そこで問題になるのが血圧のコントロールだ。この方は服薬さえ忘れなければコントロール良好なのだが、薬を切らすと160~170まですぐに上がる。おまけに薬嫌い。

 今回の作戦が受け入れてもらえないなら合剤でいくしかない。ひそかにそう考えていた。結果、下肢浮腫は改善し、血圧のコントロールもうまくいっている。ただし、下肢浮腫の改善がCCBの減量によるものだけなのか、ARBの併用もあわせてのものなのかは判然とはしないが…。

 CCBは降圧効果が病態によらず確実でありながら、問題となる副作用をきたすことは少なく使いやすい降圧薬だ。しかし、下肢浮腫にはよく遭遇する。アムロジピンやニフェジピンが高用量使えるようになったことも関係しているのだろう。CCBによる下肢浮腫は用量依存的に増加する。

 CCBによる下肢浮腫のメカニズムとして、次の二つが考えられている。一つは細動脈の拡張に対して細静脈の拡張が伴わない結果、毛細血管圧が上昇するというもの。もう一つはRAA系の亢進。であれば、RA系の併用は理に適っている。

 RA系が使えなかったとしたら? じつは、L/N型CCBのシルニジピンがCCBの中でも、下肢浮腫の発現が少ないという報告がある。その機序として、N型Caチャネル阻害による交感神経の抑制(細動脈だけでなく細静脈も拡張させる)やアルドステロンを含むRAS活性化の抑制の関与が示唆されている(Therapeutic Research vol. 32 no. 5 2011)。

 RA系を使えないときの次善の策として覚えておく。
 

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 さっそく追記!

 CCBにRA系を併用することで浮腫リスクが38%減少(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21295192 )

 なお、「ACE inhibitor seems to be more efficacious than ARB in reducing calcium channel blocker-associated peripheral edema, but head-to-head comparison studies are needed to prove this」とあり、ACE-Iのほうがいいかもしれない。

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2015年10月30日 (金)

リリカの用法と浮動性めまいの発現率

リリカによるめまいや眠気
高齢者、腎機能、服用初期。
そして、その他の要因について。

CASE 175

女性 80歳 

他科受診:整形外科  併用薬:ボノテオ錠50㎎、エディロールカプセル0.75μg

定期処方:
Rp1) ミカルディス錠40mg 1錠
       アムロジピン錠5㎎ 1錠
    ピタバスタチン錠1㎎ 1錠
    トラゼンタ錠5㎎ 1錠 
    グリメピリド錠0.5㎎ 1錠
    ダイアート錠30㎎ 1錠  分1 朝食後   28日分

Rp2)リリカカプセル25㎎ 2C 分2 朝・夕食後 28日分

Rp3)ランタス注ソロスター 2キット
     1日2回(朝12単位、寝る前4単位)

患者のコメント:
「リリカは食事してこないときも飲んでいいの?」

患者の情報:
① リリカを服用開始して2週間。めまい・眠気など副作用なし。
② 今朝採血のため食事なし。念のため、リリカを服用してこなかった。
③ しびれは相変わらず。Drはもう少し様子を見ようと。
④ 体重52kg、身長145cm、S-Cr:1.10、eGFR:30.17mL/min

□CASE 175の薬歴
#1 朝食抜きのときはリリカの服用を控える
  S) リリカは食事してこないときも飲んでいいの? 採血があるから。
   リリカは念のため飲んでこなかった。
 O) リリカ服用2週間→めまいや眠気など(-)
   他科にて骨粗鬆症治療中
 A) 空腹時服用→Tmax↑→めまい→転倒・骨折リスク↑
 P) 空腹時の服用にてめまいが起きやすくなるので今回の対応でOK
    空腹時での服用は避け、食後に服用するように。
   これからはむくみや体重などにも注意しておいて。
 
 
□解説
 糖尿病性の神経障害疼痛にてリリカの服用を開始した患者。腎機能の低下(eGFR:30mL/min)があり、初期用量を50㎎/dayとやや少なめでスタートをしているものの、骨粗鬆症の高齢女性のため、めまいからの転倒・骨折を心配していた。幸い、服用初期に発現しやすいめまいや眠気の発現はなく、開始して2週間が経過している。

Photo

 しびれは続いているが「今回はこのまま様子を見よう」と28日分の処方。そこで、服用1~2か月頃から注意が必要な末梢性浮腫と体重増加についてのアナウンスをしようと考えていた。

 ところが、「リリカは食事してこないときも飲んでいいの?」と、患者より質問を受ける。今日は採血があるため食事をしておらず、念のためグリメピリドだけでなくリリカも飲んでいないという。

 じつは、このリリカ。食事の有無の違いで血中濃度の推移が大きく異なる。

Photo_2

 (リリカカプセルIF P. 83)

 AUCはほとんど変わらないものの、Cmaxは空腹時と食後でそれぞれ 4.95 及び 3.22μg/mL、tmaxは 0.947 及び 3.37 時間とそのふるまいは大きく変化している。その結果、当然ながら「浮動性めまいの発現率は、食後投与 5.3%(1/19 例)と比べ絶食時投与 30.8%(12/39 例)で高かった」となっている。

 そこで転倒・骨折リスクを避けるために、空腹時での服用を避けるように指導している。
 
 
□考察
 
80歳で骨粗鬆症、もうこれだけでリリカの服用というのは心配だ。大腿骨近位部骨折でもやってしまったら、約2割はそのまま寝たきりになってしまうからだ。

 おまけに腎機能の低下まである。腎機能が正常でも高齢者なら少なめでいきたいくらいなのに、副作用の起きやすい患者背景まであるわけだ。理由はいろいろ言われているが、それ以外にも問題になることがある。それが今回の空腹時での服用だ。

 白鷺病院の古久保先生は、ハイリスク薬に対して、次のように対応しようと提案されている。

 ① 薬をよく知る
 ② 副作用の特徴をよく知る
 ③ 仮説を立て、検証する
 ④ 実践して修正する

 対策が頭の中にあるからこそ、その対策を実践して修正を加えているからこそ、患者の質問にも適切に返答できるし、副作用を未然に防止できるというわけだ。
 

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2015年8月21日 (金)

メトグルコ服用中の一時的な休薬の指導とその再開

BG薬服用中の胃腸炎。
脱水による乳酸アシドーシス。
一時的な休薬の服薬指導を。

CASE 173

女性 50歳 

他科受診:なし、併用薬:なし

定期処方:
Rp1) オルメテック錠20mg 1錠   
    フルイトラン錠1mg   1錠
    ビソプロロール錠5mg 1錠
        トラゼンタ錠5mg    1錠 分1 朝食後   28日分

Rp2)ピタバスタチン錠1mg    1錠 分1 夕食後 28日分

Rp3)メトグルコ錠250mg  6錠 分3 毎食後 28日分

患者のコメント:
「胃腸炎で下痢していたから、メトグルコは言われた通りにやめていたので、1週間分残っている。よかったかしら?」

疑義照会:
(内容)メトグルコ残薬1週間分
(回答)28日分→21日分

□CASE 173の薬歴
#1 メトグルコの一時的な休薬と再開への理解
  S) 胃腸炎で下痢していたから、メトグルコは言われた通りにやめていた。
   1週間分残っている。よかったかしら?
 O) メトグルコ残薬調整 28日分→21日分
 A)  メトグルコの一時的な休薬の理解OK
 P) OKです。脱水を疑うようなときは今回のように休薬を。
   再開も慌てずに体調が戻ってからでよい。
 
 
□解説
 メトグルコの服薬状況ならびに残薬の確認をすると、「1週間分残っている」と。しかし、それはしっかりとした薬識によるものだった。服薬指導が活きており、患者の安全に貢献できた症例と言っていいだろう。

 患者は指導されていた通りにメトグルコを一時的に休薬するも、1週間も服薬していなかったことに対して不安を覚えている様子。

 そこで対応に間違いがなかったこと、再開を急がずに体調が戻ってからでよいことを再度確認している。

 
□考察
 メトグルコの重大な副作用である乳酸アシドーシス、これを回避するために二つの視点が必要になる。一つは禁忌症例の除外。もう一つが今回のような一時的な休薬だ。

 一時的な休薬が必要となるケースというのは、造影剤を除けば、ほとんどが“脱水”に起因する。脱水は血液の循環不全とつながり、低酸素状態が筋肉や肝臓で生じ、乳酸アシドーシスのリスクとなる。また一方で、血液循環不全は腎血流量の低下からメトグルコの血中濃度の上昇にもつながり、これもとうぜん乳酸アシドーシスのリスクである。 

 発熱や下痢、嘔吐などによる水分喪失、夏場の水分不足(利尿剤やSGLT2阻害薬併用中の方はさらに注意が必要となってくる)、そしてアルコール利尿(大量飲酒時も休薬が必要。脱水の他に乳酸の分解を妨げる)。こういったときに対応できるように、一時的な休薬の指導を徹底しておく必要がある。

 そして再開について。メトグルコはSU薬やDPP-4阻害薬のように、効果がすぐに反映するような薬剤ではない。再開を急がずに、体調が戻ってからでよいことを併せて伝えておきたい。

 

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2015年5月 8日 (金)

ベニジピンは冠攣縮性狭心症患者の長期予後を改善するデータを有する唯一のCa拮抗薬

ベニジピン(コニール)の特徴といえばチャネル?
1日1回は高血圧で、1日2回は狭心症?
ベニジピンは冠攣縮性狭心症でもっと使われていいと思う。

CASE 170

女性 70歳 

他科受診:なし、併用薬:なし、タバコ・アルコール:なし

定期処方の変遷1:
Rp1) フルバスタチン錠20mg 1錠  分1 夕食後   42日分
Rp2)ニソルジピン錠5mg     2錠  分2 朝・夕食後   42日分

定期処方の変遷2:
Rp1) フルバスタチン錠20mg 1錠  分1 夕食後   14日分
Rp3)ニソルジピン錠5mg     2錠  分2 朝食後・就寝前   14日分

今回の処方:
Rp1) フルバスタチン錠20mg 1錠  分1 夕食後   14日分
Rp2)ニソルジピン錠5mg     2錠  分2 朝・夕食後   14日分
Rp4)ベニジピン錠4mg  1錠  分1 就寝前 14日分

患者のコメント:
「やっぱり朝が高くて、150くらいはある」
「薬は元に戻して、一つ加えましょう、と」

薬歴・患者から得られた情報:
① もともとは狭心症発作で、循環器のDrのお世話になっている。
② フルバスタチンとニソルジピンをずっと服用しており、ここ5年は変更がない。
③ 朝に動悸も少し感じる。

□CASE 170の薬歴
#1 Ca拮抗薬の併用と副作用のアナウンス
  S) 朝が高くて、150くらいはある。動悸も少しある。
 O) ベニジピン追加。もともと冠攣縮性狭心症(+)
   早朝高血圧とともに狭心症発作も併発
 A) ベニジピン初薬とCa拮抗薬併用についての理解要
 P) ベニジピンもニソルジピンと同様に狭心症と血圧の両方に効果がある。
  ベニジピンは冠血管への選択性が高く、狭心症発作・予後ともに期待できる。
  飲み始めの立ちくらみやフラッシング→慣れることが多い。
  頻脈や下肢浮腫、過降圧、ひどい便秘→用量調節要、申し出て。
 
 
□解説
 
広域処方せんを持参する患者。当局の利用以前からRp1)2)をずっと服用している。朝が高めとなり、ニソルジピン(先発品:バイミカード)の夕食後を就寝前に変更して対応を試みるが、うまくいかずにベニジピン(先発品:コニール)が追加となっている。

 高血圧だけの患者と考えるとこのCa拮抗薬の併用だけの降圧薬の処方は理解できないが、高血圧と冠攣縮性狭心症を併発している患者と考えるとわかる。

 Ca拮抗薬は冠攣縮性狭心症の第一選択薬だが、そのすべてに異型狭心症(冠攣縮性狭心症の一種)の適応があるわけではない。ニソルジピン、ニフェジピンCR(アダラートCR)、ジルチアゼムR(ヘルベッサーR)の3剤は狭心症だけではなく異型狭心症の適応も有している。ニソルジピンは降圧力はマイルドだが、カルシウムチャネルへの結合性が高く、狭心症には強いとの評価がある。

 スタチンもガイドラインにおいて、冠攣縮性狭心症に対してクラスⅡbとなっている。なかでもフルバスタチンはSCASTというエビデンスを有しており、冠攣縮性狭心症の新しい治療薬になることが期待されている。ゆえに、もともとの処方から、この患者の病名は容易に推測できる。

 ともあれ、今回の状況では、Ca拮抗薬を併用することになる。その意義と起こり得る副作用についてのアナウンスを中心に服薬指導を行っている。
 
 
□考察
 ニソルジピンもベニジピンもCa拮抗薬の世代分類でいったら、一世代前のタイプで、添付文書上は1日1回の薬ではあるが、じっさいには1日2回で使われることが多い。またベニジピンはチャネルの薬理的な話題も非常に魅力的だが、やはりカントリードラッグであり、エビデンス的にも市場的にも・・・、という印象だった。

 しかし、こと冠攣縮性狭心症に関しては見方を変えている。ガイドラインにはこうある。

さらに,Ca 拮抗薬にはRhoキナーゼを抑制する効果や,Ca拮抗薬のなかでも予後改善効果に差異がある可能性が示唆されている.一方で,複数の Ca 拮抗薬の組み合わせ投与や,硝酸薬との併用が試みられる場合があるが,治療効果に関する客観的なエビデンスはない.また,長期間 Ca 拮抗薬の投与を中止した場合,症状が増悪すること(リバウンド現象)がまれならず報告されており,減量,中止 の場合は,段階的に減量して,その度ごとに Holter 心電図 などで冠攣縮の悪化がないことを確認するなどの注意を要する.


 「Ca拮抗薬のなかでも予後改善効果に差異がある可能性が示唆されている」これを裏付けるメタ分析(Nishigaki K et al:Circ J 74 :1943, 2010)でのベニジピンの成績には目を見張るものがある。

Ccb4

 Ca拮抗薬同士の直接比較ではないので、どれがいちばん優れているといった歯切れの良いことは言えないが、これを見る限り、ジルチアゼムRよりベニジピンのほうが予後の改善という点では良いように思える(理論的にはCa拮抗薬を併用するなら、同じ系統ではない、ジルチアゼムRを併用する手も捨て難いが・・・)。少なくとも、ベニジピンは冠攣縮性狭心症患者の長期予後を改善するデータを有する唯一のCa拮抗薬といっていいだろう。

 とはいえ、このベニジピン、血圧コントロール状況によっては1日1回だったり2回だったり。冠攣縮性狭心症の場合でも1日2回の用法のはずだが、今回のケースのように就寝前の1xで処方されるケースもあるだろう。ということは、その用法からだけで、病名を推測することはしないほうが良さそうだ。

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2015年3月20日 (金)

アピキサバンの「間質性肺疾患」について

 2015年2月、アピキサバン(商品名:エリキュース錠)で、「使用上の注意」改定のお知らせが発行された(こちら)。

 重大な副作用に「間質性肺疾患」が追記され、副作用症例概要として、70代女性の症例が1例だけ記載されている。

 「間質性肺疾患:間質性肺疾患があらわれることがあるので、観察を十分に行い、咳嗽、血痰、息切れ、呼吸困難、発熱、肺音の異常等が認められた場合には、速やかに胸部X線、胸部CT、血清マーカー等の検査を実施すること。間質性肺疾患が疑われた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。」

Photo

 この1例は、投与81日目に血痰が見られている。2015年2月17日の日経メディカルの記事(アピキサバン、重大な副作用に「間質性肺疾患」追加)によると、これが「間質性肺炎」ではなく「間質性肺疾患」とされた理由とされている。

 つまり、この1例はその意味で特徴的であったために、この1例だけの記載になっているようだ。しかし、1例だけでは副作用分類を試みて、モニタリング・ピリオドを設定するわけにもいかない。

 他のNOACではどうだったか。2014年1月にリバーロキサン(商品名:イグザレルト錠)で、「イグザレルト錠服用中の間質性肺炎について」が発行されており、そこでは症例が3つ紹介されている。

 症例1(80代・男):10mg、投与期間28日間、死亡、投与10日にて発熱・咳
 症例2(80代・女):10mg、投与期間4日間、投与4日にて呼吸困難
 症例3(80代・男):15mg、投与期間59日間、投与52日にて夜間咳嗽
                             投与55日咳嗽増悪にて血痰

 間質性肺炎の発生機序は大きく2つに分けられる。

 「一つは、ある種の抗がん剤などのように、細胞を直接傷害する医薬品によって肺の細胞自体が傷害を受けて生じるもので、医薬品を使用してからゆっくり(数週間~数年)発症するものです。もう一つは、薬に対する一種のアレルギーのような免疫反応が原因となるもので、多くは、医薬品の使用後早期(1~2 週間程度)に発症するものです。多くの種類の医薬品がこのタイプとされています」

 『重篤副作用疾患別対応マニュアル 間質性肺炎(肺臓炎、胞隔炎、肺繊維症)』より

 リバーロキサンの場合はどれも症状の発現が早い。アレルギー性の機序と考えていいだろう。よってモニタリング・ピリオドは6ヶ月(特に2ヶ月以内)と設定していた。

 では、アピキサバンはどうするか。症例は一つしかない。

 症例1(70代・女):5mg、投与期間240日間、投与81日にて血痰

 なるほど、血痰から始まっている。間質性肺炎の初期症状として息切れ、発熱、空咳だけを追っていたら、見逃してしまうかもしれない。たしかに特徴的ではあるが、1例だけではどうしようもない。メーカーに確認すると、あと4例(合計5例)を確認することができる。その4例の症状発現は14日、59日、51日、2ヶ月とどれも6ヶ月以内。

 アピキサバンも機序的にはリバーロキサンと同様にアレルギー性で、そのモニタリング・ピリオドは6ヶ月と設定してよさそうだ。ただし、血痰から症状が発現することもあり、アピキサバンでは「間質性肺疾患」を想定することを忘れないようにしなければならない。

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2014年10月10日 (金)

SGLT2とBGの危ない関係

SGLT2阻害薬の副作用。
Recommendationは必読。
BGとの併用で気になる副作用は?

CASE 163

男性 48歳 

他科受診:なし、併用薬:なし

定期処方:
Rp1) バルサルタン錠40mg 1錠 分1 朝食後   
    トラゼンタ錠5mg    1錠 分1 朝食後   14日分
Rp2)メトグルコ錠250mg 6錠 分3 毎食後  14日分

追加処方:
Rp3)デベルザ錠20㎎ 1錠 分1 朝食後   14日分

患者のコメント:
「先生が新しい薬をためしてみようって。体重も落ちるんでしょ?
 薬疹が出たら、すぐ止めて受診するように言われた」

薬歴・患者から得られた情報:
①160cm 80kg 体重は横バイ
②服用状況良(メトグルコのリカバリOK)
③メトグルコによる軟便は改善してきている
④HbA1c:7.5%、腎NP

□CASE 163の薬歴
#1 デベルザ初薬のため副作用中心のアナウンス
  S)先生が新しい薬をためしてみようって。体重も落ちるんでしょ?
  薬疹が出たら、すぐ止めて受診するように言われた
 O)体重減なし(80kg) HbA1c:7.5%  腎NP
   デベルザ追加
 A)初薬のため副作用中心のアナウンスが必要
   残暑+デベルザ→脱水→BGによる乳酸アシドーシス のリスクも
 P)尿に糖を出す薬。体重が数kg落ちるが脱水に注意が必要。
  脱水になると、他の糖の薬も悪さをしやすくなる。
  こまめに補水を。500mLくらいを+αとして意識してとること。
  その他、薬疹のほかに尿路感染症にも注意が必要。
    Sick Dayではメトグルコだけではなく、今回のデベルザも休薬を。
 
 
□解説
 トラゼンタとメトグルコの2剤で体重の増加こそないもののコントロール不良の患者。HbA1cを下げるためにSU剤やグリニド系を加えれば、体重増となりやすいことを考慮して、新薬のSGLT2阻害薬を試すことに。

 期待されて登場したSGLT2阻害薬だったが、ふたを開けると薬疹が多く、医師もそこは気をつけているようだ。しかし、副作用の頻度としては、やはり薬理作用に関するものが多くなる。

Sglt2

  (ルセフィの製品リーフレットより。これが一番わかりやすい)

 この症例の組み合わせなら、低血糖はあまり怖くはない。むしろ、低血糖以外の副作用をアナウンスすべきだろう。

 さらにデベルザで脱水になると、今度はメトグルコの乳酸アシドーシスも心配になる。まだまだ残暑も厳しい。そこで、具体的な補水のアナウンスを中心に行っている。
 
□考察
 この副作用(SGLT2阻害薬→脱水→BGによる乳酸アシドーシス)のリスクは「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」にも記載がある。

 また、日経DI 9月号のDIクイズにも同様の症例と詳しい説明があるので参考になる。

 その中でも指摘があるが、メトグルコは利尿薬併用時にも同様の注意を払う必要がある。この点は今まで対応できてなかった。

 BG + 夏(環境)+利尿薬 or/and SGLT2→乳酸アシドーシスのリスク↑

 公式化して覚えておく。

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2014年10月11日追記 【糖尿病新薬、使用の患者2人死亡…利尿薬を併用

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2014年7月11日 (金)

喘息患者の本態性振戦

本態性振戦にアロチノロール。
喘息には禁忌、代替薬は?
疑義照会ひさびさの失敗例。

CASE 160

女性 65歳 

他科受診:呼吸器科
併用薬:キプレス錠10mg、キュバール100エアゾール、メプチンエアー10μg吸入

処方:
Rp1) ピタバスタチンカルシウム錠1mg 1錠   朝食後   14日分
Rp2)アロチノロール塩酸塩錠10mg 2錠    朝・夕食後  14日分

*アムロジピン錠2.5mg 1錠 朝食後 →Rp 2)へ変更となっている

患者のコメント:
「コップを持ったりすると手がふるえるので、先生に相談してみました」

患者から得られた情報:
① お薬手帳より併用薬確認、気管支喘息にて治療中
② 血圧:120/70  脈拍:70

疑義照会:
(内容)他科にてBA治療中、アロチノロール禁忌
(回答)Rp 2)→メインテート錠5mg  1錠 朝食後 へ変更

□CASE 160の薬歴
#1 本態性振戦とその治療薬への理解を促す
  S) コップを持ったりすると手がふるえる
 O) BA治療中。疑義の結果、アムロジピン(2.5)1x →メインテート(5)1x
   血圧 120/70 脈拍 70
 A) 病態と処方変更を理解してもらう
 P) ふるえをゼロにするのが目的ではなく支障がない程度へ。
   血圧とふるえの両方をカバーして、喘息でも大丈夫なタイプ。
   脈拍も少しゆっくりになります。
 
□解説
 本態性振戦には、一定に姿勢をとろうとしたときにおこるもの(姿勢時振戦)となんらかの動作をするときにおこる(動作時振戦)があり、患者は後者のようだ。そこで医師はアロチノロール、昔でいうアルマールを処方している。その際、気温が高くなってきたこともあり、過降圧を考慮し、アムロジピンからの切り替えを選択している。

 アロチノロールはβ1非選択性のβブロッカーで、喘息には禁忌である。患者はお薬手帳のおかげで、喘息であることが一目瞭然。とうぜん疑義照会を行う。医師より「安全なのは何か」と問われ、β1選択性のあるメインテートを咄嗟に答えてしまう。これが誤りだった。後ほど考察で展開する。

 この提案には重大な瑕疵があるとはつゆ知らず、患者に対しては病態と処方薬の理解を促している。
 
□考察
 この日の午後。「本態性振戦にメインテートって、やっぱり聞いたことないけど」と、医局にて医師より質問を受ける。糖尿病患者の低血糖マスクなどもあるから、効くだろうと思っていたが不安になり調べることに。

 本態性振戦のふるえの原因は主に2つ。一つ目は脊髄運動細胞の異常興奮による中枢系、もう一つは骨格筋でのβ2受容体の刺激による末梢系。β2刺激! だからアロチノロールやインデラルが勧められているのであって、β1選択性のメインテートでは意味がないわけだ。

 喘息でβ1非選択性が禁忌の時は、中枢系にアプローチすることになる。具体的にはプリミドンやリボトリールが勧められており、少量より始め、眠気等の副作用に注意する必要がある。

 医師に謝罪し、プリミドンを用意。患者には効果があまり期待できない旨を伝えた。しかし患者はふつうに2週間後に来局される。さらに処方薬も変わっていない。様子を伺うと、ふるえがほとんど気にならなくなった、と。結果オーライと思いきや、血圧の変動が以前よりあるような気がするとのことで、やはり今後、処方変更になりそうだ。

 人間は間違いを重ねて成長する。しかし扱うものが薬なだけに、なるべく間違いは犯したくない。でも今回は、いい勉強になったというしかない。不勉強が身に染みる。

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2014年6月20日 (金)

スタチンによる糖尿病発症のリスク上昇について

スタチンによる糖尿病発症リスクはすべてのスタチンなのか?
ストロングスタチン(高強度スタチン)だけなのか?
はたまた人種差はあるのか?

【スタチンと糖尿病発症リスク】

 2014年も1月、3月、5月と安心処方infoboxのサーチ実践例を監修している。


 3月の段階でスタチンで添付文書に高血糖の記載があるものはリピトールだけだった。しかし当時から、スタチンによる糖尿病発症のリスクは指摘されていた。

 Lancetに掲載された「スタチンと糖尿病発症リスク:無作為化スタチン試験の共同メタアナリシス」の結果・考察から気になったところを引用すると・・・

 □ それぞれの試験における糖尿病の発症率は大きく異なっていた
 □ データを合わせると、スタチン群では・・・糖尿病発症リスクが9%高い
 □ 各スタチンならびに脂溶性スタチンと水溶性スタチンの比較でもほぼ同等のリスク
 □ さまざまなスタチンのグルコーストランスポータ4に対する効果を検討した研究によると、他のスタチンには当てはまらないものの、アトルバスタチンはこの機序を介して糖代謝に有害な影響を及ぼすと考えられることが示されている
 □ スタチン群における糖尿病174例の増加というのは、絶対数としては糖尿病の若干の増加にすぎない。血管イベントの減少との関係でみても、そのリスクは小さい
 □ スタチン同士を比較した試験の糖尿病発症と血糖値の変化に関するデータもあり、そのいくつかは高用量や強力なスタチンでグルコースホメオスタシスの悪化を示している
 □ 中等度ないし高度の心血管リスクやすでに心血管疾患がある患者では、スタチン治療の方針を変える必要はないとわれわれは考える。しかし、心血管リスクが低い患者や心血管ベネフィットが証明されていない患者群にスタチン治療を考える場合は、糖尿病の発症リスクが上昇する可能性があることを考慮すべきである

 スタチンをプラーク安定化(退縮)薬として用いる場合には、そのベネフィットはリスクを上回る。さらにリピトールには血糖上昇の仮説と高用量やストロングスタチンには同様のリスクがある。そんなふうに理解していた。

【相次ぐ報告、添付文書改訂】


 心血管疾患の2次予防のために行われるスタチン投与では、低強度スタチンに比べて高強度スタチンの方が糖尿病発症リスクが高いこと、特に処方開始から4カ月間のリスク上昇が大きいことが、複数の住民ベースのコホート研究と、それらのメタアナリシスの結果として示された。

 とある。さらに添付文書改訂も相次ぐ。2014年6月20日現在、いずれも自主改訂だが、クレストールとローコールの添付文書が改訂さて、「糖尿病発症のリスクが高かったとの報告がある」といった記載が追加となっている。

 意外だったのが、ローコールの改訂だ。いやいや君はレギュラースタチンでしょ、と突っ込みたくなったが、ローコールだけはストロングスタチンと同様に、構造式にフッ素が導入されていて、ストロングスタチンの構造の特徴を有している。

 もう一つ。ストロングスタチンの中でリバロはまだ添付文書改訂に踏み切っていない。さらに日本人で相反するような報告がさきの糖尿病学会でなされている。


 この中で「IGTに対するピタバスタチン投与は、『効果は弱いものの糖尿病発症を18%抑制した』と結論した。また、いずれの診断基準で評価してもピタバスタチンは糖尿病発症を増加させなかった」とまである。

 これは人種差なのか? 試験デザインの問題なのか?

 いずれにしても、スタチンと糖尿病は無視できない問題であり、トータル的なベネフィットの考慮が必要な問題でもある。

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2013年10月25日 (金)

ARBによる尿酸排泄作用

ARBの中に尿酸を低下させるものがある。
腎組織移行性に起因するのか?
ニューロタンとイルベタン(アバプロ)

CASE 150

男性 65歳

処方:
Rp 1)ミカルディス錠40mg 1錠 / 1x朝食後 28日分
Rp 2) レバミピド錠100mg 3錠 / 3x毎食後 28日分
Rp 3) プロテカジン錠10錠 / 1x夕食後 28日分
Rp 4) フェブリク錠10mg 1錠 / 1x朝食後 28日分

*Rp 4) が初処方

患者の訴え : 「はじめて尿酸が8になった。ずっと7ちょっとだったのに。薬の副作用じゃないの?」

患者から得られた情報:
① 尿酸:8.0、以前は7.1~7.2くらいだった
② 痛風発作(-)

薬歴から得られた情報:
① 3ヵ月前に朝の血圧が高めだったために
   ニューロタン錠50mg 1錠 → ミカルディス錠40mgに変更
② 降圧剤変更後、血圧は安定している
③ 腎臓NP
④ 服薬指導の傾向:高血圧→脳卒中、動脈硬化

□CASE 150の薬歴
#1 誤解を解き、UAのコントロールを理解する
  S) はじめて尿酸が8になった。ずっと7ちょっとだったのに。
   薬の副作用じゃないの?
 O) UA:8.0 → フェブリク(10)追加
    3ヶ月前に早朝高血圧対策として、ニューロタン(50)→ミカルディス(40)
      この当時のUA:7.1~7.2
 A) ニューロタンが尿酸を下げていたのだろう。
   誤解を解き、UAをコントロールするように意識を向けたい。
 P)ニューロタンには尿酸を下げる効果があったが、ミカルディスにはない。
   そのぶん上がったのかも。しかし、ミカルディスのほうが早朝高血圧には適。
   このままだと痛風だけでなく動脈硬化にもよくないので、
   フェブリクで尿酸もコントロールしていきましょう。
 R) 前の薬がよかったな~ → トレースレポート提出 
 
□解説
 「薬の副作用じゃないの?」にはびっくりした、。なるほど患者にとってみれば、尿酸が8になるのは初めてで、さいきん変わったことと言えば、降圧剤の変更しかないというわけだ。

 ニューロタンの付加価値的な効果である尿酸低下作用は、UA7以上の患者で平均0.7くらい下げると言われている。また、この効果は用量依存的でもあり、25mgでは-0.32、50mgでは-0.77、100mgでは-1.25というデータがある(Nakashima M et al,Eur J Clin Pharmacol 1992; 42(3) 333-335.)。

 ニューロタン服用時の尿酸が7.1~7.2で、いまが8.0なので、だいたい計算通りということになる。

 これを副作用と勘違いされたら、その後の服薬行動に影響を与えかねない。そして、尿酸コントロールの必要性を理解してもらう必要もある。

 「前の薬がよかったな~」とのコメントは、ごもっとも。医師にトレースレポートで経過と患者の感想を伝えることにした。

 
 
□考察
 ARBの中でも尿酸排泄作用のあるのは、ニューロタンとイルベタン(アバプロ)の二剤だけである。高尿酸血症のある患者には向いているARBといえる。

 では、なぜ、この二剤だけに尿酸排泄作用があるのか。その理由はわからない。ただ、この二剤は腎組織への移行性という面で、他のARBより優れているようだ。

 ARBはAngⅡ依存性の輸出細動脈血管抵抗を減弱し,糸球体血行動態を改善し,過剰濾過を改善することにより,アルプミン尿,蛋自尿が減少し,腎障害の進展を抑制することに加えて,糸球体構成細胞に直接作用して腎保護効果を示していると考えられている。これら腎臓を構成する種々の細胞にARBが作用するためには,血漿中の薬物濃度に加えて,腎組織での濃度がその作用強弱に影響を及ぼす。図2は,14Cで放射ラベルしたそれぞれのARBをラットに経口投与した後,最高血漿中濃度到達時点での腎臓/血漿中の放射濃度比を示している。イルベサルタンとロサルタンは,それぞれピークの血漿中濃度の1.6倍と1.4倍程度の値を示したが,他のARBは血漿中濃度よりも低値を示した。

Arb

 <Progress in Medicine Vol. 29 No.8 (2009-8) P. 94(1992)-99(1997)>
 

 ラットの試験とはいえ、この差は偶然だろうか。

 残念ながら、尿酸のガイドラインの目標値である6まで下げるような効果は、先の二剤にはない。これらの作用は尿酸が7以上の場合にのみ確認されている。しかし、尿酸を7くらいまで下げられれば充分と医師が考えている場合には助けになる。場合によっては、薬の数を一つ減らすことができるかもしれない。

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H25.11.27 追記

ニューロタンとイルベタンはURAT1阻害剤だった。

 したがって,URAT1の阻害効果を持つベンズブロマロン,プロベネシド,ロサルタンは近位尿細管での再吸収を阻害して尿酸の排泄促進により血清尿酸値を低下させる.実際にベンズブロマロンやロサルタンは野生型URAT1遺伝子を持つ健常者の腎臓での尿酸排泄を促進するが,URAT1欠損患者では尿酸排泄を促進しないことから,ヒトでベンズブロマロンとロサルタンはURAT1を阻害することが臨床的に報告されている7).これらの事実は,生活習慣病に合併する尿酸排泄低下型高尿酸血症の治療にはURAT1の阻害薬であるベンズブロマロンやロサルタンが効果的であることを示す.また近年,イルベサルタンでもURAT1ならびにURATv1を阻害できるという報告がある。

*鳥居薬品 ユリノームHPより引用 

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2013年10月11日 (金)

アリミデックスとエビスタの併用を回避する

AI剤とSERM
併用禁忌とも併用注意でもないこの組み合わせ。
なぜ回避する?

CASE 149

女性 60歳

副作用歴:スタチン→発疹や脱力感、ゼチーア→発疹、コレバイン→便秘や腹痛

他科より併用薬:アリミデックス錠1mg 1錠 / 1x朝食後 180日分

処方:
Rp 1)ネキシウムカプセル20mg 1錠 / 1x朝食後 28日分
Rp 2) レバミピド錠100mg 3錠・ユベラNソフトカプセル200mg 3C / 3x毎食後 28日分
Rp 3) エビスタ錠60mg 1錠 / 1x朝食後 28日分

*今回よりエビスタが追加となっている。

患者の訴え :
「骨量が少し低いって。乳癌の薬のせいだろうって。でもコレステロールも下げられる一石二鳥の薬を出しておくって。ほんとに下がるの? わたし、今までどの薬も合わなかったから心配で。合わないようなら、止めていいって先生は言っていたけど」

患者から得られた情報:
① LDL-C:170
② スタチン系やゼチーアなども副作用で継続できずにユベラNのみで対応するも、コントロール不良
③ アリミデックスはH23.10より開始。5年間服薬予定。関節痛やこわばりなどはみられない。

疑義照会:
(内容)アリミデックスとエビスタを併用すると、アリミデックスの再発予防効果減少
(回答)Rp 3)→Rp 4)へ変更
    Rp 4) エディロールカプセル0.75μg / 1x朝食後 28日分

□CASE 149の薬歴
#1 骨粗鬆症薬の変更を理解する
  S)骨量が少し低いって。乳癌の薬のせいだろうって。
   コレステロールも下げられる一石二鳥の薬を出しておくって。
 O) エビスタ追加
   他科にてアリミデックス服用中
 A) エビスタ併用にて、アリミデックスの乳癌再発予防効果減少
 P)疑義照会にてエディロールへ変更。その旨を説明。
   Caの吸収を助けるVDを朝食後に。
   骨粗鬆症のみの効果で、残念ながらコレステロールには効果なし。
 R) あら~、残念。でもビタミンなら副作用は心配なさそうね。
 
□解説
 この患者はスタチンを何種類か試したが、発疹や脱力感などで使えず、ゼチーアもコレバインもダメ。効果は期待できないながらもユベラNを続けている状況だった。

 今回、骨量減少を受けて、医師も「一石二鳥」と表現しているように、骨粗鬆症よりもコレステロールのほうを期待していたのかもしれない。

 しかし、アリミデックスとノルバデックスを併用すると、アリミデックス単独よりもその乳癌再発予防効果がわるくなってしまう(ATAC試験)。日本乳癌学会がまとめたガイドラインにも次のような記載がある。

 一方、ラロキシフェンは閉経後女性における骨粗鬆症の治療薬として日本でも広く使用されている。しかしATACにおいてタモキシフェンとアナストロゾールの併用で有害事象が増加し、しかもアナスタロゾールの乳癌再発予防効果を阻害することが明らかとなった。ラロキシフェンも理論上アロマターゼ阻害薬との相互作用が懸念されるため、アロマターゼ阻害薬使用時にラロキシフェンを併用することは推奨されない。

(『科学的根拠に基づく乳癌ガイドライン①治療編 2011年版』金原出版株式会社 P. 154)

 よって疑義照会を行い、骨粗鬆症薬の変更を理解していただいた。

 
□考察

 ノルバデックス(タモキシフェン、TAM)は、抗エストロゲン薬と習った。それは昔の呼び名で、TAMも今ではSERM(選択的エストロゲン受容体調整薬)と呼ばれる。

 これさえ知っておけば、エビスタ(ラロキシフェン)はその登場のときからSERMと呼ばれているから、TAMとエビスタは同じ仲間だとわかる。

 もう一つ、ATAC試験の結果から、アリミデックスのようなAI剤(アロマターゼ阻害剤)とSERMの併用はNGであるということ。

 この二つを知っていれば対応できる。しかし、この併用を避けるべきだということは、添付文書に記載はなく、併用注意にもなっていない。関連項目としては以下の記載があるだけだ。

 3. 外国術後補助療法大規模比較試験
 世界21ヵ国で実施した閉経後早期乳癌患者の術後補助療法大規模比較試験において、追跡期間の中央値約68ヵ月時点での再発・死亡・対側乳癌の発生率は、アナストロゾール群18.4%(575/3,125例)及びタモキシフェン群20.9%(651/3,116例)であった。無病期間のハザード比は0.87(95%信頼区間0.78-0.97、p=0.01)であり、アナストロゾール群はタモキシフェン群と比較して乳癌再発リスクを13%低下させた。遠隔再発までの期間のハザード比は0.86(95%信頼区間0.74-0.99、p=0.04)であり、アナストロゾール群はタモキシフェン群と比較して遠隔転移の再発リスクを14%低下させた。また、ホルモン受容体陽性患者における対側乳癌のハザード比は0.47(95%信頼区間0.29-0.75、p=0.001)であり、アナストロゾール群はタモキシフェン群と比較して対側乳癌発生リスクを53%低下させた。なお、追跡期間の中央値約47ヵ月時点でのアナストロゾール・タモキシフェン併用群とタモキシフェン群との比較においては、無病期間のハザード比1.04(95%信頼区間0.92-1.19、p=0.5)であり、アナストロゾールの併用による追加効果は認められなかった。
(アリミデックス添付文書より)

 乳癌の再発が起こりやすい時期は治療開始から2~3年後と言われる。今回の患者がまさしくその時期で、アリミデックスの副作用も幸いほとんどなく続けられている。この状態を邪魔するようなことはしたくない。

 ノルバデックスとエビスタでは用いられる分野がまったく異なる。が、その薬効群は同じだ。添付文書に記載がない現状では、他科の医師が知らないのは当然とも言える。

 アリミデックスを投薬する機会じたいは少ないけれども、併用薬として飲んでいるかたはたくさんいる。ならば、勉強しておくしかない。

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