カテゴリー「(04) 薬理学(副作用学を含む)」の55件の記事

2016年9月30日 (金)

ジゴキシンの中毒域と有効治療域に明瞭な境界は存在しない

つまり、オーバーラップ域が存在する。
薬力学的な視点。
ジギタリス中毒を起こしやすい病態と相互作用。

 コラムでは薬物動態学的なジゴキシンの相互作用を扱ったので、今回のブログでは薬力学的な観点を補足しておきたい(参照:ジゴキシンとの併用、このP-gp阻害薬に注意!)。

ジゴキシンの有効治療血中濃度範囲は一般的に 0.5 ~ 2.0ng/mL(血清中濃度)と考えられており、その範囲は非常に狭い。実際には中毒域と有効治療域の間には明瞭な境界はなく、オーバーラップ域が存在する。その一因としては、低カリウム血症、高カルシウム血症、低マグネシウム血症などの電解質のバランスが崩れた状態、腎疾患のある患者、血液透析を受けている患者、甲状腺機能の低下している患者、交感神経系緊張の亢進した患者、心臓に器質的変化のある患者及び高齢者等では、上記有効治療血中濃度範囲にあっても中毒を起こす可能性がある。従って、血中濃度だけを指標にした治療ではなく、臨床家の正確な臨床状態の把握とジゴキシン中毒症状の知識が必須のものとなる。また、経口投与されたジゴキシンは主に小腸上部で吸収されるが、極性が高いために吸収は不完全であり個体差も大きい。加えて他剤との相互作用も体内動態に影響するため、患者個々において十分な観察が必要である。

 (ジゴキシン錠0.0625「KYO」/ ハーフジゴキシンKY錠0.125/ ジゴキシンKY錠0.25のインタビューホーム P. 12より引用)

 ジゴキシンの中毒域と有効治療域の間にはオーバーラップ域が存在する。引用太字で示した病態においてそれは現れる。つまり、ジゴキシンの感受性が増しているのだ。このような患者に対して、ジゴキシンを投薬する際には中毒の発現に注意が必要となる。実際、そういった患者ではジゴキシン濃度が0.5ng/mL未満においても十分な効果が得られる可能性がある。

 ちなみにジギタリス中毒の特徴は次の通り。

 ジギタリス中毒:高度の徐脈、二段脈、多源性心室性期外収縮、発作性心房性頻拍等の不整脈があらわれることがある。また、さらに重篤な房室ブロック、心室性頻拍症あるいは心室細動に移行することがある。初期症状として消化器、眼、精神神経系症状があらわれることが多いが、それらの症状に先行して不整脈が出現することもある。このような症状があらわれた場合には、減量又は休薬するなど適切な処置を行うこと。

消化器:食欲不振、悪心・嘔吐、下痢等
眼   :視覚異常(光がないのにちらちら見える、黄視、緑視、複視等)
精神神経系:めまい、頭痛、失見当識、錯乱、譫妄等

(ジゴキシン錠0.0625「KYO」/ ハーフジゴキシンKY錠0.125/ ジゴキシンKY錠0.25のインタビューホーム P. 26-27より引用・改変)

 次に、ジゴキシンの作用を増強する併用注意の中からジゴキシンの感受性に関するものをピックアップしていく。

1 この薬剤は現在ない。。。

2 Kを排泄する利尿薬は要注意

3 効き過ぎや漫然投与に注意

4 ここも電解質異常

5 ファンギゾンは吸収されないor注射

 ということで、電解質異常のものが並ぶ。特に注意すべきは低K血症。ジゴキシン中毒が疑われたら、投与の中止と血中のKの正常化をいちばんに考える。

 なぜ、低K血症(3.5mEq/L以下)になるとジゴキシンの感受性が高まるのか。それはジゴキシンの薬理作用を考えれば理解できる。

ジゴキシンはリン酸化されたNa+、K+ - ATPase αサブユニットに結合して阻害することで、Na+の流出を減少させ、細胞内Na+濃度を増加させる。これがNa+ - Ca2+交換の原動力となり、結果として、細胞内 Ca2+が増加し心筋収縮力が増加する。

 (ジゴキシン錠0.0625「KYO」/ ハーフジゴキシンKY錠0.125/ ジゴキシンKY錠0.25のインタビューホーム P. 11より引用)

 ジゴキシンは、心筋細胞膜のNa+/K+-ATPase阻害(Na+-K+ポンプ)を直接阻害する。つまり、Na+を細胞外へ流出させ、K+を細胞内へ取り込むことから始まっている。このとき、血中(心筋細胞外)のK+が減少しているとどうなるだろう。そう、取り込むものが少ないわけだから、K+の流入は抑制される。それは、ジゴキシンの作用が強くなったようなもの。つまり、ジゴキシンの感受性が亢進する、というわけだ(反対に高K血症となれば、当然、ジギタリスの作用減弱が起こる可能性がある)。

 また、低K血症を注意する併用薬は上記のものだけではない。芍薬甘草湯など特に注意を要するものが網羅されていない。こういう注意は薬剤を超える。「CASE 184 ザイティガ錠の併用注意について」にで扱った資料はここでも役に立つだろう。

Z2_2

 さらに、下痢・嘔吐に伴う低K血症においては、ジギタリス中毒を起こしやすくなる。これに下痢・嘔吐・発熱に伴う脱水が加わると、ジゴキシンの血中濃度の上昇も加わることになるり、そのリスクはさらに高くなる。

 ちなみに、薬歴に記録する際のSOAPで言うと、O情報に患者の病態やそれをもたらす併用薬が記録されることになる。そして、ジゴキシンの感受性アップといったアセスメントがなされ、ジゴキシン中毒の初期症状を伝える、併用薬を控えめにする、といった薬歴が完成することになるだろう。

 S) (主訴)

 O) (低K血症になる併用薬や病態など)

 A)  低K血症によるジゴキシンの感受性アップの恐れあり

 P) 不整脈や消化器、眼、精神神経系症状→すぐに受診
    甘草含有漢方薬などを控えめにする等

 といった薬歴の雛型は初学者には有用かもしれない。

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2016年8月12日 (金)

ザイティガ錠の併用注意について

併用薬のチェック。
相互作用の項目の確認だけでよいのか?

ザイティガ服用患者の低カリウム血症を回避する

CASE 184

男性 80歳 

他科受診:泌尿器科  併用薬:
Rp1) ザイティガ錠250mg  2錠
    1日1回 食事の1時間以上前または食後2時間以降
Rp2) プレドニゾロン錠5mg  1錠
    ラベプラゾール錠10mg 1錠 分1 朝食後

処方(3は定期、4が追加):
Rp3) ロサルヒド錠LD 1錠 分1 朝食後  28日分

Rp4) ツムラ小青竜湯エキス顆粒 7.5mg  分3 毎食前  28日分

患者のコメント:
「水みたいな鼻水がスタスタと。なにかに反応しているんだろうって」

疑義照会:
(内容)ザイティガ服用中のため、低K血症のリスクを避けたい
(回答) 眠くならない薬を希望されたので
     Rp4)→フェキソフェナジン錠60mg 2錠 分2 朝・夕食後 へ変更

□CASE 184の薬歴
#1 フェキソフェナジン初回服薬指導
 S) 水みたいな鼻水がスタスタと。なにかに反応しているんだろうって
 O) 低K血症回避のため、疑義にてツムラNo.19→フェキソフェナジン
   眠くならない薬を希望。果実ジュース→あれば飲むくらい
 A) フェキソフェナジンが最適だろう。フェキソフェナジン初薬。
 P) 抗アレルギー薬の中ではもっとも眠くなりにくいタイプ。
   AJやOJなどの果実ジュースの服用で効果減弱。
   避けるもしくは服薬後2時間以上あければOK。
 
□解説
 前立腺癌にてザイティガを服用している患者で、通常の用量よりも少ない量にて継続中。当局からはロサルヒド錠のみ。この時点ですでに、利尿剤との併用になっていた為、Kの動向には注意していた(4.0mEq/L、腎機能もNP)。

 今回、さらに甘草含有の漢方薬が追加になってしまう。小青竜湯は甘草を3g/日も含有しており、芍薬甘草湯についでエキス製剤の中では多い。しかも28日分。そこで、低カリウム血症のリスクを回避するために疑義照会を行う。

 患者が眠くならないモノを希望したために漢方薬を選んだ、ということだったので、眠くなりにくいフェキソフェナジンを代替薬として提案し、採用となった。フェキソフェナジンは果実ジュースの併用でAUCおよびCmaxが60~70%も減少することが報告されており、それを回避することを中心に初回服薬指導を行っている。
 
□考察
 ザイティガの相互作用をのぞくと次のような記載になっている。

Z1

 利尿薬や甘草含有の漢方薬といった記載は見当たらない。ところが、慎重投与の2)には具体的な薬剤名こそないが、次のように注意喚起がなされている。

Z2

 ここには“併用薬”としっかりと記載されている。添付文書のつまみ喰いだけではダメ、と言われれば確かにその通りなのだが、それ以前にやっぱり不親切な気が・・・。ちなみに「ザイティガ適正使用ガイド」には次のように注意換気がなされている。

Z2_2

 患者の併用薬とそれにまつわる情報。そういったものはセットにしてフェイスシートで管理するに限る。ザイティガのような薬それ自体を僕は滅多に投薬することはないのだから。  

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2016年5月13日 (金)

震災状況下での服薬中止指示

静脈血栓塞栓症(VTE)とSERM
震災時の治療の優先順位。
僕たちの行為の目的。

CASE 181

女性 70歳 

他科受診:整形外科  併用薬:ビビアント(4月初旬に77日分処方)

定期処方:
Rp1) カムシア配合錠LD   1錠  
    ピタバスタチン錠1mg  1錠  分1 朝食後 28日分

Rp2) レボフロキサシン錠250mg  1錠 分1 夕食後  7日分

患者のコメント:
「夜は車にいるから、ついついトイレを我慢してね」

患者から得られた情報:
① 足のむくみや痛みはない
② ご主人と二人で普通車に車中泊(自宅の壁にヒビがあり余震が怖いため)
③ 水は出ないし、トイレが気になり、夜は水分を控えている

□CASE 181の薬歴
#1 VTEを回避する
 S) ご主人と二人で普通車に車中泊(自宅の壁にヒビがあり余震が怖いため)
 O) 併用薬:ビビアントを77日分、足のむくみや痛みはない
   水は出ない。夜はトイレが気になり、水分を控えている→膀胱炎
 A) VTEのリスク大
 P) 車中泊を止められないのなら、血栓症が起こりやすくなるビビアントを中止。
   水分をしっかり摂って、足を動かす運動などを。パンフレット提供。
 
□解説
 熊本地震の翌週の薬歴。TVでもエコノミークラス症候群の注意が盛んに行われている中でのケース。

 患者は70歳の女性で、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスク因子のオンパレード。車中泊(長時間足を動かさずに同じ姿勢でいる)で、水分摂取にも問題があり、おまけに血栓症の副作用のあるSERMまで飲んでいる。これはかなりのハイリスクだ。

 話を伺うと、エコノミークラス症候群が怖い疾患であるとの認識はなく、今すぐ車中泊を止めることも難しそうだった。そこで、併用薬のSERMの中止を指示し、厚生労働省作成のパンフレット(こちら)を用いて指導を行っている。
 
□考察
 震災直後のこの状況で、SERMを続けなければならない理由、僕にはそれが思いつかなかった。骨質をよくしてもVTEを起こすリスクを抱え込んでしまっては意味がない。つまり、この状況での服薬は勧められない。

 震災直後は水分摂取が困難な状況も散見された。別のケースだが、主治医と連絡が取れない場合には、僕の独断で、SGLT2阻害薬の一時中止を指示することもあった。

 そういうことをするには勇気がいる、躊躇してしまう、といった意見が少なからず耳に入ってくる。でも、もしその躊躇で、じぶんの患者がVTEや脳梗塞を起こしてしまったら? 僕が主治医なら、薬剤師に患者を救うチャンスがあったのに何をしていたんだ、ときっと思うに違いない。

 そもそも患者が薬を飲んでいるのはなぜなのか。もちろん、健康でありたいから。ということは、目的は同じだ。僕らは薬を飲んでもらうためだけにいるのではない。また、併用薬の確認は、飲み合わせのチェックだけをすればいいわけでもない。行為のすべては、患者の幸せに繋がっているかどうか。その一点にある。
 

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2015年11月13日 (金)

CCBによる下肢浮腫への対応

CCBによる下肢浮腫。
この副作用にはしばしば遭遇する。

CCB+ARBで下肢浮腫改善を経験。

CASE 176

女性 80歳 

他科受診:なし  併用薬:なし

定期処方:
Rp1) ニフェジピンCR錠40mg 1錠  分1 朝食後   14日分

患者のコメント:
「今、薬局まで歩いてきて思い出した。足が重いの」

患者の情報:
① 血圧コントロール良好:130/80
② 下肢浮腫発現(実際に触って確認)
③ 薬をたくさん服用することを嫌う

疑義照会:
(内容)ニフェジピンによるものと思われる下肢浮腫を確認。
    ニフェジピンの減量とARBの併用を提案。
(回答)ニフェジピンCR錠20mg 1錠へ減量
    バルサルタン錠40mg 1錠 分1 朝食後 14日分追加

□CASE 176の薬歴
#1 下肢浮腫軽減のための降圧薬併用を受け入れてもらう
  S) 薬局まで歩いてきて思い出した。足が重いの
 O) 下肢浮腫(+)→疑義にて処方変更 CCB減量+ARB追加
 A) 降圧剤の併用を理解してもらう必要がある
 P) 一つの薬を増やしていくと、今回のように副作用の頻度が高まる。
   違う効き方をする薬を併用することで、副作用軽減も期待できる。
 
 
□解説
   降圧剤だけのシンプルな処方の患者。肥満もあり、普段からゆっくり歩く方ではあったのだが、薬局窓口で「足が重いの」と。足を確認すると、下肢浮腫が発現している。目視でもけっこう腫れているが、指で押すとへこんだままになる。ニフェジピンによるものだろうと疑義照会を行う。

 CCB減量では血圧が上がるかもしれない。そこでARBを併用することで、下肢浮腫の発現頻度が減る報告がいくつもあることも併せて提供する。結果、採用となった。

 あとは薬嫌いの患者に受け入れてもらえるように、降圧薬が2剤になった理由を丁寧に説明している。
 
 
□考察
 
CCBによる下肢浮腫なら減量もしくは中止すれば改善する。そこで問題になるのが血圧のコントロールだ。この方は服薬さえ忘れなければコントロール良好なのだが、薬を切らすと160~170まですぐに上がる。おまけに薬嫌い。

 今回の作戦が受け入れてもらえないなら合剤でいくしかない。ひそかにそう考えていた。結果、下肢浮腫は改善し、血圧のコントロールもうまくいっている。ただし、下肢浮腫の改善がCCBの減量によるものだけなのか、ARBの併用もあわせてのものなのかは判然とはしないが…。

 CCBは降圧効果が病態によらず確実でありながら、問題となる副作用をきたすことは少なく使いやすい降圧薬だ。しかし、下肢浮腫にはよく遭遇する。アムロジピンやニフェジピンが高用量使えるようになったことも関係しているのだろう。CCBによる下肢浮腫は用量依存的に増加する。

 CCBによる下肢浮腫のメカニズムとして、次の二つが考えられている。一つは細動脈の拡張に対して細静脈の拡張が伴わない結果、毛細血管圧が上昇するというもの。もう一つはRAA系の亢進。であれば、RA系の併用は理に適っている。

 RA系が使えなかったとしたら? じつは、L/N型CCBのシルニジピンがCCBの中でも、下肢浮腫の発現が少ないという報告がある。その機序として、N型Caチャネル阻害による交感神経の抑制(細動脈だけでなく細静脈も拡張させる)やアルドステロンを含むRAS活性化の抑制の関与が示唆されている(Therapeutic Research vol. 32 no. 5 2011)。

 RA系を使えないときの次善の策として覚えておく。
 

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 さっそく追記!

 CCBにRA系を併用することで浮腫リスクが38%減少(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21295192 )

 なお、「ACE inhibitor seems to be more efficacious than ARB in reducing calcium channel blocker-associated peripheral edema, but head-to-head comparison studies are needed to prove this」とあり、ACE-Iのほうがいいかもしれない。

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2015年10月30日 (金)

リリカの用法と浮動性めまいの発現率

リリカによるめまいや眠気
高齢者、腎機能、服用初期。
そして、その他の要因について。

CASE 175

女性 80歳 

他科受診:整形外科  併用薬:ボノテオ錠50㎎、エディロールカプセル0.75μg

定期処方:
Rp1) ミカルディス錠40mg 1錠
       アムロジピン錠5㎎ 1錠
    ピタバスタチン錠1㎎ 1錠
    トラゼンタ錠5㎎ 1錠 
    グリメピリド錠0.5㎎ 1錠
    ダイアート錠30㎎ 1錠  分1 朝食後   28日分

Rp2)リリカカプセル25㎎ 2C 分2 朝・夕食後 28日分

Rp3)ランタス注ソロスター 2キット
     1日2回(朝12単位、寝る前4単位)

患者のコメント:
「リリカは食事してこないときも飲んでいいの?」

患者の情報:
① リリカを服用開始して2週間。めまい・眠気など副作用なし。
② 今朝採血のため食事なし。念のため、リリカを服用してこなかった。
③ しびれは相変わらず。Drはもう少し様子を見ようと。
④ 体重52kg、身長145cm、S-Cr:1.10、eGFR:30.17mL/min

□CASE 175の薬歴
#1 朝食抜きのときはリリカの服用を控える
  S) リリカは食事してこないときも飲んでいいの? 採血があるから。
   リリカは念のため飲んでこなかった。
 O) リリカ服用2週間→めまいや眠気など(-)
   他科にて骨粗鬆症治療中
 A) 空腹時服用→Tmax↑→めまい→転倒・骨折リスク↑
 P) 空腹時の服用にてめまいが起きやすくなるので今回の対応でOK
    空腹時での服用は避け、食後に服用するように。
   これからはむくみや体重などにも注意しておいて。
 
 
□解説
 糖尿病性の神経障害疼痛にてリリカの服用を開始した患者。腎機能の低下(eGFR:30mL/min)があり、初期用量を50㎎/dayとやや少なめでスタートをしているものの、骨粗鬆症の高齢女性のため、めまいからの転倒・骨折を心配していた。幸い、服用初期に発現しやすいめまいや眠気の発現はなく、開始して2週間が経過している。

Photo

 しびれは続いているが「今回はこのまま様子を見よう」と28日分の処方。そこで、服用1~2か月頃から注意が必要な末梢性浮腫と体重増加についてのアナウンスをしようと考えていた。

 ところが、「リリカは食事してこないときも飲んでいいの?」と、患者より質問を受ける。今日は採血があるため食事をしておらず、念のためグリメピリドだけでなくリリカも飲んでいないという。

 じつは、このリリカ。食事の有無の違いで血中濃度の推移が大きく異なる。

Photo_2

 (リリカカプセルIF P. 83)

 AUCはほとんど変わらないものの、Cmaxは空腹時と食後でそれぞれ 4.95 及び 3.22μg/mL、tmaxは 0.947 及び 3.37 時間とそのふるまいは大きく変化している。その結果、当然ながら「浮動性めまいの発現率は、食後投与 5.3%(1/19 例)と比べ絶食時投与 30.8%(12/39 例)で高かった」となっている。

 そこで転倒・骨折リスクを避けるために、空腹時での服用を避けるように指導している。
 
 
□考察
 
80歳で骨粗鬆症、もうこれだけでリリカの服用というのは心配だ。大腿骨近位部骨折でもやってしまったら、約2割はそのまま寝たきりになってしまうからだ。

 おまけに腎機能の低下まである。腎機能が正常でも高齢者なら少なめでいきたいくらいなのに、副作用の起きやすい患者背景まであるわけだ。理由はいろいろ言われているが、それ以外にも問題になることがある。それが今回の空腹時での服用だ。

 白鷺病院の古久保先生は、ハイリスク薬に対して、次のように対応しようと提案されている。

 ① 薬をよく知る
 ② 副作用の特徴をよく知る
 ③ 仮説を立て、検証する
 ④ 実践して修正する

 対策が頭の中にあるからこそ、その対策を実践して修正を加えているからこそ、患者の質問にも適切に返答できるし、副作用を未然に防止できるというわけだ。
 

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2015年8月21日 (金)

メトグルコ服用中の一時的な休薬の指導とその再開

BG薬服用中の胃腸炎。
脱水による乳酸アシドーシス。
一時的な休薬の服薬指導を。

CASE 173

女性 50歳 

他科受診:なし、併用薬:なし

定期処方:
Rp1) オルメテック錠20mg 1錠   
    フルイトラン錠1mg   1錠
    ビソプロロール錠5mg 1錠
        トラゼンタ錠5mg    1錠 分1 朝食後   28日分

Rp2)ピタバスタチン錠1mg    1錠 分1 夕食後 28日分

Rp3)メトグルコ錠250mg  6錠 分3 毎食後 28日分

患者のコメント:
「胃腸炎で下痢していたから、メトグルコは言われた通りにやめていたので、1週間分残っている。よかったかしら?」

疑義照会:
(内容)メトグルコ残薬1週間分
(回答)28日分→21日分

□CASE 173の薬歴
#1 メトグルコの一時的な休薬と再開への理解
  S) 胃腸炎で下痢していたから、メトグルコは言われた通りにやめていた。
   1週間分残っている。よかったかしら?
 O) メトグルコ残薬調整 28日分→21日分
 A)  メトグルコの一時的な休薬の理解OK
 P) OKです。脱水を疑うようなときは今回のように休薬を。
   再開も慌てずに体調が戻ってからでよい。
 
 
□解説
 メトグルコの服薬状況ならびに残薬の確認をすると、「1週間分残っている」と。しかし、それはしっかりとした薬識によるものだった。服薬指導が活きており、患者の安全に貢献できた症例と言っていいだろう。

 患者は指導されていた通りにメトグルコを一時的に休薬するも、1週間も服薬していなかったことに対して不安を覚えている様子。

 そこで対応に間違いがなかったこと、再開を急がずに体調が戻ってからでよいことを再度確認している。

 
□考察
 メトグルコの重大な副作用である乳酸アシドーシス、これを回避するために二つの視点が必要になる。一つは禁忌症例の除外。もう一つが今回のような一時的な休薬だ。

 一時的な休薬が必要となるケースというのは、造影剤を除けば、ほとんどが“脱水”に起因する。脱水は血液の循環不全とつながり、低酸素状態が筋肉や肝臓で生じ、乳酸アシドーシスのリスクとなる。また一方で、血液循環不全は腎血流量の低下からメトグルコの血中濃度の上昇にもつながり、これもとうぜん乳酸アシドーシスのリスクである。 

 発熱や下痢、嘔吐などによる水分喪失、夏場の水分不足(利尿剤やSGLT2阻害薬併用中の方はさらに注意が必要となってくる)、そしてアルコール利尿(大量飲酒時も休薬が必要。脱水の他に乳酸の分解を妨げる)。こういったときに対応できるように、一時的な休薬の指導を徹底しておく必要がある。

 そして再開について。メトグルコはSU薬やDPP-4阻害薬のように、効果がすぐに反映するような薬剤ではない。再開を急がずに、体調が戻ってからでよいことを併せて伝えておきたい。

 

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2015年5月 8日 (金)

ベニジピンは冠攣縮性狭心症患者の長期予後を改善するデータを有する唯一のCa拮抗薬

ベニジピン(コニール)の特徴といえばチャネル?
1日1回は高血圧で、1日2回は狭心症?
ベニジピンは冠攣縮性狭心症でもっと使われていいと思う。

CASE 170

女性 70歳 

他科受診:なし、併用薬:なし、タバコ・アルコール:なし

定期処方の変遷1:
Rp1) フルバスタチン錠20mg 1錠  分1 夕食後   42日分
Rp2)ニソルジピン錠5mg     2錠  分2 朝・夕食後   42日分

定期処方の変遷2:
Rp1) フルバスタチン錠20mg 1錠  分1 夕食後   14日分
Rp3)ニソルジピン錠5mg     2錠  分2 朝食後・就寝前   14日分

今回の処方:
Rp1) フルバスタチン錠20mg 1錠  分1 夕食後   14日分
Rp2)ニソルジピン錠5mg     2錠  分2 朝・夕食後   14日分
Rp4)ベニジピン錠4mg  1錠  分1 就寝前 14日分

患者のコメント:
「やっぱり朝が高くて、150くらいはある」
「薬は元に戻して、一つ加えましょう、と」

薬歴・患者から得られた情報:
① もともとは狭心症発作で、循環器のDrのお世話になっている。
② フルバスタチンとニソルジピンをずっと服用しており、ここ5年は変更がない。
③ 朝に動悸も少し感じる。

□CASE 170の薬歴
#1 Ca拮抗薬の併用と副作用のアナウンス
  S) 朝が高くて、150くらいはある。動悸も少しある。
 O) ベニジピン追加。もともと冠攣縮性狭心症(+)
   早朝高血圧とともに狭心症発作も併発
 A) ベニジピン初薬とCa拮抗薬併用についての理解要
 P) ベニジピンもニソルジピンと同様に狭心症と血圧の両方に効果がある。
  ベニジピンは冠血管への選択性が高く、狭心症発作・予後ともに期待できる。
  飲み始めの立ちくらみやフラッシング→慣れることが多い。
  頻脈や下肢浮腫、過降圧、ひどい便秘→用量調節要、申し出て。
 
 
□解説
 
広域処方せんを持参する患者。当局の利用以前からRp1)2)をずっと服用している。朝が高めとなり、ニソルジピン(先発品:バイミカード)の夕食後を就寝前に変更して対応を試みるが、うまくいかずにベニジピン(先発品:コニール)が追加となっている。

 高血圧だけの患者と考えるとこのCa拮抗薬の併用だけの降圧薬の処方は理解できないが、高血圧と冠攣縮性狭心症を併発している患者と考えるとわかる。

 Ca拮抗薬は冠攣縮性狭心症の第一選択薬だが、そのすべてに異型狭心症(冠攣縮性狭心症の一種)の適応があるわけではない。ニソルジピン、ニフェジピンCR(アダラートCR)、ジルチアゼムR(ヘルベッサーR)の3剤は狭心症だけではなく異型狭心症の適応も有している。ニソルジピンは降圧力はマイルドだが、カルシウムチャネルへの結合性が高く、狭心症には強いとの評価がある。

 スタチンもガイドラインにおいて、冠攣縮性狭心症に対してクラスⅡbとなっている。なかでもフルバスタチンはSCASTというエビデンスを有しており、冠攣縮性狭心症の新しい治療薬になることが期待されている。ゆえに、もともとの処方から、この患者の病名は容易に推測できる。

 ともあれ、今回の状況では、Ca拮抗薬を併用することになる。その意義と起こり得る副作用についてのアナウンスを中心に服薬指導を行っている。
 
 
□考察
 ニソルジピンもベニジピンもCa拮抗薬の世代分類でいったら、一世代前のタイプで、添付文書上は1日1回の薬ではあるが、じっさいには1日2回で使われることが多い。またベニジピンはチャネルの薬理的な話題も非常に魅力的だが、やはりカントリードラッグであり、エビデンス的にも市場的にも・・・、という印象だった。

 しかし、こと冠攣縮性狭心症に関しては見方を変えている。ガイドラインにはこうある。

さらに,Ca 拮抗薬にはRhoキナーゼを抑制する効果や,Ca拮抗薬のなかでも予後改善効果に差異がある可能性が示唆されている.一方で,複数の Ca 拮抗薬の組み合わせ投与や,硝酸薬との併用が試みられる場合があるが,治療効果に関する客観的なエビデンスはない.また,長期間 Ca 拮抗薬の投与を中止した場合,症状が増悪すること(リバウンド現象)がまれならず報告されており,減量,中止 の場合は,段階的に減量して,その度ごとに Holter 心電図 などで冠攣縮の悪化がないことを確認するなどの注意を要する.


 「Ca拮抗薬のなかでも予後改善効果に差異がある可能性が示唆されている」これを裏付けるメタ分析(Nishigaki K et al:Circ J 74 :1943, 2010)でのベニジピンの成績には目を見張るものがある。

Ccb4

 Ca拮抗薬同士の直接比較ではないので、どれがいちばん優れているといった歯切れの良いことは言えないが、これを見る限り、ジルチアゼムRよりベニジピンのほうが予後の改善という点では良いように思える(理論的にはCa拮抗薬を併用するなら、同じ系統ではない、ジルチアゼムRを併用する手も捨て難いが・・・)。少なくとも、ベニジピンは冠攣縮性狭心症患者の長期予後を改善するデータを有する唯一のCa拮抗薬といっていいだろう。

 とはいえ、このベニジピン、血圧コントロール状況によっては1日1回だったり2回だったり。冠攣縮性狭心症の場合でも1日2回の用法のはずだが、今回のケースのように就寝前の1xで処方されるケースもあるだろう。ということは、その用法からだけで、病名を推測することはしないほうが良さそうだ。

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2015年3月20日 (金)

アピキサバンの「間質性肺疾患」について

 2015年2月、アピキサバン(商品名:エリキュース錠)で、「使用上の注意」改定のお知らせが発行された(こちら)。

 重大な副作用に「間質性肺疾患」が追記され、副作用症例概要として、70代女性の症例が1例だけ記載されている。

 「間質性肺疾患:間質性肺疾患があらわれることがあるので、観察を十分に行い、咳嗽、血痰、息切れ、呼吸困難、発熱、肺音の異常等が認められた場合には、速やかに胸部X線、胸部CT、血清マーカー等の検査を実施すること。間質性肺疾患が疑われた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。」

Photo

 この1例は、投与81日目に血痰が見られている。2015年2月17日の日経メディカルの記事(アピキサバン、重大な副作用に「間質性肺疾患」追加)によると、これが「間質性肺炎」ではなく「間質性肺疾患」とされた理由とされている。

 つまり、この1例はその意味で特徴的であったために、この1例だけの記載になっているようだ。しかし、1例だけでは副作用分類を試みて、モニタリング・ピリオドを設定するわけにもいかない。

 他のNOACではどうだったか。2014年1月にリバーロキサン(商品名:イグザレルト錠)で、「イグザレルト錠服用中の間質性肺炎について」が発行されており、そこでは症例が3つ紹介されている。

 症例1(80代・男):10mg、投与期間28日間、死亡、投与10日にて発熱・咳
 症例2(80代・女):10mg、投与期間4日間、投与4日にて呼吸困難
 症例3(80代・男):15mg、投与期間59日間、投与52日にて夜間咳嗽
                             投与55日咳嗽増悪にて血痰

 間質性肺炎の発生機序は大きく2つに分けられる。

 「一つは、ある種の抗がん剤などのように、細胞を直接傷害する医薬品によって肺の細胞自体が傷害を受けて生じるもので、医薬品を使用してからゆっくり(数週間~数年)発症するものです。もう一つは、薬に対する一種のアレルギーのような免疫反応が原因となるもので、多くは、医薬品の使用後早期(1~2 週間程度)に発症するものです。多くの種類の医薬品がこのタイプとされています」

 『重篤副作用疾患別対応マニュアル 間質性肺炎(肺臓炎、胞隔炎、肺繊維症)』より

 リバーロキサンの場合はどれも症状の発現が早い。アレルギー性の機序と考えていいだろう。よってモニタリング・ピリオドは6ヶ月(特に2ヶ月以内)と設定していた。

 では、アピキサバンはどうするか。症例は一つしかない。

 症例1(70代・女):5mg、投与期間240日間、投与81日にて血痰

 なるほど、血痰から始まっている。間質性肺炎の初期症状として息切れ、発熱、空咳だけを追っていたら、見逃してしまうかもしれない。たしかに特徴的ではあるが、1例だけではどうしようもない。メーカーに確認すると、あと4例(合計5例)を確認することができる。その4例の症状発現は14日、59日、51日、2ヶ月とどれも6ヶ月以内。

 アピキサバンも機序的にはリバーロキサンと同様にアレルギー性で、そのモニタリング・ピリオドは6ヶ月と設定してよさそうだ。ただし、血痰から症状が発現することもあり、アピキサバンでは「間質性肺疾患」を想定することを忘れないようにしなければならない。

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2014年10月10日 (金)

SGLT2とBGの危ない関係

SGLT2阻害薬の副作用。
Recommendationは必読。
BGとの併用で気になる副作用は?

CASE 163

男性 48歳 

他科受診:なし、併用薬:なし

定期処方:
Rp1) バルサルタン錠40mg 1錠 分1 朝食後   
    トラゼンタ錠5mg    1錠 分1 朝食後   14日分
Rp2)メトグルコ錠250mg 6錠 分3 毎食後  14日分

追加処方:
Rp3)デベルザ錠20㎎ 1錠 分1 朝食後   14日分

患者のコメント:
「先生が新しい薬をためしてみようって。体重も落ちるんでしょ?
 薬疹が出たら、すぐ止めて受診するように言われた」

薬歴・患者から得られた情報:
①160cm 80kg 体重は横バイ
②服用状況良(メトグルコのリカバリOK)
③メトグルコによる軟便は改善してきている
④HbA1c:7.5%、腎NP

□CASE 163の薬歴
#1 デベルザ初薬のため副作用中心のアナウンス
  S)先生が新しい薬をためしてみようって。体重も落ちるんでしょ?
  薬疹が出たら、すぐ止めて受診するように言われた
 O)体重減なし(80kg) HbA1c:7.5%  腎NP
   デベルザ追加
 A)初薬のため副作用中心のアナウンスが必要
   残暑+デベルザ→脱水→BGによる乳酸アシドーシス のリスクも
 P)尿に糖を出す薬。体重が数kg落ちるが脱水に注意が必要。
  脱水になると、他の糖の薬も悪さをしやすくなる。
  こまめに補水を。500mLくらいを+αとして意識してとること。
  その他、薬疹のほかに尿路感染症にも注意が必要。
    Sick Dayではメトグルコだけではなく、今回のデベルザも休薬を。
 
 
□解説
 トラゼンタとメトグルコの2剤で体重の増加こそないもののコントロール不良の患者。HbA1cを下げるためにSU剤やグリニド系を加えれば、体重増となりやすいことを考慮して、新薬のSGLT2阻害薬を試すことに。

 期待されて登場したSGLT2阻害薬だったが、ふたを開けると薬疹が多く、医師もそこは気をつけているようだ。しかし、副作用の頻度としては、やはり薬理作用に関するものが多くなる。

Sglt2

  (ルセフィの製品リーフレットより。これが一番わかりやすい)

 この症例の組み合わせなら、低血糖はあまり怖くはない。むしろ、低血糖以外の副作用をアナウンスすべきだろう。

 さらにデベルザで脱水になると、今度はメトグルコの乳酸アシドーシスも心配になる。まだまだ残暑も厳しい。そこで、具体的な補水のアナウンスを中心に行っている。
 
□考察
 この副作用(SGLT2阻害薬→脱水→BGによる乳酸アシドーシス)のリスクは「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」にも記載がある。

 また、日経DI 9月号のDIクイズにも同様の症例と詳しい説明があるので参考になる。

 その中でも指摘があるが、メトグルコは利尿薬併用時にも同様の注意を払う必要がある。この点は今まで対応できてなかった。

 BG + 夏(環境)+利尿薬 or/and SGLT2→乳酸アシドーシスのリスク↑

 公式化して覚えておく。

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2014年10月11日追記 【糖尿病新薬、使用の患者2人死亡…利尿薬を併用

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2014年7月11日 (金)

喘息患者の本態性振戦

本態性振戦にアロチノロール。
喘息には禁忌、代替薬は?
疑義照会ひさびさの失敗例。

CASE 160

女性 65歳 

他科受診:呼吸器科
併用薬:キプレス錠10mg、キュバール100エアゾール、メプチンエアー10μg吸入

処方:
Rp1) ピタバスタチンカルシウム錠1mg 1錠   朝食後   14日分
Rp2)アロチノロール塩酸塩錠10mg 2錠    朝・夕食後  14日分

*アムロジピン錠2.5mg 1錠 朝食後 →Rp 2)へ変更となっている

患者のコメント:
「コップを持ったりすると手がふるえるので、先生に相談してみました」

患者から得られた情報:
① お薬手帳より併用薬確認、気管支喘息にて治療中
② 血圧:120/70  脈拍:70

疑義照会:
(内容)他科にてBA治療中、アロチノロール禁忌
(回答)Rp 2)→メインテート錠5mg  1錠 朝食後 へ変更

□CASE 160の薬歴
#1 本態性振戦とその治療薬への理解を促す
  S) コップを持ったりすると手がふるえる
 O) BA治療中。疑義の結果、アムロジピン(2.5)1x →メインテート(5)1x
   血圧 120/70 脈拍 70
 A) 病態と処方変更を理解してもらう
 P) ふるえをゼロにするのが目的ではなく支障がない程度へ。
   血圧とふるえの両方をカバーして、喘息でも大丈夫なタイプ。
   脈拍も少しゆっくりになります。
 
□解説
 本態性振戦には、一定に姿勢をとろうとしたときにおこるもの(姿勢時振戦)となんらかの動作をするときにおこる(動作時振戦)があり、患者は後者のようだ。そこで医師はアロチノロール、昔でいうアルマールを処方している。その際、気温が高くなってきたこともあり、過降圧を考慮し、アムロジピンからの切り替えを選択している。

 アロチノロールはβ1非選択性のβブロッカーで、喘息には禁忌である。患者はお薬手帳のおかげで、喘息であることが一目瞭然。とうぜん疑義照会を行う。医師より「安全なのは何か」と問われ、β1選択性のあるメインテートを咄嗟に答えてしまう。これが誤りだった。後ほど考察で展開する。

 この提案には重大な瑕疵があるとはつゆ知らず、患者に対しては病態と処方薬の理解を促している。
 
□考察
 この日の午後。「本態性振戦にメインテートって、やっぱり聞いたことないけど」と、医局にて医師より質問を受ける。糖尿病患者の低血糖マスクなどもあるから、効くだろうと思っていたが不安になり調べることに。

 本態性振戦のふるえの原因は主に2つ。一つ目は脊髄運動細胞の異常興奮による中枢系、もう一つは骨格筋でのβ2受容体の刺激による末梢系。β2刺激! だからアロチノロールやインデラルが勧められているのであって、β1選択性のメインテートでは意味がないわけだ。

 喘息でβ1非選択性が禁忌の時は、中枢系にアプローチすることになる。具体的にはプリミドンやリボトリールが勧められており、少量より始め、眠気等の副作用に注意する必要がある。

 医師に謝罪し、プリミドンを用意。患者には効果があまり期待できない旨を伝えた。しかし患者はふつうに2週間後に来局される。さらに処方薬も変わっていない。様子を伺うと、ふるえがほとんど気にならなくなった、と。結果オーライと思いきや、血圧の変動が以前よりあるような気がするとのことで、やはり今後、処方変更になりそうだ。

 人間は間違いを重ねて成長する。しかし扱うものが薬なだけに、なるべく間違いは犯したくない。でも今回は、いい勉強になったというしかない。不勉強が身に染みる。

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