2016年12月 9日 (金)

日経DIクイズ18発売

日経DIクイズ18発売です。
イラスト一新!

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【日経DIクイズ18】
 発売になりました。今回も少なめで、2本のエントリーです。

Q44) 塩分が多いと夜間高血圧になる理由
Q51) 高齢者にシベノールが出されたら

 病態とドーズの問題。ドーズのほうがクイズとはスッキリしてるかも。

 今回の60題も勉強になりました。

 昨今、薬局薬剤師は「対物業務」から「対人業務」に軸足を移すべきといわれるようになりました。しかし対物、つまり薬と調剤に関する知識なくしては、薬剤師の対人業務の質を高めることはできません。

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2016年12月 2日 (金)

承認不安から脱出するためには?

「現代は承認への不安に満ちた時代である。自分の考えに自信がなく、絶えず誰かに認められていなければ不安で仕方がない。ほんの少し批判されただけでも、自分の全存在が否定されたかのように絶望してしまう、そんな人間があふれている」(P. 8)

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 人間はなぜ認められたいのか? それは「人間のあらゆる行為の基底にある欲望、まさに人間が人間であるがゆえの欲望である」からだ。承認への欲求というのは、価値ある自分への欲望であり、それは生きる意味を追い求めることでもある。

 しかし、他者からの承認を必要以上に追い求めると、自分の自由を抑圧してしまい、自己不全感を感じるようになってしまう。

 社会共通の価値観が失われたことは、ある意味では自由の可能性を拡げたし、もはや自由は社会を変革して勝ち取るようなものではなくなった。しかし同時に、周囲の承認を得るための基準も見失ってしまった。そのため多くの人々は周囲の人間に同調しがちになり、過度に気を遣うあまり、自由であるはずなのに一向に自由を感じることができない。自由という大海のなかで羅針盤を失い、さまよい続けている(P. 157-156)。

 自由な時代になったがゆえに、自由を感じることができないとは何とも皮肉な結果だ。承認不安から脱出するためには「自由への欲望」も考慮する必要がある。そうでなければ根本解決には至らない。

 では、そもそも自由とは何なのか? それは「自分の意志でやっている、という納得感」であり、「自己決定による納得」である。そして自己決定するためには、まず自分自身の不安や欲望といったものをよく知る必要がある。

 自分の承認欲望が自覚される際、私たちはそれを「無意識」という言葉を用いて思考し、表現することが少なくない。
 そもそも、「自分は無意識に○○だったんだな」と思ったとき、人はいままで気づかなかった自分を発見し、自己像(自分自身についての理解)を刷新しているのだが、それは結局、自己了解が生じていることと同じである。(中略)「無意識」とは自己了解の後に想定された観念であり、無意識が実際に発見されるわけではない(P. 192-193)。

 こういった自己への気づきが自己了解を生む。この自己了解こそが生きる意味と自由の意識を両立させるための必要条件となる。

 「自己決定ができたときのみ、自由と承認は両立する可能性を持つ」(P. 180)

 ここまでは自分だけの問題とも言える。つまり、自らの行動の指針を、羅針盤を自分の中に持つこと。そして、それに沿って行動することが自由である、と。しかし、問題はその先にある。現代は多様な価値観の時代であり、相対主義とニヒリズムの蔓延した状況にある。つまり、自己了解・自己決定のもとに行われた行動が必ずしも承認に繋がるとは限らない、ということだ。こうしたところから、コミュニケーション能力の重要性が説かれる理由が伺える。

 確かにコミュニケーション能力は大事だが、そこにとどまっていては承認を確保できたとしても自由を確保することが難しくなる。この状況を打破するためには「自己了解」だけではダメなのだ。

 承認欲望のほうが真実であり、利他的な動機は偽り(偽善)にすぎない、と言いたいわけではない。二つの動機は分かちがたく結びついており、両者相俟って価値の一般性、普遍性を求める気持ちが強くなる。人間は他者の承認や批判を繰り返し経験することで、普遍的な価値それ自体(「事そのもの」)を求めるようになる。(中略)それは承認欲求のような利己的な動機だけでなく、こうした利他的な動機の相乗効果によって強化されるのだ。
 このようにして、「一般的他者の視点」から自分の行為や知識・技能、作品などの価値を確信できるなら、周囲の承認が得られなくても自分の存在価値を信じることができる(P. 112-113)。

 「一般的他者の視点」は、「さまざまな他者を想像し、彼らを考慮に入れた上で、彼らが同意するような判断を見出そうとする努力」や「さまざまな価値観を理解し、なぜそのような考え方をするのか、その理由(動機)を考える」ことで身につくものであり、一朝一夕にはいかない。しかし、信念対立を乗り越えるためにはこれしかないのではないだろうか。

 現在、至るところで信念や価値観のぶつかり合いが生じている。まずはこの土俵に乗らないこと。そして、なぜそのような状態になっているのかを理解しようと努める。その上で、「メタレベルで一般性のある価値」を求めていく。これしかない。それはその時にそうとわかるようなものではなく、いずれ何とはなしに理解されるような類のものなのだろう。

 たぶんに抽象的になってしまっていることは重々承知しているが、こういった問題にはおそらく明確な答えなど存在しない。書籍などに答えを求める態度がもうすでに間違っていると思うのだ。それは行動の先に、行動したものの前に開けてくる。そういうものに違いない。
 

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2016年11月25日 (金)

そのルネスタは必要ですか?

入院時から追加されたルネスタ。
それは退院後も必要なのか?
出口を見据えた処方・投薬なの?

CASE 187

女性 63歳 

他科受診:なし  併用薬:なし  

処方
Rp1) カンデサルタン錠8mg  1錠
         アルファカルシドールカプセル0.5mg  1C  朝食後  28日分

Rp2) ルネスタ錠1mg  1錠   分1 就寝前 28日分

患者のコメント:
「入院中、6人部屋だったから眠れなくて。みんな飲んでたし。。。」

患者・薬歴からの情報:
① 肺炎にて1週間入院。退院して1週間になる(退院処方Doで1週間)。
② ルネスタ錠1mg残5錠
③ 退院後、自宅で眠れないときにルネスタを2回使用したが、必要性は低い。

疑義照会:
(内容)ルネスタ使用頻度低く残薬あり
(回答) Rp 2)削除

□CASE 187の薬歴
#1 入院時に服用していたルネスタの継続は必要か?
 S)入院中、6人部屋だったから眠れなくて。みんな飲んでたし。。。
 O) 退院時処方Do1週。ルネスタ2回使用。残5錠。必要性低い。
 A)  睡眠薬を使う必要があるかどうかを考えてもらおう
 P) 睡眠薬は眠れなくて翌日にきついようなら使う価値がある。
   睡眠薬を使用してまで眠る必要があるかどうかを確認。
 R) 別に睡眠薬を飲まないと眠れないわけではない。
   なるべく頼らないようにします。 
 
□解説
 肺炎で入院した患者が入院時よりルネスタを服用していた。

 6人部屋にくわえて、21時の消灯。今までふつうに生活していた、23時過ぎにに就寝していた患者が眠れるはずもない。そういう状況で同じ部屋の患者がみんな睡眠薬をもらっていた、と。

 入院中は仕方ない(?)のかもしれない。しかし、肺炎が治って退院したのなら、生活は元に戻るわけだ。その睡眠薬は必要なのか? 28錠もお渡しする必要があるのか?

 入院時の状況と現在の状況の違いを確認のうえ、早いうちから安易に睡眠薬に頼らないことを提案。睡眠薬の服用が必要な方というのは、不眠のために、翌日の生活に支障があるような方であることを説明。結果、今回の睡眠薬は不要と患者本人が結論を出し、疑義照会にて削除となる。
 
□考察
 GABAA受容体作動薬を安易に長期に続けてしまうとその離脱は難しくなってくる。特に高齢者でその傾向が強く、その結果、潜在的な転倒リスクなどを抱えてしまうことになる。

 今回のケースでは、入院というイベントさえなければ睡眠薬を服用することはなかったのだし、必要性が低いにもかかわらず安易に睡眠薬に頼るという姿勢はよくない、と僕は思う。

 適正使用とは何なのか。それは文字通りに適正に使用することだけではない。不要な薬を使わないこともその意味には含まれている。

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2016年11月18日 (金)

日経DI 11月号のDIクイズ2を担当しました

11月号のDIクイズ2を担当しました。
剤形、用法、製剤学・・・

Diq

続きは本誌(プレミアム版)で。

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2016年11月11日 (金)

2016年11月のコラム ~WFとMCZゲル、併用禁忌の裏側~

2016年11月の薬局にソクラテスがやってきた
WF-MCZが併用禁忌に至った理由。
MCZゲル低用量の定量限界未満って?


【第71回】


 WFとMCZゲルが併用禁忌に至った理由とは。

 重篤な出血症例の蓄積(他のアゾール系に比べると断然多い)。有効性の観点からも優先度は低い。にもかかわらず、WFとMCZの併用による重篤な出血がなくならない。

 低用量なら安全か? 

 以上の流れでまとめてみました。

11

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2016年11月 4日 (金)

「知性がなければサッカーはできない」

「何を、どう考えるべきか。
 それさえ明確に意識できれば、答えはすでに出ている。
 あとは具体的にどうすればいいいかだけだ」

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【ノーマルに生きる】

 どうしてあなた方はいつも同じ質問をするのか。自分たちの弱さを告白し、他人に答えを求める。そんなふうに考えること自体が、弱さに正面から向き合っていない証拠だ。(中略)もう少し自分に自信を持つべきだ。すでに進歩しているではないか。ノーマル(普通であること。正常であること)であり続けるべきだ。かつてあなた方がつねにそうであったように。
 あまり過度な爆発(爆発的な進歩や変化)を期待するべきではない。多くのことを学んで、爆発ですらノーマルなものとして実現する。

 (イビチャ・オシム『急いてはいけない』ベスト新書 P. 20-21)

 「ノーマル」オシム哲学の鍵概念。しかし、僕らはいろんなことに急かされていて、ノーマルに生きることが難しくなっている。だからオシムは、タイトルにもあるように、「急いてはいけない」とアドバイスを送る。さらに、急ぐと潰されてしまうとも。

 ノーマルに生きるためには自信を持たなくてはならない。そのためには努力をしつづけなければならい。そして、プレーをしなければ自信というものは得られないし、すべての分野において最高になる必要はない。

 では、その努力はどのようになされるべきなのか。急かされていても、まずは立ち止まる。そして、落ち着いて考える。何を、どう考えるべきか、を。

【コレクトでありつづける】

 もうひとつは「正しい(コレクト)」とは何かという問題がある。
 正しいと思い込むのと、現実に的確に行動するのとはまったく別のことだ。というのもすべてが「正しく」なり得るからだ。
 監督は正しい練習を実戦する。
 フィジカル、テクニック、戦術に関して、監督は正しく練習を行う。
 内容も実践方法も、また目的も意図も、多かれ少なかれ正しい。
 だが「正しい」というのは、できる限り最高の仕事をすることであり、それこそが「正しい」の意味だ。
 より具体的には、選手やチームに必要なことを的確に行うことであって、「正しく」働くことではないし、選手が好まないことを「正しく」行わせることでもない。

 (イビチャ・オシム『急いてはいけない』ベスト新書 P. 95-96)

 「コレクト」オシム哲学のもう一つの鍵概念。つねにコレクトであることもまた難しい。コレクト(適切)に対応するということは一人の問題ではないからだ。それは環境に左右される。コレクトでありつづければ、現実に的確に行動できれば、必ずいい雰囲気が作り出せる。それはノーマルでありつづけるための自信や不断の努力へとつながるはずだ。

 そう、正しいというのは、思い込みではなく、「できる限りの最高の仕事」を提出すること。だから、それは仕事によって評価されるべきものなのだ。

【ディテールを保存する】

 私が思うにサッカーとは唯一無二の「氷の塊」であり、他に類のないオリジナルなひとつの人生だ。サッカーのすべての出来事、人生で起こるすべての出来事は、この氷の塊の中に見ることができる。氷の中に、社会の中の自分のイメージを見いだせる。自分が語ったすべての言葉、待ち望んでいるすべてのものとともに。それらは決して避けて通ってはならないものだ。
 言葉も思いも氷の中で結晶化している。だから、それぞれのテーマごとにカットされたビデオテープを頭の中に持つべきだ。それぞれのビデオテープに、必要なものを映し込んで保存する。経験をそこに保存する。そして必要なときに取り出して見る。ディテールを保存しておけば、何かあったときに少なくとも確認することができる。

 (イビチャ・オシム『急いてはいけない』ベスト新書 P. 195)

 なぜ、うまくできないのか。いいプレーが生まれないのはなぜなのか。それはディテールがあいまいなままだからだ。ディテールがあいまいなままでは、やるべきことをしっかりと詰めることなどできない。抽象的な目的のままでは、具象の世界では何が起こるかはわからないからだ。どのように具現化するか。そのとき参考にすべきものは経験であり、教えである。しかし、どちらもディテールを取り出して確認できるように保存しておかなければならない。

 ジャーナリズムにおいて重要であるのは、同じことを繰り返さないことだ。(中略)異なる論理、異なる言葉で語られるのは、そのテーマに魅入られているからであり、テーマを進化させているからに他ならない。真摯にサッカーを追いかけている証拠だ。(中略)自分の経歴を誇示するつもりはないが、そんなふうに生きていかねばならないし、考えていかねばならないと思っている。他の人々のために働き始めねばならないかも知れない。未来のために。未来は彼らのためにあるのだから。

 (イビチャ・オシム『急いてはいけない』ベスト新書 P. 196)

 僕らは考え、決断し、行動する。しかし、自分がしたことをもう一度考えてみるということをあまりしない。だから、記録する。記録することは振り返ることでもあるからだ。そして、それを残し、公開すれば、未来のためになるかもしれない。だから、続けていこう。

 「チームメイトのためにスプリントをする」「誰もがチームのために走る」サッカーとはそういうもので、それを理解して始めて、コレクトでありつづけることができる。立っているだけでは何も始まらない。そういう「知性がなければサッカーはできない」のだ。
 

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2016年10月28日 (金)

評論家ではなく当事者でありたい

 「3のA、3のA」

 半券をポケットにしまいながら、ボーディング・ブリッジからジェット機に乗り込む。顔をあげると搭乗の挨拶をしているキャビンアテンダントと目が合い、僕はすぐに目をそらしてしまった。美人は僕のような人間にとって、ある程度の距離が必要になる。

 フジドリームエアライン、略してFDA。僕らにとってFDAといえば、アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration)なわけだが・・・。それはさておき、ここのCAはレベルが高いのではないか。

 通路を挟んで左右2席ずつの機内ながら、天井は高く感じ、狭さはさほど感じられない。飛行機に乗るなら前方窓側と決めている僕は、すぐに僕が座るはずのシートを視野に捉える。ところがそこには、おそらく3のBの半券を持っていると思われるお婆ちゃんが、窓の外を見ながら、平然と、私も飛行機は窓側と決めているの、と言わんばかりに腰を下ろしていた。

 「そこ、僕の席なんですけど」若い人ならこの一言をためらわずに言えただろう。僕は3のBに腰掛け、のぞき込むように同じ窓の外を見ながら、「窓側がお好きなんですか?」と問いかけるのが精いっぱいだった。

 「どっちでもいいけど。空が見えたほうがいいね~」

 そうですね、と僕は3のBに身を沈める。その答えを聞いて僕は了解してしまっていた。いや、質問した時点ですでに、僕の窓側権利は僕の手からスルスルとこぼれ落ちてしまっていたのだ。

 文庫本を取り出し、手荷物を前の座席の下に押し込む。シートベルトをしめ、文庫本を開いたとき、「旅行かい? 名古屋に帰るの?」と満面の笑みでお婆ちゃんが話しかけてきた。やれやれ。動いていない飛行機の窓からでは、その景色に飽きてしまったのだろうか、それとも僕が好意的に話しかけてきたと思われたのだろうか。どちらにしても、3のAを予約してしまった僕の不運とあきらめることにした。

 お婆ちゃんは熊本で一人で暮らしており、名古屋にいる息子のところへ孫のお祝いにいくらしい。何のお祝いだったかは忘れてしまった。名古屋で一緒に暮らそう、と息子さんは提案しているらしいのだが、お婆ちゃんは頑として首を縦に振らない。その様子は僕の両親と同じだった。

 団塊の世代の両親は、誰にも迷惑をかけることなく暮らしていきたい、と口癖のように繰り返す。だから、滅多に連絡もよこさない。そういう僕もこちらから連絡を取るようなことは滅多になかった。親父が倒れるまでは。そして、そういう状況になっても両親の姿勢は変わらない。この先どうなるのだろう。そして、こういった問題は誰しも避けて通ることのできない、人間としての問題なのだ。お婆ちゃんのいつ終わるともない話を聞くともなく聞きながら、そんなことを考えていた。

 不意にお婆ちゃんが口をつぐむ。お婆ちゃんが見つめるその視線の先では、さきほどの美人CAが非常事態に目の前に落ちてくるであろう酸素マスクの説明を行っていた。お婆ちゃんは真剣に説明を聞いている。うんうんとうなずきながら。そんなお婆ちゃんに、僕も便乗する。3のBという距離では、美人を眺めるには、最適な距離というにはまだ近すぎるのだが、ここぞとばかりにCAさんを視界に入れる。そして、ふと周りを見渡すと、誰もCAさんの説明を聞いていないようだった。3のAと3のBの乗客以外には。

 こういった航空法で定められているであろう酸素マスクの説明。おそらくとても大事で、繰り返し行われる説明というものは、もうわかっているよ、というのが大方の反応なのだろう。僕も一人だったら、文庫本に目を落としたままだったはずだ。でも彼女は淡々と業務をこなす。口元の笑みを絶やすことなく。不安を与えることなく。もしものときに、もっとも大事な、いちばん最初に行うべき行動を情報提供する。それは僕らの仕事とその本質を軌を一にする。

 CAさんの説明が終わるとすぐに飛行機は離陸体制に移った。お婆ちゃんは姿勢を正して目を閉じている。この瞬間が苦手な僕も文庫本と目を閉じた。意識が一点に向かって落ちていくようだった。

 目を覚ますとお婆ちゃんが前の座席のテーブルを取り出し、ワゴンサービスを待っているところだった。僕も慌ててテーブルを用意するが、ワゴンはなかなかやってこなかった。少し寝て頭がスッキリした僕は両腕をテーブルに乗せ、文庫本を開く。そういうつもりではなかったのだが、お婆ちゃんは話しかけてこなかった。だが、本の内容はなかなか頭に入ってくることはなく、ボーディング・ブリッジでの出来事を思い出していた。

 改札を抜けると僕はイチャイチャしたカップルの後を一人寂しくブリッジの中を歩いていた。カップルの男のほうは季節感がまるでなくタンクトップに金のネックレスという出で立ちだった。程なくして、渋滞の列に当たるのだが、動く気配がない。しばらく待っているとまた列は動き出したのだが、列は左に寄っていった。そして、その理由が判明する。おじいさんが少し歩いては立ち止まり、踏み出せないでいる。乗客はおじいさんが歩みを止めたその脇をすり抜けて追い越していっていた。

 僕は追い越すことなく見守った。どうせ僕の後ろには誰もいなかったからだ。いや、僕は観察していた。パーキンソンだ。すくみ足はあるものの、歩き出すと止まれなくなることはないようだ。傾斜があると怖いかもしれない。僕は傍観者だった。

 そこにタンクトップの彼が引き返してきて、大丈夫? とおじいさんに声をかける。そして、おじいさんの腕をとり、歩行の介助をしたのだった。彼女にいいところを見せたかったのかもしれない。それでも彼は紛れもない当事者だった。それに引き換え、知識のある僕はただの評論家にすぎなかった。傍観者であれば誰でも何でも好きなことが言える。じぶんに害が及ばないとなればなおさらだ。そこには覚悟がない。覚悟がなければ当事者にはけっしてなれない。

 僕は評論家ではなく当事者でありたい。実際にじぶんがやれることをやっていこうと思う。そう覚悟を持って。

 例のCAさんからホットコーヒーを二つ受け取る。一つは3のA、もう一つは3のBに。しかし、この距離は近すぎる。この一連のやり取りの中で、僕はCAさんを一瞥することすらできないのだった。
 

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2016年10月21日 (金)

六君子湯は補気剤であり去痰剤でもある

汎用漢方薬、六君子湯。
君子のようにすばらしい生薬が六つ。
逆食やFDだけでなく去痰作用も。

CASE 186

男性 75歳 

他科受診:なし  併用薬:なし  

処方(1,2は定期、3が追加となる):
Rp1) クロピドグレル錠50mg  1錠
    ネキシウムカプセル10mg  1C
     エナラプリル錠5mg     1錠  
     ピタバスタチン錠1mg  1錠  分1 朝食後  21日分

Rp2) カルボシステイン錠500mg   3錠
     アンブロキソール錠15mg  3錠   分3 毎食後 7日分

Rp3) ツムラ六君子湯エキス顆粒  7.5g 分3 毎食前 21日分

患者のコメント:
「つかえた感じがして食欲がない」
「痰の薬は効いている感じがしない。変わってないの? 先生に相談したけど」

患者・薬歴からの情報:
① 食欲、痰ともにDrに相談。Dr→Pt「薬を追加しておく」
② Rp2)残(+)のため、1週間分でOK
③ 脳梗塞の再発予防にて治療中
④ 痰は透明~白で量が多い
⑤ 手足のほてりやのぼせなどはない

□CASE 186の薬歴
#1 六君子湯が去痰剤でもあることを理解してもらう
 S)痰の薬は効いている感じがしない。
   (去痰剤は)変わってないの? 先生に相談したけど。
 O) お腹のつかえ、食欲不振、去痰剤が効いていない→Rp3)追加
   脳梗塞(+)、痰は透明~白で量が多い、手足のほてりやのぼせ(-)
 A) 六君子湯の証は適。去痰剤としても奏功するだろう。
   薬効について理解してもらう必要あり。
 P)六君子湯の説明書には胃のことしか書いていませんが、この漢方には去痰作用もあります。お伺いしたところ、病歴・体質的にも合っているようです。この漢方が効いてくれば、効いている感じのないRp2)を減らしていけるでしょう。
 
□解説
 脳梗塞後や高齢の方で、薄い白い痰がたくさん出るといった訴えをときどき耳にする。そして、こういった痰には西洋薬の去痰剤はあまり効果的ではないことが多い。

 痰の症状に加え、脾気虚が見られる本症例では、六君子湯が期待できる。さらに手足のほてりやのぼせといった陰虚の症状もなく、副作用の可能性も低い。

 漢方的な説明になるが、脾(胃腸)が弱ると、水の代謝が悪くなる。すると、水の吸収・運化機能が停滞し、水滞を呈する。そして、その結果として、痰を生じることになる。脾虚生湿だ。つまり、まずは脾を元気にしてあげないといけない。

 六君子湯の薬効は脾気虚、湿痰であり、そのような病態に期待できる。そもそも六君子湯は補気剤の基本処方の四君子湯と去痰剤の基本処方の二陳湯の合剤なのだから当然ともいえる。


 六君子湯の薬情には胃関連の説明のみの記載になっている。そこで、去痰剤としての効果があることも理解してもらえるように服薬指導を行っている。また同時に、効果が実感できないと訴える西洋薬の去痰剤の減薬できる可能性があることをほのめかしている。
 
□考察
 西洋医学では、診断から投薬という流れが患者の訴えごとに行われる。痰には去痰剤、FDには消化管運動賦活剤といったふうに。さらに、西洋医学は臓器ごとに専門医がいる。ということは同じ気虚であっても、肺は呼吸器から、胃は消化器からと、それぞれの科から症状に応じた投薬がなされることになる。

 こういった症状を超えた、臓器を超えたアプローチは漢方薬ならではのものだ。

 腎虚で夜間頻尿を呈し、目がかすみ、膝がガクガク、腰がフワフワして安定しない。こういった高齢者が泌尿器科、眼科、整形外科にかかったなら、少なくとも3種類の薬を受け取ることになる。少なくとも。しかし、漢方なら、例えば八味地黄丸一つで事足りるかもしれない。

 これからの超高齢社会、漢方薬はもっと見直されてしかるべきだ、と思うのだが。。。

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2016年10月14日 (金)

「長野県薬にソクラテスがやってきた」のご案内

講演のご案内。
長野は2回目。寒いのかな。
薬歴、学術、勉強法、etc. etc.


【長野県薬にソクラテスがやってきた】

 11月20日(日)、長野県薬剤師会にて薬歴を中心としたお話をさせていただきます。熊谷兄貴からのご指名ですから(8時間以上かかるけど・・・)。

 詳細は長野県薬のHPで(こちら)。

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 震災で延期・中止となった大分と八戸には来年、必ず行きます。日程調整がついて目処が立ちましたら、ご報告いたします。よろしくお願いします。

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2016年10月 7日 (金)

2016年10月のコラム

2016年10月の薬局にソクラテスがやってきた
非腎排泄型薬剤といった表現はあまりみかけないな。
言葉の問題ではありますが・・・。


【第70回】


 肝代謝型薬剤、肝排泄型薬剤、そして肝消失型薬剤。この3つの言葉のどれかを使っている人にとってはほとんど同じ意味合い、つまり腎排泄型ではないといった意味で使用していると思われる。また、どの言葉も同じ意味合いだろう、と柔軟に対応できる人も問題ない。

 しかし、初学者はそうではない。実際、本当は少しづつ意味合いが違うわけだし・・・。ということで、整理してみました。


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 ブログやコラムなど定期的に文章を綴るうえでよく言われることの一つに「よくネタ切れしませんね」といった類の内容だ。この対策の一つはあえて記事をストックしないこと。そうすれば原理的にネタ切れといった困った現象にはならない。いわばそれが普通なのだから。
 じつはこれ、森博嗣が口にしていた内容なのだが、やってみるとなるほどその通りで、これで精神的なストレスから解放されたのだった。ところが、こういったことはあくまでも健康なときの話であって、ちょっと体調を崩すと無理なわけで、それが今回の記事内容。前日にコラムのアップがあって助かった。やはり保険的な意味合いとして、記事のストックはしておこうと思った次第。自戒をこめて追記。

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2016年9月30日 (金)

ジゴキシンの中毒域と有効治療域に明瞭な境界は存在しない

つまり、オーバーラップ域が存在する。
薬力学的な視点。
ジギタリス中毒を起こしやすい病態と相互作用。

 コラムでは薬物動態学的なジゴキシンの相互作用を扱ったので、今回のブログでは薬力学的な観点を補足しておきたい(参照:ジゴキシンとの併用、このP-gp阻害薬に注意!)。

ジゴキシンの有効治療血中濃度範囲は一般的に 0.5 ~ 2.0ng/mL(血清中濃度)と考えられており、その範囲は非常に狭い。実際には中毒域と有効治療域の間には明瞭な境界はなく、オーバーラップ域が存在する。その一因としては、低カリウム血症、高カルシウム血症、低マグネシウム血症などの電解質のバランスが崩れた状態、腎疾患のある患者、血液透析を受けている患者、甲状腺機能の低下している患者、交感神経系緊張の亢進した患者、心臓に器質的変化のある患者及び高齢者等では、上記有効治療血中濃度範囲にあっても中毒を起こす可能性がある。従って、血中濃度だけを指標にした治療ではなく、臨床家の正確な臨床状態の把握とジゴキシン中毒症状の知識が必須のものとなる。また、経口投与されたジゴキシンは主に小腸上部で吸収されるが、極性が高いために吸収は不完全であり個体差も大きい。加えて他剤との相互作用も体内動態に影響するため、患者個々において十分な観察が必要である。

 (ジゴキシン錠0.0625「KYO」/ ハーフジゴキシンKY錠0.125/ ジゴキシンKY錠0.25のインタビューホーム P. 12より引用)

 ジゴキシンの中毒域と有効治療域の間にはオーバーラップ域が存在する。引用太字で示した病態においてそれは現れる。つまり、ジゴキシンの感受性が増しているのだ。このような患者に対して、ジゴキシンを投薬する際には中毒の発現に注意が必要となる。実際、そういった患者ではジゴキシン濃度が0.5ng/mL未満においても十分な効果が得られる可能性がある。

 ちなみにジギタリス中毒の特徴は次の通り。

 ジギタリス中毒:高度の徐脈、二段脈、多源性心室性期外収縮、発作性心房性頻拍等の不整脈があらわれることがある。また、さらに重篤な房室ブロック、心室性頻拍症あるいは心室細動に移行することがある。初期症状として消化器、眼、精神神経系症状があらわれることが多いが、それらの症状に先行して不整脈が出現することもある。このような症状があらわれた場合には、減量又は休薬するなど適切な処置を行うこと。

消化器:食欲不振、悪心・嘔吐、下痢等
眼   :視覚異常(光がないのにちらちら見える、黄視、緑視、複視等)
精神神経系:めまい、頭痛、失見当識、錯乱、譫妄等

(ジゴキシン錠0.0625「KYO」/ ハーフジゴキシンKY錠0.125/ ジゴキシンKY錠0.25のインタビューホーム P. 26-27より引用・改変)

 次に、ジゴキシンの作用を増強する併用注意の中からジゴキシンの感受性に関するものをピックアップしていく。

1 この薬剤は現在ない。。。

2 Kを排泄する利尿薬は要注意

3 効き過ぎや漫然投与に注意

4 ここも電解質異常

5 ファンギゾンは吸収されないor注射

 ということで、電解質異常のものが並ぶ。特に注意すべきは低K血症。ジゴキシン中毒が疑われたら、投与の中止と血中のKの正常化をいちばんに考える。

 なぜ、低K血症(3.5mEq/L以下)になるとジゴキシンの感受性が高まるのか。それはジゴキシンの薬理作用を考えれば理解できる。

ジゴキシンはリン酸化されたNa+、K+ - ATPase αサブユニットに結合して阻害することで、Na+の流出を減少させ、細胞内Na+濃度を増加させる。これがNa+ - Ca2+交換の原動力となり、結果として、細胞内 Ca2+が増加し心筋収縮力が増加する。

 (ジゴキシン錠0.0625「KYO」/ ハーフジゴキシンKY錠0.125/ ジゴキシンKY錠0.25のインタビューホーム P. 11より引用)

 ジゴキシンは、心筋細胞膜のNa+/K+-ATPase阻害(Na+-K+ポンプ)を直接阻害する。つまり、Na+を細胞外へ流出させ、K+を細胞内へ取り込むことから始まっている。このとき、血中(心筋細胞外)のK+が減少しているとどうなるだろう。そう、取り込むものが少ないわけだから、K+の流入は抑制される。それは、ジゴキシンの作用が強くなったようなもの。つまり、ジゴキシンの感受性が亢進する、というわけだ(反対に高K血症となれば、当然、ジギタリスの作用減弱が起こる可能性がある)。

 また、低K血症を注意する併用薬は上記のものだけではない。芍薬甘草湯など特に注意を要するものが網羅されていない。こういう注意は薬剤を超える。「CASE 184 ザイティガ錠の併用注意について」にで扱った資料はここでも役に立つだろう。

Z2_2

 さらに、下痢・嘔吐に伴う低K血症においては、ジギタリス中毒を起こしやすくなる。これに下痢・嘔吐・発熱に伴う脱水が加わると、ジゴキシンの血中濃度の上昇も加わることになるり、そのリスクはさらに高くなる。

 ちなみに、薬歴に記録する際のSOAPで言うと、O情報に患者の病態やそれをもたらす併用薬が記録されることになる。そして、ジゴキシンの感受性アップといったアセスメントがなされ、ジゴキシン中毒の初期症状を伝える、併用薬を控えめにする、といった薬歴が完成することになるだろう。

 S) (主訴)

 O) (低K血症になる併用薬や病態など)

 A)  低K血症によるジゴキシンの感受性アップの恐れあり

 P) 不整脈や消化器、眼、精神神経系症状→すぐに受診
    甘草含有漢方薬などを控えめにする等

 といった薬歴の雛型は初学者には有用かもしれない。

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2016年9月23日 (金)

【ファーマシストマガジン特集コラム】薬学関連用語についての考察

POS SOAP コンプライアンス アドヒアランス
ポリファーマシー 集学的治療 ・・・・・・
概念そのものへの理解とその背景

【ファーマシストマガジン2016年9月号の特集コラムを担当しました】

Photo

 ブログやコラムを通して発信を続けていると講演依頼が舞い込んでくることがあります。私の持ちネタは3つ、“薬歴の書き方”と“学術ネタ”、そして“勉強の方法”です。どれにするかは先方次第なのですが、かなりの確率で“薬歴の書き方”が選ばれています。私の知名度を上げているのは学術的なコラムのはずなのに、講演のニーズは薬歴にあるわけです。薬歴の講演は、・・・

続きは以下のリンクからご覧ください

2015年9月号の特集コラムも担当しています。
技術の継承なくして職種全体の技術の向上はありえない


お時間のあるときにぜひご覧ください。

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2016年9月16日 (金)

2016年9月のコラム ~ジゴキシンとP-gp阻害薬・誘導薬~

2016年9月の薬局にソクラテスがやってきた
ジゴキシンとP-gp阻害薬と誘導薬。
その併用によって、何が起きるのか?


【第68回】


 ジゴキシンに併用禁忌はなく、原則併用禁忌として注射用製剤だけが名を連ねている。

1

 しかし、併用注意の数はとても多い。その中には臨床的にはあまり意味のないものから、ジゴキシンの量を調整しなければ危ないものまで玉石混淆の様相を呈している。

 汎用薬としてはCAMとの併用には特に注意が必要で、できれば併用は避けるべきだろう。除菌などでどうしても併用が必要な場合は、あらかじめドクターと相談の上、併用時にジゴキシンを減量するようにしたい。

 また、記事でも触れたように、「ジゴキシンはP-gpを介した薬物相互作用研究のプローブ薬となっている」ために、今後も併用注意の数は増えていくことになる。その都度、その相互作用の重みづけをしていくしかないだろう。

【第69回】


 ジゴキシンとP-gp誘導薬の相互作用についての考察記事。ジゴキシンの添付文書にはP-gp誘導薬としてリファンピシンとSJWが挙げられており、その類似点と決定的な相違点について触れたみた。

 この誘導に起因する相互作用というのは、薬理作用の過剰発現や中毒による副作用が現れるわけではないので、その影響自体が表面化しにくいケースが多いのではないだろうか。そういう意味では見つけにくいものなのかもしれない。もうすでに併用状態で落ち着いてしまっているケースもあるだあるだろうし、SJWを除いたリファンピシンなどは飲まないわけにはいかない薬ばかりで、併用を避けること自体が難しい。

 だが、何が起こるのか、または何が起こっていたのかを予想することはできる。そう、予想できることこそが僕らの強みなのだ。


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2016年9月 9日 (金)

ベルソムラの併用注意についての考察

2016年11月25日追記 

~2016年11月18日にベルソムラ錠10mgが発売~

ベルソムラ錠 使用上注意改訂のお知らせ
ベルソムラ錠 添付文書

111

以下の過去記事のケースでは、10mg錠へ減量となります。

ベルソムラの弱点。
併用注意もかなりのAUC上昇。
やはりもう少し下の規格が欲しい・・・。

CASE 185

男性 60歳 

他科受診:なし  併用薬:なし  運転(+)  アルコール(-)

処方(1,2は定期、3が追加となる):
Rp1) ヘルベッサーRカプセル100mg  2C 分2 朝・夕食後  28日分

Rp2) バイアスピリン錠100mg 1錠 
    クレストール錠2.5mg   1錠 分1 朝食後  28日分

Rp3) ベルソムラ錠20mg  1錠 分1 就寝前 28日分

患者のコメント:
「どうも最近眠れなくて・・・。でも睡眠薬を飲んでいて、地震が起きたらと思うと心配でね。先生に相談したら、今日のなら大丈夫、と」

患者からの情報:
① 日中はきついが昼寝はしていない(リズム異常なし)
② 夕食19時、就寝23時くらいで、夜食の習慣なし

疑義照会:
(内容)ヘルベッサーとの併用でベルソムラの[C]2倍に。15mg錠を提案。
(回答) Rp3) ベルソムラ錠20mg→15mgへ変更

□CASE 185の薬歴
#1 ベルソムラ初回服薬指導と不安へのアプローチ
 S) どうも最近眠れなくて・・・。でも睡眠薬を飲んでいて、地震が起きたらと思うと心配でね。先生に相談したら、今日のなら大丈夫、と。
 O) リズム異常なし。19時夕食、23時就寝、夜食習慣なし。
ヘルベッサーを服用中のため、疑義照会にて、ベルソムラ錠20mg→15mgへ変更。
 A) 不安に対してのアプローチが必要。また、ベルソムラを減量したものの、なお30mg相当の用量と考えられる。
 P) 従来の睡眠薬とは異なり、生理的な睡眠に近い自然な眠りをもたらします。そのため、地震などの外からの刺激があったときにはすぐに起きることができますし、力が入りにくいといった作用もない薬なので安心してください。就寝30分前くらいの服用がオススメです。また、夢を見るかもしれませんが、なくなっていきます。ただし、翌日まで持ち越し、運転に支障が出るようなら中止してください。
 
□解説
 ベルソムラはCYP3A4の基質薬でCYP3A4阻害薬の影響を強く受ける(下記、引用はベルソムラのIFより)。

①ケトコナゾール
健康成人(10例)を対象に、本剤(4 mg 単回)と CYP3A を強く阻害するケトコナゾール(400 mg 1日1回経口反復)11日間反復投与の2日目に併用した際、スボレキサントのCmax及び AUC0-∞は23 %及び179 %増加した

 強いCYP3A4阻害薬との結果が上記であり、これを受けて併用禁忌の薬剤が設定されている。

 併用禁忌:CYP3Aを強く阻害する薬剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビル、サキナビル、ネルフィナビル、インジナビル、テラプレビル、ボリコナゾール)

②ジルチアゼム
健康成人(18 例)を対象に、本剤(20 mg 単回)をジルチアゼム(240 mg 1 日 1 回反復)6 日間反復投与の 2 日目に併用した際、スボレキサントの Cmax 及び AUC0-∞は 22 %及び105 %増加した。

 中等度のCYP3A4阻害薬との併用が上記。これに加え、「15mg 錠よりも低含量の減量のための製剤がないため」、併用注意に設定されている。

 今回の症例では、地震時への不安がまずあり、BZD系やZ-DrugなどのGABAA受容体作動薬は不適と考えられる。さらに、リズム異常はない。たしかにベルソムラが最適ではあるが、最初の処方のままだと(ヘルベッサーとの併用のために)、ベルソムラの血中濃度は40mg相当にまで達してしまう。

 また、ベルソムラには割線がなく、データが存在しないために半割・粉砕は好ましくない。

 光及び湿気を避けるため、PTP シートのまま保存し、服用直前に PTP シートから取り出すこと。錠剤が粉砕された状態での薬物動態解析、有効性試験、安全性試験は実施されておらず、その有効性・安全性を評価する情報は存在しない。
以上の理由により、本剤の粉砕投与は推奨されない。

 そこで、ベルソムラを15mgへの減量を提案し、採用となる。ただし、それでもベルソムラ30mg相当の血中濃度になると考えられるので、患者への不安に対応しながら、持ち越しについても注意を促している。
 
□考察
 ベルソムラの弱点はその用法・用量にある。高齢者か否かどうかで15mgか20mgに振り分けられる。米国では5mgや10mg製剤が存在する、と耳にすれば、余計に不安になるではないか。ベルソムラの持越し効果関連の有害事象の発現割合や自動車運転能力に対する影響には、用量依存性が認められているのだ。

 CYP3A4の強力な阻害薬は併用禁忌、中等度の阻害薬は併用注意。じつにシンプルでわかりやすい。しかし、併用注意の対応はじつに難しい。

重要な基本的注意とその理由及び処置方法
(3) CYP3A を阻害する薬剤(ジルチアゼム、ベラパミル、フルコナゾール等)との併用により、スボレキサントの血漿中濃度が上昇し、傾眠、疲労、入眠時麻痺、睡眠時随伴症、夢遊症等の副作用が増強されるおそれがあるため、併用は治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみとすること。やむを得ず併用する際には患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意すること。

 今回の症例は有益性を重視したわけだが、不安はぬぐえない。そもそも血中濃度2倍で、剤型的に対応できない併用注意なんて、どうなのだろう。それに対して、メーカー側の言い分はこうだ。高用量(非高齢者 40 mg、高齢者 30mg)群でも安全性は確認されていたが、有効性に大差がないために低用量(非高齢者 20 mg、高齢者 15 mg)群が採用になっただけだ、と。

 しかし、PMDAは「第Ⅲ相試験で示された低用量と高用量の有効性を比較したときに、本剤低用量と比較して高用量でリスクを上回るベネフィットが示されていると結論することは困難であり、本剤高用量を承認用量に含めることは適切ではないと考える」と述べているし、今回の事例ではちょっと事情も異なる。審査報告書に目を通すと、ベルソムラのBAは高用量になればなるほど低下するようなのだ。

単回経口投与時の絶対的バイオアベイラビリティ(以下、「BA」)推定値は、本剤 10、20、40 及び 80 mg において、それぞれ 0.82、0.62、0.47 及び 0.37 であった。

 ということは、今回の症例における“ベルソムラ30mg相当”という僕のアセスメントは過小評価なのかもしれない。

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2016年9月 2日 (金)

文章を書くときと読むとき、そしてしかるべき距離について

「結局のところ、桜の価値は、咲こうとする意志にではなくて、散る覚悟に求められる」(P. 67)


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超・反知性主義入門 [ 小田嶋隆 ]
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 最近、SNSの利用に制限をかけている。手持無沙汰なときにTwitterのタイムラインをスクロールすることはままあるけれど、積極的な発言をすることはなくなったし、フェイスブックも週に1回くらいしか開かなくなった。現実が充実しているとか、そんなことではない。僕の考えが揮発してしまうからだ。垂れ流した考えは回収されることなく、また浮かぶとも限らない。以前はすべてノートに書き付けていた。が、SNSで発信したものをわざわざノートに収めるようなことはしない。二度手間だし、発信したことで満足してしまうからだ。さらに、次のような不安もある。

 何かを思うことと、それを口に出すことの間には、しかるべき距離がある。当然の話だ。アタマの中で考えたことを、その場ですべて声に出して良いのは、幼児と独裁者だけだ。(中略)もしかすると、考えることと発言することの間の距離(ないし時間)を喪失したことが、われわれがデジタルコミュニケーションツールを手に入れたことによって獲得した副作用のうち、最も致命的なものなのかもしれない。

(小田嶋隆『超・反知性主義入門』日経BP社 P. 30-32)

 致命的な副作用。そう、ネット上でのトラブルの元はそのほとんどがこれなのだろう。また、しかるべき距離がなければ、想像力を発揮することもできない。そして、アイデアのシーズとも言うべき塊が雲散してしまうのも同じ理由による。時間というしかるべき距離がないために、タイムラインが流れていってしまうために、その塊はついに発酵することがない。これはじつにもったいない、と自分のノートをふりかえったときに気がついたのだ。

 アイデアがある程度の形になり、これはおもしろい、と思うものを記事にする。この時点で気をつけていることがある。意識していても、強力な後ろ盾や虎の威的なものがあったときにはついつい忘れてしまう。それは啓蒙的な記事に終始してしまうことだ。そして、しまったと後悔することになる。

私が啓蒙的な運動をしている人々に反発を頂くのは、彼らが、人々をバカにしているように見えるからだ。彼らは、情報を告知することで世界が変えられると思っている。告知と宣伝で、人々を動かせると考えている。その前提で私はうんざりするのだ。なぜなら、彼らの前提が暗黙のうちに語っているのは、自分たち以外の人間が、正確な情報を知らないという認識だからだ。彼らは、そういう無知な大衆に福音を知らしめることが、世界の様相を改善するための第一歩だと信じている。その裏には、人々が無知で、愚かで、享楽的で、近視眼的だという思い込みがある。

(小田嶋隆『超・反知性主義入門』日経BP社 P. 174)

 そんなこと思ってはいない、そうはいってもこの手のことは読み手がどう感じるかなのだ。出来のよい記事が書けた、といった自信のあるときにほど気をつけないといけない。

 読み手はじつに多様な環境にある。にもかかわらず、主語を一つにして啓蒙的な情報活動をしてしまっては、そう思われても致し方ない。日本語の特徴の一つに、主語の省略がある。そして、省略された主語の有力な回答は“私たち”だ。だから、その“私たち”に混ざりたくない、と思われないようにメッセージを届ける。それは記事の内容の重要性とはなんら関係がないことなのだ。

 だが、とも思う。難しい問題に対して、結局のところどうなんだ、お前の言いたいことは何なのだ、答えになっていないのではないか、といった意見には僕は賛同しない。

 でも、私に言わせれば、登録無料のウェブマガジンの中に「答え」が書かれていると思っている時点で、その人間はビジネスパーソンとしてはほぼ使いものにならない。もちろん、…役に立つ記事が無いわけでもないし、目からウロコの落ちるタイプのテキストが皆無だというのでもない。

 ただ、文章を読む際の基本姿勢として、答えを探しに行くタイプの読み方は、根本的に間違っているぞ、ということだけは申し上げておきたいのだ。文章は楽しむために読むものだ。楽しく読んで、面白く時間をツブせればそれで十分。そういう中で、結果として、後になって振り返ってみて、あの時に読んだあの文章は、自分の中でこんなふうに役立っていた、というケースがあるかもしれない。

 と、そういうお話なのであって、ページを開く前の段階から、何か役に立つことを取り入れるために本を読むみたいな態度は、明白な間違いではないのだとしても、人としてあさましいマナーだと思う。

(小田嶋隆『超・反知性主義入門』日経BP社 P. 250-251)

 まあ、こういった話は通じない人には通じない。あなたがお金を払って手に入れた書籍に対しての書評ならば、話は別だ。著者は対価に、タイトルに見合うものを提供する義務があるだろう。しかし、無料の文章を読んで、その文章は失格だ、というのは当たらない。

 ましてや、新しい情報がなければ意味がない、というのもどうかしている。僕らの世界の基礎的な部分は「変わらないこと」によって保たれ支えれているのだ。

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2016年8月26日 (金)

2016年8月のコラム その2 ~プラザキサとCAMのなぜ~

2016年8月の薬局にソクラテスがやってきた」その2
P-gpの典型基質薬と阻害薬。
例外的な組み合わせ。

【第67回】


 「基質薬のBAや、P-gp阻害薬と基質薬の排泄経路の組み合わせによって、どの臓器のP-gpに起因するのか推測可能なのだ」には、もちろん例外もある。

 プラザキサのBAは6.5%で、腎排泄型の薬剤だ。これとクラリスロマイシンを併用すれば、理論的には、強力なP-gp阻害薬であるクラリスロマイシンが小腸のP-gpを主に阻害することになる。が・・・

 <プラザキサの相互作用>
 併用禁忌:イトラコナゾール
 併用注意(減量考慮) :ベラパミル、アミオダロン、キニジン、シクロスポリンなど

 クラリスロマイシンも他のP-gp阻害薬と同じように減量考慮となる併用注意となっておかしくない。しかし、クラリスロマイシンは別枠での扱いで次のようになっている。

Cam

 この理由はわからない。経口投与される薬剤なら、すべてそこで出会うはずだからだ。そこで? どこで? 腸管(広義の小腸:十二指腸・空腸・回腸)のどこで主に相互作用が起きているのだろう。

 併用禁忌のイトラコナゾールの吸収部位は「上部腸管」。十二指腸・空腸あたりか? 一方のプラザキサの吸収部位は「消化管」って、アバウトすぎる・・・。この考えもダメか・・・。一応、問題のクラリスロマイシンの吸収部位は、

 3.吸収
該当資料なし
〈参考〉
ラットの in situ 消化管吸収実験から,胃からはほとんど吸収されず,主に十二指腸から回腸に至る小腸の広範な領域から速やかに吸収されることが示された。

 クラリスロマイシンは広範囲から吸収されるがゆえに、プラザキサの小腸P-gpによる排泄への影響が少なかった? でも肝心のプラザキサの吸収部位が「消化管」では・・・。

 ちなみに、ベラパミルの吸収部位は「腸管」、アミオダロンは「消化管全域」、キニジンは「上部胃腸管」、シクロスポリンは「上部消化管」。う~ん・・・。

 やはり、何事にも例外はあるということにしておこう。
 

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2016年8月19日 (金)

日経DI関連記事(特集とクイズ本)

DIは相互作用特集。
DIクイズは循環器疾患篇。
どちらもちょっとずつ登場!

【日経DIプレミアム版8月号】

2016年8月号

*日経DIデジタルに加入している方はリンクで飛べます。

【DIクイズ循環器疾患篇】

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 CCBとARBで登場しています。


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2016年8月12日 (金)

ザイティガ錠の併用注意について

併用薬のチェック。
相互作用の項目の確認だけでよいのか?

ザイティガ服用患者の低カリウム血症を回避する

CASE 184

男性 80歳 

他科受診:泌尿器科  併用薬:
Rp1) ザイティガ錠250mg  2錠
    1日1回 食事の1時間以上前または食後2時間以降
Rp2) プレドニゾロン錠5mg  1錠
    ラベプラゾール錠10mg 1錠 分1 朝食後

処方(3は定期、4が追加):
Rp3) ロサルヒド錠LD 1錠 分1 朝食後  28日分

Rp4) ツムラ小青竜湯エキス顆粒 7.5mg  分3 毎食前  28日分

患者のコメント:
「水みたいな鼻水がスタスタと。なにかに反応しているんだろうって」

疑義照会:
(内容)ザイティガ服用中のため、低K血症のリスクを避けたい
(回答) 眠くならない薬を希望されたので
     Rp4)→フェキソフェナジン錠60mg 2錠 分2 朝・夕食後 へ変更

□CASE 184の薬歴
#1 フェキソフェナジン初回服薬指導
 S) 水みたいな鼻水がスタスタと。なにかに反応しているんだろうって
 O) 低K血症回避のため、疑義にてツムラNo.19→フェキソフェナジン
   眠くならない薬を希望。果実ジュース→あれば飲むくらい
 A) フェキソフェナジンが最適だろう。フェキソフェナジン初薬。
 P) 抗アレルギー薬の中ではもっとも眠くなりにくいタイプ。
   AJやOJなどの果実ジュースの服用で効果減弱。
   避けるもしくは服薬後2時間以上あければOK。
 
□解説
 前立腺癌にてザイティガを服用している患者で、通常の用量よりも少ない量にて継続中。当局からはロサルヒド錠のみ。この時点ですでに、利尿剤との併用になっていた為、Kの動向には注意していた(4.0mEq/L、腎機能もNP)。

 今回、さらに甘草含有の漢方薬が追加になってしまう。小青竜湯は甘草を3g/日も含有しており、芍薬甘草湯についでエキス製剤の中では多い。しかも28日分。そこで、低カリウム血症のリスクを回避するために疑義照会を行う。

 患者が眠くならないモノを希望したために漢方薬を選んだ、ということだったので、眠くなりにくいフェキソフェナジンを代替薬として提案し、採用となった。フェキソフェナジンは果実ジュースの併用でAUCおよびCmaxが60~70%も減少することが報告されており、それを回避することを中心に初回服薬指導を行っている。
 
□考察
 ザイティガの相互作用をのぞくと次のような記載になっている。

Z1

 利尿薬や甘草含有の漢方薬といった記載は見当たらない。ところが、慎重投与の2)には具体的な薬剤名こそないが、次のように注意喚起がなされている。

Z2

 ここには“併用薬”としっかりと記載されている。添付文書のつまみ喰いだけではダメ、と言われれば確かにその通りなのだが、それ以前にやっぱり不親切な気が・・・。ちなみに「ザイティガ適正使用ガイド」には次のように注意換気がなされている。

Z2_2

 患者の併用薬とそれにまつわる情報。そういったものはセットにしてフェイスシートで管理するに限る。ザイティガのような薬それ自体を僕は滅多に投薬することはないのだから。  

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2016年8月 5日 (金)

2016年8月のコラム その1 ~CIMが関与する相互作用~

2016年8月の薬局にソクラテスがやってきた」その1
CIMによるCYP阻害作用とドーズの関係。
CIMが関与する相互作用を俯瞰する。

【第65回】


 CYPによる薬物代謝の阻害の程度、それは阻害薬の用量に依存する。その際たる例がシメチジン(CIM)だ。CIM400mg/dayと海外文献で目にする1,000mg~1,200mg/dayでは、代謝阻害の程度がまったく異なる。

 では、CIMのドーズで対応の線引きをすればよいのか? 健常人はそれでいいかもしれない。が、CIMが腎排泄型の薬剤だ。その関係はCIMとメトホルミンの相互作用でも同様と考えたほうがいいだろう。

【第66回】


 CYPが関与する相互作用というのは、変化の大きいものが多く、かつ予測しやすい。ゆえに、もっとも警戒すべき相互作用ではある。

 CYP阻害薬やMATE阻害薬、こういった名称がつくと、その相互作用はイメージしやすい。しかし、薬が生体に影響を与える以上、PKやPDのいろいろな場面で相互作用が起こっている。頭の整理におススメの一冊。

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2016年7月29日 (金)

主人公が持ち歩いているモノは?

「部屋を出る時、拳銃の中から弾丸を一つ、抜き取った。私はそれを、自分の守りのように、取っておこうと思った」(P. 173)


銃 [ 中村文則 ]
価格:583円(税込、送料無料)


 「昨日、私は拳銃を拾った」この最初の一文が僕をこの物語に引き込むと同時に、僕はある小説を思い出す。夏の葬列 [ 山川方夫 ]に収められている短編『お守り』だ。

 『お守り』に登場する関口はダイナマイトを所持している。関口は言う。「ああ、なんという画一性!」「ぼくは任意の一点なんかではない」。そして、他の誰でもない自分をつかまえるために手に入れたお守り、それがダイナマイトだった。

 「みんな、なんとかかんとかいっても、規格品の生活の外に出ることができまい。でもおれは、いざという気になりゃ。いつでもこんな自分もお前たちも、吹きとばしてやることができる・・・・・・こっそり自分がそんな秘密の力を握っていること、考えあぐねた末、それがやっとみつけた僕の支えだったわけさ。つまり、これがぼくの特殊性さ」

(山川方夫『夏の葬列』集英社文庫 P. 43)

 特殊性。そう、関口は積極的にそれを手に入れる。しかし、じぶんそっくりの人間が同じくダイナマイトを持っていたことを知り、それはもうお守りでもなんでもなくなってしまう。

 これに対し、“私”は偶然、銃を手にすることになる。偶然もたらされた銃、その「吸い込まれるような存在感」が“私”に「畏怖の念」を与える。そして、「可能性を手中に収めたこと、その刺激の固まりこそが重要である、実際にそれをするかどうか、したいかしたくないかは問題ではなかった」はずだった。だが、その非日常性が明らかに“私”を変えていく。

 モノを所有することで、どちらの話も主人公が変わっていくのだが、その変わり方が違う。銃はさらに、“私”の内部へと深く浸透していく。

拳銃は私に、早く撃つことを要求した。拳銃は私の全てだった。拳銃のない私は無意味であり、私は拳銃に激しい愛情を向けていた。が、拳銃は、私に冷たかった。私がその黒に覆われていくことにも、拳銃には関心がないような、そんな気がし、私は発狂しかけた。そして、私は拳銃を使っているのではないのだ、と思った。私が拳銃に使われているのであって、私は、拳銃を作動させるシステムの一部に過ぎなかった。

(中村文則『銃』河出文庫 P. 168)

 サルトルの「実存は本質に先立つ」を彷彿とさせる。拳銃は殺人という思想を内包する。そのためにある。一方、人間はまず実存し、あとになってはじめて人間となる。自ら作るところのもの以外の何ものでもない。ここから選択、自由、責任、孤独、不安といった派生概念が生まれることになる。

 “私”は選択したはずだった。そして、「安堵と悲しみの入り混じった、不思議な嗚咽」をもらし、泣く。銃を捨てることを選択した“私”は「自分が存在しているということを、よく噛みしめるようになった」。“私”はようやく人間になろうとしていたのだ。だが、自由をはき違え、責任を逃げにすりかえようとして、この小説は終わる。

 「おかしいな」「おかしいな」というフレーズが余韻とともにフェードアウトしていく。

 読み終えて、こうも感じた。ダイナマイトと銃。なんだか資格と崇拝の話のようだ、と。そして、堀江敏幸の言葉を思い出す。「個性的たろうとする者は、要するに凡人なんだ」。僕ら凡人の悲しい事実。

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2016年7月22日 (金)

コラムへの質問の回答と勉強会のご案内

2016年7月の薬局にソクラテスがやってきた」その2
メトホルミンの体内での動きをトレースしてみる
で、お寄せいただきました質問への回答です!

【グリーンブックについて】

記事で紹介されていた日本腎臓病薬物療法学会誌の特別号(通称:グリーンブック)は、今からでも学会に入会すれば手に入れることが可能でしょうか?

 今からでもOKです。今年もうすでに2冊の学会誌が発行されていますので、学会の会計年度末である8月31日までに会員になればすぐに2冊(うち1冊が特別号)が送られてくるはずです。

 また、じほうから発行された『腎機能別薬剤投与量 POCKET BOOK』は、じほうが会員全員(1400冊)に配布することを条件に学会が作成した本ですので、会員数が1400人を超えない限り、もらえるはずです。

 ということは、8000円の年会費を払えば、6000円相当の特別号(グリーンブック)と税込み3456円のPOCKET BOOKがついてきますので、今年の会員は1500円程度がタダでもらえるのと一緒ということになります。

 なんてお得なのでしょう! 入会の手続きはこちら


【ある薬学生さんからの質問】

臨床現場においての薬を扱う薬剤師の理論的な説明に深く感銘を受けております。私はある薬学生なのですが、実は、なかなか文章における理論的な説明に乏しく、困っています。科目ごとのかかわりを相互に見ることでの理解は可能であるのですが、ことそれの流れを説明することが難しく感じております。メトホルミンにおける薬物動態イメージトレースと同様に何をどのように考えて、理論を持っていくのかのコツとかをもし教えて頂ければ、ありがたいので、お願いします。自分だけではなく、教えた人みんながわかる説明ができるようになりたいのでよろしくお願いします


 学生のうちは情報がフラットなのかもしれませんし、現場に出ると、環境によって、得意な分野や薬剤が出てきます。そういうものなら、知識の断片をうまく組み合わせることができるようになるのではないか、と想像します。そこから始めていけばいいかと。

 コツと言われてもよくわからないのが本音でして、知識の断片がいっぱいあれば、それらが自ずとつながるようになってきます。そのときに動態パラメータがあれば、肉付けした内容でイメージトレーシングができるというわけです。

 これから予定されている参考になる勉強会を紹介しておきます。ちょうどいま扱っている内容とマッチしますし、とっても期待できる内容です。

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2016年7月15日 (金)

2016年7月のコラム その2 ~トランスポーターと薬物動態~

2016年7月の薬局にソクラテスがやってきた」その2
薬物トランスポーターが動態にどう関わっているのか。
トランスポーターの相互作用がイメージしにくいのは?

【第64回】


 トランスポーター第2弾は、トランスポーターが薬物の動態にどのように関与しているのか、メトホルミンをイメージトレーシングしてみました。

 トランスポーターが関与した相互作用が起きる臓器というのは、その薬の標的臓器とは限らない。こういったこともトランスポーターが関与する相互作用がわかりにくい理由の一つなのかもしれません。

3


 記事の前半で使った資料は下の写真の特別号です(色は緑です)。日本腎臓病薬物療法学会にはぜひ今後もアップデートしていってもらいたいものです。

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2016年7月 8日 (金)

日本全国の慢性疾患患者の薬識がゆらいだ日

薬識は心の中にある。
ゆえに、薬識は常にゆらぐ。

日本全国で患者の薬識がゆらいだはず!

CASE 183

男性 60歳 

他科受診:なし  併用薬:なし

定期処方:
Rp1) バイアスピリン錠100mg  1錠 
    エナラプリル錠5mg  1錠 
    トラゼンタ錠5mg  1錠      分1 朝食後 28日分

Rp2)メトホルミン錠500mgMT  2錠 分2 朝・夕食後 28日分

Rp3)クレストール錠2.5mg  1錠
    ニフェジピンCR錠20mg  1錠 分1 夕食後 28日分

患者のコメント:
「ちょっと聞いていい? 週刊誌みた?
 クレストールを飲むと腎不全になるって本当?」

週刊誌:
飲み続けてはいけない薬のリスト①
「クレストールは腎不全になる可能性もある」(佐藤氏)

患者や薬歴から得られた情報:
① 医師には相談していない
② クレストールは不安を感じながらも続けている
③ 心筋梗塞歴(+)

□CASE 183の薬歴
#1 クレストールの薬識を是正する
 S) クレストールを飲むと腎不全になるって本当?
 O) 週刊誌を見て、不安を感じつつも服薬を続けている
 A) クレストールの薬識ケアが必要!
 P)逆です。クレストールが腎臓を悪くするのではなく、腎臓の悪い人がクレストールを服用すると、思った以上に効き過ぎってしまって、副作用の恐れがあるんです。その程度の信ぴょう性です。
 R) 聞いてよかった。心筋梗塞やってるから飲まないといけないよね。
 
□解説
 週刊現代の「飲み続けてはいけない薬リスト」。これを目にした患者のクレストールの薬識はゆらいでいた。つまり、“心筋梗塞の再発予防のために大切な薬”から“飲み続けることで腎不全になる薬”へと。活字になったこういう情報を目にして不安にならないわけがない。

 しかし、その不安は間違った内容の記事によるものと判明している。かつ不安を感じながらも服薬を続けてくれている。であれば、ゆらいだ薬識をまた元に戻せばいい。
 
□考察
 週刊誌第一弾のときの事例。今でも続編が続いているという。最新号では、というよりも新聞広告の見出しが話題を読んでいる。

糖尿病のジャヌビア 脳梗塞・心筋梗塞のプラビックス 高血圧のミカルディス コレステロールのクレストールほか
生活習慣病薬【被害レポート】5年飲み続けたら、こんな「後遺症」が残った

 なんでも記事を読んだ人間によると、スタチン系を続けると筋肉が溶けて腎不全になるから飲み続けてはいけない、と。いや、むしろ何年も飲んでいる人の方が、もうリスクは低いことが多いのだが・・・。

 確かに横紋筋融解症を起こして、適切な処置が取られなければ腎不全に至ってしまう。だが、そうならないように、副作用のモニタリングピリオドを意識した服薬指導を行うわけだし、医師は採血を行うわけだ。飲み合わせだって、お薬手帳などの活用を呼びかけているのはこういう重篤な副作用を引き起こさないためでもある。

 そもそも薬に効果がある以上、副作用もある。どちらか一方を、副作用面だけを煽った、さもすべての人があてはまるような情報を垂れ流す。バランスが悪いといった次元ではなく、もう品がない。品がないから生活習慣病薬をターゲットにするのだろう。だって、それが一番、部数が伸びるわけだから。それでも、そういったゴシップ的記事を読んで不安になった患者に対して、日々、時間をかけて説明していくのも僕らの仕事だと、もう半ばあきらめている。

 一部の施設では、「じゃあ、薬を変えましょう」と応じるときく。週刊誌の情報をもとに処方を変更するなんてことは本当はあってほしくない。だが、患者の理解力の問題もある。どちらにしても僕らにとっては迷惑この上ない話であることには変わりはない。

 話が脱線してしまったが、かように薬識というものは外部刺激によって簡単にゆらぐ。それは薬識の問題が、心の、感情の問題だからだ。とくに僕らは不安という感情にアプローチすることを忘れてはならない。
 

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2016年7月 1日 (金)

2016年7月のコラム その1 ~トランスポーターの取っつきにくさについて~

2016年7月の薬局にソクラテスがやってきた」その1
薬物トランスポーターの記事がすんなり頭に入ってこない理由。
知っておくこととイメージすること。

【第63回】


 CYP阻害薬にも飽きてきたので、今度はトランスポーターに手を出してみました。そもそもなぜトランスポーターはわかりにくいにか? そういうアプローチで迫ってみました。

63fig1rr


 例によって、僕は知識の断片をつなげるために“まとまったものを読む”わけですが、トランスポーターといえば、この一冊です。トランスポーターだけで200ページ以上あります。面白いですよ。


 ところで、P-gpはどのように表現されてますか? 添付文書をのぞいてみると、P-gpの基質であるジゴキシンには「本剤はP糖蛋白質の基質であるため、本剤の血中濃度はP糖蛋白質に影響を及ぼす薬剤により影響を受けると考えられる」とあります。一方、基質であり阻害剤のワソランには、「本剤は P‐糖蛋白の基質であるとともに, P‐糖蛋白に対して阻害作用を有する」となっています。

 “質”とか“‐(ハイフン)”ってあってもなくてもいい? 今回の記事から“P糖蛋白(P-gp)”で統一しようかと思います。それにしても添付文書の表現くらいは統一してもらいたいものです。

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2016年6月24日 (金)

妊婦・授乳婦への降圧薬 ~高血圧治療ガイドライン2014~

飛び込みの患者さんの意外な訴え。
授乳婦さんへおススメのの降圧薬。
ガイドラインにも載ってますよ。

 飛び込みの新患さん。お薬手帳には“アルドメット錠250mg 3錠/分3”の記載。その併用薬に話が及ぶと開口一番、「授乳中に使える血圧の薬って、これだけですか? 他にありませんか? 1日3回も飲まないといけないから・・・」。

 お話を伺うと、妊娠中にはアルドメットを服用しており、出産後は近くの内科で診てもらうように、と。内科医は授乳婦さんに使える薬がわからないから、妊娠中と同じものにしておこう、と。隣の薬局で相談するものの医師の選んだものを、と。そのことがひっかかっていて、他の薬局でも聞いてみようと思い至ったらしい・・・。

 いや、そんなに難しい話じゃありません。ガイドラインにも載ってますよ。いろんな意味で残念な話ですが、せっかくなのでのっけておきます(以下、高血圧治療ガイドライン2014より)。

【妊娠高血圧の降圧薬選択】

Fig1

【授乳が可能と考えられる降圧薬】

Fig2

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2016年6月17日 (金)

「血栓があるのに抗凝固薬は要らないんですか?」

車中泊で血栓ができました。
「血栓予防の薬(抗凝固薬)は必要ないんですか?」
僕たちの病識は・・・。

CASE 182

女性 45歳 

他科受診:婦人科  併用薬:なし(ピルを中止)

定期処方:
Rp1) オルメテック錠20mg   1錠   分1 朝食後 28日分

前回の薬歴より:
① 車中泊、ピル服用、利尿剤服用→左足にむくみと痛み
② エコノミークラス症候群疑いにてB病院へ紹介
③ ラシックス錠20mgと併用薬のピル→中止

患者のコメント:
「左ヒザ裏の下に血栓ができていた。この場所は経過観察と言われました。
血栓の薬とか飲まなくていいんですか?」

患者から得られた情報:
① B病院からの処方薬はロキソニンとムコスタ 各3錠/3xのみ
② 弾性ストッキング着用、車中泊はもうしていない
③ ラシックスやピルは中止のまま

□CASE 182の薬歴
#1 血栓症の病識ケア
 S) 左ヒザ裏の下に血栓ができていた。この場所は経過観察と言われました。
   血栓の薬とか飲まなくていいんですか?
 O) 併用薬:ロキソニン・ムコスタ 
   弾性ストッキング(+)、車中泊(-)、ピル・利尿剤の服用(-)
 A) 不安に対して病識ケア
 P)表在性血栓と深部静脈血栓の違いを説明し安心してもらう。
   ただし、リスクファクターを取り除いておくことが大切。
 
□解説
 いわゆるエコノミークラス症候群は深部静脈血栓症や肺塞栓症のことを言う。この場合は入院下の初期治療などの後に、ワーファリンやリクシアナなどの抗凝固薬の服用が一般的な治療法だ。

 今回のケースでは、血栓はできているが経過観察でよく、薬物療法もNSAIDsによる対症療法となっている。もちろん、血栓症のリスクファクターは排除されている。これは表在性血栓静脈炎への対応だ。

 静脈炎の範囲が短く(<5cm)、深部静脈との結合部から遠く、ほかに血栓症の危険因子がない場合は、下肢挙上やNSAIDsで対症的な治療を行う。それ以外の場合は超音波検査による血栓範囲の評価、抗凝固療法の考慮が必要である。
(今日の治療指針2016 P. 479)

 メルクマニュアルの表在性血栓静脈炎のページにも「深部静脈と違って表在静脈は筋肉に取り囲まれていないため、血栓が押し出されることはありません。したがって、表在性血栓静脈炎はほとんど塞栓症を起こしません」と記されている。

 これらのページを患者といっしょに参照しつつ、患者に安心してもらい、今後も血栓症のリスクファクターに対して注意を払うように指導している。
 
□考察
 TVやラジオなどのメディアでエコノミークラス症候群の危険性が繰り返し放送されていた中で、血栓があると言われ、ロキソニンだけという対応に患者は不安だったようだ。

 一方、僕らも「薬があるからその周辺の病識を形成している」可能性がある。経過観察でよいような疾患で、その疾患の薬も処方されないとなると、僕らがその疾患に触れる機会も少なく、そのあたりの病識が乏しいのは当然といえば当然なのかもしれない。

 こういう機会を捉え、周辺知識を充実させていく。そういったことを心がけていきたいと思う。
 

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2016年6月10日 (金)

2016年6月のコラム ~CYP阻害薬の“強さ”について~

2016年6月の薬局にソクラテスがやってきた
CYP阻害薬の“強さ”の程度について。
役に立つかどうかは距離の取り方しだい。


【第62回】


 強力なCYP阻害薬、中等度の・・・、弱い・・・。その程度はどういうルールで決まっているのか? 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」を参考に記事を進めています。

好評連載「薬局にソクラテスがやってきた」。今回は“CYP阻害薬の強さ”がテーマ。強い/中等度/弱い阻害薬の違いはどこにあるのか?これを知ると、実際の症例への近付き方についてヒントも得られそうです。

【ヒット記事再録】


 コラムの中で触れましたが、イグザレルトの出血リスクはやはりピークと相関しているといわれています。一方、リクシアナはトラフと相関すると言われ、1日1回でよい理由も異なる理論のようです(こちら)。

 【ヒット記事再録】新規抗凝固薬のイグザレルト(リバーロキサバン)、プラザキサ(ダビガトラン)、エリキュース(アピキサバン)の半減期はほとんど変わりません。なのに、プラザキサとエリキュースが1日2回で、イグザレルトだけが1日1回なのです。その理由とは?
##
山本雄一郎の「薬局にソクラテスがやってきた」:薬局で生じる数々の疑問を山本氏がモノローグ調で解き明かすコラム。※記事は2014年に公開されたものです。現状と異なる可能性があります。

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2016年6月 3日 (金)

「未来からのまなざしを受けつつ仕事をする」

「結局いい仕事をしておけば、それは自分ばかりでなく、あとから来るものもその気持ちをうけついでくれるものだ」(P. 9)


しんがりの思想 [ 鷲田清一 ]
価格:885円(税込、送料無料)


【市民の無能力化とできること】

 こういう仕組みが完備してゆくことで、市民生活において逆にクオリティを大きく損なったものがある。いうまでもなく、≪いのちの世話≫を自力でおこなう能力の喪失である。(中略)ましてや災害時の排泄物の処理方法、雨水を飲料水に変える方法を知っているひとはほとんどいない。災害で食材の流通が止まったときも、じぶんたちで工夫して野山の植物を調理するのではなく、配給を待つだけだ。
(中略)
 では、トラブルが起こったとき、サービス劣化したときにわたしたちにできることは何か。皮肉にも行政やサービス企業の担当者にクレームをつけることだけなのである。

(鷲田清一『しんがりの思想』角川新書 P. 62-65)
 
 熊本震災、本震の直後、実際にこの状況を体験することとなった。そして僕らは無力だった。断水が続き、結果、給水に救われる。給水所に並ぶこと2時間、一家族あたり1回4Lの水を手にした。

 行政の職員が僕らの持参した容器に水を入れてくれる。彼らは休むことなく、淡々と作業をこなしていた。多くの人は感謝の言葉を告げていたように思う。だが、中には「まだ、水道はなおらんのか!」とクレームをつける人間もいたのだ。職員は「すみません。がんばっていますので、もう少しお待ちください」と大人の対応だった。でも、謝る必要なんて、これっぽっちもない。災害なのだし、この状況は僕らが選択してきた結果なのだから。
 
 
【石工の矜持】

「ほめられなくても自分の気のすむような仕事はしたいものだ」とも、この職人は語っている。この言葉を承けて、宮本はこう書きついでいた。「誰に命令せられるのでもなく、自らが自らに命令することのできる尊さをこの人たちは自分の仕事を通して学びとっているようである」、と。
 石工は、田舎を歩いていて見事な石の積み方に心打たれ、将来、おなじ職工の眼にふれたときに恥ずかしくないような仕事をしておきたいとおもった。このとき石工のこだわりはじつに未来の職人に宛てられていた。これに対して、目先の評判や利害ではなく、何十年か先の世代に見られてもけっして恥ずかしくない仕事を、というそのような矜持をもって仕事に向かうひとがうんと減ったのが現代である。未来世代のことをまずは案じる、そういう心持ちをほとんど失っているのが現代である。
 
(鷲田清一『しんがりの思想』角川新書 P. 9)

 生き残ること、利益を上げること、どちらも大切なことではある。でも、だからと言って、この石工のような矜持を失ってはならない。目の前のことだけに追われていてはいけない。仕事の一部は未来の薬剤師のために。

 常に最高の自分を差し出すべく努力をしていく中で、一つだけ忘れてはならない観点がある。それは、目の前の仕事だけに没頭してしまわずに、常にその一部を未来の薬剤師のために捧げてほしいということだ。今、自分のことだけを考えるのではなく、未来の自分、未来の薬剤師のための種を蒔くのである。それを絶対に忘れないでほしい。

(岡村祐聡『新・服薬ケア概論 エッセンシャルズ』服薬ケア研究所 P. 89)
 

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2016年5月27日 (金)

乳がん治療薬の飲み合わせ

“TAM=SERM”
“SERMとAI剤”
他科からの併用薬に注意


【TAM-CYP2D6阻害薬】
 
 2016/5/19のコラム 「ノルバデックス+ベタニス=薬効増強?減弱?」で、ノルバデックス(TAM)を服用している患者に対して、安易なCYP2D6阻害薬の併用を避けましょう、と提案しました。他科からの処方でのこういう事例に対して、僕たちは注意しなければなりません。


【TAM=SERM】
 
 もう一つ、違うケースがあるとすれば、ノルバデックスを服用している患者に対してのエビスタやビビアントといったSERMの処方。これは同じ薬効群の重複投与になってしまいます。まだ遭遇経験はありませんが、じゅうぶんに考えられます。こういったケースを回避するには、ノルバデックスの処方を切ったDrが骨粗鬆症まで合わせて診てくれるのが理想ですね。


【SERM-AI剤】
 
 さらに、この分野で注意したい飲み合わせがあります。それがSERMとAI剤の併用です。詳しくは、Blog「アリミデックスとエビスタの併用を回避する」(2013年10月11日)を参照ください。

 アリミデックスとノルバデックスを併用すると、アリミデックス単独よりもその乳癌再発予防効果がわるくなってしまうこと(ATAC試験)を受けて、ノルバデックスと同じSERMであるエビスタについて、ガイドラインには次のような記載があります。

 一方,ラロキシフェンは閉経後女性における骨粗鬆症の治療薬として日本でも広く使用されている。しかし,ATACにおいてタモキシフェンとアナストロゾールの併用で有害事象が増加し,しかもアナストロゾールの乳癌再発抑制効果を阻害することが明らかとなった。ラロキシフェンも理論上アロマターゼ阻害薬との相互作用が懸念されるため,アロマターゼ阻害薬使用時にラロキシフェンを併用することは推奨されない。 乳がん治療ガイドラインCQ42より)

 ビビアントの記載はまだありませんが、エビスタと同様と思っていいでしょう。

 一方で、SERMの併用により、動態に影響が出てしまうアリミデックスだからダメなのであって、影響の少ないアロマシンなら併用に期待できる、といった報告もあるようです。

 結論として、専門医が行うAI剤とSERMの併用には口を出さず、あくまでもAI剤服用中の患者に対して、他科からのSERMの処方を防ぐ。これが僕のスタンスです。
 

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2016年5月20日 (金)

2016年5月のコラム ~CYP2D6阻害薬と遺伝子多型について~

2016年5月の薬局にソクラテスがやってきた
CYP2D6に関する話題。
阻害薬と遺伝子多型について。

【第61回】


 薬効が増強して副作用が発現するようなら、患者でも気がつくことができます。でも、薬効が減弱するとなると・・・。そして、その結果どうなるかは、数年後の再発率で考えるしかないわけです。

 でも、理論だけで、この手の問題は、この問題の場合は回避することができます。そして、飲み合わせの専門家こそが薬剤師だ、と僕は思っています。

CYP450の相互作用では、阻害薬と基質薬を併用すると、基質薬の過量服用のような副作用を生じることがあります。ただし、例外もあります。また、添付文書に記載されている薬剤以外にも、同様の機序で相互作用を引き起こす可能性があることに注意が必要です。

【ヒット記事再録】


 GFJも大量に飲めば小腸以外でのCYP3A4やP-糖蛋白に影響すると言われています。この記事ではそういう特殊状況下は考慮していませんのでご注意ください。

 
ヒット記事再録】最近登場したNOAC(新規抗凝固薬)であるプラザキサ(一般名ダビガトラン)とイグザレルト(リバーロキサバン)。「同じP-糖蛋白の基質なのに、併用禁忌も、併用注意もなぜ違うんですか?」
##
山本雄一郎の「薬局にソクラテスがやってきた」:薬局で生じる数々の疑問を山本氏がモノローグ調で解き明かすコラム。2014年1月から連載開始。※記事は2014年に公開されたものです。現状と異なる可能性があります。

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2016年5月13日 (金)

震災状況下での服薬中止指示

静脈血栓塞栓症(VTE)とSERM
震災時の治療の優先順位。
僕たちの行為の目的。

CASE 181

女性 70歳 

他科受診:整形外科  併用薬:ビビアント(4月初旬に77日分処方)

定期処方:
Rp1) カムシア配合錠LD   1錠  
    ピタバスタチン錠1mg  1錠  分1 朝食後 28日分

Rp2) レボフロキサシン錠250mg  1錠 分1 夕食後  7日分

患者のコメント:
「夜は車にいるから、ついついトイレを我慢してね」

患者から得られた情報:
① 足のむくみや痛みはない
② ご主人と二人で普通車に車中泊(自宅の壁にヒビがあり余震が怖いため)
③ 水は出ないし、トイレが気になり、夜は水分を控えている

□CASE 181の薬歴
#1 VTEを回避する
 S) ご主人と二人で普通車に車中泊(自宅の壁にヒビがあり余震が怖いため)
 O) 併用薬:ビビアントを77日分、足のむくみや痛みはない
   水は出ない。夜はトイレが気になり、水分を控えている→膀胱炎
 A) VTEのリスク大
 P) 車中泊を止められないのなら、血栓症が起こりやすくなるビビアントを中止。
   水分をしっかり摂って、足を動かす運動などを。パンフレット提供。
 
□解説
 熊本地震の翌週の薬歴。TVでもエコノミークラス症候群の注意が盛んに行われている中でのケース。

 患者は70歳の女性で、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスク因子のオンパレード。車中泊(長時間足を動かさずに同じ姿勢でいる)で、水分摂取にも問題があり、おまけに血栓症の副作用のあるSERMまで飲んでいる。これはかなりのハイリスクだ。

 話を伺うと、エコノミークラス症候群が怖い疾患であるとの認識はなく、今すぐ車中泊を止めることも難しそうだった。そこで、併用薬のSERMの中止を指示し、厚生労働省作成のパンフレット(こちら)を用いて指導を行っている。
 
□考察
 震災直後のこの状況で、SERMを続けなければならない理由、僕にはそれが思いつかなかった。骨質をよくしてもVTEを起こすリスクを抱え込んでしまっては意味がない。つまり、この状況での服薬は勧められない。

 震災直後は水分摂取が困難な状況も散見された。別のケースだが、主治医と連絡が取れない場合には、僕の独断で、SGLT2阻害薬の一時中止を指示することもあった。

 そういうことをするには勇気がいる、躊躇してしまう、といった意見が少なからず耳に入ってくる。でも、もしその躊躇で、じぶんの患者がVTEや脳梗塞を起こしてしまったら? 僕が主治医なら、薬剤師に患者を救うチャンスがあったのに何をしていたんだ、ときっと思うに違いない。

 そもそも患者が薬を飲んでいるのはなぜなのか。もちろん、健康でありたいから。ということは、目的は同じだ。僕らは薬を飲んでもらうためだけにいるのではない。また、併用薬の確認は、飲み合わせのチェックだけをすればいいわけでもない。行為のすべては、患者の幸せに繋がっているかどうか。その一点にある。
 

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2016年5月 6日 (金)

「あまり思い詰めないほうが良いこともあります」

「今の技に不足があるのは、そこに至る技、そのまえの技に因がある」(P. 106)


フォグ・ハイダ [ 森博嗣 ]
価格:799円(税込、送料無料)


【少しくらいの濁りはあった方がいい】

 「坊主の私が言うのも、だいぶ筋違いと思いますが、少しくらいの濁りは、あった方がよろしい。この世にあるものは、いかなるものも、必ず無駄なものが混ざっております。なにも溶けていない水はない。なんの匂いもしない風もありません。それでも、それを綺麗な水といい、澄んだ空という。おそらくは、正しい剣、正しい刀も、そのようなものと想像いたします」

(森博嗣『フォグ・ハイダ』中公文庫 P. 361)
 
 どんな仕事でも、真剣に対峙すればするほど、悩み思い詰めるものなのだろう。そんなときに思い出したいフレーズだ。理想には遠く届かなくても、綺麗な水であり、澄んだ空であるならば、きっと方向性だけは間違っていない。ただし、そう判断するのは他者であり、じぶんではないことだけには留意したい。
 
 
【人生には理由などない】

 もともと、都へ行くつもりなどなかった。カシュウが言い遺したのは、山を下りろというだけのことである。山は下りた。山を下りたところには里があって、その里から続く道は、街道へと繋がり、たまたま西へ向かって歩くことになった。そして、道すがら、大勢の者が、どちらへ行くのかと尋ねてくる。面倒なので、都へ行くと答えた。そう答えているうちに、本当の目的になりつつある。それだけのことなのだ。どうしても行かなくてはならない理由などまったくない。
 
森博嗣『フォグ・ハイダ』中公文庫 P. 382

 身も蓋もないかもしれないが、これが人生だ。例えば、僕が薬剤師で生きていかないといけない理由などまったくない。前職であるMRも楽しかったし、向いていたと思う。家族と趣味の都合で薬剤師になった。そして、後輩とつるんでいるうちに後輩にはみっともない姿を見せるわけにはいかなくなった。ただそれだけのことが今の活動へとつながっている。
 

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2016年4月29日 (金)

2016年4月のコラム その3 ~熊本地震本震からの1週間~

2016年4月の薬局にソクラテスがやってきた」(その3)
熊本地震関連コラム6本
どうせ夜は眠れないので書き始めたという側面も。。。

【第55回】 


 DI Onlineコラム「薬局にソクラテスがやってきた」の著者で薬剤師の山本雄一郎氏。4月16日の熊本地震で被災し、物資不足が続く被災地で患者対応に奔走しています。大変な状況の中、震災直後の様子をリポートしてくださいました。避難所生活の長期化が予想される中、SGLT2阻害薬による脱水も懸念しています。

熊本の本震発生から3日目。処方箋を持参せずに慢性疾患の処方薬を求める患者に、どう対応するか――。薬局薬剤師の山本雄一郎氏は、「住」「食」そして「副作用による二次被害のリスク」を念頭に、患者対応を行っています。
 熊本の本震から3日目の夜、「処方箋なしで保険調剤してもよい」という事務連絡が出されました。ある患者さんは、これまで通っていた医療機関にかかれなくなり、薬を求めて初めて来局しました。


 熊本地震から5日目。薬局の近隣の病院が再開しました。医薬品卸の企業努力によって、発注にほぼ問題はない状態に。休診中に避難所を回っていた医師から、「一包化された薬を患者さんに見せられて戸惑った」という話も聞きます。


【第59回】 


 「薬局にソクラテスがやってきた」の著者・山本雄一郎氏による熊本地震の記録。6日目を迎え、診療体制の乱れが落ち着きつつある中、山本氏は前職でもある製薬企業のMRについて思いを馳せます。MRと薬剤師に共通することは--?


【第60回】 


 熊本地震から1週間が経過した4月22日。市内の一部地域では水道が復旧し、コンビニエンスストアには商品が並ぶようになりました。薬局は再び“日常”へと戻りつつあります。

 以上、熊本地震本震の翌日からの6日間。普通の調剤薬局における記録。

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2016年4月22日 (金)

2016年4月のコラム その2 ~ヴィキラックスとCCBの併用はできるかぎり避けよう~

2016年4月の薬局にソクラテスがやってきた」(その2)
CYP3A4阻害薬第2弾!
「リトナ・ブースト」ってなんかの必殺技みたい(笑)

【ヒット記事再録】


 副題をつけるとすれば「機序不明の陰にトランスポーターあり」です。そして、「実に複雑だ」。

 【ヒット記事再録】グリベンクラミドを飲んでいるRさんに、CYPを誘導するリファンピシンが追加になった。そこで「グリベンクラミドの効き目が少し弱くなるかもしれない」と指導したら、後日Rさんは低血糖に…。これは添付文書やインタビューフォームには載っていない作用機序が関わっている、と山本氏は指摘します。
##
山本雄一郎の「薬局にソクラテスがやってきた」:薬局で生じる数々の疑問を山本氏がモノローグ調で解き明かすコラム。2014年1月から連載開始。※記事は2014年に公開されたものです。現状と異なる可能性があります。


【第54回】


 とかく価格ばかりが話題となりがちなDAA治療ですが、僕らはまず飲み合わせに注意しないといけません。

 C型肝炎に対する経口薬治療の選択肢には、ハーボニー配合錠、ヴィキラックス配合錠、ダクルインザ+スンベプラ(併用療法)があります。ヴィキラックスはハーボニーに比べて併用禁忌や併用慎重が多いのですが、それはヴィキラックスにHIVプロテアーゼ阻害薬のリトナビルが配合されているため。その注意点や機序を分かりやすく解説します。

 現在、ヴィキラックスの第4回の市販直後調査状況報告の実施中ですが、投与9日目に多臓器不全により死亡に至った症例が報告されたようです。この症例ではニフェジピンの最大用量80mg/日が併用されていたとのこと。投与開始初日より血圧低下が認められ、6日目にすべての内服薬を中止するも回復することなく死亡。

 やはりヴィキラックスを選択する際には、できるかぎりカルシウム拮抗薬の併用を避けたほうがよさそうです。

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2016年4月15日 (金)

【延期となりました】 「大分にソクラテスがやってきた」のご案内

2016年4月16日15時加筆 

 4月15日0時にアップしました本記事「『大分にソクラテスがやってきた』のご案内」の訂正です。

気象庁は、記者会見で、16日午前1時25分ごろに起きたマグニチュード7.3の地震が「本震」で、それより前のおとといの夜に発生した熊本地震が「前震」にあたるという見解を示しました。

 「前震」って何だよって感じでした。記事をアップした数時間後の「本震」。これがダメージ大でした。今の状況に加え、余震を考慮し、延期となりました。復旧作業も視野に入れ、5月の八戸も延期です。予定されていた皆様にはたいへん申し訳ありませんが、何卒ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

                                        山本 雄一郎

講演会のご案内。
案内状がインパクトあるな~


 いつも当ブログをご覧いただき、ありがとうございます。今回は講演の案内です。

 1月の佐賀に引き続き、4月は大分です。今年は自分自身のブラッシュアップの意味も含めて、時間の許す範囲で講演を引き受けました。今後は5月に八戸、7月に札幌、9月に北九州に出没予定です。内容はご来場いただいてのお楽しみということで。

Photo

 懇親会もあります。お時間に余裕のある方はぜひご一緒しましょう。それでは、よろしくお願いいたします。

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2016年4月 8日 (金)

2016年4月のコラム その1 ~アゾール系抗真菌薬の併用禁忌~

2016年4月の薬局にソクラテスがやってきた」(その1)
アゾール系抗真菌薬の併用禁忌まとめ。
併用注意も無視できないものが多いのだが・・・

【ヒット記事再録】


 関連の薬歴公開は「CASE 54 本当の肝機能」(2010/3/26)です。

 【ヒット記事再録】「肝機能をおうかがいしたら、ASTとALTが50くらいだそうです。値がどのくらいになったら、注意すればいいですか?」新人薬剤師のこんな質問に、あなたならどう答えますか。
##
山本雄一郎の「薬局にソクラテスがやってきた」:薬局で生じる数々の疑問を山本氏がモノローグ調で解き明かすコラム。2014年1月から連載開始。※記事は2014年に公開されたものです。現状と異なる可能性があります。


【第53回】


 飲み合わせの確認は残薬まで視野に入れる。早いうちにこういう経験ができたことは僕にとって幸運でした。

 アゾール系抗菌薬の併用禁忌(内服のみ)をまとめておきます。

ジフルカン:ハルシオン・クリアミン・ジヒデルゴット・キニジン・オーラップ

フロリード:ハルシオン・クリアミン・ジヒデルゴット・キニジン・オーラップ
リポバス・カルブロック・バイミカード・ロナセン・イグザレルト・スンベプラ

イトリゾール:
ハルシオン
・クリアミン・ジヒデルゴット・キニジン・オーラップ
リポバス・カルブロック・バイミカード・ロナセン・イグザレルト・スンベプラ・ベプリコール・メテルギン・レビトラ・セララ・レバチオ・アドシルカ・バニヘップ・ベルソムラ・ラジレス・プラザキサ・アデムパス(下線はP-gp関与)

ブイフェンド:ハルシオン・
麦角アルカロイド(
クリアミン・ジヒデルゴット)・
キニジン・オーラップ
・リマクタン・ミコプティン・ストックリン・ノービア・カレトラ・テグレトール・長時間作用型バルビツール酸誘導体(バルビタール、フェノバルビタール)
*カレトラはリトナビル含有製剤として。ということは、ヴィキラックスも。

<ジフルカン(フルコナゾール)>

Jifurukann

<フロリード(ミコナゾール)>

Furori

<イトリゾール(イトラコナゾール)>Itorizoru

<ブイフェンド(ボリコナゾール)>

Bufenndo

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2016年4月 1日 (金)

大事なものほどわからない

大衆人とは? その典型こそ僕らなのかもしれない。
「自己を迷える者と自覚しない者は、必然的に自己を失う」(難破者の思想)



それは全能でありながらその日暮らしなのである。大衆人とは生の計画をもたない人間であり、波のまにまに漂う人間である。したがって、彼の可能性と彼の権力がいかに巨大であっても、何も建設することがないのである。

(オルテガ・イ・ガゼット『大衆の反逆』ちくま学芸文庫 P. 67-68)

 大衆支配の予言の書ともいわれる『大衆の反逆』。本書での大衆人の定義がこれだ(この対極に位置する人間のことを「少数者」もしくは「真の貴族」と表現している)。能力はあるにもかかわらず、自分の方向を見出すことができない。つまり、行動することがない。

 この本を読んで思い出すのは、オルテガより前に大衆社会の予言したニーチェだ。

 「(前略)羊飼いはおらず、群れが一つあるだけ! 誰もが平等を望み、誰もが平等である。そう感じない者は、自分から精神病院に入る。
 『以前は、世の中がみんな狂っていました』―そう言って、お上品な連中がまばたきする。
 賢いので、起きたことはなんでも知っている。だから嘲笑の種が尽きることはない。口喧嘩もするが、すぐに仲直りする。―でないと、胃の具合が悪くなる。
 昼のお楽しみがある。夜の楽しみもある。だが健康には敬意を払っている。
 『わたしたちが幸せをつくりだしたのです』―そう言って、最後の人間がまばたきする」―

 (ニーチェ『ツァラゥストラ(上)』光文社古典新訳文庫 P. 30-31)

 この新訳では「最後の人間」と表現されている(以前読んだ他の翻訳では「末人」とされていた)、これが「大衆」だ。大衆は全能であって、なんでも知っているのに、何かをなすことはない。そして、すべてを煩わしく感じるから、平等を欲しているのだ。

 こういった警句に触れ、大衆にはなりたくない。そう感じる。それは悪いことではない。だが、大衆に対して嫌悪感を抱くようなら危ないかもしれない。なぜなら、大衆人には「大衆は大衆が大嫌い」という特徴があるからだ。

 わたしたちの社会は、たしかにニーチェが予言したとおりの大衆社会となりました。
 ただし、一点だけニーチェの予言ははずれました。それは大衆自身が「ニーチェ主義者」になってしまった「ニーチェ主義的大衆社会」になってしまったということです。まさかニーチェも、自分の説いた「大衆蔑視」の思想が、これほど大衆社会で「受ける」とは思っていなかったでしょうね。
 大衆は大衆が大嫌い。
 それが「ニーチェ主義的大衆社会」のきわだった特徴です。
 (中略)
 ある理論の批評性は、その理論の信奉者が少ないという事実に担保されているんです。

 (内田樹『死と身体 コミュニケーションの磁場』医学書院 P. 181-183)

 日本ではニーチェが受けた。そして日本にはニーチェ主義者がいっぱいいる。自分こそは超人である、と思っている大衆が大衆を嫌っている。

 また、オルテガは「今日の科学者こそ、大衆人の典型だ」とも言っている。

 歴史上前代未聞の科学者のタイプが現われた。それは分別ある人間になるために知っておかなければならないすべてのことのうち、一つの特定科学だけしか知らず、しかもその科学のうちでも、自分が積極的に研究しているごく小さな部分しか知らないという人間である。

(オルテガ・イ・ガゼット『大衆の反逆』ちくま学芸文庫 P. 157)

 その結果、大事なものほどわからないものなのだ、といったことが科学者や専門家には理解できない。そして、ただ科学に没頭するのは逃げである。なぜなら、科学の対象は常に抽象的であって、抽象的なものは抽象がゆえに明晰だからだ。

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2016年3月25日 (金)

2016年3月のコラム その2 ~フルボキサミンはCYP非特異的阻害剤~

2016年3月の薬局にソクラテスがやってきた」(その2)
ヒット記事再録は記念すべき第1回記事。
フルボキサミンは強力なCYP1A2阻害剤であり・・・

【ヒット記事再録】


 関連の薬歴公開は「半減期の長い睡眠薬」(2009/2/13)です。

 【ヒット記事再録】「半減期24時間のユーロジンって、飲むと1日中眠いんですか?」勉強熱心な新人薬剤師からのこんな質問。あなたならどう答えますか。
##
山本雄一郎の「薬局にソクラテスがやってきた」:薬局で生じる数々の疑問を山本氏がモノローグ調で解き明かすコラム。2014年1月から連載開始。
※記事は2014年に公開されたものです。現状と異なる可能性があります。

 懐かしいですね~。これが記念すべき第1回でした。この辺のしくみもベルソムラの登場に伴い理解が深まってきました。


【第52回】


 関連の薬歴公開は「ルボックス ‐ テオドール」(2010/8/20)です。

 テルネリンの相手をどちらにするか迷いました。フルボキサミンかシプロキサシンか。じつはどちらも経験があります。今回はストーリー的にフルボキサミンを選びましたが、このフルボキサミン、現在では新規に処方されることはほとんどありません。

 記事で紹介したように、フルボキサミンは強力な
CYP1A2
阻害剤なわけですが、その正体はCYP非特異的阻害剤。下の表ではCYP2C19にも強い阻害
、CYP3A4、2C9
には中程度の阻害作用を持っています。ということは、併用禁忌以外にも多くの相互作用を考慮する必要があるわけです。

Photo

(古野拓. 臨床精神薬理 2011; 14: 1291-302)


  
* 阻害の程度については、薬物相互作用ガイドラインで示されているものとは若干違っている。そちらでは、フルボキサミンはCYP1A2と2C19は強い阻害薬と同じ記載だが、2C9や3A4では弱い阻害薬となっている。また2D6の阻害薬としての記載はない。

 * その他にも阻害の程度の記載が若干異なるものがあります。ミニ丸さんのブログが参考になります
こちら

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2016年3月18日 (金)

アラミストが壊れている?

アラミスト点鼻液が出ません。
手技の確認そして手技の意味。
理解を促す一枚の写真。

CASE 180

女性 65歳 

他科受診:なし  併用薬:なし

定期処方:
Rp1) アムロジピン錠2.5mg 1錠   分1 朝食後   28日分

Rp2) フェキソフェナジン錠60mg  2錠 分2 朝・夕食後  28日分

Rp3) アラミスト点鼻液27.5μg56噴霧用 2キット

患者のコメント:
「(アラミストが)ときどき出ないことがあるの」

手技の確認:
① 使い始めの空打ちはOK
② 使用前によく振っていない

□CASE 180の薬歴
#1 アラミスト使用前に振ることの意味を理解する
 S) (アラミストが)ときどき出ないことがあるの
 O) 使用前によく振っていない
 A) よく振っていないのが原因だろう。まずその意味を知ることが必要。
 P) よく振ることでサラサラの液体になって噴霧できるようになります。
 
□解説
 アラミスト点鼻液の手技に関する話題。レバーが固いという訴えもよくある。そんなときは両手での噴霧方法を指導するとうまくいく。そして、もう一つがこれだ。「ときどき出ないことがある」このくらいならまだいいが、「液が出ない=壊れている」となることもある。

 今回のケースでは使用前に振っていないことが原因だった。アラミストの中身は粘り気のある懸濁液で、よく振ることでその液体がサラサラになり正しく噴霧できるからだ。

Photo

 
□考察
 薬をきちんと飲めない・飲まない理由の一つに、その薬の必要性を理解していないことがある。つまり、「なぜ、それが必要か」を理解していないから、服薬行動につながらない。

 アラミスト点鼻液に関する今回の訴えも同じ理屈だ。なぜ、その手技が必要なのか。それを理解していないから、おざなりになってしまったのだろう。

 よく振る目的が均一にすることなら、薬は噴霧されるはず。出ないということは壊れているに違いない、となるわけだ。こういうことは、その手技の意味を理解しておくことが対策になる。先の写真はそのよきツールになるだろう。
 

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2016年3月11日 (金)

2016年3月のコラム その1 ~抗インフルエンザ薬の構造式とDPP-4阻害薬の構造式~

2016年3月の薬局にソクラテスがやってきた」(その1)
ヒット記事再録とDPP-4阻害薬の続編。
ともに構造式関連ネタ

【ヒット記事再録】


 関連の薬歴公開は「抗インフルエンザの構造式」(2013/1/25)です。

 【ヒット記事再録】リレンザが処方された12歳のKさん。薬歴の副作用歴に「リレンザで発疹」の記載が! 疑義照会するときは、ドクターに代案を提示したいけど…。

 ※記事は2014年に公開されたものです。現状と異なる可能性があります。

 「現状と異なる可能性があります」たしかに。今なら次の可能性も考えないといけないでしょう。


【第51回】


 2014/12/22のコラム「DPP-4阻害薬を構造で分類してみる」の続編です。

 同じ薬効群なのに基本骨格を持たないDPP-4阻害薬。その中で同じシアノピロリジン系といってまとめようとしましたが、それは間違いでした。

 薬力学的な分類としての結合様式による分類、完成版です。

Photo

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2016年3月 4日 (金)

積極的な待機から「新しさ」を絞り出す

「マイナ故に自由なのだ」(P. 117)
決してマイナではないのだが、それでも自由でありたい。

作家の収支 [ 森博嗣 ]

作家の収支 [ 森博嗣 ]
価格:820円(税込、送料込)


【出版社の「半お墨付き」】

・・・、広報活動に努力を惜しまなければそこそこの宣伝効果は見込めるだろう。なにもなかった時代に比べれば、である。ただ、新人で誰も名前を知らなければ、たとえネットで発信しても見向きもされない。ネットはそれほど普及しすぎてしまった。もう「普通」のメディアになったということであり、違いはただ、発信に費用がかからないというだけだ。効果は今となっては薄い。それが現実である。

(森博嗣『作家の収支』幻冬舎新書 P. 72)
 
 とくにネットの世界は玉石混交の情報で溢れかえっている。ゆえに発信した情報が誰にも届かないことがある。手紙を入れた瓶を海に流すように。だからといって、発信という行為そのものが無駄というわけでは決してない。誰も見ることがない日記とは異なり、誰かが目にするかもしれない発信は、本人の成長にとっても価値がある。

 アマチュア作家にとって、なによりも欲しいのはリンクなのだ。つまり、宣伝である。(中略)情報発信はできても、今は情報が多すぎて、誰も目を留めてくれないからだ。

(森博嗣『作家の収支』幻冬舎新書 P. 185)

 たしかに。先日、二年前に発信した記事「リレンザで発疹歴のある患者さんにイナビルを投与してもいいですか?」が日経DIのフェイスブックページで再録された。結果、2/27と2/28にランキングの上位にあって、ほんとうに多くの方に目にしていただけることができた。日経というリンクがある僕は、ほんとうに恵まれた環境にある。
 

【オリジナルなものを作ること】

 それは、一般的には「才能」という言葉で片づけられているものだ。しかし、僕はそうは考えていない。どちらかというと、「思考力」や「発想力」に近い。それも才能ではないか、と言われるかもしれないが、才能がなければ、時間をかけて考え、発想するまでひたすら待てばよい。スポーツや音楽や演劇などではこうはいかないが、文章を書く場合には、時間で解決できるということだ。

(森博嗣『作家の収支』幻冬舎新書 P. 95)

 恵まれた環境にあるからこそ、情報をただ右から左へとスライドさせるようなことだけは避けたい。情報を組み合わたり、視点を変えることでオリジナルなものを作っていく。そのために才能はなくとも時間をかける。積極的な待機といえる。とても勇気付けられる指摘だ。
 

「新しさ」を自分の頭から絞り出す

 新しさを生み出すこと、新しさを見せること、それが創作者の使命である。「使命」というと格好が良いが、もう少しわかりやすく表現すれば、「意地」だ。それが、それだけが、プライドを支えるもの、アイデンティティなのである。

(森博嗣『作家の収支』幻冬舎新書 P. 202)

 「使命」「意地」「アイデンティティ」と言い換えられているこれらの言葉を実践するためには、自分の頭で考え続けていくしかない。それが何の役に立つのか。そんなことは副次的なことであって、どうでもいい。まず表現こそがそれに先立つのだ。
 

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2016年2月26日 (金)

2016年2月のコラムの補足とセリバスタチン

2016年2月の薬局にソクラテスがやってきた
OATP1B1とスタチン、CYP2C8の基質と阻害剤
と言えば「セリバスタチン」が存在していたあの頃

【第49回】


 関連の薬歴公開は「ネオーラルースタチン」(2009/8/21)です。

 スタチンとシクロスポリンの相互作用は、OATP1B1の基質とその阻害剤の関係と説明できます。そして、併用禁忌とみなす判断基準があり、それを下回るのは、OATP1B1の基質ではないローコールだけと言っていいでしょう(もちろんローコールも低用量からスタートするといった注意が必要です)。

1_2


【第50回】


 関連の薬歴公開は「ジャヌビア錠25mgの剤型変更と添付文書改定からわかること」(2013/8/30)です。

 プラビックスのグルクロン酸抱合体は強力なCYP2C8阻害剤である。この事実がなぜ今まで判明していなかったのでしょうか(第2相反応の代謝物だから検討されることがなかった?)。むしろプラビックスといえば、阻害剤ではなく、CYP2C19の基質というイメージでした。

 一方、シュアポストはCYP2C8阻害剤の影響を受けやすい基質としては有名で、IFにも次のような記載があります。

6)ゲムフィブロジルとの併用
健康成人(外国人)に、ゲムフィブロジル(CYP2C8 阻害剤、国内未承認、600 mg、1 日 2 回)を 3
日間投与し、3 日目に本剤(0.25mg)を併用したとき、レパグリニドの
Cmax 及び AUC0-∞は、
本剤を
単独投与したときの 2.4 及び 8.1 倍に増加し、t1/2は 1.3 時間から 3.7 時間に延長した。また、ゲムフィ
ブロジルに加えてイトラコナゾール(CYP3A4 阻害剤、100mg、1 日 2 回 3 日間、1 日目の初回用量は
200mg)を併用したところ、レパグリニドの Cmax 及び AUC0-∞は本剤を単独投与したときの 2.8 及び
19 倍に増加し、t1/2は 6.1 時間に延長した。

 レパグリニドの代謝には CYP2C8 が主に関与し、一部 CYP3A4 も 関与するといわれています。この結果を踏まえると、シュアポストとプラビックスの併用に加え、クラリスロマイシンやイトラコナゾールといったCYP3A4阻害薬を上乗せする状況になったとしたら、シュアポストのAUCの増加は2ケタになってもおかしくないわけです。

 そしてゲムフィブロジル。この本邦未承認のフィブラート系を目にして思い出すのはセリバスタチンです。


【懐かしのセリバスタチンとその当時】

 セリバスタチン(商品名:セルタ【武田薬品】・バイコール【バイエル薬品】)。今はなきこのスタチンをご存知でしょうか。僕がMRの頃、なかなかの強敵で・・・。武田系卸をフル活用しローラー作戦を仕掛けてくる武田、そして一本釣りのバイエル。苦労しました。が、このセリバスタチンは販売中止、自主回収となってしまいます(こちら)。

 セリバスタチンは発売当初、CYP2C8とCYP3A4の多代謝経路のために相互作用が少ないと言われていました(セリバスタチンはCYPで代謝され、グルクロン酸抱合を受ける)。ところが、ゲムフィブロジルを併用すると、その強力なCYP2C8阻害作用と、それに続くグルクロン酸抱合の阻害により、横紋筋融解症の発現へとつながったのです。

 そして、セリバスタチンの販売中止。これがスタチンとフィブラートの原則禁忌の引き金になりました。

 また当時、もう一つの相互作用も報告されていました。それがスタチンとシクロスポリンです。当時はシクロスポリンのCYP3A4阻害作用によるものと考えられていました。しかし、CYP3A4で代謝されないスタチンの血中濃度も上昇してしまうことから、CYP3A4を介さない相互作用の機序が研究されることになります。

 その答えが、シクロスポリンの肝臓でのOATP1B1阻害です。これなら水溶性のメバロチンが、シクロスポリンとの併用において、そのAUCを23倍にも上昇させるという報告があることにも頷けるわけです。
 

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2016年2月19日 (金)

乱読、再読『ガラスの街』

再読、乱読、積読。
「偶然以外何一つリアルなものはないのだ」
仕事論、そして最後の一文。

ガラスの街 [ ポール・オースター ]
価格:561円(税込、送料込)


 僕みたいな乱読家にとって、本にまつわる問題は山のようにある。なかでも、本の整理という物理的な問題は避けがたく存在している。書き込み、線引き、端折りなど、なんでもありの僕の本には、古本としての価値もなく、それこそ山積みとなっている。

 片づけが進まない理由、それは時間がないからではない。時間がないというセリフは、優先順位が低いという意味でしかない。そうではなく、手にとると開いてしまうからである。再読が始まる。もちろん最初から最後まで読んでしまうわけではない。僕が残した印である書き込みや線引き、端折りを探してしまうのだ。

 今回手にしたのは、ポール・オースターの『ガラスの街』。僕の印が数ヶ所ある。まずは物語の冒頭部分。

 そもそものはじまりは間違い電話だった。真夜中にベルが三度鳴り、向こう側の声が、彼ではない誰かを求めてきたのだ。ずっとあとになって、自分の身に起きたさまざまなことを考えられるようになったとき、彼は結局、偶然以外何一つリアルなものはないのだ、と結論を下すことになる。(ポール・オースター『ガラスの街』新潮文庫 P. 5)

 「偶然以外何一つリアルなものはないのだ」ほんとにその通りだ。僕はたぶん初めて読んだその時と同じように膝を叩く。そして、主人公クインとその物語を思い出す。その物語は間違い電話から始まるのだが、じつはオースターがこの小説を書くきっかけになったのも間違い電話なのだ。

 オースターのエッセイ『トゥルー・ストーリーズ』に「私のはじめての小説は間違い電話から着想を得た」とある。そして、この事実を赤いノートブックに書きつけた、とも。オースターも僕と同じノート使いなのだ。

 『ガラスの街』には3ヶ所、僕の印が刻まていた。二つ目は仕事論的なフレーズだった。

 「いいですか。私はですね、仕事の枠を限定する必要を悟ったのです。すべての結果が決定的なものとなるよう、十分小さな領域のなかで作業を進めることが肝要なのです」(同書 P. 138)

 まさにゲーテを彷彿とさせる。「小さな対象だけを扱うように」「小さな題材を扱うのが一番だよ」「ただ君の手にあうような個々の部分だけをそれぞれ独立して表現するなら、それはきっとよいものができる」(エッカーマン著、山下肇訳『ゲーテとの対話(上)』岩波文庫)。オースターも『ゲーテとの対話』を読んでいたのかもしれない。

 僕もこの忠告を守りつつ表現しようと心がけている。しかしそれは、同時にまた一抹の不安でもある。パスカルの言葉を借りるなら、「われわれは絶壁が見えないようにするために、何か目をさえぎるものを前方においた後、安心して絶壁のほうへ走っている」のではないか、と。

 『ガラスの街』についている最後の印は、赤いノートの最後の一文だった。

 「赤いノートにもう書くところがなくなったらどうなるのだろう?」(同書 P. 236)

 クインはノートのはじめの方での多くのページの無駄使いを嘆く。が、それは人生において必要だったのだと了解しつつ、最後の一文へとつながる。それは人間の最後の言葉を僕に連想させた。

 最後の言葉として感動とともに覚えているのは、ユゴーの『レ・ミゼラブル5』(新潮文庫)でのジャン・ヴァルジャンの言葉だ。「死ぬことはなんでもない、生きていないことが、恐ろしい」。この一文を目にするためにこの大長編をここまで読み進めてきたのだ、といった意味でも感慨深いものだった(ユゴーは「主題を見失わなければ、脱線にはならない」と居直り、歴史背景や時代の問題点を了解しないままに、物語を進めることを拒否している)。

 でも今、最後の言葉を求められたとしたら、この言葉を提出することはない。否、できそうにない。僕は“ほんとうに”生ききれているのか、そう問わずにいられない。だが、ここでまたパスカルの言葉が思い浮かぶ。「私が何も新しいことを言わなかった、などと言わないでもらいたい。内容の配置が新しいのである」。この言葉なら、薬局薬学のエディタとしての僕のノートの最後に刻まれてもいいだろう。

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2016年2月12日 (金)

アボルブ休薬中の患者への麻黄湯

アボルブ休薬中
いつまで大丈夫?
風邪薬や麻黄剤など

CASE 179

男性 65歳 

他科受診:なし  併用薬:なし

定期処方:
Rp1) アムロジピン錠2.5mg 1錠   分1 朝食後   28日分

Rp2) ユリーフ錠4mg  2錠 分2 朝・夕食後  28日分

Rp3) ツムラ麻黄湯エキス顆粒 7.5g 分3 毎食前 3日分

Rp4) カロナール錠300mg 1錠 発熱時頓用 5回分

*H28.1.12よりアボルブ休薬中

患者のコメント:
「寒気がする。会社で(インフルエンザが)流行り出した。たぶんそうだろうって」

患者の情報:
① アボルブ休薬後も尿の出は問題ない。
② 汗(-)

□CASE 179の薬歴
#1 アボルブ休薬による尿閉リスクの回避
  S) 寒気がする。会社で(インフルエンザが)流行り出した。たぶんそうだろうって
 O) アボルブ休薬1ヶ月→排尿に問題なし
   インフルエンザ疑いにて、ツムラNo.27処方(無汗OK)
 A) アボルブ休薬1ヶ月なのでまだ大丈夫だろう
   念のため、麻黄剤や風邪薬による尿閉のアナウンスを
 P) 抗ウイルス作用のある漢方薬。発汗剤なので水分もこまめに。
   尿の出が悪くなるようなら中止を。今後も市販の風邪薬でも同様に注意を。
 
□解説
 前立腺肥大症治療薬「アボルブⓇカプセル 0.5mg(デュタステリドカプセル)」の出荷調整のお詫びとお知らせ。これによる対応はさまざまだ。アボルブを休薬したら間違いなく尿閉やオペになるような患者を除いては、アボルブの休薬もしくは抗アンドロゲン薬への変更をお願いしている。
 
 この患者はアボルブを休薬している。まだ1ヶ月だ。そして、排尿に関しての問題は見当たらない。おそらく、麻黄剤による尿閉は大丈夫だろうとは思いつつも、アボルブの供給再開の見通しがたっていない以上、今後のことを考えた服薬指導をしておこう、といった内容になっている。
 
□考察
 2~3ヶ月ならアボルブを休薬しても問題はない、とメーカーは案内している。たしかに5α還元酵素阻害薬や抗アンドロゲン薬は半年くらいかけて前立腺を小さくしていくわけだから、その通りなのだろう。

 コントロールされた前立腺肥大症の患者への抗ヒスタミン薬、抗コリン薬、そして麻黄剤など。そういったことは日常的になされている。が、アボルブを休薬中の患者は意識しておかないといけない。今から時間が経てば経つほどに。
 

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2016年2月 5日 (金)

サーチ実践例と勉強会のご案内

安心処方infoboxサーチ実践例更新
服薬ケアで目指す「本物の薬剤師」

【第90回サーチ実践例】

90

 こんな疑問が頭をよぎったら、副作用サーチが便利です。検索して思うことは、添付文書に載せるかどうか、そしてその重症度といった扱いは、ほんとメーカーによってかなり違うんだな、ということでした。

 過去の実践例はこちら


【勉強会のご案内】

2

 岡村先生のご講演。「薬の知識、病理学、薬の使用感等、使用する薬が体内でどのように吸収、分布、消失するのか、その薬物動態をイメージ出来るようになる・・・」うん、面白そうです。

 福岡での開催が近づいてきましたので、ご案内します(申し込みはこちら)。

 日時:2016/02/14(日)13:30~16:00(受付開始13:15)

 場所:天神クリスタルビル3F Bホール
     (福岡県福岡市中央区天神4丁目6-7 天神クリスタルビル3F)

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2016年1月29日 (金)

2016年1月のコラム ~ニフェジピン‐CAMとランサップが二規格ある理由~

2016年1月の薬局にソクラテスがやってきた
ニフェジピンとクラリスロマイシンの併用注意
コラボ企画第2弾!

【第47回】



 「クラリスロマイシンのCYP3A4阻害作用は、併用後すぐには起こらず、4~10日後に生じることが多い。そして、投与中止後も影響がしばらく残る」というタイムラグの問題。

 クラリスロマイシン(CAM)が3日分の処方だったら? 併用が終わったあとに影響がでることになる。そこまで視野に入れないといけないといけないわけです。

Photo_2

(出典:杉山正康編著『薬の相互作用としくみ 全面改訂版』[日経BP社、2012])
 
 

【第48回】


 コラボ企画第2弾です(第1弾は熊谷さんのコラムにお邪魔しました)。今回はEBMの伝道師とのコラボ。青島さんにソクラテスの世界にお越しいただきました。いらっしゃいませ~。

 前半は青島さんとのFB上での実際のやり取りをもとに作成しています。そして後半は、実際に青島さんを召喚しています。

 また、コラムの中で、ピロリ菌の除菌パック製剤が登場します。とうぜん、CAM800mg配合の製剤は、それだけリスクなわけです。当時はタケキャブもなく、ランサップなどでの除菌がメインでしたが、今では当局はタケキャブのレシピばかりです(「

 そもそも除菌パック製剤の400と800ではどのくらい除菌率に差があるのでしょうか? 例えばランサップ。
武田薬品の使用成績調査によると、その除菌率は
400で80.7%(95%CI 78.79-82.45)、
800で80.2%(95%CI 77.26-82.92)と、その差はほとんどなく、同等といっていいようです。ただし、
喫煙者においてはCAM800mgの方が400mgより除菌率が高いという報告もがあります(
Ishioka H, et al. Digestion 75:P63-68 2007.)。しかし、これは後からわかったこと(タバコによる胃血流量の低下が原因で、除菌実施中はやはり禁煙すべきですね)。

 では、なぜ除菌レシピが二つ存在することになったのでしょう。これは
発売当時の使用実態調査を基にしたという理由であって、確固たる根拠があったわけではないようです。
タケキャブのパック製剤の発売が待たれるところですが、400のみの検討と聞いています。除菌率の高さからいくと、さもありなんという感じです。
 

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2016年1月22日 (金)

「探偵のように推理し、患者の暮らしを守る」

薬剤師のやるべきことは、・・・、薬と人の支援、つまり「服薬支援」と「患者支援」です。(P. 73)


【暮らしが先に来る思考回路】

薬剤師は、患者さんに薬をしっかり飲んでもらうことが大切だと思うけど、患者さんの願いはただ一つ、「暮らしを守ってほしい」という思いですよ。これを医学用語に言い換えたものが「クオリティー・オブ・ライフ(QOL)を守る」でしょう。(中略)QOLを守ったり上げるために薬剤師のやるべきことは、「薬によってQOLを下げないように守る」ことなんです。そこに薬剤師の大いなる使命と役割が存在するんです。薬剤師の、人へのかかわりというのは、そこにある。
 薬がその人の暮らし、QOLに影響を与えていないかを視る。それは「薬が先に来る思考回路」ではなく。患者さんの暮らしを視て、薬の影響が出ていないかを視る、つまり、さっきの逆。そこで、僕はそれを、「モノが先に来る思考回路」に対して、「暮らしが先に来る思考回路」と名付けて、ずっと言い続けてきている。

(川添哲嗣『「Do処方、特変なし」から脱却せよ!』日経BP社 P. 14-15)
 
 川添先生が形を与えた、この「暮らしが先に来る思考回路」という概念。この考え方に初めて触れたのは平成18年、漆畑先生の調剤報酬改定の講演目当てに参加したセミナーでのことだった。衝撃だった。

 この思考回路を通して、「暮らしから薬をアセスメントする」。そして、そのためには「薬学的知識が欠かせない」。もちろん「経験」も。

 知識と経験で予測もできる。患者の暮らしを守る。現在の、そして将来の。
 
 
【食事、排泄、睡眠の中には、直接薬をアセスメントできる項目がいっぱい】

 でも、思うんです。じゃあ、薬っていうのは、血圧さえ下がればいいのか? それは違うでしょう? 人間にとって薬を飲む意味は、血圧を下げることによって長生きすること、例えば脳梗塞の発症リスクを下げることにあるわけですよね。
 では、何のために長生きするかというと、それはやっぱり豊かな人生を歩んで、人生を楽しく生きるためじゃないですか。じゃあ、薬によって人生が楽しくなくなってしまっては元も子もないだろうと。
 楽しむためには、食事と排泄と睡眠の三つが満たされていることはすごく大事だと、僕は思うんですよ。快食、快便、快眠という言葉は、見事に人間のクオリティー・オブ・ライフを言い表していると思うんですよ。クオリティー・オブ・ライフって何なのか、人生の質って何なのかを考えると、究極は、快食、快便、快眠なんだと僕は思っています。
 それらが人生おいて重要だと考えれば、副作用チェックに際して最も優先すべきことは、快食、快便、快眠を妨げるような副作用チェックをすることじゃなかろうかと。もちろん、命にかかわるような副作用チェックは重要ですけど、この三つが脅かされていないか、副作用が出ていないかをチェックすることは決して忘れてちゃいけないと思うんですよね。

(川添哲嗣『「Do処方、特変なし」から脱却せよ!』日経BP社 P. 170-180)
 

 ほんとうにこの三つのチェックは忘れちゃいけない(フローチャートには「運動」と「認知機能」が加わる。2010年2月26日 (金) 「暮らしが先に来る思考回路」参照)。そして、薬歴の記載において重要な指摘が続く。

比較のためには、問題がなかったときの記録を残しておくことが大切なんです。

(川添哲嗣『「Do処方、特変なし」から脱却せよ!』日経BP社 P. 181)
 
 僕らは薬歴の記載において、POSの考え方でSOAP形式で記録をつける。POS(Problem Oriented System)とは、患者の持っている医療上の問題点に焦点を合わせ、その問題を持つ患者の最高の扱い方(best patient care)を目指して努力する一連の作業システムのことをいう。この定義、いや日本語訳が問題なのだ。

 Problemを問題(問題点)と訳するから、その言葉に引きずられる。つまり、患者の問題(問題点)を探してしまう。だから、よい状態、問題がなかったときの記録を残すことができない。結果、後から読み返したときの価値が目減りしてしまう。経時的な変化が追えなくなる。そうなるくらいなら、Problemは「プロブレム」のまま使えばいい。そして、「テーマ」くらいの意味合いで捉えておけばいいのだ。
 
探偵のように推理するのが薬剤師の仕事

 例えば僕は、新しい薬が発売されたときにその薬を知ろうと思ったら、まず添付文書を見て「食事」に関する副作用に赤で丸を付ける。そして、次に「排泄」に関する副作用は青で囲む。そして「睡眠」は緑とかで印を付けていく。そうすると、全部の副作用の8割ぐらいは、食事か排泄か睡眠かのどれかに影響する副作用に該当します。(中略)だから、食事、排泄、睡眠に関する簡単な質問を入り口に、いろんな副作用の可能性が引き出せる。そして、出てきた可能性を一つずつ検証しながら、可能性をつぶしていく。患者さんに聞いて確認したり、自分の目で患者さんの様子を視たり、介護者に聞くというのもありでしょう。そうやって、探偵のように推理しながら、原因を確かめていくのも薬剤師の仕事だと思います。

(川添哲嗣『「Do処方、特変なし」から脱却せよ!』日経BP社 P. 188)

 この勉強法は面白い。今度やってみよう(赤・青・緑って齋藤孝の三色ボールペン術みたいだし)。しかし、ただ副作用を見つけて終わりじゃない。その先、次の段階の問題点まで視野に入れて行動することが大切だ。

 薬剤師は、副作用を見付けて、見付けたことを喜ぶ職業じゃない。時々、口渇を見付けた途端に、「患者さんが『口が渇く』と言っています。副作用じゃないでしょうか」と医師に相談してしまう薬剤師がいるんですけど、それだけで相談されても医師は困る。何が問題なのか、本当に患者さんが困っているポイントは何かをしっかり見極めて、解決策を医師と共に探していくことが大切でしょう。

(川添哲嗣『「Do処方、特変なし」から脱却せよ!』日経BP社 P. 198-199)

 探偵のように推理する。そして、患者のQOLが薬で下がることがないように、暮らしを守る。薬剤師ってかっこいいじゃん。

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2016年1月15日 (金)

入眠禁止ゾーンへの理解と実践

何時に睡眠薬を飲んでいる?
「入眠禁止ゾーン」

高齢者は“遅寝早起き”が基本です。

CASE 178

女性 75歳 

他科受診:なし  併用薬:なし

定期処方:
Rp1) アムロジピン錠2.5mg 1錠   分1 朝食後   28日分

Rp2) ウルソデオキシコール酸錠100mg  3錠 分3 毎食後  28日分

Rp3) デパス錠0.5mg  2錠 分1 就寝前 28日分

患者のコメント:
「安定剤は1錠でいいときもあるが、だいたい2時に目が覚めて追加している」

患者の情報:
① 持ち越し(-)
② デパスを20時に1錠服用して就寝している
③ 2時に追加服用。6~7時に起床。

□CASE 178の薬歴
#1 22時以降に就寝・服薬をしてもらう
  S) 安定剤は1錠でいいときもあるが、だいたい2時に目が覚めて追加している
 O) デパスを20時に服用し就眠。2時に覚醒し追加服用。
 A) 入眠禁止ゾーンを実践できれば、デパスを減らせるかもしれない
 P) 就寝・服薬が早すぎるので、追加になっている。
   量が多いとふらつき、転倒のもと。
   入眠禁止ゾーンを示し、22時以降の就寝・服薬を提案。
 
□解説
   「睡眠薬が効かない」「睡眠薬を追加している」こういった訴えのときはまず服用状況を確認している。今回も、案の定、服薬タイミングが早すぎるケースだった。加齢とともにメラトニンが分泌される時間が前倒しとなって、睡眠相が前進してしまっているわけだ。高齢者は生理的に就寝が早くなり、起床も早くなる。つまり、よくあるケースといえる。

 最近、こういうケースでは「入眠禁止ゾーン(19時~22時)」を示した資料を使っている。この時間に服薬すれば、それはもちろん薬の効きもイマイチだろうし、眠れたとしても睡眠の質もよくない。そして、睡眠欲求も低下していく。

睡眠は、睡眠欲求と覚醒シグナルのバランスにより保たれているため、普段の入眠時刻の2~3時間前の時間帯は、最も覚醒水準が高くなり入眠に適しません。そのため入眠禁止ゾーンと呼ばれています。そして、いったん入眠すると睡眠欲求は低下し、十分な睡眠をとると睡眠欲求は消失します。

Photo


 昔から、良い子は“早寝早起き”だが、高齢者の場合は“遅寝早起き”を実践してもらわないといけない。
 
 
□考察
 
そもそも65歳以上になると、生理的睡眠時間は6時間くらいだといわれている。20時に就寝して2時に起きるというのは、ちょうど6時間、十分に眠って目が覚めたともいえる。それからまだ寝ていたいというのは無理な欲求ともいえる。

 “無理な睡眠への欲求”この問題、じつは根が深いのかもしれない。

 この早寝の習慣を助長するものに「入院」がある。21時消灯。これがよくないのだろう。高齢者が退院したら、この点を確認しておかないといけない。

 さらに、もう一つ考えるとすれば、夕食後の薬の副作用が、この入眠禁止ゾーンでの睡眠を招いていないか、ということだ。例えば、一包化されている患者で、夕食後の中に安定剤やリリカなどが入っていたとしたら? そういうときは服薬タイミングの見直し、つまり処方の見直しを提案することから始めないといけないだろう。
 

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2016年1月 8日 (金)

2016年始動(講演会のご案内)

2016年ブログ始動。
講演会のご案内から。
今年もよろしくお願いします。


 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。今年もブログは毎週金曜日にアップ。コラムも月2本のペースを維持できればと考えております。また、その他の企画も水面下にて進行中です。時が来ましたら、随時アップしていこうと思います。

 さて、新年一発目は講演の案内です。昨年は日薬大会や熊薬の卒後教育と講演をしましたが、じつは僕は講演活動を公にはしていません。物理的な理由以外は特にないのですが、強いて言えば、滅多にしない人が講演すれば希少価値が出るのでは、くらいでしょうか。ということで、佐賀県薬剤師会にお邪魔して、川添先生の前座を務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします(詳しくはこちらの生涯学習を参照ください)。

Saga

 さいきんは講演タイトルだけは楽につけられます。「○○にソクラテスがやってきた」で○○に地名なんかを入れればバッチリですから。内容は? それは会場でのお楽しみということで。また、講演会終了後には懇親会も企画されているようです。ご都合のつく方はぜひお越しください。

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2015年12月30日 (水)

「薬局にソクラテスがやってきた」2015年記事一覧

2015年のブログ納めはソクラテスのアーカイブ。
日経DIO連載中の「薬局にソクラテスがやってきた」2015年記事一覧

 今年もブログ納めは、2015年DIO記事のアーカイブです(今年も熊谷兄貴のマネで。熊谷さんの記事一覧はこちら)。なんとか2年目も無事に乗り切りました。といっても楽しんで書いているので、来年も今のペースでお届けできればと思っています。

 そしてそして、おかげさまで、年間閲覧ランキング【第1位】を獲得することができました。パチパチ~。さらに青島さんとのワン・ツー。パチパチパチ~。みなさまの応援、本当にありがとうございました!


山本雄一郎の「薬局にソクラテスがやってきた」2015年記事一覧


2015/ 1/16



2015/2/24 

2015/3/11 

2015/3/23 

2015/4/8

2015/4/21 

2015/5/8 

2015/5/20 

2015/6/9

2015/6/23 

2015/7/10

2015/7/29 

2015/8/11

2015/8/25 

2015/9/7 

2015/10/2 

2015/10/19

2015/11/5 

2015/11/17 

2015/12/2 

2015/12/16

 以上、23本のご紹介でした。

 毎週金曜日のブログ、月2本のコラムの目標もほぼほぼ達成! 今年もたくさんの方に応援していただき、感謝感謝です。

 また、日薬大会や熊薬卒後教育講演と充実した一年になりました。来年も講演や学会で全国にお邪魔する予定です。講演は本当にたくさんのご依頼をいただいてまして、来年はもうこなしきれそうにありません。すみません。そのぶんもブログやコラムなどで面白い記事をお届けできたらと思っています。

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«2015年12月のコラム ~リリカの別の話題と腎機能の評価それ自体~